「…なんて、少し意地悪でしたね。謝罪します」
「謝る必要なんてない。だって、事実なんだから…」
開口一番で罵倒を飛ばした…と思えば即座に訂正し謝罪をする束。そんな束を見て、より一層表情を暗くする雫。それもそのはずだろう、彼女は総司を神から守り切る事ができなかったのだから。雫の重い表情で更に空気が悪くなるが、此処で声を上げる人物が一人。
「そんなへこたれても奴は戻ってこないぞ北山雫。…取り戻したいなら、お前が自分で取り戻すんだ」
「私が…?」
「零次、お前何を知っている?」
零次の放った言葉は一同の下がり気味だった顔を上げさせる。その上がった顔は説明を求めるように零次の方を向いている。だがその零次は隣の束に目をやった。どうやら説明は束が行うようだ。
「早速本題に入りますが…総司様を取り戻す策がございます」
「それは本当!?」
「っ!?」
「雫!?」
「…っ、ごめんなさい」
束がそう言った瞬間、雫が泣きそうな表情で束の肩を掴んで必死に本当かどうか問う。その強化された身体能力を持った雫の速度を、此処で初めて体感した束はかなり驚いた様子だ。それを察したほのかから雫へ制止の言葉が投げられる。
ほのかからの言葉で我を取り戻した雫は、束へ謝罪の言葉を掛ける。雫はやはり、思い詰めていると考えて良いだろう。
「…話を進めても?」
「頼めるか、不二原…いや、藤原殿」
「十文字君…?」
「七草、彼女はただの古式魔法師ではない。彼女の家系…藤原家こそ、十師族を創設した一族の一つだ」
その事実に真由美を始めとした一同が驚愕を示す。唯一知っていて協力していた過去がある零次だけはシラッとした顔をしている。穏やかな笑みをしたままの束は、周りの様子など気にせずに話を続ける。
「変質してしまった総司様ですが…どうやらここまでの状況を見ていると、一部あの方の意思は残っている様子…なればこその勝機です。仮にあの方が神に…いえ、あんなおぞましいプログラムのなれの果て、神と呼ぶにふさわしくない。そうですね…仮に偽神とでもいたしましょうか。
奴に総司様が完全敗北してしまった時は使えない策ですが…聞いていただけますか?」
「勿論だ」
「仲間を救える可能性があるなら、いくらでも試してやるぜ」
「結構、では…北山雫さん?」
「…何?」
「貴女には、『かぐや姫』になっていただきます」
全員…事情を知っている零次と、言葉の意味を理解した達也以外が、その発言に首を傾げた。
束は位置を変えて、ホログラムデバイスを展開して、詳しい解説を始める。
「…さて、私の家名と『かぐや姫』という単語で、何かを連想できた方が居るのではないでしょうか?」
「…君が言っているのは、『かぐや姫の五つの難題』の事だろう?」
「流石は一高の秀才殿、頭の回転がお早いようで」
達也の返答に満足そうに頷く束。そのまま、彼女はかぐや姫の話を深掘りしていく。
「ここで皆さんに質問ですが…五つの難題と、かぐや姫における藤原の名前の意味を理解していらっしゃいますか?」
その問いかけに、ちらほらと声があがる。五つの難題については、「かぐや姫が結婚を申し込んできた五人に課した難題、あり得ない代物」と、藤原に関しては、「蓬莱の薬をもらうも富士山の頂上で燃やしてしまった」と。その返答に頷きながら、束はこう言い放つ。
「皆さん、不正解です!」
「…そうなの!?」
「ええ、そうなのです。俄には信じがたいでしょうがね?」
驚く一同を眺める束の表情はイタズラが成功した時の悪ガキのそれになっていた。雫と零次以外のメンバーにも素を晒し始めたようだ(もっとも以前戦闘している時は猫を被ってなかったから今更だが)。
「五つの難題を五つの難題たらしめた理由は、存在するかどうかすら疑わしい、入手困難な物品だったからではないのです」
「じゃあ一体…」
「簡単な事です、五人ともと結婚したくなかったかぐや姫は、決して献上できない物を要求したのです」
「献上できない…っ!もしかして、かぐや姫が難題を課した時、かぐや姫はその物品達を所有していたと言う事!?」
「その通りです七草のご長女。既に有している物を、どうやって他者が献上できるのでしょう?まだ複数個ある可能性がある物品ならまだしもね」
そう、伝説においてかぐや姫は五人からの申し込みを断るべく、蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、仏の御石の鉢、竜の首の玉、そして燕の子安貝という五つの難題を課したが、実際のところは全て所有していた…と言う事だ。よしんば手に入れたとしても、五人はかぐや姫に遅いと一蹴されてしまっていただろう。
「…まさか、このネックレスの貝って」
「御明察、まさしくそれは五つの難題の一つ、燕の子安貝を用いて作られたものです」
雫が首から提げているネックレスを眺めながら、意識せずとも口を開いてしまう。まさかお伽噺に登場する幻の物品を、自分が手にすることになるとは思っていなかったからである。その驚愕も冷めぬうちに、束が話を続ける。
「そして、平安時代からそのネックレスが残り続けている理由として、蓬莱の薬の存在が関わってくる」
「蓬莱の薬って、飲んだら不老不死になるってあれか?」
「…なるほどな、不老不死を授ける薬を、恐らく五つの難題とされる物品達に使ったのだろう。それによって、不老不死ではなく不朽不壊の属性を得ることになったと」
「…司波さんは頭が良すぎてつまらないですね」
達也がレリックの製造された手法についての心当たりを述べると、全く以てその通りだったのか束は面白くなさげだ。
「雫が持っているネックレスの事を考えれば、残りの難題もレリックなのですか?」
「その通りです司波深雪さん。最も、仏の御石の鉢と蓬莱の玉の枝は合体していますがね」
「…どういう意味だい?」
「五つの難題と蓬莱の薬を素材としたレリックは、そのネックレスのように加工されているのです。火鼠の皮衣はマントに、竜の首の玉は指輪に、そして…仏の御石の鉢と蓬莱の玉の枝は、石剣の刃と柄に加工されました」
「石剣…?」
「一応仏のと付いている物品を武器に転用したんですか…?」
「私に言わないでくださいよ。加工したのは当時の藤原家の人間です、私に責任ないです」
そう言うなら平安の時代に皮衣をマントに加工するって、マントを何処で知ったんだ?って感じなんですけどね(作者のガバ)
「それで?それを使えば偽神を倒せるの?」
「ええ、総司様の異能を使われないという前提がありますがね」
「不朽不壊の属性が総司の異能でなかったことにされる可能性があるのか」
「ええ。ですがその可能性がなければ、人を神と同等の力を与えるでしょう」
その言葉を聞いて、雫の目に覚悟が灯る。彼女は今自分が人外に至る決意を固めている、総司を取り戻した後に彼と共に歩む事ができなくとも…(因みにパッシブ型のレリックは子安貝のネックレスだけで、他の難題を装備しても外したら効果が消えることを知るのは後の話である)
「そのレリック達はどこに?」
「勿論、京都の藤原邸です」
ニッコリと質問を返す束。その返答にみんなが「あっそっかぁ…」と言いたげな雰囲気を醸し出しかけて…一つ気づいた。
「…総司が今居るのって、京都だよな?」
「そうですね」
「…藤原邸の場所って公表されてる?」
「されていないですし、魔法師も権力で雇うのが基本で家飼いの魔法師は居ないので探知はされていないはずです」
「それは良かったが…今から行けば?」
「偽神の配下、もしくは本人からの攻撃を受けますね」
…一瞬の静寂が場を支配した後、束以外全員の「結局それ、突撃って事じゃね?」というニュアンスの叫びが響いた。
えー、ご報告です。この章は本作オリジナルの章なので、執筆が遅れます。と言うのも、今までのペースで書けていたのは、足りない部分の補完は原作を見ていただければ解決する範囲だったからです。ですがこの章は一から百まで自分で書かなければならないので、ペースが落ちます。落とさない様に頑張りはしますが、期待しないでください(白目)。第一温泉旅行の話を書けなかった時点でまだオリジナルの話を書く経験が足りないのは致命的に明らか。
もっと説明しろ!意味が分からねえんだよ!という方は、質問に書いていただければその次話の前書きに説明を付け加えたり、ストーリ-に大きく関与する事には話の修正等行おうと思います。
これからも頑張っていきますので、ご愛読よろしくお願いします!
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~