魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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入学編 その二

橘総司と名乗った男は達也の横に座る。

すると、逆方向から達也と総司に声をかける人物がいた。

 

 

「あの、お隣空いていますか?」

 

 

声の方向を向くと眼鏡を掛けた女子生徒が立っていた。

どうやら空いている席が無く、達也の横に空きを見つけ問題ないかを問うてきたのだろう。達也としては別段断る理由は無いので快く承諾する。

 

 

「ああ、問題ないよ」

 

「あの、私柴田美月と言います。よろしくお願いします」

 

 

隣に座ると同時、彼女が名乗る。すると彼女の連れだろうか、空いていたもう一つの席に座った赤髪の女子生徒も名乗った。

 

 

「あたし、千葉エリカ。よろしくね」

 

「俺は司波達也だ」

 

 

達也も自己紹介をしながらも、赤髪の少女の名字に驚愕していた。「千葉」となれば剣の魔法師と名高い数字付き(ナンバーズ)の一つである家だ。確かに先程の真由美のようにビッグネームが出てきたなとは思ったが、それ以上にこの少女は千葉家の娘と言うことだが…

 

 

(千葉…あの家に娘がいたなんて初めて聞いたな)

 

 

達也は自身の記憶に無い存在だとエリカを僅かに警戒する。すると一つ気づいたことがある。

たった今二人との自己紹介を済ませた達也だが、この場にはもう一人いることを。

 

 

「おい、橘。お前も自己紹介を…」

 

「…」

 

 

返事が無い。もしかすると橘は千葉家が苦手なのかもしれないと当たりをつけ後ろへ振り向く。するとそこには達也の予想通り、エリカに対して渋面を作っている橘が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……zzz」

 

 

 

い な か っ た 

 

 

この橘という男、今のさっきで即爆睡をかましているのだ。

 

 

「…お前なぁ」

 

 

達也は橘がどういう人間なのかが大体分かった気がした。

 

 

 


 

そうしているうちに入学式が開始する。その瞬間まるで起きていたかのように橘が体を起こす。

 

 

「お、やっと始まるのかー…待ちくたびれたぜ。…なんか横に増えてね?」

 

「今気づいたのか…」

 

 

やはり先程の女子二人との邂逅の記憶は橘には一切無いようだ。まあ、寝てたからね。

 

自己紹介はまた終わった後にということで入学式に専念する全員。

しばらくして「続きまして新入生答辞」と放送が入る。

達也は妹の晴れ舞台を目に焼き付けようとしている。

 

女子二人は壇上に現れた達也の妹…深雪に見とれているのか顔が呆けてしまっている。

片や橘だが、彼は「ほーほー、これはなかなか…」という言葉を漏らしている。

 

 

深雪のスピーチはつつがなく終了した。万雷の拍手と共に。

一科生と二科生で差別意識が深く根付いている本校において口にするだけで荒れそうな単語…「魔法だけで無く」やら「平等に」やら。これは二科生への擁護だとかで一科生の大半はガチギレするだろう。ほぼ全員が深雪の美しさに気をとられてスピーチの内容などは入っていないのだが。ちなみに気をとられなかったのは深雪の危うい発言に肝を冷やしている達也と「それ当たり前の事じゃね?」と疑問を呈している橘くらいのモノだった。

 

 

入学式が終わり、IDカードを受け取るために窓口に向かいながら橘とエリカ、美月の二人が自己紹介をする。

 

 

「改めまして、あたしは千葉エリカよ。こっちは柴田美月」

 

「よろしくお願いします」

 

「俺は橘総司!こっちの仏頂面の地味系イケメンが司波達也だ!」

 

「おい、なんだその評価は。そもそも俺はもうとっくに自己紹介しているんだが?」

 

「おっと、これは失敬」

 

 

まるで昔からの友人のようなやりとりに美月は呆けて、エリカは笑いをこらえているようだ。

そうこうしている内に達也達はIDカードを受け取ることが出来た。

 

 

「あたしはE組だけど三人は?」

 

「私もE組です」

 

「俺と橘もだ」

 

「…」

 

 

同じクラスであることを知ったエリカと美月は喜ぶが、総司はあまり面白くない顔をしていた。

総司は何かに不満があるかのように渋面を作っている。

 

 

「…もしかしてあたし達と同じクラスなの嫌だった?」

 

「…いやそうではなくて」

 

 

総司は実に深刻そうな顔をして話を切り出す。何か嫌な思い出でも…?Eでトラウマとかなんだよ、とかくだらない思考をしている達也達に総司は、真剣な表情で話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「達也が俺のことを名字呼びなのが気に食わないんだ」

 

 

「「「…は?」」」」

 

 

達也達は図りかねていたのだ。目の前の男のお気楽さと論点のズレを。

 

 

「せっかく友達になったんだ、名字じゃなくて名前で呼んでくれよ」

 

 

どうやら友人である達也に名前呼びをされなかった事が不服のようだ。というか少し話しただけで友人認定とかどんな陽キャだよ。

ちなみに美月は額面通りの印象しか受けなかったが、達也とエリカはまるで一般的な高校生でも見たかのような気持ちだった。それこそ()()()()()()()()と。

 

 

「なあ、いいだろ?」

 

「分かったよ、総司。俺のことは達也でいい」

 

「ならあたしもエリカでいいわよ」

 

「私も美月と呼んでください」

 

「おう!改めてよろしくな!達也、エリカ、美月!」

 

 

達也達からの肯定に満面の笑みで答える総司。そうして同級の仲間で交流を深めていると、声を掛けてくる人物…具体的には先程入学式で聞いた声で達也に話しかける女性が…

 

 

「お兄様、お待たせしました!」

 

 

最強ブラコンお嬢様の降臨だ!

 

 

そんなブラコンはその愛情を全面的に向ける相手…最強シスコンお兄ちゃんの達也と会えた事により非常にご満悦の様子である。

達也はそんな妹に振り向きねぎらいの言葉を掛けようとしたが、深雪の後ろに人がゾロゾロいるのを見て言葉を飲み込む。新入生総代で10人いれば100人が振り向くような絶世の美少女である深雪とお近づきになりたい人間は腐るほどいるだろう。

 

そして達也、総司はその人混みの先頭に見覚えのある顔があるのが分かる。

 

 

「また会いましたね、司波達也君」

 

「…どうも」

 

「え、この人先輩なの?」

 

 

生徒会長である七草真由美である。新入生総代は例年生徒会に所属している故、深雪との接触を済ませていた可能性は非常に高いだろう。そして先程の邂逅からこの瞬間まで真由美を同級生だと勘違いしていたバカ(総司)もいるが。入学式において在校生代表で生徒会長…真由美が挨拶していたときは総司は少し寝かけていたから今朝の少女と生徒会長が結びつかなかったのだろう。

ちなみに真由美の後ろに控えていたはんぞーくん(服部刑部少丞範蔵)は敬愛する真由美への態度から、元々一科生と二科生で仲良くしているのが気に食わずに下がり気味だった機嫌が総司のせいで地の底へ落ちる。

 

 

「お兄様、そちらの方達は?」

 

 

このブラコン、マイペースである。達也が真由美と話していることも、真由美を同級生と勘違いしていたバカがいたことも完璧にスルーし、達也と一緒にいたエリカと美月の存在の立ち位置の把握を優先したようだ。

 

 

「ああ、この二人は俺と達也でナンパして仲良くなった女子だよ」

 

「は?」

 

「…へえ、お兄様はそんなことをしていらしたのですね?」

 

「ちょっとまて深雪!コイツは頭がおかしいんだ!」

 

「ちょいちょーい!?」

 

 

ホントこのバカは…明らかにエリカと美月に殺意に似た感情を発していた深雪に冗談で火に油を注ぐ危険人物だ。少なくとも達也の認識は「頭のおかしい奴」らしい。流石の総司もコレには不服か口出し。

 

 

「彼女は柴田美月、そして彼女は千葉エリカ、二人ともクラスメイトだ。それと別にこの二人にナンパを仕掛けたわけでは無いんだ。入学式で隣になっただけだよ」

 

「ええー?ホントにござるかー?」

 

「総司うるさい黙っててくれ」

 

「しゃい☆」

 

 

総司のせいで会話が平行線をたどる。少し黙っててくれ(懇願)

 

 

「クラスメイト…ですか。それではお兄様?入学早々にクラスメイトとデートをしていた理由をお聞かせ願えますか?」

 

「まさか総司の世迷い言を信じているのか…?」

 

 

どうやら総司の冗談を深雪は信じてしまったようだ。お兄さん教育が足らないのでは?そして辺りが深雪の干渉力による魔法の暴走でだんだんと気温が下がってきていた。

 

 

「デートとかナンパとかの事実は一切無い。というか、その言い方は二人にも失礼だぞ」

 

「そうですね…申し訳ありませんでした」

 

 

深雪はエリカと美月に失礼な物言いをしたこと、達也を女たらしと決めつけてしまった事に謝罪する。

 

 

「別にいいですよ」

 

「勘違いぐらい誰にでもあるって、気にしないで!」

 

 

その謝罪を寛大な心で受け入れるエリカと美月。

 

 

「はっはっは、君が謝ることじゃないよ」

 

「そうだな。本来ならお前が謝るべきだ」

 

「ひょ?」

 

 

約一名勘違いして謝罪を受けた(と思った)ヤツがいたが。なんでお前が謝られる側だと思ったんだよ…

 

 

「柴田美月です、はじめまして」

 

「あたしは千葉エリカ。ねえ、貴女のこと深雪って呼んでもいいかしら?」

 

「もちろんよ。私もエリカと呼ばせてもらうわ」

 

「深雪って意外に気さくだね」

 

「エリカはイメージ通りね」

 

「私も深雪さんとお呼びしてもいいですか?」

 

「もちろんよ、美月」

 

 

深雪達女性陣が自己紹介を終えて、とうとうバカの番になる。

 

 

「知ってるか?お嬢さん?怪盗は鮮やかに獲物を盗み出す創造的な芸術家だが、探偵はその後を見て難癖をつける、ただの批評家に過ぎないんだぜ?」

 

「そうかもしれんが何故今その発言なんだ。一体なんの関係があるんだ…」

 

「言いたかっただけだが?」

 

「だろうな」

 

「気を取り直して、俺は橘総司だ!よろしくな?可憐なお嬢さん?」

 

「は、はい…」

 

「おい、深雪に手を出したらどうなるか分かってるのか?」

 

「モチロン。この世で一番怒らせちゃダメなのはシスコンだからな」

 

 

あながちこの世界では間違っていないのが面白いところではあるが、とりあえず自己紹介が終了したようだ。

その時に達也がふと深雪の背後の集団に目を向けると、苛立ちと悔しさを隠しきれない表情をしていた。一科生とよりも二科生と仲が良さそうなのが気に食わないのだろう。それを見かねた達也は深雪に問いかける。

 

 

「深雪、生徒会の方達との話はもういいのか?まだならどこかで時間を潰しておくが…」

 

「その心配はありませんよ」

 

 

達也からの質問に答えたのは深雪では無く真由美だ。

 

 

「今日はご挨拶だけで十分ですし、何か用事があるのならそちらを優先してもらって構いませんから」

 

「か、会長!?ですが此方も重要な案件だったのでは!」

 

「予め予定をしていた訳ではありませんし、深雪さんの予定を優先するのは当然だとおもいますよ?」

 

「それは…」

 

 

真由美の言っていることは正しい。というか服部は二科生に負けたことが悔しくて食い下がっていたのだ。

悔しそうに服部は達也達の方を見る。それが彼の運の尽きだったのかもしれない。

 

 

「今俺と目が合ったな?」

 

「は?」

 

「これであんたとも縁が出来た!」

 

「な、何言ってるんだお前!?」

 

「縁が出来たって言ってんだよ」

 

「二科生のお前と結ぶ縁なんてない!」

 

「まあま落ち着いて。そんなに熱くなりやすいと会長に嫌われますよ?」

 

「会長は関係ないだろ!?」

 

「分かってますって!応援してるんで頑張ってくださいね?」

 

「な、な…!」

 

 

目を合わせたが最後、総司に目をつけられた哀れ服部。卒業までずっとおもちゃだね!

 

 

「ふふふ、それでは深雪さん、また後日改めて。司波君と橘君も今度ゆっくりと話しましょうね?」

 

「はあ…」

 

「ほら、僕もご一緒してもよろしいでしょうかって言うんだよ!あくしろよ!」

 

「余計なお世話だ!というか先輩には敬語を使え!」

 

「だが断る」

 

「何…だと?」

 

 

また後日と約束し別れを告げる真由美。何故達也と総司もなのだろうか。総司はやめておいたほうが身のためなのだが…

それと意外にも服部と総司は相性がいいのかもね




橘君の豆知識

・実は入試成績200位。つまりあと一人上にいたら不合格だった。

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~
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