総司が何の神なのかという質問についてですが、基本的に日本神話の神々が元ネタになります。理由は単純、魔法の作成者が日本の安部清明という設定だからです。
よって総司には北欧神話やクトゥルフ神話の神々は関係は無い…ので
スティープル・チェース編 その一
「もう終わりです…折角の事前準備が全て水の泡…あばばば」
「しっかりしてください、中条会長」
「ですがお兄様、確かにこれは…」
あずさが絶望している理由、それはいきなり九校戦の競技内容が変更されたというお話であった。
「どれくらい変更されたんだ?」
「ほぼ全てです!」
「うおビックリした」
「俺は何の断りも無しに生徒会室に入り浸っている方がビックリしてるよ総司」
ダイニングサーバーの前で料理が出てくるのを今か今かと待っていた総司が、いきなり復活して叫んだあずさに驚く。因みに雫はどうやって居るのかSDキャラ化して総司の頭に捕まっていた。どうやってんの…?
「変更があったのは三種目です! スピード・シューティング、クラウド・ボール、バトル・ボードが外されて、新たにロアー・アンド・ガンナー、シールド・ダウン、スティープルチェース・クロスカントリーが追加されました。しかも掛け持ちでエントリー出来るのはスティープルチェース・クロスカントリーだけなんですよ! その上、アイス・ピラーズ・ブレイク、ロアー・アンド・ガンナー、シールド・ダウンはソロとペアに分かれているんです!」
「長々と説明ありがとうございます中条会長」
「あの…ロアー・アンド・ガンナーやシールド・ダウン、スティープルチェース・クロスカントリー……とはどのような競技なのですか?」
「私が解説するよ!」
「うおビックリした、いきなり飛び降りると危ないよ雫ちゃん」
「というか雫のそれどうやっているんだ…?」
深雪の疑問に、九校戦フリークであり、魔法競技全般になんだかんだで詳しい雫が解説に名乗り出る…SD化したままで机に立ちながら。いい加減仕組みを教えてほしいものである。
「…と言う事なんだけど、分かった深雪?」
「ええ、ありがとう雫」
「…ロアー・アンド・ガンナーとシールド・ダウンはともかく、スティープルチェース・クロスカントリーは高校生にやらせる競技じゃない。運営委員会はいったい何を考えているんだ?余程しっかり対策を練らなければ、ドロップアウトが大勢出るぞ?」
その発言は、運営委員会に顔が利く烈の関係者である総司を見ながらの発言であったが、それを聞いたあずさと深雪は驚愕の表情を、雫はその可能性を思いついていて、「やっぱり危ないよね…」とテンションが若干下がっていた。
そして総司の返答は…
「ん?…ああ!そういやこないだ烈爺が、上からの圧力で運営が競技を変更せざるを得なくなったとか言ってたな」
「…老師が口出しした訳じゃないのか?」
「口出しはしたみたいだけどな、所謂影の権力者って奴がバックにいるっぽくてな、所詮歴史の浅い、血筋だけの十師族じゃ流石に発言の重みが違うってよ」
「…老師の意見を突っぱねざるを得ない程の権力者だと…!?」
小さく呟かれた達也の驚愕は他のメンバーには聞こえず、あずさを必死に励ます深雪と雫がいた…
「って事があったんだよ」
「大変なことになってるみたいだね…」
時と場所は変わって、放課後の喫茶店『アイネブリーゼ』にて、いつものメンバー+水波がいた。途中までは香澄と泉美もいたのだが、長く零次と傍に居たかった香澄の要望によって、近くに控えていた零次に抱えられて既に帰宅している。
「へえ…面白そうじゃない、特にシールド・ダウンとか」
「ええ…そうかな?なんだか怖そう…」
シールド・ダウンは言わば近接戦闘の競技であるため、エリカが楽しそうに口元を歪めるが、一般人の感性を持つ美月は怯えていた。
「そうだね…去年まで採用されていた競技はどれも、選手同士が直接ぶつかりあわないものばかりだったから…」
「モノリス・コードですらそうだったのに…」
「そうだったか?」
「そうだったんだよ」
モノリス・コードでは自分は物理攻撃しかしていない事を思い返して、疑問を唱えるが達也が即座にその感性のズレに突っ込む。
「なあ達也、今回の変更って何か軍事色が強い気がするんだが?」
「その通りだなレオ。恐らくだが、おそらく横浜事変の影響だろう。去年のあの一件で国防関係者が改めて魔法の軍事的有用性を認識し、その方面の教育を充実させようとしてるんじゃないか?」
「魔法の軍事的有用性…?」
「そうだな、お前は相変わらず物理だったな」
先程のやり取りと同じく、横浜事変も物理攻撃(なんなら九校戦よりもこっちの方が印象深い)しかしていない総司。達也はもうツッコミたく無さそうだ。
「しかし、時期が悪いとしか言いようが無い。何故こんな分かりやすい変更を行ったのか……現下の国際情勢で焦る必要は無いと思うんだがな……それはとにかく、これから忙しくなりそうだ」
「大変そうだな…」
「お前も巻き込むから」
「えうせやろ」
本気でウンザリしていそうな表情で呟く達也、それを他人事の様に言い放つ総司を巻き込む決意を固めた。
九校戦の競技種目変更は、予想通り一高に大混乱をもたらした。大会の公式サイトに詳細が公表された事を受けて、競技種目に関係のあるクラブでは一喜一憂する生徒が大量発生したが、最も影響を被ったのはやはり生徒会だった。
全ての部活への説明や、何が許可されていて何が禁じられているのか、各競技場の大会ルールを読み込む事から始めなくてはならなかったので、この日校門を出た時には、生徒会役員の全員が疲れ切った顔をしていた。それは達也も深雪も例外では無かった。因みに総司は雫を連れて脱走している。体力が減っていた達也では到底総司を止められないのだ。
そして次の日…
生徒会室で達也と範蔵が二人で話し合っていた。この場には他のメンバーも揃っていたのだが、この二人が優秀すぎて、この二人だけで話がドンドン進んでいくのだ。
「アイス・ピラーズ・ブレイク、ミラージ・バット、モノリス・コードの出場選手は重複種目を調整するだけで良いと思うが、どうだろう?」
「それで良いと思いますが、本戦のピラーズ・ブレイクはソロとペアの組み分けが必要です」
「女子は司波さんがソロ、千代田と北山がペアで良いんじゃないか?」
「さんを付けろよデコ助野郎!」
「ああもううるさい!後輩なんだから別に呼び捨てで良いだろ!いちいち文句言うな総司!」
ここまで順調に計画を練っていく二人。しかし、次の話題で二人の会話が一瞬止まってしまう。どうやら、男子ピラーズ・ブレイクについてだ。
「…男子はどうしますか?」
「…男子は、一人が強すぎて、他二人はまあまあだ。そして、その一人はペアを組む必要はない…」
「おう、任して!」
二人は勢いよく返事をするその強すぎる一人を見てため息をつく。何を隠そう、その一人とは総司に他ならない。
「…話には聞いていましたが、総司君が本当にこの競技に…!?」
「総司君は総てにおいて最強、一切合切問題なし」
不安感を見せる深雪と、絶対の自信を持っていいと言う雫。去年の新人戦での優勝者と準優勝者からの評価が割れているという状態に、やはり総司は色々とイレギュラーなのだと達也は思う。
「…話を戻そう。ロアー・アンド・ガンナーはスピード・シューティングの代表候補とバトル・ボードの代表候補から選べばいいと思うが」
「ペアはそれでいいと思いますが、ソロは高いレベルでのマルチ・キャストの技術が必須です」
「そうか…では、射撃と漕艇のどちらを重要視するべきだと思う?」
「ロアー・アンド・ガンナーのボートはバトル・ボードのボードよりも安定性を見込めるので、射撃技術の方を優先するべきかと」
「なるほど…」
そうして、代表の再選考会は進んでいくのであった…
京都某所…
荘厳な雰囲気の和室に、二人の影が見える。内一人は中年の男性、もう一人は学生とおぼしき少女だ。恐らく親子なのだろうと推測できる。
「…総司様の進化は、止められないのですか?」
「不可能だ、あの男…
「…そうですか」
少女…不二原改め、藤原束は悲しそうな顔を見せる。その表情に、おおよそ悲しむ娘を見て浮かべる物ではない悪辣な表情を湛える男、藤原道長はこう付け加えた。
「諦めることはない、我が娘よ。まだ時間はあるんだ、君があの男の心を奪いたいと願うならそうすればいい。あの北山雫という「その名を口にしないでいただけませんでしょうか!」…女の嫉妬というものは、時の人を殺めかねないものだね…まあいい、所謂略奪愛、君もそう言っていただろう?君が橘総司の心を北山の娘から略奪するんだ」
「私が、あの方の心を…」
「いいかい束?人は生きている限り、諦めない限り、可能性を持っているんだよ」
その言葉を聞いて、束は決心したかのように部屋を出て行く。その後ろ姿を見送った後、襖を開けて夜空を見上げる。
「…束の実力ならば、ただの代表選手ではなくスティープル・チェースを兼任で出場するだろう…ふむ、あの子はたかだか兵器如きに負ける事は無い。予定通り、パラサイドールをもって
魔法科世界の秘匿通信
・選考され直された選手達:メインキャラでは、氷倒し女子に深雪と千代田・雫ペア。男子は総司とモブ二人ペア。他は原作通り。
・原作との相違点:パラサイドールを作成したのが九島ではないので、関係者である藤林がその事に気づけず、軍部も情報の糸口すら掴めない…掴めたとしてももみ消されてしまっているので、パラサイドールの事は、藤原氏しか知らない。
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~