今回は正直作者の文才不足が目立つので、次回から加速するギャグとの繋ぎと思ってもらって。
雫は、総司からの言葉に目をパチクリしていた。
総司は今日、告白をしてくるのでは無いのか。これでは丸で、プロポーズ…?だが脳味噌カッスカスの総司の事だ、どうせ自分の台詞が告白よりもプロポーズに近いなんて思っていない。そう考えて雫は総司に問いかけた。
「…何それ、プロポーズみたい」
「みたいじゃなくてその通りだ」
「ふぇ?」
だが総司からの予想外の言葉に変な声が出る。同時に自分の顔が紅潮していくのを感じる。
まさか勘違いや間違いでは無く、本当のプロポーズだったとは。雫はその事実に硬直してしまう。そんな雫の様子を見て、疑われていると勘違いした総司が雫に声を掛ける。
「俺は、今君にプロポーズをしたんだ。分からないのなら何度でも言って…」
「ま、待って!い、いつからプロポーズするつもりだったの?」
そう。総司は今まで「告白する」と言ってはばからなかったではないか。総司がこう言うものだから、雫も今日ついに告白されるのか…と楽しみにしていた。そんな雫の耳に飛び込んで来たのは、告白以上の、今だけでなく一生を誓おうとする愛の言葉だった。嬉しくないとは言っていない。むしろ告白よりも遙かに喜びを雫にもたらす言葉だ。まだ法的に結婚できないとはいえ、ここで雫が了承をすれば、二人は夫婦となる。
雫としてもそれは望むところだ。だがその前に、いつからそのプロポーズをすると決めていたのかを知りたくなった。
「九校戦のモノリスが終わった後に会場の裏で二人で話していたときからだ」
「えっ!?」
なんと、総司は九校戦の時からプロポーズをするつもりだったようだ。つまりあそこで桐原が妨害しなければ、一高にはラブラブカップルでは無くラブラブ夫婦が爆誕していたことになる。
「で、でも、さっきまで達也さん達には告白をするって…」
「プロポーズは相手と一生を添い遂げたいという想いを『告白』する行為だ。俺は嘘は言ってないぞ」
「そ、それは…!」
告白の意味の一つは、『秘密にしていたことや心の中で思っていたことをありのまま打ち明けること』である。確かに広義的に言えば、プロポーズも告白の一種だ。総司は誰にも嘘はついていない。
狼狽する雫を見て、総司はニヤリと笑って問いかけた。
「ところで、返事はまだかな?こちらとしては受けてもらえるか緊張でドッキドキなんだが…」
「っ!…今の総司君は意地悪」
「ごめんごめん」
お互いの気持ちなど先程確かめた。ここで雫が返す返事など一つだけだ。
「よろしく…お願いします…」
「うん、これからもよろしくな雫ちゃん」
「これからどころか、一生一緒だから…」
「そりゃそうだ」
二人は微笑み合いながら月明かりに照らされたお互いの顔を近づける。
直後に聞こえた唇が重なる音は、海の波に流されたが、それでも確かに二人の記憶の中に残ることだろう…
ー翌日
「…くちゅん!」
朝食の席に響いた可愛らしいくしゃみ。それは雫のものだった。
「どうしたの雫?風邪でも引いた?」
「大丈夫、昨日ちょっと
「そうなの?しっかり着ないとダメじゃない」
「うん、気をつける」
端から聞けば親友同士の何気ない会話だ。だが…
「「「「「(…絶対二人ともヤることヤってるー!)」」」」」
とほぼ全員に昨日の晩の出来事を予想されていた。恋愛にまだ疎いほのかと、全体的に鈍感な美月は気づかなかったが、他のメンバーには昨日部屋で何があったかなどバレバレの様子だ。そもそも二人がバーベキューをしている場所に戻ってきたときに手を繋ぎながら戻ってきた時点で告白を成功させてきた(総司達以外は二人が恋人になったと思っている)のだと察していた。
午前中は同じ部屋で寝ることをビビりまくっていた総司だが、それは付き合っても無いのに雫と交わる事に抵抗感があったからで、付き合ったとなればその抵抗感が無くなり、むしろウェルカム状態だ。となれば総司も遠慮をする必要が無い訳で…
「…おい総司さんよ、恋人と一晩を明かした感想はどうだい?」
「すっごいやわらかかった」
「語彙が蒸発してるな…」
「やっぱりヤってるよねこれ…」
男性陣が総司を囲んで昨日の感想を聞き出そうとする。レオは興味本位でからかい続け、幹比古はどちらかと言えば告白の際の話を聞きたがる。達也はと言うとやけに女性側の反応を聞き出そうとしていた。恐らく将来深雪と…いや、何でもない。
総司は昨晩から思考が死んでいるので、全く話にならないが。
「総司君は告白してくれたの?」
「うん、すっごいかっこ良かった」
「夜の砂浜で告白…ロマンチックですね~」
「いいな~雫、私だって達也さんに…」
「…雫の話を聞いていると、総司君がしたのって告白と言うよりプロポーズじゃ…?」
「「「…え?」」」
対する女性陣は昨晩の話を全く質問せず(ほのかと美月がいるからかもしれないが)、告白の話を雫から聞き出していた。そして当初深雪、ほのか、美月の三人は乙女心全開で「いいな~」とか思っていたのだが、エリカの発言にハッとさせられて全員で雫を見つめる。
まさか昨日、恋人になったのでは無く、夫婦になったのか?と言外に伝えていた。それに雫は…
「…ふふっ♪」
とだけ返した。
「…マジ?」
「私達の年で、結婚は出来ないはずじゃ…」
「別に今すぐ正式な夫婦になるわけじゃないよ。とはいえ、二年の千代田先輩と五十里先輩達みたいに許嫁同士でも無い…事実上の夫婦ってところかな、今は」
「でも、雫さん達とってもお似合いですよ!」
「ありがとう、美月」
「…私もお兄様とそんな関係に…」
一方でやっと会話出来るようになった総司から告白は告白でもプロポーズだったと言うことを聞いた男性陣は…
「段階すっ飛ばしすぎじゃね?」
「付き合ってないのにその段階を全部終了してたんだよ」
「…事実上とはいえ、学生結婚とは。本当に驚いたよ…」
「別に珍しいことじゃないだろう?魔法力を高める為に名家の人間が嫁いだりするのは一般的だからな。雫はあのホクザングループ会長の娘だし、総司だって養子のようなものとはいえ九島として十師族に属しているんだからな」
「だからって昨日までカップルですら無かった二人がいきなり結婚しましたなんてスピード結婚どころじゃ無いぞ!」
「ほぼカップルだっただろ」
「そうだったわ…」
とレオは回想した総司達がいつもお互いが恋人のような接し方だったのを思い出す。達也は二人の事実結婚を特段不思議に思わず、幹比古も吉田家の出であるため、ある程度の理解を示した。
「じゃあ帰ったら家族に報告するのか?」
「ああ。潮さん達は俺の事を認めてくれてるみたいだし、九島も相手がホクザンの娘だと知ればデメリットよりもメリットを優先するだろうから、すぐに終わりそうだがな」
「それが終わったら?」
「引っ越しします」
「ふーんなるほど引っ越し…え!?引っ越し!?」
「昨日二人で話しててな。両家に報告が終わったら二人で同居しようって…」
「もう付き合ってないとかのストッパーは無いし、それ以上になってしまった二人だ。好きにすれば良いんじゃ無いか?」
「達也もう面倒くさくなってるでしょ」
「バレたか…」
やがて総司は席を立ち、「手洗い行ってくるわ」といって歩み出す。その時、すれ違いざまに達也の耳元で総司は呟いた。
「…ほのかちゃんからの気持ちには早めにケリを付けた方が良いと思うぞ」
「…!」
そして総司は欠伸をしながら部屋を出たのだった。
魔法科世界の秘匿通信
・後日、雫を訪ねたほのかが玄関で上裸の総司と遭遇してしまい気絶する事件があったとか何とか
次回ぐらいまで夏休み編です。ギャグを加速するぞ!
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~