魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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来年が楽しみですね!


スティープル・チェース編 その九

「…そっか、碧ちゃん勝ったんだ」

 

「その呼び方続けてると、沢木先輩に殺されるよ」

 

「ないないw俺の方が強いから」

 

 

四日目の夜、部屋で横になっていた総司に今日の試合の結果を報告する雫。本日の結果はピラーズ・ブレイク、シールド・ダウン双方のソロ男女で一位を獲得するという破竹の勢いだ。三高のエース、一条将輝を抑えた総司の活躍もあり、一高は百点以上離れていた点差は四十点近くまで迫った。

 

 

「…本当に大丈夫なの?」

 

「大丈夫…じゃないかな」

 

 

力なく笑う総司…いや、雫の姿をした総司と言おうか。彼は今、自身の内なる神の人格を抑えるため、気合だけに頼るのではなく、外殻を補強する目的で先程効果が見られた、『仮装行列』を用いた自己暗示による精神強度の底上げを行っていた。この行為を提案してきたのは達也と深雪であった。達也は『精霊の眼』で、深雪は精神干渉魔法に対する深い理解を有しているからの意見であった。

 

 

「にしても不思議…自分自身が目の前にいるのに、貴方を正しく見分けられる。所作が男らしいというのもあるけれど…やっぱり愛の力っていう物なのかな」

 

「雫ちゃん…」

 

「…雫」

 

「え?」

 

「ずっと…今までずっとちゃん付け。他の子に対しても。…私だけ特別扱いしてくれてもいいんじゃないの?」

 

「…それは」

 

 

総司はそう言われてハッと気づかされた。総司は確かに女子に対してちゃん付けする事が多かった。それは施設に入っていた時の癖のようなものだったのだが…

 

 

「ゴメン…雫」

 

「…!謝る必要なんてないよ、総司」

 

 

付き合ってもうじき一年となる二人は今日この日、本当の意味で恋人になれた気がした。

 

 


 

 

「大丈夫ですか総司先輩。生きてますか?」

 

「生きてるわボケェ!」

 

「…それなら、そこで泣いてる北山先輩に言ってあげてください」

 

「…は?」

 

「…総司!」

 

 

ふと総司が気が付くと、横になっている自分を見て軽口を叩きながらも、心配そうな表情をしている琢磨と涙を流している雫が眼に入った。総司が起きた事に気づいた雫が涙の勢いを増しながら抱きつく。その状況に総司は困惑していた。

 

 

「気が付いたか、総司」

 

「達也…?」

 

「…お前、四日も眠っていたんだぞ?」

 

「…何だって?」

 

 

部屋に入ってきた達也からの説明を受ける総司。達也曰く、新人戦の日程は全部終了したとのこと。新人戦はペア競技だけなので短い日程で終了したらしい。ロアガンでは男女一位、シールド・ダウンは男子三位、女子一位。ピラーズ・ブレイクは男子三位、女子一位。ミラージ・バットは検討むなしく二位。四高の黒羽亜夜子は強かった。そして…

 

 

「…優勝できたんだな、琢磨」

 

「当たり前ですよ…貴方の後輩なんだから」

 

 

モノリス・コードは一位。四高の黒羽文弥は双子の姉と同じく強力な魔法師であったのだが…

 

 

~回想~

 

 

「くらえ!ダイレクト・ペイン!」

 

「グヘェ!?」

 

「アバァ!?」

 

「よし!あと一人だ!くらえ!」

 

「こんなん効く分けねえだろうがよ!(気合)」

 

「何だこの化け物!?」

 

「お返しじゃゴラ!『ミリオン・エッジ』!」

 

「やな感じ~!」

 

 

~回想終了~

 

 

と、琢磨がそれを上回る魔法師であったと言う事で、問題無く勝つことができた。因みに誰も見ていないところで文弥が達也に泣きついたとかなんとか。兎にも角にも。

 

 

「明日の競技って何だっけ?」

 

「ミラージ・バット本戦とモノリス・コード本戦の予選だな」

 

「そっか…もう大詰めだな」

 

「体調の方は大丈夫か?」

 

「問題無い…って言って良いか?」

 

 

総司は力なく笑う。やはり全快には程遠いようだ。仕方ないという風に頭をふった達也は、琢磨を連れて部屋を後にした。そして、部屋には雫と総司が残る。

 

 

「雫…心配かけたな」

 

「大丈夫だよ、信じてたから」

 

「今にも泣きそうな顔で言うなよ…」

 

 

目に大量の涙をため込んだ雫が総司の手を握りしめる。その様子に思わず笑ってしまった総司だったのだが、そこでふと気づいた事がある。

 

 

「お前…それ」

 

「…ああ、これね」

 

 

雫の首にネックレスのような物を見つけた総司はそれは何だと質問する。そして彼女がネックレスを外して総司の前に持ってきたとき、総司は驚愕で目を見開いた。

 

 

「…おい、これって!?」

 

 

そのネックレスには、貝の様な物が付いていた。そう、束が所有していたレリック、蓬莱の薬を染みこませた燕の子安貝を用いたネックレスであった。以前、これがとても大切な物だと言っていた束がこのネックレスを手放している事実には驚きしかない。

 

 

「どうしてこれを…?」

 

「…それはね」

 

 

そうして雫は、何故このネックレスを所有しているのかを話し始めた…

 

 

 


 

 

総司が眠って二日目の事であった。

 

 

「…どうも、北山雫さん」

 

「不二原さん」

 

 

後輩の雄姿を見届けた雫は、足早に部屋に戻って総司の様子を見に行こうとしていた。しかしそれを阻む声が。その主は何を隠そう不二原束であり、その表情は重かった。先程ピラーズ・ブレイクに出場していた彼女であったが、優勝者である泉美に完封されてしまい、随分と落ち込んだ様子だ。

 

 

「貴女に、勝負を挑みます」

 

「…勝負?」

 

 

そんな彼女が、雫を睨み付けて提案する。その手には、貝のネックレスが固く握りしめられていた。

 

 

「どちらがあの方にふさわしいかを…ここで決めます」

 

「…私に簡単に勝てると思わないで。言っておくけど、私は貴女がさっき負けてた七草より強いよ」

 

「私だって…!戦闘なら負けないから…!」

 

「…猫かぶりはもうお終い?」

 

「手加減はしない…!あの方は私がもらう!」

 

「悪いけど…総司は私のだから」

 

 

二人の視線が交差し、火花が起こる(気がしている)。…ここに、総司を掛けた戦いが始まった。




魔法科世界の秘匿通信


・総司は今なお神の人格と争いあっている。総司が四日も寝ていたのは、それほどまでに精神世界で追い詰められていたから。



次回は雫VS束の全力勝負です。始めて総司が関わらない戦闘を書く気がする。

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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