「行くぞ五十嵐!お前は少し後方を維持しろ!」
「分かってる!」
試合開始と共に総司以外の二人がスタートダッシュを決める。
「…あのクラウド優勝の奴は動かないのか?」
「もしかするとこの競技が苦手なのかもしれないぞ!」
「だとすれば向かってくる二人をやればいい訳だな!」
対する六高は動かない総司を見て早とちりしたのか、総司の周囲の人間が聞けば『え?それはないでしょ』と言われること間違い無しの台詞をしゃべりながら森崎と五十嵐に相対する。
「さあ、ぶっ飛ばすとするk、「飛ばせ!五十嵐!」「おうよ!」何っ!?」
自信たっぷりの表情で戦闘準備をしていた六高のオフェンスは仲間の魔法を受けて森崎が加速、自分を無視してモノリスまで向かったことに驚く。
この相手の虚を突いたプレーには、少ないが応援に来ている生徒からは歓声が上がる。因みに雫も応援に来ているが、今のところ総司が動かないので不機嫌そうにしている。
そんな中、森崎はモノリスに一直線に向かう。それが一高の作戦だからだ。森崎はこの策をあまり良く思っていない。それは何故か。自分達が必要とはいえ、勝利をもたらす直接の要因はあの
「くっ!コイツちょこまかと!」
「俺らの事は眼中に無いって感じだな!」
六高の残りの二人もモノリス前で森崎を迎撃するが、森崎は多少のダメージも覚悟でモノリスに狙いを付ける。モノリスを開く『鍵』となる無系統魔法を撃ち込む為だ。その行動に観客達は疑問を覚える。
モノリスを開いたとしてもその中に隠されている512のコードを入力しなければならない。セオリー通りならば相手選手を消耗させてから始めるのが普通だ。特に岩場ステージという見晴らしのいいステージでは。
だがそんなセオリーを無視して森崎は迷い無くモノリスに魔法を撃ち込みモノリスを割る。六高からの攻撃は収まってはいないし、モノリスを割られたからか更に強くなっている。そんな中で森崎は苦虫を噛みつぶしたような表情で無線を飛ばす。
「…モノリスを割ったぞ、橘」
「分かってる」
瞬間、六高モノリス周辺に突風が吹く。気づくと六高モノリスの傍には総司がいた。
「なんだと…!?」
「速すぎるだろ!?」
六高選手達は突如として移動してきた総司に驚愕している。
そんな選手達を余所に総司はコードの入力を始める。更には森崎と五十嵐は自陣モノリスへと後退していくではないか。つまりこれはもう総司一人で十分と言っているも同然だ。嘗められている。そう思った六高選手達はコード入力を行っている総司を妨害する。
「クソ!嘗めやがって!これでも喰らえ!」
六高の一人が放ったのは振動系魔法。魔法構築に時間がかかる代わりに相応の威力を持った魔法だ。これを喰らえばプロの魔法師とて無防備な状態では脳震盪確定である。だが…
「…なんでだよ!?何で倒れないんだ!?」
総司には魔法は効かない。総司の異能、『エイドスの正常化』は自身に掛けられた魔法にも作用する。振動系で
事実総司を脳震盪させるには総司の防御力を上回る程の攻撃力で
「魔法が効かない…だが、それは一応予測済みだ!」
だが六高も馬鹿ばかりではなかった。総司が魔法を無効化できる可能性を考慮したブレーンがいたのだろう、彼らのCADには間接的に魔法行使をして攻撃する魔法…空気圧縮弾などが多めに入っていた。
ここで六高が選んだのは移動系魔法。岩場ステージである事を活かし、大きめの岩を飛ばして攻撃した。流石にこれを防ぐには魔法を使うしか無いだろう、そうすればコード入力を中断せざるを得ないと…六高は楽観視していたのだ。
「…邪魔」
総司がコード入力の途中で軽く手を振るう。すると爆風が吹き、岩に掛かっていた移動系魔法が中断されたのだ!更に岩はその風に押し戻され、遠くに飛んでいった。
「…そんな、嘘だろ…?」
六高の選手は絶望した。総司が何をしたのか分からなかったからだ。魔法を発動した兆候はない。もし仮にあったとしよう。魔法を無効化した理由が分からない。彼はどうやら『術式解体』を知らないようだ。だが、知っていたとて意味は無い。何故なら総司は『術式解体』なんて高度な魔法を使えないし、使う必要が無い。彼の異能は彼が起こす運動エネルギーにも作用する。彼が起こした風は魔法師にとって『悪魔の風』と言っても差し支えないだろう。
やがてコードの入力が終わり、一高の勝利が確定した。
観客も、モニターで見ていた一高及び六高の天幕内は、歓声や悔しさの叫びすら無い、一律の沈黙だった…
「総司君、一回戦勝利おめでとう」
「まだ、優勝した訳じゃないし、そもそも予選は後三試合あるよ?」
「それでも、お祝いしたかったの」
「雫ちゃんがしたいなら良いんだけどね」
「「……」」
一高控え室。本来ならメンバーもしくはエンジニアしか出入りしないはずのこの部屋で、部外者と会話する総司。最も、迷惑ならその部外者を追い出せば良いのだが、森崎達よりも成績が高く優秀で、今回の九校戦でも二種目優勝という素晴らしい結果を出した北山雫が相手では彼らは強くでることなどできない。そして雫と総司の雰囲気は噂通りカップルかな?と思ってもしかたないようなものだ。ここで邪魔をすればやぶ蛇というものだ。
「次は四高戦だけど、自信の程は?」
「フッ、さっきの試合を見て雫ちゃんはどう思った?」
「とてもすごいなあと思った」
「小学生かな?」
「誰の体型が幼児体型だって?」
「言ってないよ?」(汗)
雫はそう会話しながら、総司がどこか様子がおかしいことに気づく。何というか、よそよそしいのだ。この間、北山家に宿泊した時にも感じなかったし、九校戦が始まってからしばらくは変わりなかった。このように様子がおかしくなったのはクラウド・ボールがあった日からだ。その日に何かあったのだろうか…?
「ねえ、総司君。クラウドの日に何かあった?」
「えぇ!?ソ、ソンナコトある訳無いジャマイカ!」
「あったんだね?」
「はい…」
総司の返事は明らかに動揺していた。絶対何かあったと確信した雫は凄んでみればすぐに総司は認めた。
「何があったか、教えてくれる?」
「それは…言えない」
「私にも?」
「君だからこそだ」
その時、雫は総司が今まででもみたことないような真剣な顔をしていることに気づく。
「話せないのは申し訳ない…だが、いつか必ず、君に話すから」
「…うん分かった。どうしても助けが必要なときは相談してね?」
「それは無理だな」
「なんで!?」
雫の反応が面白かったのか総司は肩を震わせる。それに気づいた雫がべしべしと総司を叩く。総司には全く痛みはない。むしろ笑っているまである。
そんなやりとりを見ていた森崎は、舌打ちも嫌みを言うこともしなかった。ただ、自分の手に目を落としていたのだった。
「…圧倒的だな」
「最早ステージギミックでしょアレ。しかも即死系の」
一高天幕ではモニターを見ていた真由美と摩利が文句を言っていた。今までに無い勝ち方をした総司に驚かされたことにムカついたのだ。
「私も作戦を伝えられた時は驚きましたが…まさかこうも上手く成功するとは」
事前に伝えられていた鈴音でさえこの感想を抱くのだ。初めて見た二人が文句を言うのは仕方ないだろう。ウンウン頷いて『流石総司だ』みたいに言いそうなのが天幕内に
「これじゃ、この後の試合も余裕勝ちね!」
真由美よ、それを人はフラグというのだ。
そして二回戦目。対戦相手は四高、ステージは市街地ステージだ。
スタート地点は廃墟となった五階建てのビルの最上階だ。
開始間近で三人は話し合っていた。
「意外に見通しが悪いな…森崎、一人でオフェンス出来るのか?」
「前衛を叩いて後ろを引き出してモノリスを探すか…」
「ハラマスコ~イ」
「「お前は真面目にやれ!」」
こんな時もふざけている総司に二人が怒鳴りつける。
そのような会話をしていると、まもなく開始時刻だ。
「お前が要なんだ、頼むぞ橘」
「へいへい」
そしてスタートのサイレンが鳴り…
「…あ?」
直後に頭上へと投射された巨大な魔法式を三人は認識した。
加重系魔法、『破城槌』。対象物全体のエイドスを、対象物の一点に強い加重が掛かった状態に書き換える魔法。屋内で人が居るときに発動した場合、殺傷ランクが、レギュレーション違反のAランクに…人をたやすく殺せてしまうとされる威力を出す魔法だ。
モノリス・コードにおいてAランクの魔法行使は認められていない。明らかなオーバーアタック、危険行為だ。
「クソッ!」
「止まれ!」
『破城槌』により崩壊する天井を押し返そうとする二人。しかしその崩壊の規模は大きく、すぐに二人が持たなくなるだろう…万事休すかと思われた。
「…ふざけるなよ」
ゴウッ!と巻き起こる爆風。風は崩壊していた天井を瓦礫ごと吹き飛ばし、彼らがいたビルとその周辺のビルが大きく揺れる。崩落していた天井が全て吹き飛ばされ、危険は無くなった。これで三人…いや
しかし怒りが抑えきれない総司はビルを飛び降り、正面にあるビルの前に立ち…
「俺は良い…だが、二人が死んでたらどうするつもりだったんだよ!?」
と怒鳴り…拳を勢いよくビルに叩きつけた!
そのビルは大きな音を出して崩れ落ちる。その威力は先程の『破城槌』よりも遙かに大きかった。目の前のビルが倒壊していくのを見た森崎は、総司に対して感情を抱いた。それはとてつもない力を持っていることへの恐怖では無い。森崎は自分達のために怒った総司に…僅かながら『信頼』の感情を抱いたのだった。
その後すぐにスタッフが駆けつけ、四高はオーバーアタックの危険行為及び事前に一高の位置を把握していたフライングの疑いで失格となり、一高の勝利が確定した。
魔法科世界の秘匿通信
・総司は雫への気持ちがまだ分かっていない。彼はこの九校戦で彼女への自分の気持ちに気が付くだろう。
・総司は練習を重ねて行く内に二人に(主に森崎)友情(一方通行)を感じていた。今回の事件は彼にとって友人を害された気持ちだったのだろう。
薄い…内容が薄いよ…誰か作者に文才を…
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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いいともー!
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~