魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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競技に入るとは言ったが総司がするとは言ってないぜ!


九校戦編 その十一

九校戦も四日目。ここで一旦本戦は終わり、新人戦が始まる。今日行われるのは男女バトル・ボードの予選と、男女スピード・シューティングである。新人戦は本戦と比べポイントが半分になる。ぶっちゃけ一高は本戦で現在無敗でポイントには余裕があり無理をする必要は無いのだが、予想よりも第三高校がポイントを伸ばしてきている。ここで成績が悪いと三高に抜かれてしまう可能性が出てきているほどだ。故にこの新人戦も勝たなくてはならないのだが…

 

 

「…森崎は初戦から『あの』吉祥寺真紅郎とか…」

 

 

達也は珍しく総司以外のことでため息をついていた。吉祥寺真紅郎、弱冠十三歳で魔法における『基本コード』の一つである『加重系統プラスコード』を発見した天才である。また魔法技能も高く、『不可視の弾丸』という魔法を用いる彼はこの競技での一番人気のウマ…失礼、魔法師だ。対する森崎は確かにドロウレスという技術を使えるが、スピード・シューティングとは微妙にかみ合わない魔法適正であった。いわば某黄金の浮沈艦が追込ではなく先行をやらされる、『出来るけど得意な訳ではない』程度止まりだ。つまり何が言いたいかって?森崎は初戦で負けるんだよ(辛辣)。

 

 

「オイオイ、美少女の試合前に野郎の試合のこと考えるのか?お前ソッチ側だったのか?」

 

「もう…美少女なんて…総司君ったら」

 

「…はあー」

 

 

ついでに目の前のバカップル(付き合ってない)にも達也は呆れていた。ここは競技に出場する選手の控え室…現在は一高の選手、北山雫が使用している部屋だ。ここには本来選手とそのCADを調整するエンジニアぐらいが居るものだが、雫の強い要望により総司もここを訪れていた。

呆れ気味の達也を余所に雫はCADを手に持って頷く。

 

 

「うん、完璧。自分のよりも快適かも」

 

「敵か!?」

 

「その会敵ではないだろ」

 

「分かってるぞ?」

 

「だろうな」

 

 

総司が茶々を入れてきていたが達也は軽くあしらう。

 

 

「ねえ、達也さん。やっぱりウチに雇われない?」

 

「大事な試合前に冗談を言えるなら余裕みたいだな」

 

「冗談じゃないよ」

 

 

達也が雫のCADを初めて調整したときから雫は達也を北山家お抱えにしようと何度も勧誘していた。

 

 

「専属じゃなくても良いから」

 

「…俺じゃ無くて先に勧誘するべき奴がいるんじゃ無いか?」

 

「んあ?」

 

 

雫の勧誘をやり過ごそうと彼女の好意を一身に受けながら全く気づかない鈍感クソ野郎に狙いを逸らそうと画策する達也。

 

 

「そんなことする必要ないよ。総司君はウチに雇われるのは確定、なんならもう雇われてるまである」

 

「職業選択の自由…」

 

「何か言った?」

 

「いえなにも…」

 

「言質は取ってるからね?」

 

「ヒエッ」

 

 

そうこの馬鹿は以前北山家に訪れた際に家族の前で言質を取られるガバをやらかしているのだ。そんな奴より不確定な達也を優先して勧誘するのは当然だ。達也は予想以上に総司が使い物にならなかった事に内心舌打ちしながら言い訳をまくし立てる。

 

 

「何度も言うが、その話は俺が将来ライセンスを取ってからにしてくれ」

 

「達也さんなら確実でしょ?」

 

「てかその言い方って逃げでは?」

 

「総司は黙っていろ」

 

「オクチミッフィーチャーン…」

 

 

総司の言うように達也は勧誘を先延ばしにする言い方で避けようとしていた。『話はライセンスを取ってから』なんて取った後に勧誘してもなんだかんだで断る気満々である。そもそもCADの調整にライセンスは必要ない。生計を立てるにはあった方がいい。位である。

 

 

「というか、そろそろだぞ雫」

 

「ホントだ…じゃあ行ってくるね、達也さん、総司君」

 

「頑張ってこい」

 

「雫ちゃん主人公の無双ゲーが始まるってマ?」

 

 


 

 

観客席には親友の雄姿を見届ける為にほのかが、その周囲には雫を応援に来たいつものメンツがおり、更に離れたところには真由美、摩利、鈴音の姿もあった。

 

そしてコートに雫が出てきた。彼女は後ろを振り向き、ほのか達に手を振る。それに気づいたほのか達も振り返す。

 

 

「頑張って!雫ー!」

 

「雫さん、頑張ってください!」

 

「雫なら絶対に勝てるわ!」

 

「北山さん!応援してるぞー!」

 

「やっぱアンタの名字呼びって慣れないわね。頑張って!雫!」

 

「北山さん!落ち着いて臨めば必ず勝てるよ!」

 

「雫ちゃん…君がナンバーワンだ…」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

上からほのか、美月、深雪、レオ、エリカ、幹比古、今観客席まで来た総司だ。相変わらずの総司の神出鬼没には一行もまだ慣れないようで驚愕していた。

その応援を聞いた雫は笑みを浮かべ、開始位置に付く。

 

そして開始のランプが灯ってクレーが射出された。得点有効エリアにクレーが入ると、即座に砕け散ってしまう。

 

 

「うわ豪快」

 

「これってもしかして、有効エリア全域に魔法を作用させているのでは?」

 

 

美月の質問に答えたのはほのかだ。

 

 

「そうですよ。雫は領域内に存在する固形物に振動波を与える魔法で標的を砕いているんです。内部に疎密波を発生させることで、固形物は部分的な膨張と収縮を繰り返して風化します。急加熱と急冷却を繰り返すと硬い岩でも脆く崩れ去ってしまうのと同じ原理ですね」

 

 

「だがそれだけじゃ負担が大きくて雫ちゃんの体が保たなくなる。だから予め有効エリア内にいくつかの震源を設定しているんだ。この震源からは振動波を与える仮想的な波動が発生している。魔法で直接対象を振動させるのでは無く、標的に仮想振動波を与え、標的内部で現実にすることで対象を崩壊させる仕組みのようだ」

 

 

ほのかの説明に付け加える形で説明する総司。まあ、彼の場合視界に映っているエイドスの変化から何を行っているかを推察しているだけだが。

 

 

「なるほど、そういった仕組みなんですね」

 

 

二人からの説明に質問者の美月は満足げになった。

ついでに少し離れたところでも同様の説明が鈴音によって行われていた。違うのは彼女は正確に魔法の内容を把握していたことだろう。

 

 

「…という仕組みです」

 

「なるほどな…」

 

「ご存じの通り、スピード・シューティングの得点有効エリアは、空中に設定された一辺十五メートルの立方体です。司波君の起動式は、この内部に一辺十メートルの立方体を設定して、その各頂点と中心の九つのポイントが震源になるように設定されています。各ポイントは番号で管理されており、展開された起動式に変数としてその番号を入力する事で、対応する震源ポイントから球状に仮想波動が広がります。波動の到達距離は六メートル、つまり一度の魔法発動で震源を中心とする半径六メートルの球状破砕空間が形成されることになります」

 

「…余計な力を使っているように思えるんだが、北山は座標設定が苦手なのか?」

 

「確かに精度より威力が北山さんの持ち味ですが、この魔法の狙いは精度を補うことでは無く、精度を犠牲に速度を上げることにあります」

 

 

鈴音の表情は動かない。なぜなら既に一度驚いているからだ。

 

 

「つまり、北山さんはその気になればもっとピンポイントな照準も可能と言う事よね?ならなぜこんな方法で…」

 

「この魔法の特徴は、座標が番号で管理されていることにあります」

 

 

雫は未だに取りこぼしはない。説明通りの魔法が正しくクレーを破壊している。

 

 

「制御面で神経を使う必要がありませんから、魔法を発動することだけに演算領域のポテンシャルをフルに活用出来ます。連続発動もマルチキャストも思いのままです」

 

 

その言葉と共に競技が終了した。結果はパーフェクト。その結果をだした本人の顔には笑みが浮かんでいた。




魔法科世界の秘匿通信


・実はこのアクティブ・エアー・マインはこの世界では以前総司が地震を発生させたことから着想を得て作られた。


・総司が認識しているのは何をしているかだけであり、起動式を読むことは出来ないし、読めても分からない。



本作で鈴音ちゃんが一番しゃべった回でしたね。次回は続きの説明とほのかのバトル・ボードですね。終われば総司のクラウド・ボールが始まる!

原作で一切描写が無かった(はず)新人戦男子クラウド、書けるか分からねえぜ!

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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