魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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二か月待たせてすみません…


古都内乱編 その十一

東京の住宅街の一角で一本の閃光が瞬き、直後にその閃光は二つに割れてすぐに霧散した。

橘邸の庭には、天一貴人の魔法を前に死を覚悟してへたり込んでしまった『数字落ち』の三人組と、閃光を放った本人である天一、そしてその閃光を両断した人物である北山雫の姿があった。

 

 

「ふむ…君がここの主人かね?」

 

「正確にはもう一人いるけど…確かに私はここの主人。おじいさん、人の家で暴れて何がしたいの?」

 

 

目的の人物が現れたのかを確認する天一に対する雫の顔は、かなり不機嫌な様相を呈していた。婚約者との愛の巣で暴れられた上に、優秀な使用人を失いかけたことにかなりご立腹の雫なのだが、相変わらずその表情は真顔である。だがにじみ出る怒りを天一は察したのか、ニヤリと顔をゆがめて面白そうに笑う。

 

雫の姿は『五つの難題』をフル装備した最強状態である。バカ三人衆がボコボコにされていると聞いて、少し嫌な予感がした雫は『五つの難題』を持ってきた訳であるが、それは政界であったと雫は内心冷や汗を流す。先ほど天一の攻撃を閃光と称したが、それを魔法に分類するならば、光波振動系ではなく無系統魔法、つまり単純なサイオンの放出であったのだ。閃光の様に見えたのは、純粋なエネルギーとして発射されたサイオンの内、一部が余剰エネルギーとして光エネルギーに変換されただけなのである。

つまり何が言いたいのかと言えば、先ほどの攻撃を雫はあたかも軽々防いだかのように見えるのだが、その実『仏の御石の鉢』と『蓬莱の玉の枝』を合わせた石剣(総司曰くディーソードベガ)の効果で魔法を切れていなかったら、雫はマントで無事としても、後ろの三人はこの世から蒸発してしまっていたであろうことは容易に想像できてしまった。

 

 

「…おじいさん、何者なの?」

 

「神…と言えば、納得するのかい?」

 

「するかも。私を倒せるのは総司以外には神ぐらいしかいないしね」

 

「大言壮語を…!」

 

 

その会話を皮切りに戦闘が再開される。今回の戦闘は、全て雫から仕掛けていく形となった。石剣を左腰に当て、居合のような体勢をとった雫は振動系魔法と自己強化を利用して、ただでさえ向上している身体能力を何倍にも高め、一気に踏み込んだ。

踏み込みと同時に繰り出された、エリカ仕込みの抜刀術は天一の首元を容易く切り裂く。そう、容易くである。

 

 

「(蜃気楼…!)」

 

 

雫のマント、『火鼠の皮衣』にはありとあらゆる魔法から術者を守る効果がある。しかし、その場に居ると錯覚させるために光信号をいじっただけの魔法は、その防御対象に含まれなかったようだ。鮮やかな居合は、蜃気楼でできた天一の幻影を切り捨てるにとどまる。しかし石剣の効果により、蜃気楼の魔法が無効化されたことでその姿は消える。本体を見つけ出すため雫が周囲を見渡すと、天一は空に浮いていた。飛行魔法を発動しているような兆候はないのに、継続して宙に浮き続けているその姿を見た雫は、見えるところに居るのは好都合と、マントを翻しながら回転して天一に突撃する。その際にマントに硬化魔法をかけ、天一の脳天目掛けて突き進む。

 

しかし、天一の位置はまたしても違った場所にあり、再び雫の攻撃は空を切った。遊ばれている…いや、実力を試されていると感じた雫は、石剣を使って周囲に張り巡らせられている蜃気楼の魔法を切り裂いた。

すると、たちまち天一の姿が現れる…しかし、その数は数百体であるが。

どうやら魔法を消された瞬間に別の魔法が作用するように仕組んでいたようだ。これによって天一の位置は一向につかめない。七草真由美の『マルチスコープ』でもあれば話は変わってきたのだろうが、そのような索敵用魔法を有さない雫では、天一を捉えられない。

 

 

「…おじいさんって本当に神だったりする?」

 

「最初からそうだと言っとろうに…」

 

 

雫の問いかけに天一が答えた瞬間、その声の発生源向かって雫が『フォノンメーザー』を放つ。先ほど天一が使ってきたサイオン放射よりも威力は低いが、『フォノンメーザー』もバカにはならない威力だ、原作雫のメインウェポンなだけはある。

しかしそもそも命中しなければその威力もただの案山子、しゃべっていたのは幻影の一体で、結局天一にはかすりもしなかった。

 

 

「…当たらないか」

 

「見かけによらず狡猾な手を使うのだねぇ」

 

「おじいさんが神って言うのも見かけによらないけどね」

 

「はっはっは、こりゃ一本取られたわい」

 

 

会話を交わしながらも、周囲を取り囲んだままの天一。それを見渡しながら剣を握りしめたままの雫。だが唐突に、彼女の剣を持つ手から力が抜けた。

それをみた天一は、よもや負けを認めたわけではあるまいと、より雫の一挙手一投足を見逃さぬようにと構える。

 

 

「…おじいさんは、私の事を評価してるんだっけ?」

 

「そうじゃ。あの狂った自浄作用についていけている常人の女子など、気にならないわけないじゃろう?」

 

「狂った自浄作用…?それは総司の事なの?」

 

「そうさ。あの神の模造品の持つ力は、本来魔法を否定するための力じゃった。だが地球は奴の力に気づけなんだ」

 

 

雫は目の前の老人を強くにらむ。どうやらこのご老体は最愛の人の力の一端のルーツを知っているようだと理解した雫は、必ず口を割らせてやろうと決心するのだった。

 

 

「…面白そうな話だね?詳しく聞かせてほしいな」

 

「ふむ。ワシを捉えられぬ者に聞かせてやる話はないの」

 

「そう。じゃ今から捕まえればいいわけでしょ?」

 

 

そこで天一は気づく。橘邸の敷地内を水の膜が覆っていることに。そして目の前の少女に向き直ると少女は、雫は不敵に口をゆがめた。

直後、周囲が丸で昼間かと見紛う程の巨大な光が発生した。

 

 


 

 

「ミスっちゃったね、これは…」

 

 

住宅街の一角、先ほどまで豪勢な邸宅があったはずの荒れ地の中心で、雫は手にする『札』を見て悔しそうにしていた。ここは先ほどと場所は変わらず橘邸だ。ただ、橘邸と呼ばれていたものはもう跡形もなく消えていることを除けば。

 

先ほどの水の膜は何だったのか、光の正体は一体?結論から言えば、バカ三人衆の合体技である。

 

水の膜は、水分を操る魔法を使える『第一研』出身の市ノ瀬の魔法による産物だ。何故そんな水の膜を作る必要があったのかと言えば、もう一人の魔法から周囲を守る為であるのと、獲物を逃がさないようにするためである。

そう、光とは『第二研』出身の双葉の大爆破による光だったのだ。その爆破にはもちろん雫も巻き込まれるだろう、しかし今回は『範囲内の空気中の窒素が爆発する』という魔法である。つまりは爆発そのものが魔法であるため、雫のマントでそれを防ぐことができたのだ。

 

だがそんな大掛かりな準備をしていては天一に気づかれてしまう。だが、そこは久豆葉が対応することで解決した。久豆葉の家は、精神干渉系の古式魔法を操る家系であった。だが以前『第四研』…実質四葉家から、『第九研』に苦情が入ったのをきっかけに、『第九研』を追い出された。

だが、自分たちの専売特許を奪われたと四葉が感じるほどに久豆葉の精神干渉は強力であり、神である天一相手ですら敵を雫のみと断定させ、それ以外のことへの警戒心を下げるという納得の技量を見せつけてくれた。

 

以上が、先ほどの巨大な光の正体である。ではなぜ雫は失敗したと呟いたのか。それは、『天一の存在は天一自身の魔法で作られたもの』であったからだ。逃げ場がなく、自分にだけは影響のない大爆発の中で雫は天一に石剣を突き立てることができた。

だがそれにより、天一が自身を実体化させるために使っていた魔法を剣の効果で無効化してしまったのだ。

 

神を実体化させるなどという魔法は、神自身でしか使えない。つまり総司の話は聞けなくなってしまったわけであり…雫は「失敗した」と感じたのだった。

 

 

「…はあ、総司に連絡して家を直してもらお」

 

 

そういいながら雫は総司に通話を掛ける。だが、その通話にでたのは達也であった。

 

 

「達也さん?なんで達也さんがこの通話にでるの?私掛け間違えた?」

 

『いや、間違えていない。今総司は『朱雀』を懐柔するために精神世界に潜っているんだ』

 

「『朱雀』って四神の?」

 

『ああ。今まで『白虎』・『玄武』・『青龍』の順で懐柔していたんだが、今の『朱雀』に一番時間がかかっているんだ。雫は総司に何か用なのか?』

 

「うん。家が壊れたから直してもらおうと思って」

 

『?????』

 

「そのままの意味だよ」

 

『…わ、分かった。聞こえるかは分からないが、総司に伝えておこう』

 

「お願い」

 

 

通話を切った雫は、そのままバカ三人衆を呼び出して、周囲の人払いを開始させるのであった…




魔法科世界の秘匿通信


・バカ三人衆の家は、残っていたら現在の対応する数字の十師族と入れ替わっている可能性があるほど優秀な家であるが、何かしらの問題で『数字落ち』した、




次回はいつの間にか終わってた玄武戦、すっとばされた青龍戦、開幕した朱雀戦をお送りしていきます。

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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