魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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古都内乱編 その十四

「…強くなっているな、真夜。まさかここまでとは思わなんだ」

 

「老師の方こそ、未だに腕は衰えられてはいないのですね」

 

 

火の手が上がり続ける九島邸にて、真夜と烈の戦闘は続いていた。真夜は強力な干渉力を利用した大規模な魔法攻撃を行う。だが、烈はその全てを『仮装行列』を始めとした魔法でかわし続けている。その間に、たびたび烈は規模こそ小さいが、当たれば気絶してしまうような威力の雷球を放つが、真夜はそれを魔法力にあかした強力な魔法障壁で防ぐ。

 

烈は当初、このやりとりが続くならそれでもいいと考えていた。これが続くなら、先にスタミナ切れするのは真夜の方だからだ。だがその予想に反して、スタミナ切れを起こしかけているのは烈の方であった。

真夜は一見何も考えずに広範囲に魔法を放っていたように見えたが、実際はその魔法発動に伴うサイオン光が出ないほど、無駄なくサイオンを使っていた。それゆえに烈の想定よりも真夜は平然としている。対して烈の方は、大した魔法こそ使っていないが、もう体にガタが来ている年齢だ。政界に長年いたことによって磨かれた腹芸を使って平然を装っているが、もはや余力など残っていなかった。

 

 

「…真夜、なぜそこまでして総司を恐れる?確かに奴は制御などできん存在だ。だが魔法師が道具として扱われるこの現状を打破できる存在だぞ」

 

「世界すら容易く滅ぼせるような暴力の権化に何ができるというのです?」

 

「何でもだ。例とするには少し不適切だが、君が今言ったように総司が暴力を振りかざせば、彼が生きている間は魔法師をないがしろにしようとする輩などいなくなるだろう。そして次の世代に刷り込みをしていけば、いつの日か世は変わっているはずだ」

 

「駄目ですわ先生。それではあまりに遅すぎます」

 

「それでよいのだ真夜よ。我らの時代は終わった、次の世代へと後を託すべきなのだ」

 

「見ない間に随分と及び腰になりましたのね。…正直、失望いたしました」

 

 

真夜がそうつぶやいた瞬間、部屋の中が暗くなる。そして天に星のような光が浮かびあがる。

『流星群』。系統外魔法であり、領域内にいる術者以外の人間の光の透過率を100%にし、光のラインを使って相手を射殺す、正面戦闘に限れば世界最強とすら謳われる魔法だ。

そしてこの魔法は領域全体に効果を与える魔法である、つまりは…

 

 

「っ、ぐぅ…!」

 

 

烈の『仮装行列』は幻覚を見せ、相手の照準を狂わせる対抗魔法である。だが領域全体を狙う『流星群』相手には効果を示せなかった。烈は『流星群』を大量に浴びてしまう。幸いにも即死は免れたが、出血量と烈の年齢を考えれば、もはや助からないだろう。

烈は何かを真夜に言おうとしていたが、意識が朦朧としているなかで、言葉すらつむげなくなってしまった。

 

 

「さようなら、先生。お世話になりましたわ」

 

 

『流星群』が解除され、火の手の上がる九島邸の一室に風景が戻る。師を殺したことに少し思うところがあったが、すぐに切り替えて踵を返す。そうして、何故か部屋の中心に集まっていく炎を避けながら…

 

 

「…来ましたか」

 

 

真夜はその不自然な炎の動きの原因を悟っているかのように振り返りながら障壁魔法を張る。真夜は今回の襲撃において、もっとも警戒すべき相手を間違えているはずもなかった。それは総司であり、真夜はとある一手を除いて彼に勝ち目はない。彼がいなくなったという情報を基に襲撃を開始したが、誰かが総司に連絡を飛ばしてしまえば、その瞬間に総司はこの九島邸へと現れるだろう。

そして、真夜その予想は正しかったのである。

 

 

「こんの、クソアマがああああああ!」

 

 

部屋中の炎が一点に集まって人型を成し、それが一層強く燃え上がったかと思えば、その中から総司が現れ、ノータイムで『水龍波動』を発動して真夜に叩き込んだ。

 

これは四神の内、炎を司る朱雀が使う瞬間移動だ。朱雀は不死鳥と混同されてみられることがあり、それを利用し、「火から生まれる」という逸話を術者に強引に付与することで可能になる移動方法だ。どうやら総司は予想通り、何かしらの方法で九島邸が襲撃されていることを知ってとんぼ返りしてきたらしい。そんな警戒されていたとはいえ、通常あり得ない魔法を使用しての不意打ち。だったが…

 

 

「…やはり、貴方はここで消しておかねばならない存在ですね」

 

「ッチ!」

 

 

真夜の張った障壁魔法は、総司の異能により容易く破壊される。だが今の真夜にはその一瞬でも、総司の攻撃をよけるには十分だった。彼女は深窓の麗人とも呼べるその見た目からは想像もつかないような身体能力を発揮して、総司の直線的な攻撃を避けたのだ。

総司は真夜に『水龍波動』を当てる…と見せかけ、自分が転移に使用しきれなかった周囲の炎を鎮火させることを目的に、横一閃の形で周囲を薙ぐ。それを更に跳躍してかわす真夜。この時点で、総司は気づいておくべきだった。

 

普段、安楽椅子に座って高みの見物を決め込んでいる魔法師が、いくら最強と呼ばれようとも、ここまで瞬時の反応はできないことに。そしてその跳躍に、魔法を利用していないなら猶更だ。

だが総司は気づけない、彼本人とその周囲には特異な身体能力を持つものが多い。十師族の長なのだからこれぐらいできて当然と考えてしまう総司は、もう少し常識を学んだ方がいいかもしれない。

 

それはともかくとして、総司の攻撃を捌いた真夜。だがこのまま長期戦になれば、膨大なサイオンは勿論、それに由来しない強大な力まで持つ総司と、烈との魔法戦で消耗している真夜ではスタミナは天と地ほどの差がある。

故に真夜は、この場ですべてを終わらせる必要があった。

 

 

「貴方には本来の『流星群』は効かないことは百も承知です。ですので…」

 

「…!」

 

「このように、改良させていただきました」

 

 

真夜は、自身の背後に『流星群』を展開する。だがそれは周囲の風景すら塗り替えるような展開法ではなかった。普通に考えれば不可解な行動であるが、総司に触れた領域にすら干渉してしまうと、その繋がりから総司の異能に『流星群』を解除されかねない。それゆえの限定展開。だが…

 

 

「…それじゃ、俺の体を貫けないはずだが?」

 

「あら。ふふふ、そこまで気づかれるなんて予想外ですわ」

 

「……」

 

 

そう、『流星群』の真の強みは、領域内の物質の光の透過度を100%にする点である。それがなければ、放たれる光線もただの光でしかない。だがそれは総司の異能に抵触してしまう。それゆえの『改良』。

ちなみにだが、普段バカな総司がこの点を指摘できたのは、『太陰』の加護による知能指数の上昇によるものである。脳に多大なる負担をかけるが、一時的に達也すら凌駕する思考演算能力を得ることができる。

この加護は相手の弱点を探り効率的に倒すことにも繋がれば、普段理論もへったくれもないやり方で使用される総司の魔法を、最適化して運用することができる。負担の方も、脳を『再生』し続ければ問題ない。

 

そんな強化された総司の頭脳が導き出した『改良』の内容、それは自身が使用した転移魔法のような、解釈の拡大による相手に依存しない『流星群』の一撃必殺化。

おそらくは「『流星群』を受けたものは必ず光が貫通する」という、今まで積み重ねられてきた事実、それを概念として適用することで『流星群』を正真正銘の必殺技に変える。こんなところだろうか。

 

 

「…これで、終わりよ!」

 

 

そこまで考えたところで、総司に向かって光線が放たれる。流石の総司といえども、これを食らってしまえば致命傷は免れない…

 

 

「…んなっ!?」

 

 

光線が当たればの話であるが。

総司がとった行動は、ただの「直進」光線が迫ってくるのもお構いなしに真夜へと一直線に突貫する。もちろんそんなことをすれば、光線にあたりダメージを受けてしまうだろう。だがそんなことはあり得なかった、なぜなら光線は、自ら総司をよけていったのだから。

事態が呑み込めない真夜。ゆえにすでに総司が目前に迫ってきていても反応ができなかった。気づいたころには、真夜の腹部には総司の強烈な拳が叩き込まれていた…

 


天一貴人。それは橘邸に現れた老人の姿をした十二天将の一柱である。そして、十二天将達の主神でもある。

その神話の中には、天一の行脚について書かれている。天一は稀に人の世に降りてくると、そのまま各地を歩きだすのだ。その時、天一と同じ道を歩いてはならない、天一に少しでも着いて行ってはならない。その瞬間、その者は天一の激しい怒りを買い、彼からの裁きを受ける。

 

だが、天一が歩いた日から三日以降、天一が天に帰って以降の七日間は、どこに行くにも天一の祝福を受け、万事が良き方向に向かう。

天一の十二天将として総司に与えたのは、この神話を基にした加護。総司が歩む道を阻むものに裁きを与え、総司がゆく道には常に良き方向に向かうという、簡単に言えば、『そのとき、不思議なことが起こった!』レベルのご都合主義である。厳密にはこの加護は魔法使用になるのだが、その魔法を天一が制御していること、内容が『因果律操作』という神にのみ許される力であることから、『加護』と分類される。

 

 

「…っらァ!」

 

「ガッ…!?」

 

 

そして接近を許した真夜は、総司の強力な右ストレートを腹部に受けて崩れ落ちる。戦場は、静寂を得た…

 




魔法科世界の秘匿通信


・天一の加護は総司の行く道を確実に保証するので、使用中の総司を相手にすると絶対に勝てない。だが、天一の「天一と同じ道を通ると裁きが下る」という逸話も適用されるため、仲間がいる状態、というより同じ目標に向かって歩むものがいる場合だと、身内にすら危険を及ぼすものである。
要するにチートすぎるから仲間がいると使えないソロ用の加護。敵がそれを理解して騒ぎを派手にすると、それを止めようとする人たちを守るために加護の使用が制限される。


・太陰の加護は、単純に思考力の強化だけでなく、魔法使用の効率化も行う。普段総司は魔法行使の際、「1+1はなんか知らんけど2!」的なノリで魔法式を運用しているので、効率がクソ悪い。
が、加護のおかげでそれが解消され、さらに魔法を多く打てるようになった。

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