魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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古都内乱編 その一五

「総司さん!」

 

「光宣か。悪いが、この人を縛り上げるのを手伝ってくれ」

 

 

九島邸に襲撃が起こった際、総司に助けを願ったのは光宣だった。彼は四葉の部隊と九島の部隊の練度の違い、そして強大な魔法力…今思えば、それは真夜のものだったそれを感じ、自分たちの手には余ると自身が知る最強にして最速の戦力を呼んだのだ。

 

事実総司はその救援要請に即座に応じてこうして京都までとんぼがえりしているわけだが…

 

 

「…!?おじい様!」

 

 

光宣は床に倒れ伏す烈を見つけて駆け寄る。急いで烈の体を抱き上げるが反応はない。

 

 

「そ、そんな…!総司さん!」

 

「…光宣」

 

「…な、なんでそんな悲しい顔をしてるんですか!?おじい様は一体…!」

 

「それ、偽物」

 

「え」

 

 

そう言いながら総司は烈の体にさわる。すると総司の異能が発動し、烈の体がボロボロと崩れていくではないか。

 

 

「義体…!?なんて高難度な魔法なんだ…あれ?じゃあなんで総司さんは悲しそうな顔を?」

 

「え?いや、普通に怒り損だったなって」

 

「それだけで!?ちょっと、そんな意味深な態度やめてくださいよ紛らわしい!」

 

そう口では言っているが、烈が無事だったことで二人の表情は若干緩んでいた。

 

そんな時…

 

 

「…まだよ、まだ終わっていないわ…」

 

「っ!?もう目が覚めたのか!?」

 

「…おうおう、もうお目覚めかよヒステリックババア」

 

 

烈に近づくために真夜から目を離していた隙に、彼女は眼を覚ました。光宣は激しく狼狽しているが、総司は極めて冷静に真夜を見つめ返す。

確かに光宣にとって真夜は逆立ちしても勝てない相手だから狼狽するのも分かるが、逆に総司は真夜の全ての攻撃を封殺できる自信があった。それゆえの静観。それを見た真夜は総司をバカにしたような…それでいてどこか自虐的な笑みを浮かべて、こう宣言する。

 

 

「橘総司…貴方は、今目覚めた私をすぐに殺さなかったことに、一生後悔することになるわ!」

 

 

そして真夜は、懐から取り出した何らかの薬品を自身に投与した!

 

 

「あ…嗚呼ああああああ!!」

 

「マズイ、止めないと!」

 

「迂闊に近づくな光宣!何を仕掛けてくるか…!」

 

直後、目を見開いて狂ったように叫び始める真夜。何をしかけてくるか分からないその様子に、総司は警戒心をあらわにする。だが、その静観は判断を違えていた。

 

「あああああ!」

 

「…!?空に魔法式を展開した!?」

 

真夜は、爆発的に高まった魔法力で構築された謎の魔法を、二人には向けず天へと撃ち放った。直後、糸が切れたかのように静かになり倒れかける真夜。

先ほど真夜が打った薬品はマジックブースターと言い、魔法師の魔法力を数百、数千倍に高めるが、代わりに負荷で脳が焼き切れて死亡するという劇物だ。それの副作用により、真夜も例外なく脳が焼き切れる…が、完全に地面に倒れる前に総司が彼女の体を抱え、即座に『再生』を行った。

 

 

「おい、おい!起きろ!今アンタは何をした!?」

 

「…あら、殺し合いをした相手を助けるなんて、随分とお人よしですのね?」

 

「いいから答えやがれ、何をしたんだ!?」

 

「それは…フフフ」

 

総司の迅速な『再生』により死亡することはなかった真夜。だが、総司の問いには答えようとはしなかった。

そんな時、五つの足音がこちらへと向かってきていた。

 

 

「総司!」

 

 

それは司波兄妹に黒羽姉弟、そして水波だった。

戦闘していたはずの司波兄妹と黒羽姉弟に目立った外傷がなかったため、達也が『再生』したか黒羽姉弟が裏切ったのか、どちらかと一瞬思案した真夜だったが、そんなことはもうどうでもよくなっていた。

 

何せ、世界はもう終わるのだから。

 

 

「…達也、今空で何が起こってるかわかるか?」

 

「…ああ」

 

「一体何が…」

 

「世界が『夜』に包まれた」

 

「……」

 

「それって…」

 

「ああ。世界規模の『流星群』だ」

 

 

総司の問いに対する達也の答えは、その場の人間を絶望させるのに十分だった。

 

一撃必殺の魔法とされる『流星群』が世界を覆っている。それはつまり、全人類にその殺傷力が向けられてしまったということだ。

バレてはしかたないとでも言うかのように、真夜が口を開いた。

 

 

「達也さんの言う通りです。地球全体を覆うように『流星群』を展開させていただきました。およそ後一分後に一斉射が始まるでしょう」

 

「…そんな、そんなことをして、許されるとお思いですか、叔母上!」

 

「まさか。事実私はここで死ぬつもりでした。それを生かしたのは彼ですよ?」

 

 

そう言いながら、してやったりという顔で総司を見やる真夜。

 

 

「言ったでしょう?貴方は私をすぐに殺さなかったことを一生後悔すると。この魔法でも貴方は死なないでしょうが、他の人間は全滅ですよ?」

 

 

その真夜の勝利宣言ともとれる発言に、その場の全員が総司へと目を向ける。そして総司は少し考えるそぶりを見せ…

 

 

「うん。それぐらいなら、問題ないかな」

 

「は?」

 

 

信じられないというような真夜の呟きを無視して、総司は即座に跳躍する。

全員が突然の行動に驚いたが、すぐに切り替えてすぐさま外に出た。空は一面が『夜』に包まれており、この魔法を見たことのある者…特に大亜連合の者たちは絶望しているだろう。

 

果たして、総司は一体この状況で何を行うつもりなのか。それは…

 


 

「よし、ここらでいいか」

 

 

場面は変わり、総司は現在上空約2万メートルの位置にいた。平然と宙に浮いていることにはツッコミを入れるのは野暮というものだろう。

 

 

「さて、やりますかぁ!」

 

そう言いながら、総司は『四神』の式を取り出した。その四枚の式は、総司がサイオンを込めた瞬間輝きだし、ひとりでに宙に浮く。そして式がそれぞれの方位を差し始める。

北の『玄武』、南の『朱雀』、東の『青龍』、西の『白虎』。それぞれが自分の方位を差しながら、等間隔に並ぶと、それぞれからさらに光の線が現れ、四枚の中心に集まる。そうして新たに、一枚の式が作られた。

 

その式は『黄龍』。『四神』を束ね、京都全体を守護していたとされる神龍。その力は概念的な『絶対防御』。

 

黄龍の式を手にとった総司は、それを天高く掲げる。その瞬間、尋常ならざる輝きが世界を包み込む。黄龍の術式、『五神結界』。黄龍だけでなく、『四神』達の力も載せた、最強の防御魔法。その魔法の前には、どんな強力な攻撃魔法も膝を折るしかなかった。

展開終了と同時に『流星群』が四方八方から降り注ぐが、結界と術者である総司は涼しい顔をしていた。

 

この程度なら、総司を超えることなど到底できないのだから。

 

この後しばらくの間、『流星群』を『五神結界』が防ぐことにより発生した光が世界各地で発生。世界が一時混乱の渦に巻き込まれるのであった。

 


 

 

「…世界を覆いつくす結界をこうも簡単に…?」

 

 

障壁魔法を得意とする水波ですら理解できない神のごとき魔法。それを見ている一同の反応は様々だ。司波兄妹と光宣は、相変わらずの規格外っぷりに、流石総司であると感心していた。

 

黒羽姉弟は、かつての自分たちがいかに強大な相手と戦おうとしていたのかを完全に理解し、なんて愚かであったのだろうかと絶望する。

 

そして真夜は…すべてを諦めた表情で、空を見上げていたのだった…




魔法科世界の秘匿通信


・『黄龍』の権能は『概念防御』であり、物理的な破壊は一切通じない為、魔法と銘打ってはいるものの、その実大半が物理攻撃である魔法では相性が悪い。


・戦闘で有用な十二天将は『黄龍』で最後。他はアシスト程度なので軽く入手させときます。

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