魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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ぶっちゃけ番外編が一番頭使いますね。原作があると無いとじゃ大違いですよ。オリジナル展開で物語進められる人達にはホント尊敬の念しかありません。


番外編 北山家へのご挨拶

「いらっしゃい、総司君。ゆっくりしていってね」

 

「…饅頭?」

 

「太ってるって言いたいの?」

 

「滅相もございません」

 

 

ここは都内某所。北山雫が住んでいる家の玄関。そこに総司は足を踏み入れていた。つまりこの状況は非モテ男子が一度は夢に見る(偏見)女子の家にお邪魔するシチュエーションだ。別に今日雫のご両親が帰ってこない訳では無い。そもそも親に会わせる意味合いも含めて雫は総司を家に招いている。

 

此度雫が総司を家に招くことになった理由。それは大きく分けて二つ。

一つ目は、彼女の父親、北方潮…本名北山潮が、最近総司の事を楽しそうに話す、または恋する乙女かのごとく話すため、大切な愛娘に近づく総司を、有象無象のどこのとも知れぬ馬の骨か、それとも雫の将来の伴侶たる人物なのかを見極める為に娘に総司を家に連れてくるようにしつこく要求したからだ。

 

二つ目は、来たる九校戦で深雪と対戦することになった時に、打倒深雪を掲げるには雫はまだ自分の実力が不足していると感じていた。達也からは『フォノンメーザー』を貰ったが、達也が深雪に贔屓しないとも限らない。実際は達也は本気で深雪を倒す為に『フォノンメーザー』を与えた…()()()だ。だが彼が内心「深雪に勝つことは不可能」と断じていた時点で、力の入れようは同じでも気持ち的にはやはり身内贔屓していたと言える。

 

雫はその点を考慮して総司に相談した。他の者が見聞きすれば一様にこう言うだろう、相手を間違えていると。総司は期末試験で見事最下位を記録する絶望的なまでの頭脳を持ち、あまつさえ一行程の魔法すら満足に扱えない男だ。そんな奴に魔法技能の相談をしても…と皆考えるだろう。総司と親しい面々でもそうだ。いつもの同級生達も、範蔵も桐原も壬生も、流石にこの手の相談を総司には持ち込まない。だが雫には総司への狂信的なまでの好意がある。「総司君ならきっとなんとかしてくれる。だって総司君だもの」と考え総司に聞いた次第だ。

 

するとビックリ、総司がなんと古式魔法限定で新たな魔法を作ろうと言うのだ。これには流石の雫も新魔法の開発なんてできるのか?と問うたが、本人が大丈夫だ、問題ない。と言ったせいで納得してしまう。

しかし総司が本当に魔法を作り出せることが判明、総司は雫用に対深雪用魔法、神風と神の怒りと表現される雷の魔法である『風神雷神』を開発した。しかしここで問題が発生。現代魔法と古式魔法のプロセスの違いと、生来的に高出力の代わりに高負担、高難度のデメリットがある魔法しか作れない総司が開発した『風神雷神』という、深雪でも数回使えるか否かの魔法が初っ端から成功するはずも無く、雫のその時点の技量では精霊達に指示する事はおろか、交信することさえ叶わなかった。

 

これでは使い物にならないため、可及的速やかに使用できるように特訓をする必要があった。当初は高校内の実習室で行うつもりだったのだが、兼ねてからの父からの総司を家に連れてこいという要望と、この機会に両親への挨拶を済ませる事で将来的にスムーズに事が運ぶように外堀を埋めるという打算付きで、雫は実習室ではなく父が用意した場所で練習を行おうと提案し、その前に家族に会ってくれと総司を家に連れ込んだのだ。

また、将来的にスムーズに運ばせたい()というのは、彼女の尊厳のために黙秘させて貰う。

 

といった感じで、明日が休みとなる今日、放課後の時間帯に総司を家に連れてきた雫。明らかに泊める気満々である。因みに総司はこの時点で自分の足で一旦家に帰ってまた明日合流する流れだと思い込んでいる。

 

 

「しっかし、雫ちゃんがまさかあの『ホクザングループ』の総帥の娘だったなんてな」

 

「でも総司君はそんなこと興味ないでしょ?」

 

「まあな、普通にすげぇって感じ」

 

 

総司は仮にも九島の人間だ。十師族の末端である彼がお金に困ることは無いし、そもそも総司はあまり物欲が無いためお金の消費が少ない。雫の家の事を知ると金目的で近づいてくる男など掃いて捨てるほど居たが、総司は雫本人を見ながら凄い凄いと言っているだけだ。それは何かしらの肩書きに凄いと言っているようなものだ。

 

 

「あら、貴方が総司さんね?いらっしゃい、私は雫の母の紅音です」

 

「橘総司です。娘さんにはいつもお世話になっております。というか俺の事知ってるんですね」

 

「そりゃ、雫がここ最近、幸せそうな表情で貴方の話をするからよ。貴方の名前はもう耳に穴が空くほど聞いたかも知れないわ」

 

「穴が…空くほど…」

 

 

リビングにつくとそこに居た紅音と遭遇する。その紅音から雫がいつも家で自分の話をしていると聞いて総司は雫の方を向く。雫は恥ずかしがること無くにっこにこしていた。どうやらあること無いこと吹き込んだ訳では無さそうだ。

 

 

「…いらっしゃい、総司君」

 

「…っ!?」

 

 

直後に感じる、圧。声のした方に向き直った総司の前のソファには、雫の父である北山潮が座っていた。その潮が何故自分にここまでの圧を放っているのか、総司は一瞬で悟る。この圧は財界や政界でのものでなく、自身の娘に近づく男に対する父親としての圧だ。その圧は戦場慣れしている総司ですら、性質を悟っていなければ反射的に拳を出しかけるほどだった。

 

 

「…橘総司です。娘さんにはお世話に…」

 

「わざわざ言わなくてもそんなこと分かっているとも」

 

「そうですか…」

 

「して、娘とはどういった関係なんだい?」

 

 

潮からは返答次第では相手を殺しかねない気配を感じる。父親というのはここまで強い感情を持つものなのか、と総司は戦慄する。総司はまだ幼かった時に『伝統派』に狙われた時と同じくらい、生命の危機を感じた。特に潮が総司を殺せるという訳では無い。そもそも潮は非魔法師であるし、紅音がいると勘定してもどうやっても総司の薄皮一枚切る事すら叶わないだろう。

だからこそ、父親としての威圧だけで総司に死を覚悟させた潮は、それほどに雫を愛しているのだろうと思った。

 

 

「俺にとって娘さんは、雫は『親友』です。俺に出来た、初めての」

 

「…そうかい」

 

 

実に真剣な表情で潮を見返す総司。その返答を聞き、総司の顔をまっすぐ見た潮は、おもむろに立ち上がる。

 

 

「…その言葉を聞いて、君の顔をみて、安心したよ。君は雫にまとわりつく虫ではないようだ」

 

「…当たり前です」

 

 

潮は歩き出し、総司の横にまで来てから、顔を耳に近づける。

 

 

「ところで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチの娘を娶る覚悟はあるかい?

 

「…は????」

 

「お父さん!?」

 

「あらあら」

 

 

潮のいきなりの発言に総司は困惑した。雫も流石に恥じらいの表情をしている。紅音は頬に手を当てて見守るような暖かい視線を向けていた。

 

 

「いや~、雫がいつも楽しそうに君の事を話してくれるのでね。話を聞く限り君は雫にとって理想的な相手のようだから、娘を娶る気はあるかと思ってね?」

 

「段階すっ飛ばしすぎでは?」

 

 

潮は結構ギリギリオブラートに包んでいるが、ようは雫が君の事を好きそうだから、雫と結婚する覚悟はあるか?と問うているのだ。総司はまだ雫が自分に向けている好意を認識していなかったし、自分が雫に向けている気持ちも自覚していなかった。しかし、潮からの問いに総司は「雫は親友です」と返さずに今回のように「段階を飛ばしすぎ」と返した。と言うことは、総司は無意識下で雫の気持ちも、自分の気持ちも理解しているのかも知れない。まだ付き合ってもいないのだから…と心のどこかで思っていたのかも知れない、真偽は定かでは無いが。基本的に総司は脊髄で会話する。総司にとって会話はほぼ反射行動だ。

 

 

「では質問を変えよう。雫と一生添い遂げる覚悟はあるかな?」

 

「それ意味変わって無くないですか?」

 

 

潮は先程の圧は一体何だったのかと言いたくなるほどフランクだ。実のところ、潮は雫からの話で娘が総司に好意を抱いているのは知っていたし、総司が悪い虫で無ければ雫の伴侶として迎え入れようとしていたのだ。これには元々潮自身が紅音とは恋愛結婚だったという理由があり、自分達が愛に生きたのに、娘が愛に生きるのを否定するはずもなかったのだ。

だが総司はまだ雫が自身に恋を超えた愛情すら抱いていることに気づいていない。

 

 

「そもそも!雫には俺より絶対良い奴が見つかるでしょう!?そんな俺なんかより…」

 

「は????」

 

「ヒッ!!!???」

 

 

殺気。今総司が感じているのはそれだ。だが殺気を出しているのは潮では無いし、紅音でもない。雫が、深雪を上回る冷気を出しそうな勢いで殺気を出していた。総司は先程潮から感じた殺意の百倍くらい強い感情にビビる。

雫は総司が、自分より良い奴が見つかると言った彼の発言を、態度だけで否定していた。んな訳ねぇだろと。

 

 

「…総司君には、教育が必要みたいだね?」

 

「待て、何をするつもりだ?」

 

「何って…ナニ?」

 

「ちょっとぉ!?雫さん!?」

 

 

雫の発言は、察しが良ければ自分への好意が現れていると気づけるのだろう。だが前の殺気に気圧されている総司にはそこまで思考を巡らせる余裕は無い。総司視点、今の雫は精神干渉系魔法でも受けたか?と見まごう程の変わりように困惑を隠せていない。そんな魔法が掛かっている訳では無いのは彼の異能から来る『感覚』が証明しているのだが。

 

 

「今の若者って手が早いのだな…」

 

「あら、私達だってこのぐらいの年頃でしたでしょう?」

 

「そうだったかな?はっはっは!」

 

「笑ってないで止めろや!?」

 

 

結局この雫を諫めるのは困難を極め、今日は総司と添い寝するという妥協案で納得してもらえたのだった。因みに総司はこの時に自分が今日は北山家に宿泊することを知った。




魔法科世界の秘匿通信


・因みに総司が悪辣な輩だった場合、潮さんが完全に敵に回っていた。



・雫ちゃんのご両親は総司とさっさと結婚してしまえと考えるようになった。




ぶっちゃけあんまりキャラ崩壊を酷くしたくはないのですが、私は原作者様ではないので躊躇う必要がないと思って踏み切りました。


潮さんは『かぐ告』の白銀パパ、紅音さんは同じく『かぐ告』のハーサカママをモチーフにしています。後航君は出ません。

次回は特訓ですね。終われば夏休み編です。

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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