魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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前書きって書くこと無くなりがち


前回描写された『北山家に訪れた…』という話は九校戦編終了後、夏休み編との間に番外編として投稿します。


九校戦編 その十二

大きな拍手を受けながら退場していく雫を見ながら鈴音は説明を続ける。

 

 

「『能動的空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)』…あの魔法の固有名称です。司波君のオリジナルだそうですよ。大きな起動式ですから北山さんの処理能力ありきの魔法ですが」

 

「よくもまあこんな魔法を…」

 

「いやしかし、実に面白いじゃないか」

 

 

目の前で新魔法のデモンストレーションでも見た気分の真由美は達也の技術力と発想に驚愕を通り越して呆れている。一方摩利の顔には笑みが浮かんでいる。

 

 

「空中に仮想立方体を設置するのでは無く、自分を中心とする円を設定して、その円周上に震源を設置すれば全方位に有効なアクティブ・シールドとして使えるかもしれん」

 

「持続時間が問題ね。短すぎるとタイミングが難しいし、長すぎると自分が巻き込まれる可能性が出てくるわよ?」

 

「そこは術者の腕の見せ所だろう。…よし、今晩にでも総司に頼んで達也君をとっ捕まえてきてもらって私のCADにインストールさせよう」

 

「…試合の邪魔にならないようにね」

 

 

興奮する親友を呆れた目で見ながら真由美はこうこぼした。

 

 


 

 

予選を済ませた雫はつまらなそうにぼやいていた。

 

 

「なんだか拍子抜け。もう少し楽しめるかと思ってたのに」

 

「そう言うな。死角を突いてくることはないとは思ってはいたが、そんな意地の悪い設定はされていなかったな」

 

「そんな設定があっても雫ちゃんなら問題ないだろ?」

 

「モチロンだよ総司君。なんなら全部死角でも問題ない」

 

「それは死角と呼べるのか…?」

 

 

総司が戻ってきて会話に参戦したあたりで達也が席を立つ。

 

 

「雫、本戦用のCADは調整済みだ。問題ないとは思うが、違和感があれば可能な限り調整するからな」

 

 

彼はこの女子新人戦『早撃ち』において出場選手三人全員のエンジニアを担当している為大忙しなのだ。達也が控え室から退室した瞬間雫に耳でも生えたかのようなテンションで総司に詰め寄る。

 

 

「総司君はさっきのを見てどう思った?」

 

「とてもかっこよかったぜ!下手すりゃ真由美さんより人気出てしまうんじゃ無いか?」

 

「そんな…私が一番なんて…」

 

「あれ?そんなこと言ったっけ…まあいいや似たようなもんだろ」

 

 

恋は盲目とはよく言うが、どうやら幻聴も併発してしまうようで、雫には総司から世界で一番だと褒められたかのように感じた。総司は一番とはスピード・シューティングの中でだと認識したので特に訂正しなかった。

ふと総司は褒められて大喜びしている雫をみて、思わず手を伸ばす。

 

 

「っ!?そ、総司…君?」

 

「頑張ったな雫。偉いぞ。このまま優勝まで駆け上がっていけ!」

 

「う、うん…」

 

 

現状を端的に説明すれば、総司が雫の頭を撫でながら更にエールを贈っているのだ。流石に想い人に撫でられるなど初めての雫には孤児院で子供達相手に磨かれた総司のそれは荷が重かったようで

 

 

「わ、私着替えるから…!」

 

「お、そうか。じゃあまた後でな!」

 

 

即座に総司を部屋から出した後、全体が真っ赤に染まった顔を戻そうとしながら、次の試合の為の確認をたどたどしく始めたのだった。

 

 


 

 

一高本部がある天幕に戻った真由美達の元には雫以外の新人戦スピード・シューティングの結果が知らされた。

 

 

「三人とも予選突破か…」

 

「今年の一年女子は特にレベルが高いのか?」

 

 

決勝トーナメントに進出出来るのは予選二十四名の内の八名である。その八名の中に同じ学校の選手が三名がともに入っているというのは、過去本戦、新人戦通してあまり例が無い。ここだけを見れば明らかに一高選手達の才能が突出していると思えるだろう。

 

 

「摩利、それだけじゃ無いのは分かっているでしょう?」

 

 

だがこの天幕に集う一高幹部には、この結果には個人技能だけではなく、例の技術チートの存在が大きい事を全員が理解している。それはモチロン摩利だって承知だ。真由美からのツッコミに肩を竦め、別の話題を振る。

 

 

「バトル・ボードの方はどうだ?」

 

「男子は二レース終了していずれも予選落ち。女子は一レースに出場して予選突破です」

 

「男子はあと一レースか…。女子の方は光井さんが予選突破確実でしょうから、あーちゃんには頑張って貰わないと」

 

「…当校も、もう少し技術者の育成に力を注ぐべきか…」

 

 

バトル・ボードの結果を説明する鈴音。真由美がこぼした独り言に、克人はここにも男女で技術者の力量の差が出ていることに苦い顔で続いたのだった。

 

 


 

 

スピード・シューティングの準々決勝は四つのシューティングレンジを使用して行われる。決勝トーナメントの八名が全て別々の学校であれば四試合同時に行われるのだが、今回のように同じ学校の選手が含まれている場合、試合が重ならないように時間が調整されている。

とは言っても、同じレンジで一試合ずつ行う準決勝に比べてどうしても各試合のインターバルは短くなってくる。今回の第一高校のように三名全員が準々決勝に進出するとそのエンジニアの労力は察するところである。

 

 

「達也さん、大丈夫?」

 

「大丈夫だよ」

 

「珍しく疲れてんな、達也」

 

 

控え室に駆け込んできた達也が、疲れているように雫には見え、総司には本当に疲れを見透かされていた。だが、ここで雫を不安にさせて試合に悪影響がでないようにと即座にCADの最終チェックを始めた。

 

 

「予選で使った時の物とは全くの別物だ。なにか違和感があったりしたか?時間は無いが調整する」

 

「そんなの無いよ。むしろしっくりしすぎて怖いぐらい」

 

「いいなー、俺の調整してくれよ」

 

「お前はそもそもCADを持ってないし使わないだろ」

 

「そーだったわ…」

 

 

相変わらずの二人の会話にクスッとなる雫。どうやら緊張はあまりしていないようだ。

しかしすぐに気合の入った顔になり達也に問う。

 

 

「二人とも勝ったんだよね」

 

「ああ」

 

 

この言葉から分かるようにチームメイト二人も準決勝に勝ち上がりを決めていた。

 

 

「大丈夫、何時も通りにやれば雫も勝てるさ」

 

「他の奴らなんて雫ちゃんと比べたら天と地ほどの差がある。君が負けるはずは無い」

 

 

達也と総司が雫に激励を述べる。

 

 

「ありがとう、二人とも。…行ってくる!」

 

「頑張ってこい!」

 

「客席で応援するけど応援団風とオタ芸風どっちがいい?」

 

「両方で」

 

「ムズくね?」

 

 

二人は試合に臨む雫を強く送り出した。

 

 

 


 

 

試合は明らかなワンサイドゲーム、雫の圧勝である。

他の観客は一年生がここまでの実力を持っていることに驚愕している。そんな中、要望通り学ランを着て中に『雫Love』と書かれた痛いオタク風シャツを着込み、応援団風とオタ芸を融合させた新たな応援を行いながら総司は目の前で使われている魔法を読み取っていた。

 

 

「(これは移動系…いや収束系か。さっき使ってた振動系魔法と同時に、クレーをマクロ的に認識し、中央部で紅色のクレーの密度を高める収束系の魔法の影響で相手クレーをはじき出しているのか…)」

 

 

総司は普段からやれよと言われそうな観察眼で雫の魔法を分析する。

 

 

「(だが、特化型CADは同一系統の魔法しか格納できないのでは…?いや、あれは特化型ではなく、汎用型なのか。確か汎用型には照準補助機能を付けられないはずだが、違ったのか?)」

 

 

だが流石に総司もCADの専門家では無い。特化型の機能を汎用型に繋いでいることに驚愕していたが、『達也だもんな…』で納得してしまった。

ここで表示された得点をみて総司が思った。

 

 

「(…あれ?もしかして、これ俺の応援要らなくないか?)」

 

 

実際は雫は応援のおかげでいつもよりも魔法の精度が上がっていたのだが、無くても普通に勝てるのでこの気づきは間違いでは無かったのだ…

 

 

「(これ、エイミィももう一人も勝てないだろ…やっぱ雫ちゃんがナンバーワンだったんやなって)」

 

 

内心雫の優勝を確信した総司は、応援に集中して取り組みだしたのだった。

 

 


 

 

 

その後かくかくしかじか四角いムーブがあり、新人戦女子『早撃ち』は一高の三人が上位独占とかいう頭のおかしい結果を叩き出した。もちろん本部天幕は大騒ぎだ。

 

 

「凄いじゃない達也君!これは快挙よ!」

 

 

達也の背中を叩いて喜びを示そうとして、可哀想だからと代わりに総司の背中をバシバシ叩いて喜ぶ真由美。『何で?』と表情で訴えてくる総司をフルシカトして、叩く。

 

 

「会長、ほどほどに。司波君が困っています」

 

 

あまりにも大きな声で喜ぶため真由美を諫めに入った鈴音。『一番迷惑被ったの俺じゃね?』という総司の視線をガンスルーして真由美を止めるが、二人して総司を雑に使っている辺り同じ穴の狢だ。

 

 

「あっ、ごめんなさい達也君…でも、これは本当に快挙なのよ!」

 

「えっ?本当に俺に謝罪なし?」

 

「優勝したのも準優勝したのも三位になったのも、選手であって俺ではありませんよ」

 

「確かに北山さんも明智さんも滝川さんもよく頑張ってくれたわ」

 

「パワハラで訴えようかな…」

 

 

生徒会長に褒められた三人の内、雫以外は緊張が表情に出ており、なんとか「ありがとうございます」と返した。

 

 

「ですけど、やっぱり達也さんのおかげです」

 

「俺はサポートしただけなんだがな…」

 

「何を言うんだ達也君。今回出場選手上位独占という快挙には、君のエンジニアとしての手腕が大いに貢献していることを、ここの全員が認識しているんだぞ」

 

 

雫が達也を褒め、達也が謙遜した事に反応した摩利が、『そんなことはない』と言葉を紡ぐ。その言葉に選手達は頷いた。

 

 

「自分でも信じられません」

 

「急に魔法が上手くなった気がします」

 

 

エイミィと滝川の言葉にも、確かな気持ちがこもっていた。

 

 

「特に北山さんが使用した魔法は、大学の方から『インデックス』に正式採用するかもしれないと打診が来ています」

 

 

鈴音のこの発言には天幕内の人間の殆ど…達也と総司以外の人間が絶句して固まった。インデックス。正式名称『国立魔法大学編纂・魔法大全・固有名称インデックス』。これに採用されると言うことは、既存魔法の亜種では無く、完全に新種の魔法であると認められることと同義だ。これは魔法開発に従事する国内の研究者にとって一つの目標とされる名誉なことだ。

しかし達也と、そして総司は予想していたかのように答えた。

 

 

「そうですか。では開発者名の問い合わせには、総司の名前で回答してください」

 

「何を言ってるんだ達也君!?あれは君のオリジナルなんだろう?それに使用した訳でもない総司が開発者である事になるんだ?」

 

 

驚きにまみれた表情で問う摩利に二人は冷静に答える。

 

 

「理由としては、この魔法は軍事転換が容易である点です」

 

「「「「…っ!」」」」

 

「仮に軍事使用された場合にはその開発者がバッシングを受けることになるでしょう」

 

「だから、一般家庭の達也には厳しいし、かといって使用者の雫ちゃんにいわれのない批判を浴びせる訳にはいかない」

 

「そもそもこの魔法は以前の総司の行動から連想して開発した魔法です。言わば、本元は総司なので彼が開発者というのもあながち間違いではない」

 

「なら、九島の後ろ盾がある俺が開発者として名前を登録すれば、九島に喧嘩を売らないようにと下手に騒ぐ奴も減るし、何より俺はバッシングとかどうでもいいんで」

 

 

予め打ち合わせていたかのような二人の説明に、その可能性を否定しきれなかった一同は顔を伏せる。ただ一人、雫だけが異議を唱える。

 

 

「ダメ!それじゃ総司君が悪い人みたいになっちゃう…!」

 

「他人にどう思われてようと、俺は仲間に信頼されてるならそれでいいんだ」

 

 

この提案は、そもそも普段から伝統派の刺客と戦う総司が、今更敵の百人千人増えても構わないという考えからのものだ。二人の、特に総司の雫や達也を守ろうという思いは強い。

少し暗い話になり場の雰囲気が沈むも、

 

 

「そこまで!とても幸先の良いスタートを切れたんだからここで暗くなったらだめでしょ?達也君、それに総司君も期待してるからね」

 

「期待より謝罪をくれ」

 

 

真由美からの言葉に達也は控えめに頭を下げ、総司は先程叩かれていた事を根に持っていたような口調で文句を言った。

 

 


 

 

「もう直ぐですね」

 

「ほのかは絶対に勝つよ」

 

「ああ。CADでのサポートは出来ないが、作戦はしっかり練ってきた。ほのかなら間違いなく予選は突破出来るだろう」

 

「言うね~」

 

 

女子新人戦バトル・ボード午後の部開始前、達也と総司、深雪と雫の四人は客席にてレース開始を待っていた。

 

 

「作戦というと…どういったものなのでしょう?」

 

「見れば分かるさ」

 

 

そう言って達也はスタートの準備をしている選手達に目を向ける。そこに三人も目を向けるとほのかが何故か色の濃いゴーグルを掛けていたのが見えた。

 

 

「ほのか、なんでゴーグルなんて…」

 

「水滴で見えなくなっちゃったりするんじゃ…」

 

「…あっ」

 

 

深雪、雫の二人はイマイチ達也の言う作戦とやらがよく分かっていないようだ。ただ一人察した総司は達也を見て、『お前鬼か?』と言いたげな視線を向ける。その視線に気づいたからという訳ではないだろうが、達也は三人にほのかと同じゴーグルを手渡す。小首を傾げる深雪と雫だが、達也と総司に言われ装着する。

 

そしてほのかの出番である第六レースのスタートが切られた瞬間、観客達は反射的に水路から揃って視線を逸らす。水路がまるで目の前でフラッシュを焚かれたかのように眩しく発光したのだ。この光に驚いた選手が一人落水した。

他の選手もバランスを崩し、加速を中断する中、ほのかだけが悠々とスタートダッシュを決めて先頭に飛び出した。

 

 

「よし」

 

「うわぁ、達也らしい考え方だな」

 

「随分と失礼な言い方をする。アレはほのかの得意を生かした立派な戦術だ」

 

「物は言い様だな」

 

 

達也がしてやったりと声を上げ、事前に察していた総司が文句を言う。

 

 

「…これがお兄様の作戦ですか?」

 

「これルール違反にならないの?」

 

「あくまで水面に干渉して発動しているからな。ルールの範囲内だよ」

 

 

雫の若干批判のこもった疑問に悪びれること無く答える達也。

 

 

「水面に干渉と言われると波を起こしたり渦を作ったりと水面の挙動にばかり意識が向きがちだ。だがルールで認められているのはあくまでも『水面に魔法で干渉して他の選手を妨害すること』だ。水面を沸騰だとか、全面凍結だとかは危険すぎるが、目くらまし程度の事は逆に今まで使われていなかった事の方が驚きだ」

 

「…小手先の策よりも正々堂々のレースを優先するのは血の気の多い奴ばかりな魔法師らしいっちゃらしいがな」

 

 

何の用意も無く目潰しを喰らった選手達の視力は中々回復しなかった。緩やかにであっても蛇行しているコースは視力を取り戻さないままでは全力疾走出来る物ではない。他の選手とほのかの間には決定的と言えるほどの差がついていた。

 

 

そしてその様子を天幕でモニター越しに見ていた真由美達は、客観的に状況を整理し、その策に驚きを覚えていた。

 

 

「…決まりだな」

 

「誰が考えたのこの作戦?あーちゃんじゃないだろうし…」

 

 

真由美がこぼした問いに鈴音が答える。

 

 

「司波君ですが」

 

「えっ、でも彼はこの競技を担当していないはずよ?」

 

「作戦の具申自体は光井さん本人からです。しかし起動式のラインナップを含めて作戦プランを練ったのは司波君だとその際に言っていました」

 

「…次から次へとやってくれるな達也君は」

 

 

その話を聞いた摩利の口調はどこか不機嫌だ。

 

 

「…工夫って大事よねぇ。老師の仰るとおりだわ」

 

 

摩利は多彩なテクニックを売りにしている。そんな自分ですら思いつかなかった作戦を見せられ、それを発案した達也の才能に嫉妬しているのだ。親友の真由美にはそれが理解出来た。

 

 

「貴女にとって面白くないのかもしれませんが、過去九年誰も思いつかなかった作戦です。ここは素直に感心すべきかと」

 

「…感心しているさ。だからこそ余計に癪に障るんじゃないか」

 

 

摩利はもう不機嫌さを隠そうともしない。

 

 

「でもこれって一回限りの作戦じゃないかしら?決勝トーナメントで対策されるわよね?」

 

 

真由美が口にした疑問は当然の物だが、それを摩利がきっぱり否定する。

 

 

「そんなこと心配する必要は無いだろ。あの男がそこを考慮していないはずがない」

 

「そうですね。これは次のための布石でもあります」

 

 

達也から作戦を聞いている鈴音がこう言うのだ。本当に問題はないのだろう。真由美は元からなかったに等しい僅かな不安を消し、次のパフォーマンスを楽しみにする観客のような気持ちでモニターを眺めていた。

 

 

その後しばらくして本日の結果が集まった時、一高天幕内は意外にも重苦しい空気が流れていた。

 

 

「女子はかなり良い結果だったけど…」

 

「男子がここまでとはな…」

 

「ほぼ壊滅状態ですね…」

 

 

そう。今日の競技に出場した一年男子はほぼ全員が予選落ち、森崎は『早撃ち』においていいところまでは行けたはずだが、初戦の相手があの吉祥寺真紅郎では無理もないだろう。

 

 

「女子の方の貯金でも、足りなくなる可能性があります。せめて男子には一競技ぐらいは優勝して貰わないと…」

 

「その点に関しては明日のクラウド・ボールに総司君がいるから大丈夫でしょ」

 

「本当か?アイツが魔法競技で優勝できるとは思えんな…あの身体能力があったとしてもだ」

 

 

男子の救世主は総司だ。と言いたげな真由美に摩利は当然の疑問を投げかける。総司が魔法を使えないことは周知の事実だ。摩利が疑いたくなるのもうなずける。だがその不安は続く鈴音の一言で吹き飛んだ。

 

 

「いえ、彼は間違いなく優勝できるでしょう。彼は練習の際に無敗を誇っていました。それは、()()()()()()()()()()()()です」

 

「な!?真由美、お前総司に負けたのか!?」

 

「そうよ~酷いのよ総司君!私に何もさせてくれなかったんだから!」

 

「先日の会長もそうだったではありませんか。そう言うのを因果応報と言うんですよ」

 

「でも『ダブル・バウンド』すら軽々しく乗り越えてくるのにはムカついたわね」

 

「アイツにはそこまでの実力があるのか…」

 

 

摩利は真由美と鈴音が嘘を言っていないことを見抜き、本当に大丈夫である事を確認した。となれば目下の問題はそこではない。

 

 

「だが男子の不振は『早撃ち』だけではなく『波乗り』もだ。このままズルズルと不振が続くようでは今年は良くとも来年以降に差し支えてくる」

 

「つまり負け癖が付くと言いたいのか?十文字」

 

 

会話に参戦した克人が挙げたのは今年度だけでなく来年度以降を見越した問題点だった。

 

 

「男子の方には梃子入れが必要か…」

 

「でも十文字君、今更どうやってやるつもり?せめて終わってからでないと…」

 

「…今年は、総司に託すしか無いか」

 

 

克人は、若干諦めたかのような台詞を吐き、ため息をついた。




魔法科世界の秘匿通信

・応援の為とはいえ、曲がりなりにも『雫Love』Tシャツを自作している時点で総司は雫に対して他の者よりも特別な感情を抱いているのは明白だが本人がそれに気づいていない。


・ほのかのスタート時に思いっきり乳揺れが起き、それに対して反応したかどうか深雪と雫がそれぞれの相手を見て確認したが、達也はモチロン反応しないし、総司は意外と貧乳派なので全くの無反応だったので二人は安堵した。


前回の後書きで『次で四日目終わらせる!』なんて意地張ったせいで今回の文字数が二話分の文字数になってるの草生える。書くのに二日かかってるしこれ分けた方がよかったな…

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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