魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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こんな中途半端な回で言うのもアレですが、本作はよくある来訪者編完結ではなく、しっかり卒業編までやりますし、なんならメイジアン・カンパニーやらキグナスの乙女も書くと思います。

後者二つは未定ですが、卒業までは確定です。このような拙い作品ですが是非最後まで見てくださるとありがたいです。

…ホントなんでこんな回で言ってるんだろ。


九校戦編 その十

九校戦三日目の午後。あの後摩利が優勝し、ピラーズ・ブレイクでも男女ともに優勝した一高の天幕にて。

本来このような快挙を成し遂げたのだから選手達の喜びはひとしおのはずである。しかしそれに反し、天幕内は重い雰囲気だ。理由は勿論今日、摩利に妨害工作が行われた疑いがあるからだ。

 

もしあの事故で、総司が介入していなければ摩利と七高の選手は大怪我を、魔法が使えなくなるほどの怪我を負ってしまう可能性もあった。もしあれが悪意ある行動によるものだとすれば現在一高は狙われていると言っても過言では無い状況だ。そんな中では四競技同時優勝も素直に喜べるものでは無い。三巨頭を始めとして、選手達は天幕に集合していた。勿論エンジニア達もだ。今回の大事故未遂に直前に気づけた男、橘総司の話を聞くためである。

この緊急会議は克人や真由美、何より直接の関係者である摩利の強い要望により開かれる事になっていた。達也の話から察するに総司は事故の前に魔法の発動を認識していたとのことだ。ならば彼から対処法を教えてもらう、無理ならば彼には会場全体における警備のような役割について貰おう…という考えの基開かれている。

 

だがこの場にはその肝心な総司がいなかった。確かに現在時刻は集合時間より30分早い。総司が来ていないのも分かるが、この事態を重く見ている達也や深雪達を含める他の選手は焦りを含む表情でソワソワして総司を待っている者が多数だった。

 

 

「邪魔するで~」

 

「「「「!」」」」

 

 

そんな天幕になんとも間の抜けた声が響く。この状況でそんな余裕でいられる人物など一人しかいない、そう橘総司だ。

 

 

「総司!この非常事態になんとも緊張感の…な…い?」

 

 

摩利が入ってきた総司に声を掛けようとして…彼の持っている物に目を奪われ最後まで言えなかった。

 

 

「…総司君、その右手に持っている物は何かしら?」

 

 

天幕が凍り付く中、必死に言葉をひねり出した真由美の問いに総司はあっけらかんと答える。

 

 

「何って…

 

 

 

 

 

 

 

ケーキですけど…」

 

「「「「「何で!?」」」」」

 

「うるさ」

 

 

そう、総司の右手にはケーキが存在していた…しかもサイズはよくあるウエディングケーキほどに大きい。彼はそのケーキを片手で簡単に持っているが、このケーキの重量はどんなに鍛えた人間でも片手では持つことが不可能なサイズだ。克人が魔法でバフってやっとだろう。それはさておき

 

 

「ツッコミたい事が二つある。一つ、何で今ケーキを持ってきた?二つ、そのケーキどこから持ってきた?」

 

 

この異様な光景をみてSANチェックを行い無事成功した達也が問う。因みに深雪は失敗して2ぐらい減った。

 

 

「んあ?じゃあ、一つ目。甘い物食えば皆元気出るかなって思って。二つ目、持ってきたも何も俺が今し方作ってきた」

 

「「「「作ったぁ!?」」」」」

 

 

一つ目はともかく二つ目の返答に全員が…特に女性陣が驚いている。雫は『総司君だから』で納得し、美味しそうなケーキに目を輝かせていた。

 

 

「え、え?ちょっと待って!?このケーキホントに総司君が作ったの?」

 

「料理とかお菓子作りとか得意なんで」

 

「得意とか言うレベルじゃ無いぞ!?」

 

「モグモグ、総司君は何でも出来ますから。モグモグ、それよりこのケーキ凄く美味しいですよ」

 

「ああ、北山の言う通りだ。俺はあまりケーキのような甘い物を食べたことは無いが分かる、これは一流の味だ」

 

「「十文字!?」君!?」

 

「雫…!?」

 

「もう食べちゃってるじゃない…」

 

「いやホントコレウマいぞ、なあ紗耶香?」

 

「本当、とっても美味しいわ!凄いわね総司君!」

 

「桐原君、壬生さん、君たちもか…」

 

 

摩利や真由美を始めとした戸惑う者達を余所に総司に順応している面々は早速ケーキを頬張っている。コレには千代田と五十里の許嫁コンビも苦笑い。

しかし、この天幕内の視線が全て総司に向いた訳ではない…というか大半の視線が机に置かれたケーキを見ている。ようは皆食べたいのだ。

 

 

「モグ…!ね、ねえ総司君?このケーキお姉さんもっと食べたいな~って思うんだけど?」

 

「おかわりならいくらでもあります。女性陣を気遣って太りにくい素材を使ってるんでヤバいぐらい食わなきゃ問題ないと思います」

 

「しゃっ!」

 

「真由美…」

 

 

かくいう真由美も味見をしてみたところ一瞬でケーキの虜になってしまいおかわりを所望してしまった。摩利もそんな真由美を哀れみの目線で見つめるがすぐに彼女もケーキの魅力に落ちてしまうだろう…

 

 


 

「…」

 

「……」

 

「ここは無言の多い天幕ですね?」

 

「ここはスレッドではないぞ総司」

 

「俺も大概だけどネタが通じるお前も何なんだよ」

 

 

再び重い沈黙が広がっていた天幕内。しかしそれは先程の不安感からの物ではなく、ケーキが美味し過ぎて夢中になってしまった事に今更になって『やっちまった…』と思っている者が大半だった。因みに雫を始めとした総司の同類達は全くと言って良いほど罪悪感ややらかしの念を持っていない。皆が静かにしているからそれに習って黙っているだけだ。

 

 

「ところで総司、渡辺委員長の事故に魔法が使用された事に気づいたんだろう?対処法などがあれば教えて欲しいのだが…」

 

 

この沈黙を破って話を切り出したのは範蔵だった。彼は以前総司の家に遊びに行った時にもケーキを食べているので、『前とは違うケーキだな』ぐらいにしか今回のケーキ騒動を捉えていなかった。

 

 

「対処法?無いよそんなの。精霊魔法だからなあの妨害。隠密性が高すぎて俺ぐらいにしか分からんぞ」

 

「精霊魔法?具体的な術式は分かるか?」

 

「いや、分からん。二人を助けたときに七高の選手のCADを見たが精霊はいなくなった後だった。あの術式は発動したら痕跡を残すことは無いんじゃ無いか?」

 

「…ふむ、では総司。今大会において、選手達を警備する仕事を請け負ってくれないか?」

 

「範蔵君と可愛い女の子達の警備ならやります」

 

「分かった。希望通りの範囲でいい、頼めるな?」

 

「モチロンです、プロですから」

 

「…え?待って待って!?」

 

 

範蔵からの質問に友人のような態度で返答する総司。その仲良しな光景には一部を除いた選手達が驚愕し、森崎達一年一科生は悔しさを露わにしている。

そして範蔵がしゃべったことにより口を開いて良いのだと思った克人が手短にまとめる。速攻で終わった話し合いに真由美がケチを付ける。

 

 

「いいの総司君!?この九校戦の期間中、あなたの自由を縛ってしまうのよ!?」

 

「俺にとって移動時間は無いも同然ですから俺は普通の人より使える時間多いっすよ」

 

「七草、本人が良いと言っているのだ。それでいいだろう」

 

「それは…そうだけど…」

 

 

実を言うと今回総司から役立つ情報を得られなかった場合に彼を警備するという案に真由美は反対していた。自分に嘗めた態度を取るいけ好かない後輩だが、真由美の中でそこら辺の一般モブ後輩よりも総司の位置は数段上だ。心配もする。

だが総司自身の身体能力を引き合いに出され、克人の言い分はもっともなので真由美は言葉に詰まる。

 

 

「…」

 

 

しかし、その心配の表情の裏を見たような気がした総司は真由美に聞いた。

 

 

「真由美さんはただ俺を玩具にして遊びたいだけでしょ」

 

「あ、バレちゃった?」

 

 

などと小悪魔的な笑みを浮かべる真由美。その表情を見た総司と範蔵は即座にアイコンタクトを取る。

 

 

「(マズいぞ総司!このままでは俺の心臓がギャップ萌えで破裂してしまう!)」

 

「(知るか、勝手にくたばってろ)」

 

 

真由美により一名の死者が出たが、総司が会場で警備を行う事が確定したのだった…




魔法科世界の秘匿通信


・実は総司の料理及びお菓子作りの腕は十師族が雇うような一流のシェフやパティシエと同レベル以上の絶品である。


・実は範蔵は何回も総司の家に遊びに行っており、そこで彼の絶品を毎度味わっている。



本来は達也達が妨害に使われた魔法の解析をして、深雪が本戦メンバーに選ばれるとこですが、そもそも総司が術式を認識していた、摩利が大怪我してない、この二つによって吹っ飛んだので、コレで九校戦編上巻(原作)終了ですね。


そろそろ総司が試合で無双するぞ~

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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