魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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遅くなってしまい申し訳ありません、作者です。

あのですね、ついこの間GWと言うこともあり、原作を読み返していたのですが…

ダブルセブン編って琢磨と七草双子のイザコザを主軸にした話だと私は考えているのですが、そのイザコザも原作琢磨の七草への憎しみが燃料だった訳で。
本作の琢磨にはそんな感情は微塵も無く、逆にちょっとしたライバル意識を双子に持たれている程度なんですよね。

達也や他のメンバーを嘗め腐ってる琢磨が十三束と達也の模擬戦で実力差を見せつけられるみたいな展開も、本作の琢磨はしっかりと相手を見定める力を持っていますし、そもそも琢磨は本作でもトップクラスに強いので、原作の展開がほぼ使えないンですよね。

どうすっか…と悩んだ結果生まれた本話です、よろしくお願いします。


ダブルセブン編 その六

「また負けたぁ~!」

 

「香澄ちゃん…悔しいからと言って生徒会室で大声を挙げてはいけませんよ?」

 

 

2096年4月26日は昼休み。生徒会室にてこれまでに何度聞いたか分からない悔しげな少女の叫びが響き渡る。どうやらまたしても琢磨に敗北してしまった様だ。

香澄の表情は、明らかに悔しさに歪んでいる。このまま誰かが賛同するような言葉を言ってしまえば更に爆発してしまうだろう。事実今までも泉美と琢磨に対する文句でヒートアップしすぎて、見かねた弘一が零次に伝説の首トンをさせて無理矢理寝かしつける程である。

 

だが今回香澄はともかく、泉美が香澄を諫める様に行動しているのは、すぐ近くに司波深雪(憧れの先輩)がいるからだろう。家族の前でもそうでなくても、普段冷静な彼女にしては珍しく恥も外聞も捨ててブーブー文句を言っていた泉美だが、深雪の前では流石に控えようという思いがあるようだ。

 

 

「ちょっと!零次…じゃなかった、橘先輩!貴方アイツにどんな教育をしてきたんですか!?」

 

「うーん…強いて言うなら、サーチ&デストロイかな?」

 

「それは人間ではなく殺戮兵器に行う教育じゃないか?」

 

 

最近ずっと琢磨への不満…琢磨は勝った後に無自覚に相手を煽る言葉を発してしまう。だが香澄達には意図的に言っているものと解釈されている。…を、琢磨を今の状態まで持ってきてしまった総司に向かって、身を乗り出す勢いでぶつける香澄。そんな香澄への返答は、随分と投げやりな返答だった。まあそれも当然、総司からしてみれば、普通の先輩後輩(ただし一緒に魔法犯罪などを食い止めたりしてきた)として接していたらいつの間にかあんな性格になっていたのだ。此処で自分が悪いと考えないのが、総司流なのかも知れない。

 

だがその投げやりな返答も、実際の場面を目撃していない他のメンバー達にとっては、冗談に聞こえないこともある。事実達也が、本当にそんなことしてたのか?と言いたげな表情でツッコミを入れる。

 

 

「…その様子だと、また七宝君に何か言われたの?」

 

「はい!アイツ、『昨日の実験が成功したからって調子乗っているんじゃないか』って!」

 

「「「「…あ~」」」」

 

「何ですかその『その通りかも』って表情!?」

 

 

香澄が琢磨に言われた昨日の実験とは、「常駐型重力制御魔法を中核技術とする継続熱核融合実験」というものである。小難しい事を言っている様に聞こえるが、簡単にかみ砕いて言えば、常駐型魔法を開発出来さえすれば、それを利用した莫大な電力を発電できてしまうトンデモ発電機の実証実験と言ったところか。

 

この研究は、魔法師を兵器から解放する手段であるとして、達也と細かい所は違えど、昨年度卒業した市原が重要視した研究であり、昨年の論文コンペで一高がプレゼンしたのもこの研究である。

そんな研究の実験が、何故昨日行われたのかというと、色々と事情はあるのだが、一言で言えば魔法師を頭ごなしに否定する政治家が、魔法高校をこき下ろす材料を探しに一高へと急遽訪問する事が決定、それに対するカウンター的にこの実験を執り行ったのだ。

 

結果は見事に成功(達也が開発した物が失敗した試しがないので当然と言えば当然だが)。否定派の政治家ですらこの実験は賞賛するしかないものだったようで、一部の尖りまくったメディアが水爆扱いしてきた事以外には概ね好評であった。

 

そんな実験は、現状開発段階であると言うのもあり、起動には複数人の協力が必要となる。

そんな訳で、見事メンバーに選ばれた香澄(泉美とセットであるが)。彼女達の担当は第四態相転移(フォースフェイズシフト)、液体を第四態、つまりプラズマに状態変更する発散系の相転移魔法を担当した。

 

魔法力の関係、コントロールの精巧さの点を鑑みれば、現時点の双子よりも琢磨単体の方が高いのだが、総司に悪い影響を受けた琢磨は戦闘に使わず、日常でも使わない魔法は苦手としているのだ。メディアに水爆扱いされたように、失敗すれば爆発の危険性もあったこの実験に専門的な魔法の技術に欠ける琢磨では役不足であったのだ。

 

 

「…まあまあ、七宝君に負け続けているのは今に始まった事じゃないし「うるさいですぅ!」今は達也さんのお誕生日パーティの内容決めでもしようよ」

 

「ちょっと待ってくれないか雫」

 

「ん、達也さん。どうぞ」

 

「なんだその議長みたいな口調は…」

 

 

正直生徒会室にいる一同には、双子の絶叫など慣れたもの(深雪だけは泉美が絶叫した所を見た事が無いが)、今双子と達也以外の意識は、達也の誕生日パーティーに向いていた。確かにいつもなら盛大に祝おうとする深雪が簡単な祝辞だけで済ましてきたことに、違和感を覚えた達也ではあったのだが、遂に深雪も兄離れか…と納得しその夜ホロリと涙した(真顔で)のだ。

 

だが実態はもっと大事になってしまっていたことに動揺する達也。正直なところ、自分は雫の母親に警戒されているので、あまり雫の家で開催されるパーティーにお招きされたくないのだ。

 

 

「開催予定日は?」

 

「今週の日曜日かな」

 

「…申し訳ないが、その日は用事があるんだ」

 

 

嘘ではない。と言うのも、2096年の頭に、ドイツのCADメーカーであり、業界最大手であるローゼン・マギクラフトが発表した完全思考操作型CADを題材に、稀代の天才CADプログラマー『トーラス・シルバー』としても活動する達也は、職場であるFLTで対抗する商品の開発会議を行う予定ではある…のだが。

 

 

「あれ?その日は午前中はともかく、午後は時間があるって深雪に聞いたんだけど?」

 

「(深雪~!)」

 

「…(てへっ☆)」

 

 

雫の言う通り午後の時間は空いているのだ。それを教えたという深雪に恨めしい視線を向けると、冷や汗を流しながらも、舌出しウィンクで謝ってきた深雪の可愛さに免じて許すことにした達也だった。

 

 

「安心しろって達也。義母さんには俺から言っておくから」

 

「総司…(安心できねえ…)」

 

「オイコラ、今何考えてやがる」

 

「橘先輩って何で真顔の司波先輩の考えてる事が分かるんですか?」

 

「何でなんだろうね…」

 

 

ほぼほぼ空気になっている泉美が、同じく空気になっているほのかに質問を行う。そんなもの分かるわけがないんだよなぁ…




魔法科世界の秘匿通信


・恒星炉:将来達也を象徴する偉業の一つになる物。飛行魔法と同じく加重系魔法の技術的三大難問とされていた。重力制御魔法で継続的な核融合反応を維持することでエネルギーを発生させる装置のこと



・完全思考操作型CAD:スイッチに手が触れていなくても操作できるCADである。ローゼン・マギクラフトが最初に発表したが、携帯用CADとしてはかなりの大型に当たるため、現状の使用者は少ない。


今回かなり短いです…最近忙しすぎて執筆できひん…

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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