総司君、魔法割と理解してないか?と。
これはタイトル詐欺にあたるのではないでしょうか?私は不安です。
ので今回、アンケートでタイトル変更をするかしないかを決めたいと思いました丸
13829対0
先程行われた橘総司の試合のスコアである。
このスコアには敵味方問わず、多くの人が驚愕を隠すことが出来なかった。
クラウド・ボール会場客席では…
「総司君、凄い!」
「「「「「………」」」」」
まるで我が事かのように喜びを露わにする雫とは対称的に、レオやエリカ、幹比古に美月、そしてほのかは完全に言葉を失っていた。そもそも総司がここまでの実力だとは想像もしていなかったのだ。その点で言えば雫も予測してなかったが、彼女は総司が自分の想像を超える事がデフォルトであり、正確に予測できて初めて対等に立てると考えている。別にそんなことしなくても立てるのだが。
ともかく雫以外のメンバーは全員が驚愕…いや、ある種の
場面は切り替わり一高天幕内。
練習の様子を見ていたため彼の実力を事前に把握していた真由美や鈴音、『あいつならこれぐらい』とどこかずれた思考をする範蔵と克人以外の選手達は揃って沈黙を貫いていた。
「…一応聞いておこう。総司はどんな魔法を使ったんだ?」
その沈黙を破ったのは摩利であり、その質問に答えたのは鈴音だった。
「彼の使用した魔法は刻印魔法によって少ないサイオンでも十分な出力を生み出せるようになった硬化魔法ですね。彼のスイングに耐えられるようにと五十里君が必死に考案していました」
と鈴音は淡々と言う。まずそもそも魔法競技において魔法を補助にしか使わず、完全に身体能力だけでここまでの点数を取ったと言う異常には、きっと目を逸らしているのだろう。
「ホント、容赦ないんだから。私もあれで何回負けたか…」
と苦々しげに言うのは真由美だ。総司と練習試合をした彼女のベストは3824対0。途中で何故か『ダブル・バウンド』やその他の魔法が作用しなくなっていることに気づき、ボールに直接的な干渉を行わない魔法で砲撃のように打ち返すという戦法に切り替えた為失点をここまで抑えられたのだ。だが一番の問題である総司本人に対し、殆ど魔法を封じられたとも言える、ただの女子高生が超人に敵う道理など無かった。
総司の異能はあの時アイネブリーゼに居た者と、ほのかと雫の親友ペア、新入り幹比古を擁する
これまで散々総司を馬鹿にしてきたが、圧倒的な実力を見せつけられ、新人戦モノリス・コードで行う予定の作戦立案があながち馬鹿の思考によるものばかりではないと直感した森崎は歯噛みするしか無かった。
場所は変わって三高天幕内。
ここではあのダークホースの登場に焦りが募っていた。というのも、あの化け物がモノリス・コードに出場するからだ。あの余裕と明らかなオーバーキルっぷりに恐らくクラウドの優勝は確実に総司だろうと仮定した場合、彼らのエース、一条将輝や吉祥寺真紅郎ですら勝ち目の低い戦いになると予想されたモノリス・コードにおける対策を話し合っていたのだ。
なお、試合終了から少し経過したが、現在は将輝の姿は天幕内にない。どこか外出?と思われるかもだがそもそも将輝は裏で行われている新人戦男女ピラーズ・ブレイクに出場している。彼はまもなく始まる自分のこの日最後の試合に向かった。その時の動揺ぶりからは少し成績が不安視されたが、そもそも『氷倒し』と一条家の『爆裂』は相性が良すぎる。勝ちは必定だろう。
「吉祥寺君!ホントにあんな化け物に勝てるの!?」
「モノリスは基本的に物理攻撃禁止だ。あのパワーで殴られる事は無いだろうが、少しでも彼ら相手にダウンをするとあっさりとヘルメットを取られる可能性はあるね」
「おいおい、それはお前や一条にも言えるのか!?」
「そこは一高の他のメンバー次第だね。彼らの実力はどれほどのものなのかな?」
「どっちとももう一つの競技は予選にも上がれてないぜ」
「まあ、森崎って子は一回戦目で吉祥寺君と当たったことが運の尽きだったねー」
「(…ふむ、戦ってみた感じ、あの森崎という選手はそこまで魔法技能が高い訳では無い…だが森崎と言えば『クイック・ドロウ』だ。早撃ちが得意ならばモノリスで化ける可能性は十分にある。)」
三高の二代看板であり、ブレーンでもある真紅郎は頭を悩ませる。他の選手ならばまだしも、総司が出場している事が厄介すぎる。しかし、真紅郎は勝機も見いだしていた。
「(彼はあそこまでの実力がありながら、二科生とのこと…実力を隠していた?いや違う…、魔法そのものの練度は本当に二科生並と言うことなのか?)」
あの異常な試合を見ても総司を過大評価せず、どこかに弱点があるかを見いだそうとするその姿勢はまさしくブレーン。流石は『カーディナル・ジョージ』と言ったところか。
とそこで一人急いで会議に割り込んできた生徒がいた。彼には会議中の試合の進展について報告するようにしてもらっていた。
「どうしたんだい?なにか問題が?」
「…良いニュースと悪いニュース、どっちが聞きたい?」
「…良いニュースからにしてもらおうかな」
「将輝が決勝トーナメントに出場することが確定した」
「将輝なら当然だろう。で?悪いニュースの方は?」
親友の勝利は当然だといいながらも笑みが隠しきれない真紅郎。しかし次の報告を聞いた瞬間に先程と同じ顰め面に戻る。
「それは…一高の橘って奴が、三高の代表を倒してクラウドで優勝しちまったんだよ」
「…やはりか」
顰め面になりこそしたものの、真紅郎にはこの結果が予想出来ていたのだ。また総司の試合がさっさと終わっているのには理由がある。彼は雫の試合を見終わった後すぐに会場に移動しているのだ。つまり言うと総司は決勝トーナメント出場者が集まる際に、非常に強い空腹を感じていたのだ。そんな空腹を感じれば総司の機嫌が悪くなるのも当然だ。故に総司の表情はまるで何人か殺しているようなー事実何人か殺しているのだがーものに見え、恐慌状態に陥った選手が多数おり、そう言った選手達が全員棄権を申し出たのだ。
そして三高の代表を始めとする一部の者も一セット目に五桁越えの圧倒的な点差をつけられ、為す術無く敗北したのだ。
「…やはり、彼の対策は必須か…」
真紅郎はそう重い口調で呟くのだった…
横浜中華街某所にて…
「何なのだあの化け物は!」
ここは今回の九校戦において一高を妨害している無頭竜の日本支部基地だ。そこで幹部達は揃って頭を抱えていた。当初彼らはボスからの警告を『たかだか学生に何を』とまともに取り合わずに今回の九校戦に臨んでいる。しかし蓋を開ければどうだ。会場中にちりばめた魔法の全てが総司によって無効化され、唯一妨害魔法が発動した本戦女子バトル・ボードでも後少しのところで驚異的な身体能力で選手達を救助されてしまった。
挙げ句の果てには今回のクラウド・ボールでの圧勝だ。まるでギャグ漫画の住人と見まごう程の馬鹿らしさを出しながら相手を蹂躙する姿はまるで将来の自分の姿を現しているかのように感じてしまった幹部達の恐怖心は察するところだ。
「このままではいずれ『電子金蚕』もバレてしまうぞ…」
「もしその時は…ジェネレーターに観客達を殺させるのだ」
この時の判断が彼らの首を絞めてしまった事を、今だ彼らは知らない。
場所は戻ってクラウド・ボール選手控え室にて
「勝ったぜよ」
「圧勝でな」
「やはり俺は最強なのかな…」
「「「……」」」
「三人とも黙らないでくれません?」
「いやいや、流石にやり過ぎだぜ総司。五桁超えるとか人間じゃねえって」
「桐原先輩も頑張ればこれぐらいできるでしょ」
「できるわけねーだろ!?」
「ダメだよ武明君弱気になっちゃ!絶対出来ないことなんてこの世にはないんだから!」
「あるよ?普通にあるよ?そんな軽率にやれとか酷くないか紗耶香?」
「しかしホントに凄いよ君は。おかげで魔法戦術じゃなくてラケットの耐久性を優先して考えなきゃいけなくなったのは想定外だったけどね」
「その節はありがとごぜます、五十里先輩」
「総司が他人に感謝を伝えるだと…!?」
「北山さん以外にしてるの初めて見た…」
「そんなに感謝しないような顔してる俺?」
「「うん」」
「うわーん!二人がいじめる~!」
「橘君、そこで僕に泣きつくのは止めてくれないかな?」
「なんで!?」
「千代田の奴に勘違いされたくないんだろ、ほら…同性愛者だとかさ」
「ああ、ホモって勘違いされちゃうかもってことね!」
「オイィィィィィィ!俺がオブラートに包んだ意味ねーだろうがぁ!それに魔法師でそれは基本御法度だからってのもあるからな!」
「なるほど!つまり魔法師はさっさと一発ヤって子作りしろって事ですね!」
「言い方が生々しいよ橘君…」
非常に騒がしい三人と巻き込まれた可哀想な一人。
橘総司、桐原武明、壬生紗耶香の三人と、総司の担当エンジニアだったが故に巻き込まれた五十里啓の四人は控え室で騒いでいた。今回の九校戦におけるクラウド・ボールは本戦、新人戦ともに終了したためもうこの会場は使われない為、このように部屋のように占領しているのだ。本来ならば追い出されるはずなのだが総司のバックにはあの九島烈がいることを考えるとスタッフも軽率には動けない。故に見逃されている。
「そう言えば新人戦ピラーズ・ブレイクどうなりました?」
「一高男子はボロボロだったけど、女子の方は三人とも決勝トーナメントに出場が決定したよ」
それを聞いた総司は非常に悔しそうな顔をした。
「くっ、雫ちゃんの試合を一回しか見られなかった…」
「…ねえ総司君」
「?はいなんでしょう」
総司が漏らした呟きに反応した壬生が総司に問う。
「総司君って北山さんのこと好きでしょ?」
「「ブー!?」」
壬生のその直線的すぎる質問に驚いた桐原と五十里。二人してコーヒーを飲んでおり、それを思いっきりお互いの顔面に吹き出してしまった。謝罪を混ぜながらいそいそと魔法で汚れを落とす二人を横目に壬生が続ける。
「そこのところどうなの?」
「え?雫ちゃんの事は大好きですけど?」
「「ブー!?」」
壬生の質問にあまりにも予想外な返答をした総司驚いた桐原と五十里。汚れを落とした後、改めてコーヒーに口を付けた二人はまたしてもお互いの顔面にに吹き出してしまう。そんなマヌケ二人はさておいて、壬生は続けた。
「そうなのね。でもそれって友達としてでしょ?異性としてはどう?」
「い…せい…?」
「そう。北山さんのことを女性として好ましく思っているわよねって聞いてるの」
「女性と…して…」
わなわなと震え始める総司。
「分からない…俺は一体あの子の事をどう思っているんだ…?」
「総司君、それは答えにしないといけないわ。答えにしないままだと、北山さんに、なにより君自身に失礼よ」
「…すいません、俺もう帰ります」
総司はそう言って部屋のドアを開けた途端超高速で走り出した。
魔法科世界の秘匿通信
・因みにモニターで観戦していた司波兄妹も総司との生物的な格の違いを感じた
・完全に余談だが、総司の異能は『エイドスの正常化』であり、無効化はあくまで結果である。
次回はピラーズ・ブレイク終了までですかね
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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いいともー!
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~