魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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前回のラストで結構勘違いされている人が居ますが別に総司は空間移動した訳ではありません…

それはそうとして、とあるコラボのストーリーでキチンと上条さんが参加できそうな話なのが好感持てた。異世界移動とか幻想殺しで無効化されるから来れない上条さんがコラボ先に来てると大問題だからね…


あっ、今回急展開注意です。


横浜騒乱編 その七

「んぐぅ!んぐぅ-!」

 

「抵抗するなよ不審者!お前を今すぐにでも警察に…」

 

「総司!」

 

「ん?おお、達也じゃん。しかも花音ちゃんまで。どうした?」

 

「いや、その生徒に事情聴取をしたいから解放してやってくれないか?」

 

「生徒?ウチの制服を着てる不審者じゃなくて?」

 

「…?」

 

「?」

 

 

突如として現れ、逃げていた生徒を捕らえた総司と達也が会話をしているが、お互い微妙に何かが食い違っているかのような違和感を抱きながら話を進める。

 

 

「その生徒は今度の論文コンペで使う機材の付近で不審な行動をしていたんだ」

 

「結局不審者じゃ無いか」

 

「いいから貸しなさい!」

 

「うおっ!花音ちゃん、人を物扱いは酷いだろ!」

 

「問題行動を起こしたんだから多少は荒っぽくなるわよ!」

 

「と言いながら、実は二科生の一年に出し抜かれたのが悔しいのでは?」

 

「そ、そそそそそそんな訳ないじゃない!」

 

「いっつも出し抜かれてるのにな」

 

「うるさい!」

 

 

赤面しながら、千代田は問題の生徒の持ち物を確認していく。その間に五十里が追いついてきた。

 

 

「…!これって、パスワードブレイカー!?」

 

「何だって!?」

 

「…これ俺の術式じゃね?」

 

「お前もそう思うか、総司」

 

 

その生徒の持ち物の中で特徴的な物は二つ。一つはパスワードブレイカー。恐らく機材管理のコンピュータに使用して論文コンペにて発表する予定の実験の内容を奪おうとしたのだろう。そして二つ目は、達也と千代田の術式を妨害した風を発生させた術式が記憶されているとおぼしき札であった。総司が手にしてまじまじと見て、自身の術式では無いか?と疑問を持つ。確信的な疑問では無いのは、総司の魔法制作技術からして、作成した魔法式を1から10まで記憶しているわけではないからだろう。

しかし、この風の妨害術式が搭載された魔法、『風神雷神』は愛する雫の為に作成した魔法である為、今まで作成した魔法の中でもかなり気をつけて作成したので大部分が記憶に残っていた。

 

 

「…平河さん、これは一体どう言うことかな?」

 

「平河?それって事故に遭った先輩の?」

 

 

危うく今年の論文コンペを台無しにされかけた五十里の怒気に満ちた声と、総司の気の抜けた声音の問いが絶妙にミスマッチしたこの状況。先程の話の微妙な食い違いから考えても、総司は何かしら勘違いしているか、それとも()()()()()()()()()()可能性は高かった。

 

 

「…そこに居る男が…!司波達也が悪いんですよ!」

 

「…何だと?」

 

「お姉ちゃんがなるはずだった論文コンペの代表に選ばれる為に、お姉ちゃんを交通事故に遭わせて、その上市原先輩を洗脳したんだ!」

 

「…発想が飛躍しすぎじゃ無い?」

 

 

千代田の疑問は最もだった。そもそも達也が推薦されたのは本人の望むところでは無かったし、市原だけの意見で代役が決まった訳ではない。そして一番おかしいのはわざわざ本来の代表である平河姉を事故に遭わせるなど、小説の読み過ぎかのような理屈だった。

事実そんなことはあり得ないと五十里と千代田に言い負かされている。ここで達也は一つの結論に至った。それは、実は彼女が洗脳されているのでは無いか?というものだ。そもそも理屈が不確定な物ばかりであるのに、結果大問題になりかねない事件を起こしたのだ、どこか頭をおかしくされたのかもしれないと考えた。となれば精神干渉系魔法か、と達也は総司に彼女に触れてくれと頼む。

 

 

「…あれ?あたし、一体何を…?」

 

「…当たりか」

 

 

総司が触れた途端に平河の様子が変化し、今自分が置かれている状況を理解出来ていない様子だった。総司が触れたことにより、彼の異能で精神干渉系魔法が解除されたと考えていいだろう。

 

 

「洗脳とか…やっぱり司波君は厄介事を持ち込む天才ね」

 

「冤罪です」

 

「案ずるな達也。お前は天才だよ」

 

「嬉しくない」

 

 

一旦詳しく話を聞こうとして千代田が平河を立たせた辺りで、達也は自分の疑問を解消しようと総司に問いかけた。

 

 

「そう言えばお前、今日は京都にいたんじゃ無いのか?」

 

「よく知ってるなお前」

 

「雫に聞いたんだ」

 

「ああ…明言してはいなかったけど、多分雫ちゃんなら知っててもおかしくないだろうな」

 

「普通はおかしいぞ」

 

「雫ちゃんのどこがおかしいって…?」

 

「話を戻すぞ。京都にいたはずのお前が何故もう学校に来ているんだ?」

 

「それが分からないのだよ」

 

「…何?」

 

「いやね?ほのかちゃんから『学校内に不審者が現れたから助けて欲しい』って連絡をもらったからすっ飛んで来たんだよ。で、さっきあの女子生徒が逃げてるのが見えたからあれが不審者なのかなって思ってさ」

 

「…それ、おかしくないか?」

 

「え?」

 

「…何故お前に連絡したんだ?」

 

「どう言うことだよ」

 

「お前はいつも雫と登校しているよな?」

 

「そうだな」

 

「ほのかも一緒に登校しているよな?」

 

「そうだな」

 

「ということは、今日お前が不在である理由を雫から聞いていてもおかしくないだろう?」

 

「そうだな」

 

「不審者如きで京都にいるお前に助けを求めるか?」

 

「…確かに!」

 

 

総司は「よくよく考えればおかしいじゃん!」と言いたげな表情で手を叩く。何も考えなしに京都から八王子まで一直線に戻ってきたらしい。

 

 

「…でも雫ちゃんならワンチャン呼んでくるよ?」

 

「そこだよ」

 

「?」

 

「お前は、多分だが、文面だけでも雫かどうか判断できるよな?」

 

「うん」

 

「総司君ってやっぱり変態だよね…」

 

「啓も大概だよ?それに文面で特定の相手かどうかを判別するのは私でも出来るし」

 

「…え?」

 

 

後ろで許嫁コンビが端から聞けば恐怖を感じる会話をしているが、総司達には届いていない。

 

 

「つまり、相手は総司に雫名義で連絡をすればどうやってもバレることを把握しているんだ。だからほのかの名前で連絡してきたんだ」

 

「なるほど…うん?相手って誰だよ」

 

「決まってるだろう?お前を呼び出そうとした奴だよ」

 

「ホントに誰だよ」

 

「それは分からんが…」

 

 

その瞬間である。

 

 

「「!!!」」

 

 

二人はそれぞれの持つ異能でエイドスの異常に反応した。得られた情報を信じるならば、平河の方に何か刃物数十本ほどが飛んできているようだ。

 

 

「(…口封じのつもりか!)総司!」

 

「分かってる!」

 

 

総司は即座に平河の前に立ち、腕を振ることで風圧を発生させる。その風圧に負けた刃物はあらぬ方向に飛んでいった。

 

 

「な、何事よ!?」

 

 

いきなり刃物が飛んできて、あまつさえ総司がそれを弾いたといういきなりの展開に千代田達は反応し切れていないようだ。

 

 

「誰だ!」

 

 

特化型を構えて刃物が飛んできた方向に向かって問いかける達也。すると…

 

 

パチパチパチパチ…

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

そこからは貴公子のような雰囲気を纏った青年が現れたのだ。

 

 

「お見事です。私の奇襲が気づかれるなど、久方ぶりの事です」

 

「何だこのおじさん!?」

 

 

総司達を面白そうに眺めながら、青年はこう続けた。

 

 

「ははは、申し遅れました。私、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周 公瑾と申します

 

 

 

「…スプレーか何かか?」

 

「…シュッ、抗菌ではなく、周 公瑾です」

 

「あっ(察し)スゥー…ごめんなさい」

 

「構いませんよ」

 

「何やってんのよ総司君!見るからに怪しい奴と仲良く会話してんじゃないわよ!」

 

「あっそうだった!やっべー、危うく相手の口車に乗せられるところだったぜ!」

 

「相手何もしてないだろ」

 

 

謎の貴公子然とした男、周公瑾は、総司と達也を見て、満足したかのように頷いて言った。

 

 

「今日は単なる顔見せです。本来は先に橘総司様の方からお会いしようとしたのですが、まさか京都にいらっしゃるとは露程も思わず…」

 

「そりゃ思わないだろうな」

 

「しかし、こうしてお目にかかれて光栄ですよ、『悪魔の右手(デモンズライト)』様」

 

「…!?」

 

 

その単語を聞いた途端、達也は「何故知っている!?」といった表情を浮かべ、公瑾に向ける殺意をよりいっそう強めた。

 

 

「そして、()()()()()()()()()よ」

 

「…それもしかして俺の事か?何だよその進化し続ける者ってよ」

 

「それはいずれ分かります故…」

 

「…お前には聞きたいことが多い。いずれと言わず今すぐ吐いてもらおう」

 

「それは御免被りたいですねぇ」

 

「…!?グッ!?」

 

「!?総司!?」

 

 

達也からの遠回しな捕獲宣言を拒否した後、公瑾の姿が消えた…かと思えば、総司に蹴りを放っていた。総司は難なくガードしていたが、その威力がおかしい。この世で最強の身体能力を持つ総司が、ガードの上から数メートル衝撃で後退することになったのだから。

今まで魔法を絡めた戦闘で将輝に苦戦したのは見ていたが、単純な物理で押されたその姿に達也は驚愕を覚える。

 

 

「惑わされるな!この野郎、認識を阻害する術式をかぶせながら身体強化で蹴って来やがった!阻害の術式のほうしか無効化出来なかったからまともに喰らっちまった!」

 

「ほう、やはり見抜きますか…」

 

「フッ!」

 

 

総司の言葉を聞いてすぐさま混乱から立ち直った達也は得意の武術で公瑾を攻撃するが、公瑾はいとも簡単に回避してしまった。

 

 

「私の今回の目的は、お目見えとそこのしくじったスパイを始末することですので…」

 

「…私!?」

 

 

どうやら公瑾は平河を殺そうとしているようだ。平河は明らかに取り乱し始めた。

 

 

「させるかよ!」

 

「甘いですよ?」

 

「うおっ!?…フンッ!」

 

「ほう、なるほど?砂塵による目くらましですか…」

 

 

総司は公瑾を阻止すべく彼の顔面を狙い…と見せかけたボディーブローをお見舞いしようとするもたやすく見抜かれ受け流されてしまった。体勢が崩れる総司だが、直後に地面を蹴り上げ砂を巻き上げた。

 

 

「…ハァ!」

 

「貴方方の相手をする気はありませんので」

 

「くっ!簡単にあしらってくれるな!」

 

 

砂塵の中だろうと、『眼』の恩恵で公瑾の位置を把握できていた達也は再び攻撃を行うが、先程と同じく達也の攻撃は軽くいなされてしまう。やがて砂塵が晴れ、公瑾の視界には平河が映った。

 

 

「一刻も早く終わらせて帰らせていただきましょうか。流石に長期戦は不利でしょうし」

 

「ひっ!」

 

 

尻餅をついた格好の平河に突貫して、ナイフを突き刺そうとする公瑾。このままでは平河は殺されてしまうだろう。達也はサイオン波で攻撃するが、まるで効いていなかった。

そして公瑾のナイフが平河を…!

 

 

「…な~んてな」

 

「!?」

 

 

なんと平河は異常な体捌きでナイフを回避すると、そのまま回転をかけた蹴りを公瑾に命中させる。公瑾はこの蹴りでかなりのダメージをもらったようだ。

 

 

「ぐっ…これはどういう…」

 

「こういう事サ!」

 

 

立ち上がった平河がそう言うと、その姿がブレ、総司が現れたのだ!

 

 

「…なるほど、これが『仮装行列(パレード)』ですか…」

 

「(パレード…!なるほど、総司はパレードを九島で習得してきたのか…!だが、総司でも使用できる難度の魔法なのか…?)」

 

 

公瑾と達也は両者ともに驚愕を見せる。まさか魔法が下手な総司が九島の秘伝を使ってくるとは思わなかったからだ。当然の疑問であり、正解を言うならば、これはまがい物同然なのだが、この場においては正しく効果を発揮していた。

 

 

「平河って奴はもう花音ちゃん達が連れて行った。もう追いつけないぞ?」

 

「…どうやらそのようですね。では私はこれで」

 

「おいおい、逃げられるとでも…!?」

 

「なっ!総司、奴は!?」

 

「分からん!見失った!」

 

 

平河を殺せないと判断した公瑾は魔法か何かを使用して姿を消した。まさかの達也や総司の異能すらも欺いて逃走を成功させてしまうのだった…




魔法科世界の秘匿通信


・周 公瑾:総司と一対一で会おうとしたら京都に行っていて、達也と二対一の邂逅になってしまった、結構抜けてる奴


・総司の仮装行列:実は正しい仮装行列のように座標を誤魔化すことが出来ず、服装も誤魔化せない。戦闘中に平河の制服が男物に替わっていた事に気づいていれば公瑾は蹴りを貰わずに済んだかも。
他人の顔面や体型のテクスチャを自身に合うように貼るぐらいしかできない。透明化は出来る。実は通常の仮装行列の10倍のサイオン消費。


まさかふと思いついた「シュッ、抗菌ではなく周公瑾です」ってネタからこんな急展開に結びつくとは…()

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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