魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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筆が遅すぎて泣きそう


師族会議編
師族会議編 その一


2097年、元旦…を迎えたその翌日…困惑に彩られた顔をしている総司は、ある知らせを受けて、自身が当主代理を務めている四葉家の本邸に足を運んでいた。

 

 

「おいゴルァ!大阪や!開けんかいワレェ!」

 

 

当主代理とは言えど、それが総司を縛り付けるための仮初の地位であることは、本人は勿論のこと、他の四葉の人間も理解していた。故に、本来の主のところへは行かせまいと妨害を試みるのだが、それを全く意に介さずに総司は突き進んでいく。そして真夜がいるであろう部屋の目の前に来た丁度その時、部屋の中から真夜の執事である葉山が出てきた。自身の領分を理解している葉山は、総司を妨害するでなく、扉を開けて総司を中へと促した。

 

総司が部屋の中へと踏み入ったと同時、『星』が瞬く。真夜の『流星群』だ。そしてコンマ一秒後には発射されるであろうそれを、総司は腕を一振りして消し去った。そして一切の動揺もせずに一直線に真夜の元へと向かい、彼女の前にあるデスクに足をたたきつけて尋ねた。

 

 

「達也が深雪と結婚するって、どういう意味だァ!?」

 


 

 

時間は昨日の四葉家の慶春会にて決定されたことが発端であった。その内容は、『四葉真夜の息子である司波達也と、四葉深夜の娘である司波深雪の婚約』並びに『四葉家の次期当主に司波深雪を指名した』というものだ。

 

総司は後者は納得することができた。総司は過去にフリズスキャルヴで司波兄妹が四葉の人間であると把握していたからだ。

だが前者は納得がいかない…というわけでもないが、気に食わなかった。

 

四葉は外聞的には、「達也と深雪は実は従兄妹だから結婚できる」としているが、実際の所は、「実の兄妹とほぼ同じだけど、深雪が特殊で結婚になんの問題もないから」が実情として正しい。

 

結論から言えば、「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()調()()()()()()」。

 

調整体と言えば、魔法技能を持った人間を生み出せるため、兵器として魔法師を運用するにはこの上なく有用な技術だが、倫理的観点と、調整体は人造人間であるため肉体のバランスが不完全であり、短命の宿命を背負っているというデメリットを抱えている。

だが、こと深雪に関しては、「完全調整体」と四葉が豪語するほどの完成度であり、普通の人間と寸分違わず生きていける。更に、遺伝子情報こそ達也と兄妹であるが、達也を縛り付けるという役割上、彼女は達也との間に、なんの障害もない子供を作ることができるのだ。

 

近親相姦にあたるのに、そのデメリットは何もない。これが真夜が堂々と二人の結婚を魔法界に発信できた最たる理由だ。

二人をよく知る者からしてみればこの話はあまりにぶっ飛んでいるのだが、従兄妹ということにしてしまえば、血統を大事にする魔法師からしてみれば合理的であると考えられるだろう。

 

だがそんな理屈で我らが総司が納得するはずがなかった。

 

 

「あら、深雪さんは達也さんを異性として好きになっている節があるではありませんか。そして達也さんは深雪さん以外のことで大きな感情の発露をすることができません。これは二人にとって得しかない事なのですよ?」

 

 

「いや違うね。俺が言ってるのはその二人の感情の話じゃない」

 

 

「だからお二人も必ずこの婚約を喜んで…今なんて言いました?」

 

 

「俺が聞いてるのはなぁ!達也のことが好きな奴とか、深雪ちゃんのことが好きな奴とかのチャンスを奪って、何様のつもりだってことだよぉ!」

 

 

「…ええ?」

 

 

そう、総司が今回の件にご立腹な理由は、司波兄妹の家の事情による政略結婚に関する二人の感情ではなく、二人のことが好きな人物たちの気持ちを弄ぶ行動であるからである。はっきりと名前を言えば、光井ほのかと一条将輝である。総司は二人がそれぞれ司波兄妹が好きなことを知っていた。ので、いずれ兄妹で引っ付くにしても達也か深雪が日本の法律を変えるレベルで我慢の限界を迎えてからだと認識していたのだ。

 

だがまさか、このような形でゴールインされては、取り残された友人たちがあまりに可哀そうではないか。こうなれば総司はこの婚約をぶち壊して二人にチャンスを作ってやらねばならない。

しかし、深雪と一緒に居られればそれで最終的には問題ない達也と、従兄妹だから結婚できるという免罪符を手に入れてしまった深雪、婚約を破談にしてもいつの間にか付き合ってしまいかねない状況に将輝とほのかは追い込まれているのだ!

 

そんな実に絶望的、何なら負けているといっても過言じゃない状況だが、それでも総司は動き出した、達也と深雪の愛し合い具合がほぼ自分たちと変わらないことに気づいており、何をやっても無駄であることを薄々理解しておきながら。

 

 

そしてついにその日が来た。総司の予想通り、息子の想いを後押ししようと一条家当主が司波兄妹の結婚に異議申し立てとともに、次期当主同士の結婚が十師族の繁栄につながるとして、将輝を深雪の婚約者として推してきたのだ。他の家は、当初この声明に一条家の親バカが出たかと呆れていたが、同時にこの機に乗じて四葉家を弱体化させることを画策する。だが、直後に出された声明に一条家含めて十師族と魔法界は混乱をきたす。

 

総司が、「政略結婚はクソ!恋愛結婚こそ至高!この結婚を考えた奴は一発殴るし、朴念仁の達也は百発殴ります。深雪ちゃんは雫とほのかちゃんとティータイムして待っててくれ」という、声明という形すらない宣言を行ったからだ。代理とは言え、四葉家と総司がある程度足並みを揃えているものだと思っていた他家は驚愕した。いやそいつ、代理の仕事せずに恋人と年末をダラダラ過ごしてただけっすよ。

 

更に、この機に乗じて日本の国力を削ごうと企む者達がいた。

たった一つの婚約で、魔法界全体が混乱の渦に落ちていく…

 


 

そして冬休みが終わり、2097年最初の登校日。いつも通り水波を含めた三人で登校しようとした深雪を諫めて二人だけで登校した達也は、去年までの視線とは少し違う感情が込められた視線が、際限なく二人に注がれていることを感じていた。それも当然である、何せ魔法界のアンタッチャブルとされるあの四葉家の関係者である上に、兄妹で婚約(対外的には実は従兄妹だったということになっているが)したこと、そして何より、自分の家の代理当主に殴打宣言をもらっているからだ。

 

すると、いきなり強風が吹いた。深雪は慌ててスカートを抑え、達也は真冬の強風で深雪が凍えていないか心配しながら、来客の気配を感じる。

 

吹いていた強風がつむじ風のように一点に集まり、やがて人の体を形成し…

 

 

「やあ、明けましておめでとう達也、深雪ちゃん。深雪ちゃんはともかく、達也への当主からのお年玉は殴打1万発でいいかな?」

 

「百倍になってるぞ、総司」

 

 

風から現れたのは総司…と雫。雫は総司の陰からひょこっと顔を出し、「明けましておめでとう達也さん、深雪」と無表情ダブルピースで挨拶をした。

 

 

「総司…あの声明は一体何なんだ。なぜ俺と深雪の婚約を阻む?」

 

「すでに言ってるだろ、政略結婚ってのが気に食わないんだ。恋愛結婚が一番なんだよ」

 

「俺と深雪が愛ゆえに婚約したとは考えないのか?」

 

 

達也のこの発言に深雪は嬉しさのあまりトリップを始めた。「そんな…!私たちが愛し合っているだなんて…!いえでも、婚約したのですし…!」とうわ言を呟くだけの機械とかした深雪を雫がズルズルと回収していく。

 

 

「考えたよ。だが、言っちゃ悪いが令嬢としての奥ゆかしさを持ってる深雪ちゃんがお前に結婚したいなんて言えるわけもないし、お前は深雪ちゃんと一緒に居られればなんでもいいからお前からの告白も可能性が低い。考えられるのはあのオホーツクババアの仕業だ」

 

「…そのオホーツクババアというのはまさか」

 

「真夜カスのことだけど?」

 

「……」

 

 

いくら兄妹が平穏に生きるのに邪魔な存在と言えども、ここまでの言われようとは自分の叔母を哀れまずにはいられない達也。

 

 

「俺が言いたいのはな、チャンスをやってくれってことさ」

 

「チャンスだと?」

 

「ああ。俺があーだこーだして、頑張って婚約を解消させた直後に、二人のどっちかが相手に結婚を申し出てもう片方がOKをだしたら、俺は素直に祝福しよう。だが、お前だってわかってるはずだろ?ほのかちゃんがお前の事を好きなこと、将輝が深雪ちゃんのことが好きなこと…後者は別にどうでもいいんだけど、戦う前に負けるなんて、あんまりだと思わないか?」

 

「……」

 

「…お前の事情は分かってるつもりだ。だからこそ言わせて貰うぜ、俺は気に食わないからこの婚約を破談させる」

 

「…もし、深雪に手をかけた時は、絶対に容赦しない」

 

「安心しろよ、手にかけるのはお前だけだ。ギャン泣きさせて深雪ちゃんに引かれてしまえ」

 

 

睨みあう二人。彼からからは殺気とも呼べるものが発されており、周囲のギャラリーたちは皆固唾を呑んだ。

 

そんな時、達也が口を開いた。

 

「…総司」

 

「なんだ?」

 

「そろそろ予鈴がなるから教室に行かないか?」

 

「おっもうそんな時間か。行こうぜ!」

 

 

さっきまでの殺伐とした雰囲気はどこへやら、一瞬でいつもの雰囲気に戻った二人は、並んで教室に向かって歩き出す。

 

その温度差にギャラリーたちはズッコケ…そして自分たちも遅刻しかけていることに気づいてダッシュで教室へと向かうのであった。




魔法科世界の秘匿通信

・四葉継承編が無い理由として、「総司がその場に居ない」ことが挙げられる。本作はあくまで総司を主人公としているため、総司が関与しない場所は描写していません。


・総司の立場としては、マジで形だけの代理である。四葉に対して何の命令権も存在しない。ただ四葉として、十師族としての責任を負わされるだけの立場である。

普通に考えて受ける意味のない圧倒的に不利な立場だが、元老院に雫と司波兄妹以外の仲間たちを人質に取られている。(いつでも殺せる的な)

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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