どれくらいかと言いますと、総司君一切ふざけません。やばくね?
ほぼ総司君の過去のちょこっと説明みたいな内容なので、次回からの九校戦編までの繋ぎぐらいで見てください
眠い
ここはある住宅街の路地裏…
「…はい、こちら『黒』。対象Aを視認しました…いかがいたしましょうか」
『…周囲に人が少なくなってから仕掛けろ。奴は拳銃ごときでは殺せない。その上直接の魔法攻撃も通用しない。その点を忘れるな」
そこにいた人影は少女と仲睦まじく話している男、橘総司を見つめながら電話越しの相手に問う。すると相手は彼を始末しろと命令するではないか。
「しかし、どうやら対象は女性と共に歩いています。人が少なくなろうと、女性に気づかれるでしょう」
『…ならば、その女とやらを
「承知いたしました」
『期待しているぞ』
そう言って人影と相手の電話は切れた。
ここには人影がいる…しかも十人はくだらないだろう。そんな彼らはたった一人の人間を殺す為に一旦散り散りになり機会を伺うことにしたのだった。
「(やっぱ居やがるな…鬱陶しい虫がわらわらと…)」
そんな彼らの失敗は標的である総司にそもそも視認されていた事だろう。明らかな殺意を持った視線を受けたことに気づいた総司は、エイドスを読むことでこちらの様子を伺っている十数名の気配を認識していたのだ。
「(ここで一番不味いのは雫ちゃんが狙われる事だ)」
コソコソこちらの様子を観察するだけですぐに仕掛ける事が出来ない…と言う時点で彼らは十氏族レベルの強者ではないことは明白、総司はそんな雑魚に負けるとは微塵も思っていないし、事実負けることは無いだろう。
だがここでの問題は隣で残り少しとなったクレープを相変わらず美味しそうに食べながら歩を進めている同級生、北山雫だ。
彼の勘はこの少女は確かに優秀な魔法学生なのだろうとは思っている。だがレベルが違いすぎるのだ、恐らく敵の殆どが魔法高校に入学したてでそこまでの技量を持ち合わせていない雫なぞ息をする間に殺せてしまうだろう。むしろ彼らを大した手間もかけずに殲滅できるだろう総司がおかしいのだ。
「(だがここで別れても狙われるだけか…)なあな雫ちゃん!」
「どうしたの、橘君」
「クレープを食べ終わったらさ!ちょっと川沿い行ってみない?閑静で爽やかな日常って感じがして気持ちいいんだ」
「ふーん、そうなんだ。確かにここからすぐに行けるね、分かった」
ということで総司は雫とのデート(総司は冗談だと思っている)を続行することにした。
彼女を家にまで送り届ける事も考えたが、こんな昼間から家に連れて行ってなど怪しまれること請け合いだ。だが彼女をみすみす一人にしようものなら一瞬で攫われて人質にされてしまうだろう。
それならば自分が守った方が…と判断した総司は雫とのデートと同時に敵対者の排除を同時に行うことにしたのだった。
「対象A、河川敷に移動。対象は女性に石を投げる遊びを教えているようです」
敵の一人は彼を監視しながらそう報告する。この時点でジェネレーションギャップを感じる、発展した近代の人間らしく昔の遊びを…『水切り』を知らないようだ。
そんな彼の視線の先には雫に手本を見せ、やってみてよ!と催促している総司がいる。ところで、彼はまだ若手だ。彼らの
今回総司を狙っているグループにはそのほとんど全てがその程度の実力の魔法師達だった。
彼はこの任務に対して不満を持っていた。何故たかだか一人の学生の命のためにここまでの人員を割くのか、割くとして何故精鋭を送り込んですぐに済ませてしまわないのか。
その実情は先程電話をしていたリーダー格の人物しかこのチームに知る人間はいないのだが、人員を割くのは総司を無視する事ができないから、精鋭を送らないのは総司に殺されてはたまったものではないからだ。
ともかく彼はこの任務に不満を覚えている。故に真面目にはなれなかった。
総司達が移動しようとしている。彼も渋々追跡をしようとして…
「っ!?…え…?」
ガンッ!と言う音と共に彼は後頭部に衝撃を感じる、だがその原因を知ることは彼には出来なかった。
なぜなら、彼はここで出血多量により死去してしまったのだから…
「へへーん、どうよ!なんか風流って感じしない?」
「うん、東京にもまだこんな場所があったんだね…」
クレープを食べきった雫と共に総司が来たのは近所にある川沿いだ。そこには21世紀初頭のような所謂河川敷と呼ばれるものが広がっていた。当時と違う点と言えば、サッカーのコートのように芝が綺麗に整えられている点だろうか。
当時の情景を保存するために残されているのだろうか…などと雫が考えていると、総司がいきなり河川敷の下の方に降りていくでは無いか。急いで追うと総司は川に流れてきたのだろうか、大きめで平べったい石を手に取っていた。
「なあ雫ちゃん、『水切り』って知ってる?」
「…何それ?」
「こうゆう遊びだよ…!ふっ!」
そう言うや否や総司は手に取る石を川に投げた。すると石はそのまま沈むのではなく、数回バウンドしてから落ちた。
「…なるほど、このバウンドの数を競う遊びなんだね」
「あー…まあいいやそれで。でさ、雫ちゃんもやってみようよ!」
「私が?橘君には絶対負けるけど」
雫の頭には記憶に新しい総司の驚異的な身体能力を思いだし、自分では勝てないと主張する。
「そういうのじゃないんだよ、せっかく休みに遊んでるんだ。一回ぐらいやってみねえ?」
「はあ…別にいいけど…」
そう言った雫は総司に手渡された石を投げる…が、やはりか石はバウンドする事すら無くすぐに沈んでしまった。
「ね?無理でしょ?…橘君は本気でやらないの?」
「え」
「…あっ」
この光景を薄々分かっていた雫はそもそも先程総司が全力でやらなかったことに疑問を呈し、彼からの呆けたような声で我に返る。
この男は女性のプライバシーを暴露するような男だが、流石に危険をわきまえてセーブしていたことに考えついた。「なんでもない」と雫は言おうとして…
「全力でいいの?」
自身の失言と、既に手遅れであることを悟った。
雫が言葉を紡ぐ前に既に総司は投球姿勢に入っていた。そして…!
「イクヨー」
と間の抜けた声で、投げてしまった!
途端に巻き起こる暴風。それがこの投球の威力を物語っていた。果たしてその石は沈むどころか対岸で爆発でもしないかと不安になる雫。しかし
「…あ」
「…川に全然投げられてないね」
「いや、今のはニコニコ本社を攻撃するのが目的だったから。わざと外したから」
「ふふっ、何それ」
雫の言うとおり、総司が投げた石は川にバウンドどころか空高く飛んで行ってしまったのだ。
まるで外したことを恥ずかしがるように言い訳をする総司に雫は思わず微笑してしまったのだ。
因みに、総司の発言は9割本当の事である。彼は本当に攻撃目的で投げたのだ。対象はニコニコ本社では無く、背後で自分達を監視していた刺客の頭部にぶつけるため回転をかけてブーメランかのように石を操ったのだ。
その後も総司は雫と付近を散策しながら刺客を的確に排除していた。そして時刻は6時だ。
「…?あっ」
「どうしたの雫ちゃん」
「お父さんが、『無事なのか!?誘拐されてなんか居ないだろうな!?』って」
「ハハハ!雫ちゃんはお父さんに愛されてるね!少し羨ましくなっちまったよ」
「橘君は愛されてないって思ってるの?」
雫が父である北山潮からのメッセージを見せると総司が悲しそうな表情を浮かべた。自分の知る限りではこの男はこんな顔をする人物では無いと思っていた雫は聞き返した瞬間口を塞ぐ。何か言いたくない事情があるかもしれないのにそれを無責任にも聞こうとしてしまった自らの失礼を悟ったからだ。
「別に思ってないよ。でも、一目会うぐらいは…」
「…え?」
そして総司は自分の過去を振り返るように話し出した。何故こんな話を出会って間もない人物に話そうと思ったのか、総司自身にも分からない。ただひとつ、今日一日で彼と彼女の距離は確実に埋まっていた事は確かだ。
「…俺さ、孤児院出身なんだよね。まあ、それだけで会いたいなんて思わないのかもだけどさ」
「夢で見てきたんだ。小さいときからずっと、赤ん坊を抱えて泣きながら孤児院の前にその赤ん坊を置いていく二人の姿を…多分俺の両親なんだろうな」
「両親の夢を見たってことは顔は分かってるの?分かってるなら会いに行くことぐらいは…」
「勿論調べたよ…二人とも俺が生まれた年に、なんなら俺が孤児院に引き取られた翌日には死んでいたんだ」
「そんな…」
「だから一目会いたいなんて間違ってるんだ。それでも会いたかったなぁ…って気持ちになるんだよ、何故だかな…」
「…」
雫は立ち上がり、総司の方を向いて問いかけた。
「ねえ、君のこと、名前で呼んでもいい?」
「え…あ、ああモチロンだとも!むしろ推奨だ!」
唐突な質問に総司はいつもの自分を努めて維持する。そもそも今日会ったときから若干テンションが低いのは気づかれているだろうが。
「総司君」
「お、おう?」
「私達、『友達』になろう」
「え?それはこの間なっただろ?てか今までも友達じゃ無かったのか!?」
驚愕した様子で驚く総司。その様子に雫は笑みを浮かべながら「違う違う」といいながら言葉を続けた。
「…今日の総司君見てたらね、学校での君は無理をしているように見えたんだ」
「別にそんなことは…」
「君自身はそう思っているのかもしれない。けど、私にはそうは思えないの」
「だからさ、本当の意味での『友達』になりたい。私の前でぐらい、無理をしないで欲しい」
「…なんで雫ちゃんがそんなこと言うんだよ。君にとってのメリットなんてないじゃないか」
「そうだね、私にも何でかは分からない。…なんとなく?かな」
小首を傾げながらそう言った雫に総司は笑い出してしまった。
「なんだよそれwおせっかいにも程があるぜ!」
「…でもありがとう。そうだな、本当の友達か…今の俺には必要なのかもな」
そう言って総司は手を差し出した。
「よろしくな、雫ちゃん。俺の最初の『友達』!」
「…!うん、よろしく」
二人はそう言うと固い握手を交わしたのだった。
そんな時である、総司はやや後方からの魔法発動の兆候を察知した。どうやら雫との話に意識を割きすぎて敵の接近に気づくことができなかったようだ。
その兆候は魔法師である雫にも察知できた。驚愕で動きが止まってしまった雫を動かすには声では間に合わないだろう。
そして魔法が発動し…!
「っと!危ねー!」
「…え?え?え?」
総司はその場を雫を抱えながら飛び離れ、回避することに成功した。
しかし雫は魔法を打たれたことにもだがそれ以上に今の状況に困惑していた。
総司の抱え方は、所謂『お姫様抱っこ』というものだ。状況について行けていないが、雫の顔には赤みが差す。
「雫ちゃん!家どっちらへん!?後簡単なやつでいいから慣性制御魔法使える!?」
「えっと、家は……にあって、本当に簡単なものなら…」
「よし!ならさっそく使ってくれ!」
言われるがまま雫は魔法を発動させ…その瞬間、雫の視界が目まぐるしく変化し始めた。
訳が分からないと言った表情の雫だが、しばらくして総司が自分をお姫様抱っこしながら走り出しているのだと理解した。
以前にも語ったが、雫の家から総司の家がある地区は近くは無いが遠くも無い微妙な距離だった。故に総司のスピードは圧倒的なものを維持しながら走り抜け、無事雫の家がある地区に着いた。
「よし!雫ちゃん、今襲われたことはダレにも言うなよ?無論家族にもだ、いいね?」
思わず即座に首肯してしまう雫。その反応に満足したのか総司は端末を取り出すと、どこかに電話をかけようとしている。
「魔法の不正使用については心配するな。俺の知り合いに頼んでなんとかしてもらう。だから早く家の中に!」
「う、うん。また学校でね、総司君」
「ああ、またな!…もしもし、
そう言って総司の姿は見えなくなった。先程の加速は明らかに手加減していたものだったらしい。
そんなあまりの急展開についていけなくなった雫だが、彼が見えなくなったときにふとつぶやいた。
「『友達』じゃ足りなかったかも…」
自分の言ったことに驚愕する雫。この後彼女が自分の気持ちに気づいたのは数時間後ベッドでくるまりながらだった。
「クソッ!速すぎる!」
先程雫を狙っていたこの男。この男は今回総司を狙っていた一団のリーダー的人物であり、総司の正体を唯一知っている者でもあった。
「ゴッメン~!速すぎた~?だから~、お前を迎えに来てやったよ」
「っ!貴様!」
上から振ってきた声に男が顔を上げるとそこには今し方逃げられたばかりの総司が立っていた。あの一瞬で戻ってきた総司の身体能力はやはりすさまじい。
そしてどうやら総司はかなり腹が立っているようだ。それはそうだろう、彼は最近になって知った両親の敵の組織、目の前の敵はその組織の一員であったからである。
「マジでお前らウザいんだよ。俺の両親だけでなく、友達まで手にかけようとしやがって…」
「フン!ならば貴様自身の生まれに文句を言うんだな!この化け物が!」
「化け物とかさ、言われ慣れてるけども、お前達
どうやら総司は敵が化け物と呼称するのは自分ではないと感づいているようだ。
「そりゃ、俺の血筋が繁栄しちゃお前達の不利益になるのかもしれないが、そんなこと知った事じゃねえ。そんなに利益が心配なら、将来の不安にならねえように、今すぐここで消してやるよ!」
「ぐっ!来るな!やめろ…!う、うわああああああああ!」
そうして総司は相手の頭を掴むと力を込めて…グチャッと言う音と共に、リーダー格だった敵は死んでしまったのだった。
魔法科世界の秘匿通信
・対象Aというのは総司君の本来の名字をイニシャルとするとAになるため。
・学校内では自分の悩みを棚上げしてふざけているので、オフだと割とテンションが低い
シリアスになってしまった…?
ギャグしか書けない、彼女いない歴=年齢である作者には、シリアスなデートなんて無理だったよ…
因みにこれ朝の五時に起きっぱなしで書いてるので後半文章がおかしくなってます。
なら少し休めよ!って話なんですが、私思いついたら一気に書かないとすぐに忘れるので…
次回から九校戦編だし、総司君は確実にふざけるので期待してください。
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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