魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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お ま た せ


古都内乱編 その十二

総司の精神世界にて…

 

「っしゃオラァ!なんかでたァ!」

 

「ほう!中々に筋がいいではないか」

 

 

総司は玄武に課せられた、『水のビームを撃ってみろ』という試験をクリアしていた。ちなみに方法は気合だそうで。気合でビームって出るんだね()

 

 

「試験を無事クリアした褒美じゃ!わしが直々に相手してやろう!」

 

「よ~し来た来たくたばれェ!」

 

 

総司は玄武の言葉を聞いた瞬間にトップスピードでその硬い甲羅に拳を叩き込んだ。だが…

 

 

「っつ!?硬って~!」

 

 

総司の拳は玄武の強固な甲羅に弾かれてしまった。流石の『四神』最強の名は伊達ではないということだろう。

 

攻撃を弾かれて困惑している総司に、玄武は語り掛ける。

 

 

「なんのための修行だと思っとる!貴様が習得した技でワシを超えるのじゃ!」

 

 

どうやらこの精神世界では玄武に対しては先ほどの『水ビーム』でなければダメージを与えることができないようだ。

 

 

「なるほどな!じゃ食らえ!」

 

「おっと!さっき習得したばかりなのに出が早いのう!」

 

 

攻撃が効かない理由と玄武を倒せる方法を知った総司は何の予備動作もなく掌を向けることで『水ビーム』を発射する。いきなりの高速発動に驚いた玄武だが、即座に同じ技を出して相殺を狙う。そして玄武は一唸り。

 

 

「(ここまでの短時間でワシの術と肩を並べる威力にまで昇華させるとは…!神を目指して作られた器とはかくも強力な力を持つのか…人類はよくこれに勝てたものだ)」

 

 

自分の数百、数千年にわたる経験を身体スペックだけで凌駕しかけている総司のポテンシャルに驚愕を隠せない玄武。だがそこまでであった。確かに凌駕しかけているが、決定的に超えることがどうしてもできていない。

これは総司が今まで魔法を使わなかったことと、魔法理論のほとんどを一切理解できていないことに由来する。術の全てを理解している玄武を超えるには、後わずかでも術への理解度を高める必要がある。だがここに総司を教え導いてくれる存在はいない。これではこの勝負の決着は一向につかない…

 

 

「…ビームってなんだか雫を思い出すなぁ。…ん?雫?」

 

 

…おや?総司の様子が?

 

 

「そういや雫って『フォノンメーザー』ていうビーム使ってたよな。確か…こんな感じだっけ?」

 

「…!?ぬおおおおお!?」

 

 

総司がビームを使う身近な人物、つまりは雫の姿を思い浮かべながら改めて力を籠めると、驚愕の事態が起こった。

 

先ほどまで拮抗状態であったはずの二人のビームだが、総司側のビームの威力が途端に跳ね上がる。雫がビームを撃っている姿を連想しただけで、術への理解度を上げたのだ。だがそれ自体は問題ではない、問題なのはわずかな理解度の上昇だけでも先ほどよりも十数倍の出力へと変貌したことだ。

 

そのあまりの異常さに、玄武は肉体が失われていく感覚を感じながら、総司の強さを認める

 

 

「なんという力…これが、世界を守らんとして清明めの亡霊が生み出した…」

 

 

玄武の言葉はそれ以上紡がれることなく、その肉体は消滅してしまった。

 


 

 

「…っは!曲者~!出会え出会え~!」

 

「うおびっくりした。…総司、起き抜けにすらふざけるのかお前は」

 

 

玄武を倒したことにより総司は現実世界へと帰還していた。目を開けた先には、「このまま眠ってればよかったんだけど」と冗談交じりにいう光宣や、良い子なので総司をしっかりと心配していた水波、呆れた眼差しを向ける達也とその胸元に顔を押し付けてスリスリしていう深雪(なにしてんねんお前)がいた。

 

総司がしっかり覚醒したことを確認した達也は、総司に立つように促してから、響子からの伝言を総司に伝えた。

 

 

「藤林さんによると、四葉の私兵とおぼしき集団の妨害にはあったが、残りの『四神』を回収したとのことだ。四葉が九島邸に侵入してくる前に式神たちを従えてほしい」

 

「合点承知の助」

 

 

そう言うと総司は瞬く間にほかの四人を抱えると、そのまま跳躍して九島邸に向かうのであった。

 


 

あっという間に到着した九島邸。そこには四葉との戦闘で少なくない傷を負ったものや、もはや物言わぬ亡骸となってしまった者もいた。そんな惨状の中をまっすぐ突き進み、響子が待つ部屋へと向かう。

 

 

「総司君!よかった、無事だったのね」

 

「むしろ無事じゃなかったらどうすんのさ」

 

 

言外に総司が無事で済まないなら九島は滅んでいると言っているような発言だが、実際その通りであるので響子は何も言わず話を続ける。

 

 

「ここに『青龍』と『朱雀』の式があるわ。他の二柱と同じように彼らを従えてほしいの」

 

「おかのした」

 

 

総司はまず『青龍』の式を手にとった。そして総司は再び精神世界へと潜ってゆく…

 


 

精神世界にて…

 

総司が目を開けて見上げてみると、『白虎』や『玄武』にも劣らぬ巨躯を持つ青き龍、『青龍』がいた。あまりにも名前通りの姿をする『青龍』に流石の総司も即座に戦闘態勢をとる。そんな総司を見た『青龍』が口を開いた。

 

 

「我が名は『青龍』…京の都を守りし『四神』、最弱のものなり…」

 

 

『青龍』が口を開いた瞬間、総司はいつ攻撃が飛んできてもいいように構え、その言葉の途中で疑問を覚えて構えを下げた。

 

今奴はなんと言った?『四神』最強ではなくて最弱?確かに最強は『玄武』なので最強でないというのはわかるが、最弱?

 

首をひねる総司に向かって、『青龍』は言葉をつづけた。

 

 

「我は『四神』最弱。ゆえに…あの、戦闘とかは勘弁してもらえませんかね?」

 

 

総司は盛大にずっこけた。

 

 

「おおい!ビビッて損したじゃねえか!ってかなんでお前そんな及び腰なの?え、何本当に最弱なの?」

 

「はい…『白虎』先輩が負けたあたりですでにビビッてたんですけど、『玄武』さんが負けたのを感じてこれもう俺じゃ無理じゃんと…」

 

「ええ…(困惑)」

 

 

これには流石の総司も困惑である。いや確かに戦闘とか試練とかなしなら時間が確かに短縮されるのだが、お前ほんとにそれでも神なのかと言いたくなってしまう総司なのであった。

 

ちなみに青龍は確かに自分より強い『四神』たちが負けたことで勝てるわけがないと思っているのもあるが、かつて自分をこれでもかとボコボコにしてきた安倍晴明と目の前の少年が瓜二つの容姿をしているのが怯えている一番の理由である。

 

まあとにかく、総司は『青龍』を従えることに成功したのであった。

 


 

現実にて…

 

 

「いや早くない?」

 

「それな」

 

 

思わずと言いたげな響子に賛同する総司。一番驚いているのが総司本人なのだから当然である。

 

 

「じゃ、じゃあ次の式神をお願い」

 

「りょ」

 

 

総司は再び精神世界へと潜ってゆく…

 


 

再びの精神世界にて…

 

 

「「「「「おかえりなさいませ、旦那様!」」」」」

 

「What?」

 

 

先ほどまでの精神世界とは一転した雰囲気、先ほどまで精神と時の部屋のような、神々と総司しかいない、真っ暗な空間であった精神世界が、今はこじゃれたバーになっている。それに相対するのは『朱雀』ではなく…

 

 

「やあ総司。頑張ってるようだな、ここで少しやすんでいけ」

 

「総司君~、私ず~っと待ってたんだから~!」

 

「摩利ちゃん、それに小悪魔ババア」

 

「誰が小悪魔ババアよ!?」

 

 

総司の知り合いの女性たちがバーに勢ぞろいしていた。しかも全員、いかがわしいお店で着るような露出過多なバニースーツに身を包んでいた。

 

総司は何が何だかわからなかった。自分をやけに熱の籠った視線で見てくる女性陣。その中に深雪も含まれていたことから、ここが決して現実世界ではないことは想像がついている。となれば、ここは正しく精神世界であり、おそらくは『朱雀』が見せている幻術か。だが総司の異能によって精神干渉系魔法は効果がないはずだ。それにも関わらずこのレベルの幻術は一体どうやって…

 

 

「「総司さん!」」

 

「うおっ、でっっっか!?」

 

 

総司の思考を遮るかのように自分たちの胸部を見せつけるようにして前に出てきた美月とほのか。その行動は効果抜群であり、総司の思考が止まる。

 

だがここが現実でないという考えは残っていたので、まともな答えが返ってくるわけがないと思いつつも一応質問をしてみた。

 

 

「なあ、ここはどこなんだ?」

 

「どこでもいいじゃないですか総司君。今夜はここでゆっくりなさってください」

 

「そうよそうよ!こんな美少女たち侍らせておきながら、それを放っておくほどのことが何かあるの?」

 

「そうよ総司君。今日はゆったりと楽しんでいきましょ?」

 

「チェンジで」

 

「だから私に対するその態度はなんなのよ!?」

 

 

上から深雪、リーナ、真由美だ。久々のリーナ登場がこれって…

 

 

「いやだって、なんか真由美ちゃんってあまりに大人びてるから、そういう恰好してるのが逆にキツイっていうか…」

 

「キツ…!?」

 

 

その言葉を聞いて凹んでしまった真由美は、店の隅で座り込んでしまった。そんな真由美を摩利と市原が慰める。

 


 

「…なんだか、バカにされた気がするわ」

 

 

時を同じくして大阪、事態の収拾にあたっていた真由美は、誰かが自分の悪口を言っている気がした。

 

 

「気のせいだろ、考えすぎだ真由美」

 

「悪口を行っているのは総司君な気がするの」

 

「…」

 

 

怒れる獅子を起こすまいとフォローに回ろうとした零次だが、真由美は既に獅子と化していた。どうやら総司が自分を貶したことは真由美の中では確定事項らしい(正解)。

 

 

「…どうせ、『変に大人びてるせいで若作りに見える」とかそこらへんだろ。アイツのいつものおふざけだ、気にする必要はない」

 

「それ、零次君も思ってるからそんなこと言えるんじゃないの?」

 

「悪いな束、俺は先に帰るよ」

 

「やっぱり思ってるってことじゃない!?って、コラー!待ちなさーい!」

 

 

零次は脱兎のごとく逃げ出した。真由美はそれを追いかけた。追いつけるわけはなかったが、帰宅後に零次はしばらく真由美の椅子として生活するのであった…

 


 

 

それは置いといて、総司はしばらくエッチな格好の女性陣たちにもてなされていたが、何かが足りなかった。そしてそれを総司は理解していた。

 

 

「雫ちゃんが居ないのがなぁ」

 

 

そう、彼を取り巻く女性陣の中に雫が含まれていなかった。故に、総司はあまり満たされていなかったのだ。

 

そしてこのようにバニーさんたちに囲まれた状況で想い人を思い浮かべた総司は、一つ思い立った。

 

 

「せや、一旦帰って雫に着てもらおう」

 

「「「「…え?」」」」

 

 

そういいながら立ち上がり、店の出口らしき扉に向かって歩み始める総司。そんな総司を女性陣達は必至で止める。

 

 

「ちょ、ちょっと待って総司君!まだ疲れがとれてないんじゃないかな!?」

 

「チェンジ」

 

「だ~か~ら~!!」

 

「もうこんなの止めにしようぜ?流石に飽きちゃった」

 

 

その言葉を聞いた女性陣の表情が、たちまち能面の様になる。そして風景が崩れ始め…

 

 

「…あんた、随分な精神力をしてるんだね。気に入ったよ!」

 

「お前が『朱雀』か?」

 

「その通り!京の南を守りし、清明殿お墨付きの切り込み隊長!『朱雀』様たあ俺の事よ!」

 

 

他の『四神』と変わらぬ真っ暗な空間に、ポツンと浮かぶ太陽かの如く輝く『朱雀』が現れた。総司は、他の神たちとは違う試験の出し方だったと思って質問をする。

 

 

「今回のアレは一体なんだったんだ?」

 

「ありゃあ、あんたの精神力を試す試験さ。あのままアンタがあそこで女の子たちにメロメロになってたら、気づかぬうちに俺の火で焼き殺されてたんだよあんたは」

 

「じゃあなんで雫を出さなかった?ワンチャン負けてたかもだぞ?」

 

「ダメダメ!あんたのあの女子への想いは、あんたが思ってるよりでかい。出したところで、現実の本物に会いたくなってしまって、今回よりも早い段階で脱出してただろうさ」

 

 

そういうと朱雀の体が輝きを増し始めた。

 

 

「兎にも角にも、俺はあんたを認めた。力を貸してやるよ!」

 

 

そう言い残すと、朱雀は式へと戻った。

 

 

「…なんでバニーだったんだろう?」

 

 

精神世界から浮上しかけている総司のその問いに答えてくれる声は、ここにはなかった…




魔法科世界の秘匿通信


・玄武の水のビームは正式名称を『水龍波動』と言い、周囲の空気の運動を振動魔法で減速させ、液化させて水を生み出し、圧縮して放つという大雑把な技である。因みにモチーフは原神の『ヌヴィレット』から

・青龍は風を操る力を持ち、これによってかまいたちでの遠隔斬撃が可能になった。


・朱雀は炎を操る力を持ち、今回の幻覚は蜃気楼である。奇しくもほぼ同時刻に夫婦(総司&雫)が蜃気楼に苦戦していた。

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