魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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二年生編スタートしますが…この作品の一周年が迫ってきていることに対して、案をひねり出してみたのですが、足りない作者の頭では一向に思い浮かばなかった為、一周年記念は投稿しない方向でいます。何卒ご容赦を…


ダブルセブン編 その一

「流石に広いな…」

 

「…そう思うか?達也」

 

 

時間はたち、北山邸でのホームパーティーが開かれていた。本日のパーティーは雫とその恋人、総司のUSNAからの帰国祝いと、二人の進級祝いを兼ねていた。北山家の家族構成は両親に祖母、雫、弟、となっているが、総司が居ることと、主催者である潮の弟、及び姉妹が五人もおり、潮が晩婚であった事も相まって、雫の従兄弟は半数以上が雫より年上であり、その中には当然既婚者もおり、そう言った者達は各々が家族同伴であり、未婚者もフィアンセや近日中に結婚予定の相手を連れてきており、その人数は内輪のパーティーでありながら大人数だ。更に…

 

 

「お久しぶりです、総司さん」

 

「ん?…光宣君!?君体調は大丈夫なのか?」

 

「ええ、今日はいつもより優れていたので…」

 

 

このパーティーには九島の関係者も訪れる予定であった。そして訪れたのは、九島烈の孫である九島光宣、そして、

 

 

「あら、達也君もいたのね」

 

「藤林少尉…」

 

「ダメよ達也君、ここじゃその呼び方は」

 

「失礼しました、藤林さん」

 

 

その光宣のお目付役として藤林響子が訪れていた。てっきり響子だけが来ると思っていた総司は、光宣までパーティーにやって来た理由を聞いた。

 

 

「…総司さんに、謝罪をと思いまして」

 

「謝罪?何を?」

 

「いえ、あの横浜事変以降の一連の事件には、僕が原因となったものもあるので…」

 

「…まさか、俺の遺伝子情報を盗まれた事を言ってんのか?あれは研究所の奴らの管理がずさんだっただけだ、気にすると身体に毒だぞ」

 

「ですが…」

 

 

そもそも、零次達、総司のクローンが製造されたのは、一時期総司の強靱な肉体を解析すれば、光宣を健康に出来るのではないかと考えた烈によって進められた研究に用いられた総司の遺伝子情報が元となっている。実験結果は、総司の肉体は平均的な十代男子のものであり、その身体能力の秘密は不明という少し不思議な結果となったのだが、何かに使えるかもとそのまま保管をしていた遺伝子情報をまんまと奪われた形となる。

 

光宣はそう言った経緯もあり、若干の負い目を持っているのだ。

 

 

「ほら、光宣君。総司君は気にしないって言ったじゃ無い。貴方も気にしないで良いのよ」

 

「…はい」

 

 

響子に諭され、了承の言葉を漏らす光宣。その様子が、渋々承諾したというものに映った響子と総司だが、達也は気づくことが出来た。

 

 

「(彼…今水波を見ていなかったか?)」

 

 

その視線が、深雪と親しげに話している水波に向けられていたことに…

 

 

 


 

 

しばらくして…

 

 

「惚けるつもり!?」

 

「っ!?…お義母さん!?」

 

 

唐突に会場に広がった怒声に、雫を交えて、深雪や水波と話をしていた総司は、怒声がした方向を向く。そこには、雫の母である北山紅音が、達也に向けて怒鳴りつけていたのだ。

 

 

「紅音、少し落ち着きなさい。司波君、妻が失礼したね」

 

「いえ、、自分の方こそ、色々と生意気な事を申し上げました。何分未熟な若輩者の申す事故、ご容赦いただければ幸いです」

 

 

騒ぎを聞きつけ妻を制止しに来た潮。その潮に頭を下げられ、達也も丁寧に謝罪をする…が、その内容が人を食うようなものであったため、総司は乾いた笑いを漏らす。

 

 

「一度、御前を失礼させていただきたいのですが」

 

「ああ、そうだね。娘も総司君も、君と話したいだろうし」

 

 

そう潮に断りを入れた達也が、こちらにやって来た。そして達也が何かを言おうとしたが…その前に雫が頭を下げる。

 

 

「ごめんなさい、達也さん」

 

 

そしてその口から謝罪の言葉を告げると共に顔を上げる雫。その表情には、普段の乏しい表情の中に、確かな羞恥を覚えている事が窺える。因みに総司基準で、「滅茶苦茶恥ずかしがってる…」とのこと。それも当然、自身が招いた同級生に、自身の母が因縁を付けたのだから、これは誰でも恥ずかしくなるだろう。これで恥ずかしがらない人間など、最早羞恥心を無くした総司と達也ぐらいのものだ…

 

 

「いや、お母さんの気持ちも分かる。娘に得体の知れない男が近づいているとあれば、心配になるのは当然だろう。俺は気にしてないから、雫も気にするな」

 

「確かに得体が知れないな」

 

「お前には言われたくないぞ」

 

 

というか、お前は全部知ってるんだろうが。と言いたげな表情の達也の視線を軽く流し、会話を続ける。

そこで飛んで来たのは…

 

 

「そう言えば、なんで総司君は着物なの?」

 

 

ほのかからのこの問いであった。現在総司は、確かに格式高い人間の様に見える着物を着用していたが、このパーティーは洋風のものであり、周囲はドレスやスーツを着ているものばかりだ。遠くから水波をチラチラと見ている光宣すらスーツだと言うのに、総司はただ一人着物であった。正直言って浮いてしまっている。

 

 

「え?なんかおかしい?」

 

 

肝心の本人には、浮いているという意識すらないようだが。

 

 

「もう…総司君ってば」

 

 

雫の視線は最早、羞恥を通り越して子供を見るような温かいものになっている。明らかに総司に対する補正が働いているのはおいといて…。

 

 

ある意味でこの中で一番居心地が悪そうなのは、他でもない達也だ。だが達也はそう言うことを気にするような男ではない。寧ろ、華やかなドレスに身を包む美女四人、格式高いが、明らか場違いの着物を着る総司。その中に地味なスーツの達也が混じろうと、結局一番目立つのは総司なのだ。まったくおめでたい頭をしているものである。

 

そして、この集団の会話は、初対面の水波が混ざっているとは思えない程、スムーズに進んでいた。ほのかが気を使って水波に話しかけ、雫が行き過ぎないように時々ブレーキをかけ、深雪のアシストを受けて水波が控えめに受け答えする、その間にデリカシーのない発言をする総司をシバく達也と、完璧に回っていた。

そんな中、達也に話しかける少年がいた。

 

 

「あの、司波達也さんですよね」

 

 

振り向いた達也は、その小さなお客さんに肯定を示す。

 

 

「「航」君」

 

「姉さん、義兄さん。ゴメン、邪魔だった?」

 

「ううん。でも、ちゃんとご挨拶をして」

 

「そうだな、それぐらいで目くじら立てる奴じゃないが、礼儀は大切だぞ」

 

「お前が礼儀を説くのか?」

 

「ンだとテメエ?」

 

七草真由美(小悪魔ババア)やら渡辺摩利(鬼の委員長)やら十文字克人(人の形したゴリラ)やら、先輩方に失礼な呼び方をしていたお前がかと聞いたんだ」

 

「あと、吉田幹比古(コックカワサキ)吉田幹比古(インセクター羽我)だったりね」

 

「雫ちゃん?最後のは共犯だよね?」

 

 

航をそっちのけで雫の援護射撃をもらいながら達也が総司を糾弾する。因みにこの間、主人に失礼な態度を働く人間として、水波からの総司への評価は著しく下がっている。

 

 

「…その」

 

「ああ、済まない。悪く言うならお前の義兄にしてくれ」

 

「さりげない罪の擦り付け…」

 

「俺に罪はない、だがお前には罪がある」

 

「つまり?」

 

「✝悔い改めて✝」

 

 

一向に航が話せないからと、ほのかと深雪が仲裁に入る。やっと落ち着いた二人、それを見計らって航は達也に自己紹介をする。

 

 

「はじめまして、北山航です。今年、小学六年生になります」

 

 

航は達也の方に身体ごと顔を向けて自己紹介をした。その後、深雪に対しても行ったのだが、航は深雪の方を見ようとしなかった。どうやら舞い上がってしまわないように、ということらしい。達也に続いて深雪が挨拶を返している最中、微妙に視線を外し奥歯を噛み締め全身に力を込めていた事からして、間違いない。

 

深雪は航の可愛らしいその態度に微笑ましさしか感じなかった。しかし「主」に向けられた礼を失する応対に、水波は不快感を隠しきれなかった。

 

 

「お目にかかり、光栄に存じます、航様。桜井水波と申します。達也兄さま、深雪姉さまの従妹に当たります。よろしくお見知りおき下さいませ」

 

「…庶民の従妹にしちゃ、できすぎた妹さんですね?」

 

「…分かっているくせに確認をするな」

 

 

達也の言う確認とは、モチロン水波の嘘についてだ。総司は達也の出生の秘密を知っている。故に達也にこんな年の近い従妹が居ることはないのは知っていたのだ。面白そうに揶揄う総司。

 

しかし二人を余所に、その周辺の空気はお通夜状態に向かいかけていた。何故なら、水波の態度があまりに大人げないからである。相手小六ゾ?ちょっと失礼しちゃった位勘弁してあげようよ。

 

 

「航君、何か達也さんにご用があったんじゃないの?」

 

 

ここで助け船を出したのはほのか。流石、この中で一番空気を読めるだけはある。読み過ぎてボケに回りがちなのはいただけないが。

 

 

「あっはい…司波さん、一つ教えて欲しいのですが」

 

 

この場には司波さんは二人居るのだが、どちらに話しかけているかなど、話を聞いていれば分かるであろう。総司だけは「どっち…?」と疑問符を浮かべた表情をしている。話聞いててもこれか。

 

 

「良いよ、答えられることなら」

 

「あの…魔法が使えなくとも、魔工技師にはなれるのでしょうか」

 

 

その質問は、普通の子供が聞く分には問題無かっただろう、しかし航は北山家の跡取り息子…であるはずだ。流石の潮も総司に任せる等という暴挙には出ないはずである…それはともかくとして、その立場にある航がするには少々奇妙な質問であった。現にほのかと雫は「えっ?」と言いたげな表情だし、総司に至っては声に出ている。すっげえバカっぽいね。

 

 

「無理だな。魔工技師とは魔法技能を持つ魔法工学の技術者のことだ。魔法が使えない技術者を魔工技師とは呼ばない」

 

「へえ~、そうだったんだ」

 

 

どこぞのケンミンshowみたいな相づちを打った総司。もうちょっと勉強しようね。そしてその達也のきっぱりと言い切った返答に、航は肩を落とすのだが…

 

 

「もっとも、魔工師ばかりが魔法工学技術者ではないんだけどね」

 

「えっ?」

 

 

続く言葉に顔を上げた。そんな航を見下ろす達也の落ち着いた笑み。航は期待感に目を輝かせて次の言葉を待っている。

 

達也はわざともったいぶるような、性格の悪い真似はしなかった。

 

 

「魔法が使えなくても魔法工学を学ぶ事は可能だ。CADの調整は魔法的な感覚が無ければ難しいが、魔法が使えなくてもCADを作る事は出来る。他の魔法技術組込製品も同じだ。君が本気で勉強すれば、お姉さんの役に立つ知識と技術を身につけられるはずだ」

 

「あ、いえ、僕はそんなつもりでは……」

 

 

 口でいくら否定しても、そんな恥ずかしそうな顔をしていれば本心が丸わかりである。そして、達也に向けられる目も、見ず知らずの大人に対する警戒と畏怖の眼差しから、尊敬と憧れの入り混じった眼差しに変わっていた。

 

 

「(…水波ちゃんって、分かりやすいな…)」

 

 

達也への航の視線に機嫌を良くしている水波を見て、総司はこう思った。水波ちゃん、総司からこのように評されるということは、かなりの重症である事を気づいてほしいものだ…




魔法科世界の秘匿通信


・この時点で光宣君は水波ちゃんをロックオン。まあしたところで行動に移せるだけの元気も理由もまだ無いから、意味ないんだけどね



・正直紅音さんの性格が結構サバサバした感じなの、この話を書くために読み返すまで覚えていなかった。ので、以前登場した紅音さんの性格が優しくても、ユルシテ

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

  • いいともー!
  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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