次回まで解説ですが、終われば競技開始です。
懇親会において九島烈が残した事実は会場の全員を…特に一高生を騒然とさせた。
「そ、総司君が閣下とお知り合い…!?」
「アイツ、閣下とどう言った関係だ…?魔法を十全に使えない奴では魔法の腕を見込まれて…というわけでもなかろう」
「ふむ…しかし、橘の事だ。近所のご老人に声をかけたら閣下だったなんてこともあり得るだろう」
「「普通は絶対あり得ない!」」
一高のビッグ3も例外では無く、真由美と摩利は明らかに狼狽していた。克人は謎に高い総司への信頼によりそういうこともあるかと納得した。するな。
「…おい、森崎、大丈夫か…?」
「…あんな奴が、閣下とお知り合いだと…?あり得ない…」
またここに来るまで散々総司を下に見てきた森崎もこれには青い顔をして立ちすくむことしかできなかった。
「達也君、申し訳ないけど総司君から詳細を聞いてきてもらえないかしら?」
「…構いませんが、コレはアイツのプライバシーに関わります。そう詮索しない方が宜しいのでは?」
「…それもそうね。ごめんなさい、今のは忘れて」
「一応は聞いてみます。その上でアイツからの許可が下りればお教えします」
「ありがとう…」
焦りのあまり真由美は同室である達也に総司に質問してくることを依頼してしまう。しかし達也が難色を示すと、自分が早計だったと反省するのだった。
騒然としたまま終了した懇親会。達也はメールで総司に『部屋に戻って来てくれ、聞きたいことがある』と送ったのち、足早に自室に引き返していた。
「…でさ!結局総司君と老師の関係ってなんなんだろうね?」
「それを今から聞きに行くんだろ…あまり騒ぐと聞き耳とか立てられるかもしれねぇだろ」
「なにそれ?あたしがうるさいって言いたいわけ?」
「ちょっ、エリカ!そんな喧嘩腰にならなくても…」
「レオさんも落ち着いてください!」
「…もし総司さんが偉い人とかだったどうしよう…失礼なことしてないかな私…」
「大丈夫だよほのか。向こうの方がもっと失礼だから」
喧嘩を始めそうになったエリカとレオを諫める幹比古と美月。その横で不安げにしているほのかに珍しく総司を軽くけなした雫も同行しているのだが。深雪?言うまでも無く居るに決まっているだろう。あのブラコンは元々兄の部屋に行くつもりだったのだから。
「…お兄様」
「心配するな深雪。総司はきっといい奴だよ、なんの問題も無いと思っておこう…だが、もし俺と深雪の平穏を脅かそうとすれば…」
実は十師族の一員である司波兄妹は総司が敵である可能性を危惧していた。しかし深雪は、そして達也も友人だと思っている総司の裏切りなんて信じたくはない。願わくば味方である事を願う。
しかし達也は直感していた。もしここで総司と戦うことになれば、自分に勝ちの目は薄いことに。深雪に自身の力の封印を外してもらったとしても、魔法が効かず、圧倒的なまでの身体能力を有する総司に達也は有効打を持っていなかった。戦えば最後、地に伏せているのは自分自身であることを達也は正確に理解していた。
そうしてなんだかんだで達也と総司の部屋に到着した一行。代表として達也がその扉を開ける…全員が緊張した面持ちだ。
そしてドアを開けた達也が見た物は…!
「……」
「……」
静寂。
ドアを開けた達也に待ち受けていたのは緊張感ゼロの表情で某YouTuberのゴリゴリタイムのポーズを取っている総司の姿だった。
コレには達也もどう反応していいのかが分からない。ここに来るまで戦闘かと覚悟すらしていたと言うのに、目の前の男はそんな心配を全て踏みにじって行く勢いでバカをやっていた。
まだ総司の姿を認めていなかった他の面々はフリーズした達也に疑問符を浮かべる。その後静かにドアを閉めた達也に驚愕する。
「お兄…様?」
「……」
深雪の心配する声もよそに達也は意を決してもう一度ドアを開く。その先の光景は…
「……」(パクパク)
「……」
どこからか持ってきたパスタが入った皿の前でポーズをとり、手に持ったチーズを一気にパスタにかけていた総司の姿だった。口が動いており、その動きからして『パワー!』と言っているようだ。
再び静かにドアを閉める達也。達也の後ろにいた者達は再三驚愕する。
そんな中、達也はゆっくりとため息をつき、後ろに振り向いて言った。
「皆、俺が奢るから下のカフェでゆっくりしないか?」
「ちょいちょいちょーい!?」
聞こえたのか、総司が勢いよくドアを開けて出てきた。
やっと部屋に入れた一行は総司に目を向ける。達也の言からして全然真面目にするつもりはない総司に殆どが呆れ、雫は「さすが総司君…器が大きい」と感動していた。盲目過ぎである。
「…それで、聞きたいことがあるんだが」
「おう!何でも聞いてくれ!あっ、女性経験とかはナシで!」
「そんなことを聞きたいわけじゃ無くでだな…」
「そんなこと…?」
相変わらずのふざけっぷりに半ば作業のように返した達也だったが、それを知りたい人(雫)からは想像も出来ない低い声が聞こえたため、今後は慎重に言葉を選ぼうと冷や汗をかきながら達也は思った。
「単刀直入に聞くぞ、総司。お前と閣下の関係はなんだ?」
「ん~?烈爺のことか?なら俺の保護者っていう関係性かな?」
烈爺、保護者。反応すべき点を二つも同時に出してきた総司に一行は驚愕の色が強くなる。
「その…保護者というのは?」
「総司君って孤児院の出じゃなかったっけ?」
達也は動揺を努めて隠し、「総司君だし…」と思った雫は純粋な疑問で問う。
「あー…達也、今情報端末持ってるか?」
「ああ…それがどうした?」
「それで『立花の家』って検索してみてくれ」
言われた達也が調べると、京都に同じ名前の孤児院が検索結果に浮上した。
「ここが、おまえの孤児院なのか?」
「そうそう。それで、創立日を見てくれ」
「創立日…?2079年の10月25日…コレが何か?」
「その日付、俺の生まれた日なんだよ」
再度驚愕する一同。コレには流石の雫も驚いていた。
「じゃあなんだ?総司が生まれた日に偶然創立したってことか?」
「いや、必然的に創立した」
レオの質問に答えた総司の発言にエリカが問う
「どう言うことなの?」
「その孤児院は俺の両親が烈爺に依頼して作ってもらった…らしい。俺も詳しくは知らん」
「依頼?なんのためにだ?」
「烈爺曰く、俺の保護だ。当時から狙われてた俺…というより俺の家系に俺を置いたままでは殺されるってことで両親が必死に頼み込んで、俺が生まれるのに合わせて設立したんだってよ」
烈に頼んで設立してもらう…文面では簡単そうに見えるが、実際はそもそも老師と呼ばれるほどの男とのパイプが無ければ接触も難しいだろう。ということは、総司の両親はそれなりの地位にいたと言うことだ。
「後、その年の11月1日の事件について調べてくれ」
「分かった…これは…!」
総司に言われるがまま再び検索を行った達也は驚愕する。
「京都で一組の夫婦が車の爆発事故に巻き込まれて亡くなった…まさか」
「そう、それは俺の両親だ。多分殺されたんだろうな」
衝撃の事実に総司以外の全員の表情が暗くなる。あの軽い総司にこんな重い過去があったなど…
「…総司のご両親の家系を聞いてもいいかな」
静寂を破ったのは幹比古の質問だった。
「僕と初めて会ったとき、君には精霊…スピリチュアルビーイングを色までハッキリと視認していた。ひょっとして、古式の家柄なんじゃないかって…」
「ちょっとミキ!」
「ごめん!でも気になって仕方ないんだ!」
「そうだな。総司を狙う輩とやらも知っておきたい」
幹比古に続いて達也も問う。死んだ両親の事を話させようなど酷い事をする。だがそんな二人に総司は機嫌を悪くした様子は無い。
「そうだな。俺と関わっていく以上知っておいた方がいいだろうな」
総司は一瞬溜めて、自身の正体を明かした。
「俺の家系はかの平安の偉人、
このカミングアウトには一同に一番の驚愕が襲って来たのだった…
魔法科世界の秘匿通信
・総司が関西の第二高校ではなく関東の第一高校に入学したのは京都を拠点とする追手から離れて暮らすために九島烈が配慮した結果である。
・総司は生まれたばかりで両親の顔も覚えていないが、事実は正確に把握している。
総司が…安部清明の一族…?嘘だ、僕をだまそうとしてる…
次回はもうちょっと詳しく解説。
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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