「…なんだよ、あれ」
大阪の空、巨大な竜と見紛う大蛇『騰蛇』。突如として出現したその存在に対応するために出撃した警察は、一様に目を見開いていた。そんな強大な存在が、たった一人の人間と戦っていたのだから。
「『断層結界』!」
「GYAAA!!」
「チッ…やっぱそんな上手くはいかないか…!」
「…あんなのが、俺たちと同じ人間なのか…?」
対象の位置に結界を張り、その効果で疑似的な切断を行うこともできる結界術『断層結界』を放つ零次。だが、騰蛇の干渉力に阻まれて騰蛇の体に結界を生成できず、切断することはできなかった。お返しと言わんばかりの火球を平然と多重展開した結界で防御し、ついでに生成した貫通力を持つ結界を放ち距離を開けることに成功する零次。
そんな上位の存在を見た警察は呆然とし、本来の役目である住民の避難誘導すら行えずに…
「『さっさと仕事しろ』!」
「…?そうだ、こんなとこで道草食ってる場合じゃねえ!早く市民の方々を避難させるぞ!」
そんな無能警官たちだったが、どこかから聞こえた声に自分のやるべきことを思い出したかのように避難誘導を開始する。その声の主は、避難誘導されている方向とは真逆方向に向かって走っていた。
「ちょっと!ここから先は危険です…!」
「急いでるの!『通して』!」
「…どうぞ!お気を付けて!」
勿論仕事に忠実である警官に止められるその主…束は、再び『言霊』で警官たちに指示を送って自分を通させるように命じる。そうやって開いた道を再び走っていく。
『束、今どこに居る!?』
「今第二チェックポイントの直前辺り!」
『OK、もうしばらく耐久しておくぜ』
束の耳元に巻き付けられた紙が淡い輝きを放ったかと思うと、そこから絶賛戦闘中の零次の声が聞こえてきた。零次が束に持たせた遠隔通話用の式だ。今しがた束の発言した第二チェックポイントは何かは未だ定かではないが、零次がそれを待っているようなので、どうやら騰蛇を倒すための策を弄しているようだ。
束はチェックポイントにたどり着き、何やら文字が書かれている札に、
「…耐えて、零次!」
束は次なるチェックポイントに向けて走り出した!
「問題!西城レオンハルトは千葉エリカと同じ風呂に入った事がある!〇か×か!」
「「はあああああああああ!?」」
「えええ!?二人ってそんなご関係だったんですか…!?」
「確かにいっつも二人で居るな…とは思っていたんだよね」
「お前らって所謂喧嘩ップルってやつだったんだな!」
「「ちがーう!!!」」
なんだ…この空気感の違い…?
第一高校の敷地内に侵入した、自身を『太陰』と呼ぶ謎の老婆の繰り出す問題に、一同は苦しめられていた。
現在ターゲットになっているレオとエリカの顔は真っ赤に染まっている。みんなが一様に二人をからかうが、太陰という存在と十二天将の強大さを理解している幹比古には、それは後々自分の首を絞める行為だと理解していて混ざることはなかった。
「(…こんな、本人たちぐらいしかしらない情報をどうやって抜いているんだ…?僕たちの頭を覗いてでも居るのか…?)」
「それで?結局〇か×かどっちなんだよ?」
「そ、それは…」
「そんなの×に決まって…」
「ちなみに不正解だと死ぬぞ」
「「〇ー!!」」
「「キャアアア!!」」
「「フゥゥゥゥ!!」」
え…風呂入った事あんの?と思われた方もいるだろう、一つだけ言っておくとこの二人は原作より仲がいいぞ、ただそれだけは言っておきます(目逸らし)。
そんな男女問わず騒ぎだす一同の中、幹比古は太陰の口の上手さを理解する。
「(…太陰は十二天将の中でも吉将に分類される。誰かを呪殺したという伝承はないはずだ。つまり今の発言は完全なるブラフ…)」
そう、幹比古が感心しているのはこのブラフを平然と言ってのけ、それを嘘だと疑わせもせしないその話術だ。
事実レオとエリカは、太陰の「間違えたら死ぬ」という発言に迷うことなく正しいことを口走った。変な質問をされて動揺しているというのもあるだろう、だがそれだけでいくらあの戦闘以外はポンコツ気味の二人でも引っかかることはそうないはずだ。
「(…そもそも、何をすればこのクイズが終了するのかも教えられずに始めさせられた。最大限に警戒していたにも関わらず、この状況まで持ってこさせられた…恐ろしい話術だ…)」
どうにかしてこのオホーツクババアの知力を突破できないかと幹比古は頭を悩ませる。だが、そんな抵抗を智恵の神が見逃すわけはなかった。
「次の問題じゃ!吉田幹比古は柴田美月の胸に顔を埋めたことがある!〇か×か!」
「うわああああああ!?」
「きゃあああああ!?」
「「FOOOOOO!」」
幹比古の考えを乱すべく、幹比古を題材とした問題を繰り出す太陰。これにより盛大に動揺してしまった幹比古は思考が中断させられてしまい、未だその打開策を出すことはできなかった…
橘邸にて…
「ひゃははははは!楽しー!」
「おい双葉!なんでもかんでも爆破してんじゃねえ!」
「クッソ、音を誤魔化すので精いっぱいだ…!」
「本当に面白い若者たちじゃのう…」
戦場を広大な庭に変えた一行。メイン火力の双葉が若干暴走気味に爆破魔法を使用し、市ノ瀬が爆破の火力以外ポンコツの双葉の肉体を操作して機動力を補助、そして偽装に長けた久豆葉がその戦闘音を誤魔化すという流れ。そしてその爆破全てを防ぎきっているのは十二天将の主神『天一貴人』。戦闘力こそは騰蛇に劣るものの、決して侮れない強力な神である。
「…あの人、全然爆死しないー」
「殺すな…というか殺せるのかあのジジイ…?まあいいか」
「よくないよ…あの人って神なんでしょ?何してくるか分からないし、正直逃げに徹するのきっつい…」
「…ホホホ」
双葉は一条を除く日本の魔法師の中で、最も高い火力を出せる魔法師の家系だ。しかし、水を爆弾に変えられるような強力な『爆裂』と違い、無機物を限定して使用できる双葉の『爆衝』は、何故かあまり評価されなかった。どう考えても最強レベルの魔法であるにも関わらず、『数字付き』から落とされた双葉家。どうやら裏に巨大な権力者が潜んでいるとの情報が…
だがそんなこと双葉本人にはどうでもいいことだ。そもそも彼女は十師族の立場を、魔法師としてちやほやされるアイドル的な立ち位置だと思っているので、彼女の十師族への感情は他の『数字落ち』の者と違う異質な物だったりする。
それはそれとして、彼女は未だに天一貴人の周囲に『爆衝』を使用し続けているが、一向に天一貴人にダメージが入っているような様子はない。
「…そろそろ、決着をつけるとするかの」
「「「!!」」」
そう天一貴人が呟いたかと思うと、彼が三人に指を向けてきた。その指に眩い程の光が収束する。三人は、特に回避のために魔法で全員の動きをアシストしていた市ノ瀬は、その攻撃は不可避であり、防げもしないという事を悟ってしまう。
そうして天一貴人の指から光が解放される…それと全く同時に、飛来してきた人物が、
総司の精神世界にて…
「ビームじゃ!」
「ビーム」
「そう、ビームを放つのじゃ!」
「魔法なしで?」
「魔法なしで」
「…殺すぞ~!」
「おうおう!?今時の若いもんは気性が荒いのう!?」
老人口調の亀…四神最強にして北方を守りし神、『玄武』。そんな彼が総司に要求したのは、魔法なしでのビームを放つことであった。もちろんんな事できるわけないので、総司はブチ切れである。
こんな状況になったのは、上賀茂神社に玄武を回収しに来た総司が、白虎の時と同じように精神世界に引き込まれた形で出会ったことにあった。
「どうやってビームなんて撃つんだよ!?」
「そりゃあれじゃよ…所謂「波あああああ!」ってやつじゃ」
「亀だけにかめはめ波ってかやかましいわ!」
「そこまで言うなら…見せてやろうか!」
その発言をした瞬間、玄武の口から青い光線が放射された!
その威力は、いくら精神世界といえども総司を吹き飛ばすほどのものであった。しかし先の白虎と違い、ビームを喰らっても総司には大したダメージを負っていない様子だ。どうやら現在ギャグ時空が展開されているらしい。
「なんで~!?」
「ほっほっほ、今考えたらこれはワシじゃからできることじゃったわ!人間である主には魔法なしではできん事じゃったの!」
「このクソジジイ…!」
因みにこの裏で大阪では騰蛇が暴れ、一高に太陰が襲来し、橘邸には天一貴人が現れているのだが、そんなこともつゆ知らずに総司は玄武と喧嘩していた。
「あったま来たぜ!ぶん殴ってやるから覚悟しろジジイ!」
「こいや若造がぁ!」
総司の拳が、玄武の甲羅と衝突する…!
魔法科世界の秘匿通信
・バカ三人衆で一番強いのは双葉で、そこから市ノ瀬、久豆葉と続く。基本的に双葉が暴れて他二人がサポートするのが基本戦術。
・オリジナル魔法の『爆衝』。双葉家が開発した魔法で、対象の無機物を、空気に触れると起爆する爆弾に構成しなおす魔法。それゆえにサイオンの消費が激しいが、双葉はかなりのサイオン保有者であり、本作で四番目にサイオンを持っていたりする。
因みに三位は双葉の三倍ほどのサイオンを持つ深雪、二位はそんな深雪よりも圧倒的なサイオンを持つお兄様。一位はそんなお兄様の1000倍くらいのサイオンを持っている総司君です。
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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