魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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負けないで総司!貴方が誘惑に負けたら、告白前に雫ちゃんの旦那になることが確定してしまう!
大丈夫、まだチャンスはある。初日の内に告白すれば、何の問題もないんだから!


夏休み編 その二

「たしけて…」

 

「終わったな総司。人生の墓場に今日から埋められる気分はどうだ?」

 

「人生の墓場って言うけど人生終わったら基本墓場行きじゃね?」

 

「言うな」

 

 

昼食を取り終わり、皆でビーチに行こう!となって数分。男性陣は着替えが早いので先にビーチまで来て、女性陣を待つという形と相成った。

そんな時、情けない声音で救いを求めるのは総司だ。彼はつい先程孔明の罠にはまり、夜にあからさまなピンチが訪れる事が確定してしまっていた。救いを求められた達也はもう他人事の気分で話を聞いている。どうやら助けるつもりはないようだ。

 

 

「そもそも総司お前、雫の事が好きなのだろう?」

 

「勿論、この世で最も雫ちゃんを愛しているぞ」

 

「なら何の問題もないな、解散!」

 

「ちょっ」

 

 

聞き耳を立てていたレオと幹比古も明らかに自分達の管轄外の話題には首を突っ込めず、達也の解散の一言にその場から逃げだそうとした。解散してるからね、しょうがないね。

だがこの高速移動マシーン総司からは逃れられなかった。達也を右腕で、幹比古を左腕で、レオの首から下全部を砂に埋めて三人を捕獲した総司は話を続ける気満々だ。

 

 

「オレの扱いひどくね?」

 

「一番堅いやん」

 

「なるほどな」(?)

 

 

三人を捕まえた総司は、逃げ出そうとする二人(レオは完全に身動きが取れなくなっている)の抵抗を受けてもびくともせずに話を続けた。

 

 

「確かに雫ちゃんの事は愛しているけどさ!別に婚前交渉をやぶさかではないしむしろしたいけどさァ!?まだ告ってねぇーんだよ!付き合ってもねぇーんだよ!」

 

「婚前交渉?普通にセ○クスと言えばいいんじゃない?」

 

「オイこら幹比古ぉ!子供の情操教育に悪いでしょうがぁ!」

 

「子供いないじゃん…」

 

「そうだったわ…スマン、孤児院でのクセが…」

 

「ああ…」

 

 

総司が暮らしていた孤児院は、その設立理由から総司が一番古参だ。故に上の年齢の子にも劣らないリーダー的立ち位置であった為、小さい子達の健全な情操教育の為隠語を多用するクセがついてたりするのだ。後、ストレートな表現を咎めるクセも。

達也は「割と苦労してきたんだなぁ、高校でもその苦労を思い出して自重してくれないかなぁ…」と思った。

 

 

「ともかく!俺はまだ雫ちゃんと付き合ってないんだ!そもそもこの旅行で告るつもりなのに何であんな罠を…!?」

 

「雫としてもさっさと答えが聞きたいから初日に告らないと襲っちゃうぞベイベーってことなんじゃないか?」

 

「達也がベイベーって言った…!?」

 

「クソッ!今日は夜をハラマスコイ踊りで乗り切るしか…!」

 

「なんでその思考に行き着くんだよ!?つーかハラマスコイ踊りってなんだ!?」

 

「ハラマスコイ踊りはハラマスコイ踊りだろ」

 

「知らねーよ!?」

 

「レオは無知なんだなぁまったく」

 

「俺だけじゃなくて全員知らねーだろ!」

 

「そんなはずはない。なあ幹比古、達也」

 

「そうだね、ハラマスコイ踊りは伝統的な儀式で…」

 

「ハラマスコイ踊りの起源は数百年前の…」

 

「ホントにあるのかよ!?」

 

「実践してみてくれ、総司」

 

「ハラマスコ~イ」

 

「うん、完璧なハラマスコイ踊りだね」

 

「かなりハラマスコイを感じたな」

 

「こんなヘンテコな踊りが実在するって嘘だろ…?」

 

「「「嘘に決まってるだろ」」」

 

「結局嘘じゃねーか!ていうか幹比古はともかく達也までボケられると真偽が分からなくなるんだよ!」

 

 

総司のボケのに反応してしまったレオは哀れ、三人からボケ倒されてツッコミを総受けしてしまった。どうやら達也達はボケた方が労力を使わないことに気づいたらしい。

 

 

「お兄様~!」

 

「ゲッ、もう来たのか女性陣!まだあの寝室に仕掛けられた罠の対処法が出てないっていうのに…!」

 

「お前がボケまくって話が一向に進まないのが悪いんじゃないか?」

 

「スマン」

 

 

結局総司を救い出す案は出ず、やってきた女性陣と合流する男性陣。

 

 

「遅れてすいません達也さん…ってレオさんなんで埋まってるんですか!?」

 

「これはかくかくしかじかで四角いムーブなんだよ…っておいエリカ!ちょっ、おい、蹴るな蹴るな!ヤメロ!」

 

「まるまるうまうまチョコボール、なるほど、総司には玩具を作ってくれたことに感謝しないとね」

 

「どうかしました吉田君…?私何かしてしまったでしょうか?」

 

「いや違うんだ柴田さん僕は別に君を避けている訳じゃないというか避けてもチラチラ目に入るというかやめてやめて近づかないで!」

 

 

レオがエリカの玩具にされ、幹比古が美月の無自覚によってピンチに陥るこの状況、「大変だな向こうは…」と諦めたかのような視線でそれを眺めていた達也はふと疑問を持った。

 

 

「深雪、雫と総司はどこだ?」

 

「え?雫と総司君ですか?雫は一緒に来ましたし、総司君は先程までお兄様達と一緒にいらして…」

 

 

と深雪が周囲を見渡し、達也も釣られて見渡してみた。すると…

 

 

「…え?きゃっ!」

 

「こ、これは…」

 

 

達也と深雪の視線に映った物とは…!

 

 

 

 

 

「「……」」

 

「「し…死んでる!」」

 

 

顔面を赤い血で染めながらぶっ倒れてる雫と総司だった。

 

 

「ま、まさか賊!?あの総司君ですら何も出来ないまま…!?」

 

「…いや深雪、二人の血の出所をよく見てくれ」

 

「出所ですか?…あ」

 

 

倒れている二人はそろって同じ場所から出血していた。

 

 

「これって…」

 

「ああ…鼻血だな」

 

 

そう、鼻だ。お互いの水着姿を視認した瞬間に盛大に鼻血を噴射した二人は仲良く砂の上で横たわっていたのだ。

その二人に司波兄妹以外のメンバーも気づいたのか、揃ってこちらに向かってくる。レオはどうやらほのかとなんだかんだでエリカに救助されたようだ。

 

 

「何これ、殺人現場!?」

 

「そんな訳ないだろう。総司を殺せるとは思えないし、雫を殺そうとすることは総司が許すはずがない。これは単なる自爆現場だ」

 

「ホントだ、二人とも鼻から出血してんじゃん」

 

「鼻血で倒れるとか結構ヤバイ状況なのでは…?」

 

「柴田さん、この二人を常識で語ろうとしてはいけない」

 

 

全員が気づいて二人を見下ろしたとき、二人は揃って手を上げてこう言った。

 

 

「「我が人生に…一片の悔い無し…ガクッ」」

 

「し、雫ー!?」

 

「ガクッって口で言ってる人あたし初めて見たんだけど…」

 

「…本当に似てきたな」

 

「ですね、雫が楽しそうで何よりです」

 

 

慌てふためくほのか、呆れるエリカの先で二人して気絶している馬鹿共を見て、達也は「学校が再開したら更に酷い事になりそうだな…」と思っていたのだった。

 

因みに五分後ぐらいに二人同時に覚醒した。

 

 

 


 

 

二人が目が覚めてしばらく。達也が泳ごうとしてパーカーを脱いだ時に体に無数の傷跡がある事が発覚した後。レオ、幹比古、達也が遠泳競争をしようとしたとき、それは現れた。

 

 

遠泳(サッカー)やろうぜ!」

 

「お前は論外だ」

 

「第一回にして殿堂入り」

 

「刷られた瞬間から禁止カード」

 

「何だよつれねーな」

 

「お前は遠泳より先に雫の夜這い対策でも考えておけ」

 

「ははは、達也君は現実を見せるのがお得意のようで」

 

「正直すまないと思った」

 

「いいよ」

 

 

等と仲良く会話していたが、結局参加は認められなかった。他のメンバーがゴールする直前にスタートしても一位になりそうなチート野郎に参加権は無い。

 

 

「ホントひで」

 

「しょうが無いんじゃない…?」

 

 

波打ち際から少し離れた場所に立てられた傘の中、総司の愚痴に雫が当然の反応をする。因みに今の総司はナチュラルに雫の膝枕を堪能している。お前そういうとこやぞ。

 

 

「っていうか雫ちゃんは泳がないの?」

 

「ううん、ちょっとし忘れたことがあって」

 

「ほう?」

 

「サンオイル塗ってなかったなって」

 

「…ウッ!急に持病の仮病が悪化した!」

 

「総司君、塗ってもらえる?」

 

「ボケをスルーされると俺は無力だ…」

 

 

などと平静を保って会話する総司だが、内心「これよく見る奴やん!(宮川大輔)」とドッキドキであった。

そんなのはお構いなしに雫はスルスルと水着の紐を緩めながらうつぶせになった。ドキドキの内心のままオイルを雫の体に塗っていく総司。

 

 

「…これぐらいでいいか?」

 

「…何言ってるの?お尻の方とか塗ってないでしょ」

 

「ダヨネ~…」(砂夫)

 

 

明らかに誘われてる感に総司は白目を剥く。「あかんこれ、あかん。ほんとにあかん」などと語彙が蒸発した脳内はひたすら煩悩を打ち消しながらオイルを塗って…

 

 

「あっ♡…!」

 

「っっっっっっっっ!」

 

 

総司は自身の心臓が一瞬止まったと確信した。手の当たり所が悪かったのか嬌声を上げてしまった雫を見て、襲ってしまいたいという欲が出てきそうになったために本能的に一瞬だけ仮死状態になってそれを誤魔化したのだ。

そんなハプニングもありつつ何とか塗り終わった総司。

 

 

「はあ、はあ…終わったぞ…」

 

「ありがとう総司君。じゃあ次は前だね」

 

「ファッ!?」

 

「ふふっ、うーそ♪」

 

 

と小悪魔的台詞の後、そのまま雫は女性陣が集っている場所へと向かっていく。

 

 

「…ホントに、敵わないなぁ」

 

 

総司はそう呟くと、静かに瞳を閉じたのだった。




魔法科世界の秘匿通信


・応答が無い、ただの屍のようだ




お兄様がボケの世界に片足突っ込んでしまった…!
というかぶっちゃけ桐原先輩とかよりも達也が遙かに動かしやすいんですよね。なんでだろ…

さあ、総司君の告白が先が、二人のまぐわいが先か見物ですね!

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

  • いいともー!
  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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