作者「…なら、一つだけ質問させてくれ」
シリアス「なんだい?」
作者「…ギャグとコメディ、どこへやった?」
シリアス「…君の様な感の良い物書きは嫌いだよ」
「…やったなはんぞー先輩、森崎、ダイナソー竜崎」
「いや僕の名前は幹比古だ!というかなんだよダイナソー竜崎って!?」
「あの遊○王の超有名キャラダイナソー竜崎をご存じでない…?」
「いや知らないよ!?」
九校戦十日目の夜。見事優勝を飾ったモノリス・コード代表達を中心に生徒達がお祭り騒ぎを起こしていた。前日にミラージ・バットでほのかとスバルがワンツーフィニッシュを決めた事も相まって、他校と大きくポイントを引き離すことに成功したからだ。正直油断しなければ残すスティープル・チェース・クロスカントリーでも問題無く勝てると予想されている。唯一気がかりなのは三高で、三高はなんだかんだで三位入賞をしていたりと、実践に大きく比重を傾けている方針ならではの見事な魔法捌きで一高に追いすがって来た。
しかしこちらには、空前絶後、超絶怒濤の天才CADエンジニアこと司波達也がいる。個々の魔法スペックが高い上に本来スペックダウンしているはずの競技用CADの性能を、普段使いのCADよりも使いやすいと選手達に評価される程の完成度までに調整するその腕前。更に発表されたばかりの新魔法や新技術、使える物は何でも使うスタンスの貪欲さは、他校のエンジニアには真似できない、特に実践を重視するが故に高い腕前のエンジニアが少ない(そんなこといったら一高の方が多分少ないのだが)三高との差だろう。
今日は明日のスティープル・チェース・クロスカントリーにも出場が決定しているモノリス・コード代表の三人を労ると共に、最終決戦前の景気づけをしている真っ最中だ。そしてその場には、つい昨日までダウンしていた総司も元気そうな表情で参加している。相変わらず幹比古を玩具にするのが楽しいようで、達也から「幹比古の体力がなくなって明日勝てなくなるぞ」と若干無理がある説得をされるまで(総司はバカだからそれで納得しかねない)総司は幹比古をいじり倒していた。
「明日のスティープル・チェース・クロスカントリー、全く心配事がないな!」
「ホントそれ!女子の方は司波先輩達に勝てる人なんて他校にいないし、男子の方で強いのはクリムゾン・プリンスぐらいだもんね!」
実に上機嫌そうな声がちらほらと聞こえてくる。どうやら九校戦に参加した一年生の声らしい。よく聞かなくても明日の出場選手達を褒めちぎっており、シンプルな尊敬が窺える。その横で話を盗み聞きし、訳知り顔をしながら目を閉じて何度も頷く琢磨の姿…の隣に見える本当にお嬢様なのかと問いたくなるぐらいはしたなく料理を自分の皿にのせる香澄とそれを咎めている泉美のコンビに上級生達は腹を抱えて笑っていた。最早総司の生み出したギャグ時空に一度飲み込まれた双子はボケとツッコミに早変わりして、一高生達の笑いを誘っていたのだ。
そんな雰囲気の会場を、一歩離れた場所で眺めながら飲み物をたしなむ男が一人。司波達也である。彼は丸で自らをよくある壁のシミですとでも言うかのように気配を消して、他の生徒との交流を断っていた。事実先程からキョロキョロと、友人と話しながらも達也の姿を探して居るであろうほのかの姿が目に入る。因みに深雪は時折達也の方をチラチラ見ていた。これが差だぞほのか。
このように、親愛なる妹様以外が察知できないように忍びの技をフル回転させている達也。そんな彼に話しかけてきたのは、一人のウェイターであった。
「よう、司波達也」
「…名倉零次」
達也は一瞬『安部』と呼びそうになったところを寸でのところで彼の現在の姓に言い直す。このシチュエーションは九校戦の前夜祭パーティーの時にも経験しているため、達也は全く驚いていない。しかし彼は、どうして零次が話しかけてきたのかがよく分からなかった為、彼に質問を行う。
「…俺に何の用だ?」
「お前の耳に少し入れておきたい事があってよ」
「総司は呼ばなくて良いのか?」
「メンタルがボロボロのアイツを呼んでも最悪の事態が起こる可能性を少し上げるぐらいにしかならねえよ」
「そうか、それは避けるべきだな」
二人して壁際を背にして、リラックスする。仮にも以前敵だった者同士、こうやって落ち付かなければ反射で攻撃してしまいかねない。そうしてリラックスを終えた零次は、同じく終えていた達也に話を始めた。
「…四日前、この会場に周公瑾が現われたとの情報を得た」
「何だと?」
「そんな怖い顔するな司波達也。重要なのは、何故奴がこの会場に現われたかだ。確かに奴は去年この九校戦で賭博をしていたノーヘッド・ドラゴンの関係者ではあるが、今回に至ってはそう言った組織の介入を認められたない」
「…それなのに何故奴が現われたかか…単純に復讐じゃないのか?総司を殺そうとして、俺達に妨害されていただろう」
「だがそれは俺も同じだろう?それに少し関わった俺からの推測だが…奴は目的の為なら私情を捨てられる人間のはずだ。となると…」
「別の目的がある、と」
零次と達也は互いに顔を見合わせる。情報がない以上、強者たりえる二人でも策を練ることができない。どんなに対策を講じても、講じた人間が知らない方法をとられてしまえばそれでお終いなのだから。
「…まあ、互いに充分気を付けておこうぜ」
周公瑾は九校戦会場にいる勢力を考えれば大した脅威ではない…ならば警戒しておくだけに留めておこうという零次の考えが、明日から始まる地獄の日々の幕開けになるとは、この二人は気づきようもなかった。
翌日…
誰一人として、今回の九校戦に仕組まれた闇を見つけることができないまま、女子スティープル・チェース・クロスカントリーが始まろうとしていた。今朝から嫌な予感を拭いきれないと言う総司の不安は、そのまま雫にも伝わっていた。だが、元よりスティープル・チェース・クロスカントリーはその性質から怪我をしやすい競技だ。雫や他の一高生が怪我をする危険を感じ取ったのではないか、と雫は結論づけた。
「…本当に大丈夫なの?雫」
「大丈夫だよほのか。ここ数日で結構慣れたから」
ここの二人の会話の意味は、つい先日の雫の提案に由来する。本番を控えた作戦の最終確認の際、雫から『この作戦からは私を外して欲しい。私は一人で先行する』という提案があったのだ。最初こそ花音を始めとした代表団に却下されかけたのだが、雫の強く揺るがない眼差しに承諾せざるを得なかったのだ。
そうして本番を迎えた今日、未だにほのかは心配しているが、雫は自分達の勝利を確信のように微笑んでいた。
選手全員が位置に付く。このスタートラインで一番観客の目を引いているのは、他ならぬ雫であった。他の選手達は腕を構えて体を少し前に落とす、普通の走り出すときの姿勢を取っているのに対し、雫は一人クラウチングスタートの姿勢を取っている。この競技は、長さ4km、幅4kmの人工林を舞台とした競技である。まあざっくり言うと、短距離でもないのにクラウチングスタートの意味があるのかと誰しもが疑問に思った。観客の中には、雫をバカにしてクスクス笑っている者も居る。同じ一高の仲間達さえ驚愕の表情を隠せていない。
ただ、この場でその真意に気づいていた人間は四人居た。
一人はモチロン総司である。彼は目覚めた時に、総司が眠っていた間に彼女が手に入れた力を本人から聞かされていたからだ。そしてその力と同じ事ができるこの男は、雫の体勢の意味を理解していた。それは同じ様な戦闘スタイルを持つ零次もであった。
そして彼女にその力を与えた張本人である束、事前に使用にあたる危険性の有無を相談されていた達也。この四人が、雫の体勢の意味を正しく理解できていた。
そして、スタートを告げるランプが点灯する…!
ドンッッッッッ!!!!
「「「「「はあ!?」」」」」
直後炸裂する爆発音。いや、爆発音の様に聞こえただけの風切り音である。見事なクラウチングスタートを切った雫は、リニアモーターカーもかくやという速度で走り出した。そんな雫の通り道が、爆発の様な風切り音を発したのである。
以前に束から譲り受けたレリックは、雫に圧倒的な身体能力を与えた。その身体能力は、最早総司と同等かそれ以上のスペックをたたき出せるほどに。しかし欠点といえば欠点であるが、雫の体は元は一般的なものであったために、最大出力こそ総司と同等だが、自分の身を傷つけないようにセーブする必要があった。だがそれでも、魔法師にですら不可能なレベルの速度を叩き出す彼女は、ありとあらゆるトラップが反応してから作動する前にその場を走り抜けていた。
「なんだあれは…!?」
三高の一条将輝を始めとした、各学校の人間が、いやこの競技を観覧している全ての人間が驚愕した。これでは丸で、総司がもう一人いるようで…
「「っ!?」」
「…あれは!?」
「戦闘用ガイノイドか…!?」
雫がゴール目前に迫った直後、念動力の様なもので押し返された。数少ない雫の力を知っている者達は、他の人間と比べて早くその事実を受け止めることができた。特に総司と零次なんて、離れた場所で見ているはずなのにタイミングがバッチリであった。
念動力を受けて押し返されるも、自分の速度と押し返された衝撃を空中を数回回転する事で殺し、地面に着地した雫。その眼前には、数にして十六体の女性型戦闘用ガイノイドが立ち塞がっていたのだ。
そして、その存在に最も動揺しているのは雫ではなく、精神がボロボロになっていて余裕のない総司であった。
「馬鹿な…!アイツら、ピクシーちゃんと同じでパラサイトを宿してる…!?」
「ええ、その通りですよ」
「…!?」
そして普段よりも大きく狼狽した様子の総司に、語りかける存在がいた。周公瑾である。その存在を認めた後に総司が周囲を見渡すと、いつの間にか自分の周囲には人が居なくなっていた。どうやら周公瑾が『鬼門遁甲』を使用して総司以外を別の場所へ移動させたようだ。そして雫に集中していた総司は、その事に今の今まで気づくことができなかったのだ。
「お前、何を知っている…!?」
「…お教えしましょう、アレは『パラサイドール』。パラサイトを軍事利用する目的で開発された兵器です」
「…そんなものが作られていた事は、この際どうでもいい。なんでそんな存在が九校戦に?」
「目的ですか?…司波深雪と北山雫を殺す為ですよ?」
そう公瑾が発した直後、その腕を掴んだ総司は公瑾を山の方へと投げ飛ばした。ものすごいスピードで飛んでいく公瑾を、総司は高く跳び上がる事で追いかける。その過程で周囲に貼られていた『鬼門遁甲』が解除される。公瑾の完璧な術が解けたとしても、他の人間達は誰一人として気づかなかったが、結界に高い感受性を持つ零次だけがそれを知覚した。そして総司の気配が会場の外へと向かったのも察知することができたのだ。
「(総司…!)」
零次は焦りを覚えて走り出す。総司の物語が、終幕へと動き出した…
夏の風物詩たる蝉の鳴き声がうるさい森林。喧しくも、夏の静寂とも呼べるこの空間で、突如激しい激突音が鳴り響く。
「グウッ…!」
ものすごい勢いで飛んで来た公瑾は、地面に激突し大ダメージを受けていた。そしてだんだんと近づいてくる風切り音。それがだんだん近くなり、やがて人の影が見えるようになる。そしてその影の顔が認識できたとき、その顔は丸で悪鬼羅刹と言っても過言ではない形相であった。明確に激怒している総司は、拳を振りかざして公瑾の頭の横の地面を殴り抜く。尋常ではない程の轟音と共に山が揺れる。それを至近距離で耳にしてしまった公瑾の右耳からは血が出ていた。鼓膜が破れたようである。
そしてダメージと音の衝撃で動けない公瑾の胸ぐらを掴んだ総司は、激しく彼を問いただす。
「説明しろ!雫と深雪ちゃんを殺すだと!?ふざけやがって!」
激しく恫喝する総司。その総司を見て公瑾が力なく、しかし確かに嬉しそうに笑みをこぼす。
「…何がおかしい!?」
「…ックックック、ここまで神がお膳立てをしてくれるのならば、『パラサイドール』など必要なかったなと、自分達の生き急ぎ様に笑っていただけです」
「どう言う意味だ!」
意味不明なことを言い出す公瑾に総司が今にも胸ぐらではなく首を掴み直して、そのままへし折りそうな勢いで問う。
そして公瑾は、丸で勝利宣言をしているかのように堂々と言い放つ。
「我々はあなた方を追い込み、意図的に世界を危機にさらそうとしていましたが…その必要はなかったと言うことですよ!」
「っ!?っく!」
瞬間、公瑾が点滅しながら光り輝く。総司はその光を直に見てしまった。そして彼は…
「う、があああああああああ!?」
頭を抑えて苦しみだしたのだ!
公瑾が今し方発動したのは『
普通どちらとも使えるのであれば、前者を使うのが当然だが、自身に対する直接的な干渉は異能で無効化できる総司に対しては、抵抗力の低さから光波振動系の方を選択するのが効果的である。事実、過去に公瑾からこの魔法を受けた総司は異能を使えなくなり、束が発動していたリミッター解除の『言霊』を無効化するのに異能を使えなくなっていたのだ。
今回も催眠効果を十全に発揮した『邪眼』は、総司の心に絶大な隙を造り出した。その影響もあってかしばらくすると、総司に更なる異変が起こり始める。作られた隙を逃さずに神の人格が行動を起こし始めたのだ。
総司の体が、丸で電球が点滅するかのように変化をくり返し始めた。その姿が雫のものに変わったかと思えば、すぐさま総司の姿に戻る。これは以前乗っ取られそうになった総司が、『
ともかく目が痛くなるほどの頻度で変化を繰り返している総司の肉体。そしてやがて…その姿は総司のままで変化が収まった。
これは、勝ったと言う事にはならない。以前の総司は勝利した後、その後しばらくは雫の姿を取ったままであった。つまりは防御を固めるという意味で『仮装行列』を使い続けていたのだが…その為の『仮装行列』使用が無いと言うことは、それすなわち守る必要がないと言うことである。
結論から言おう。総司は…
「…ふはは、はははははは!遂に!神がこの世に降臨した!はははははははは!」
森の中に、公瑾の高笑いが響く…!
「総司…!」
遅れてやってきた零次は、爆音と笑い声を頼りに二人の元までやって来た。そしてその眼前に広がっていたのは…
「…こ、これが本来の力…!さすがは、神と呼ばれる、存在、です、ね…」
完全に消滅した公瑾を見て、目の前の総司の様な
「まさか…エイドスを変更して、周公瑾が
思わず出してしまったその声を聞いて、総司の様なナニカ…いや神が、こちらに掌を向けてきた。その瞬間に零次は死を覚悟する。自分も公瑾と同じように、この世には居なかったと書き換えられると思ったからだ。しかし、変化は一向に訪れない。覚悟してつぶっていた目を開いた零次。眼前の神は、どこか人間味を持ちながら首を傾げている。どうやら何かの不具合があったらしい。そして神は、零次に目を向けた。
「っ…!」
「…」
あまりの圧に動けなくなる零次。そんな零次には興味が失せたのか、神は踵を返して森の奥へと消えていった。
「…っはー!っはー!」
重圧から解放された零次は、膝をついて肩で息をする。自分達が、強大すぎる敵と戦わなければならない事実を、受け止める事ができなかった…
「…!総司!?」
パラサイドールと激戦を繰り広げ、十二体のパラサイドールを活動不能にした雫は、
女子の結果は、雫が一位で深雪が二位。花音が三位で、ほのかが五位。スバルは八位であった。
だがその後の男子スティープル・チェース・クロスカントリーで、選手登録されていた総司が時間までにやってこなかったと言う事で、棄権扱いとなってしまう。結果として優勝は将輝に譲ってしまったが、二位から四位を一高モノリス選手陣が独占したことにより、総合優勝を獲得した。
かくして九校戦は終了し、生徒達は日常へと戻って行く。そんな中で…
「そう…じ…」
二人で住んでいたはずの部屋の中、愛する人の帰りをただ待つ雫の頬には、彼女の名前と同じ物が目から落ち、カーテンから入ってくる月光で輝いていた。
魔法科世界の秘匿通信
・世界を危機にさらす事で神に本気になってもらおうとしていた公瑾達だが、元から神が本気で総司を乗っ取りに掛かってたので、後一押しの援護をするだけで落ちた。
・以降、総司は神と呼称される。
次章予告…
「総司を探し出して、ボコボコにしてでも此処に連れて帰ってくるぞ!」
「「「「応!!」」」」
総司を取り戻すため動き出す一高生達。
「我らが神のご意向のままに…!」
「こいつら、伝統派か!?」
立ちはだかる伝統派の魔法師軍団。
「彼のお方こそ、世界を支配するにふさわしいのだ…!」
「市民がおかしくなってやがる!?」
増え続ける信者達。
全ての障害を乗り越えて…
「…敵性体は殲滅する」
「戻ってきて!総司!」
「総員!北山を援護しろ!」
彼らは総司を取り戻す事ができるのか?
最終章、『妄執の
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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