魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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前回が五十話目だった事に気づかない馬鹿な投稿者ですどうも。

あと今回ストーリー進まない蛇足回です。


横浜騒乱編 その八

「…と言うことがあってだな。結構ヒヤヒヤしたもんだぜ」

 

「それヒヤヒヤ如きで済ませて良いものなのかい?」

 

 

周公瑾が襲撃してきた日の放課後、いつもの面子からレオ、エリカを除いたメンバーがアイネブリーゼにてお茶をしていた。

 

 

「そもそも始めからおかしくないかい?君なんで透明だったんだ?」

 

「それは…俺がパレードを使ったからだ」

 

「パレード!?それって…」

 

「ああ。九島の秘伝の術だ」

 

 

総司がパレードを使用した事を白状した途端、雫以外のメンバーから追求の眼を向けられる。

 

 

「身内とは言え、一応部外者の君に秘伝を教えた理由とか、君にパレードが使えた理由とかはこの際置いておこう。問題は何の為に習得したんだい?」

 

「幹比古の言う通りだ。お前はパレードなど使わずとも充分以上に強いはずだ。何故パレードを求めた?」

 

 

幹比古と達也に問い詰められた総司は少し俯き、言いにくそうにしながらも、おそるおそる口を開いた。

 

 

「…からだ」

 

「何だって?」

 

「…たかったからだ」

 

「もう少し大きな声で頼めるか?」

 

 

総司が非常に言いにくそうにしている様子を見た一同に不安の色が広がる。そして総司は意を決したような表情をして、大きく声を上げた。

 

 

 

 

「雫ちゃんのお風呂シーンを覗きたかったからだ!」

 

「「「「「……は?」」」」」

 

「…え?」

 

 

総司の口から出た理由は、達也達が想定していたようなものではなく、寧ろ達也達を引かせるに値するものだった。ただ一人、標的として指名された雫だけは、「何言ってるの?」と言いたげだ。

 

 

「…総司君は随分と変態さんなんですね?」

 

「私しばらく雫をウチに連れ帰った方がいいですかね?」

 

「えっと、総司君?そう言うのは良くないと思うのですが…」

 

 

女性陣からの罵倒。それ自体は総司に何の問題も与えなかったが、ほのかの雫を連れ帰る発言に死にかけの状態になる。

 

 

「やめろほのか…!その術は俺に効く…!」

 

「当然の反応だと思うけれど…?」

 

 

幹比古からの援護射撃に総司は既に虫の息だ。しかし…

 

 

「大丈夫だよほのか。私は気にしないし」

 

「雫ちゃん…!」

 

 

雫本人がその保護を拒否したので息を吹き返すのだが。

 

 

「ダメよ雫。甘やかしてはいけないわ。一度痛い目を見て反省を促さないと」

 

「もうこの話題が総司君に反省を促していると思うよ?」

 

「雫ちゃんの言う通りです…本当にすいませんでした…」

 

 

よほど雫と離れたくないのだろう、総司は床に頭をこすりつける勢いの土下座をした。

 

 

「…雫がいいなら私も許します。でも、私が泊まりに行くときは総司さんは外で寝泊まりしてください」

 

「ああ、分かったよ…」

 

「じゃあ雫!私これからしばらく毎日泊まりに行くね!」

 

「え?…あっ!」(絶命)

 

「総司が死んだ!」

 

「この人でなし!」

 

 

ほのかの狡猾な策にまんまと嵌まった総司は白目を剥いて蹲る。そこに達也達がお約束のネタをかぶせた。

 

 

「ほらっ雫!あんな変態な人なんて放っておいて帰ろ!」

 

「えっ…う、うん。じゃあ、また明日ね?総司君」

 

 

ほのかに連れられて一足先にアイネブリーゼを出た雫の表情は優れない。ここ最近はまた明日などと総司に言う必要は無かったからだろうか。

二人に続いてゾロゾロと総司を放置して帰宅していく。

 

 

「…俺としたことが…判断を誤ったか…」

 

 

蹲った状態で独りごちる総司。その総司の肩をトントンと叩く人物がいた。

 

 

「…?マスター?」

 

「他のお客さんに迷惑だから、早く帰ってもらえるかな?」

 

「…冷たい」

 

「そりゃ、君の行いが悪かったからだよ。これからは反省しなさい」

 

「…はい」

 

 

マスターからも見捨てられた総司は、トボトボとどこかへ行ってしまった…

 

 


 

 

帰宅後、ソファに座っていた達也は、総司の言ったパレード習得理由が嘘であるという可能性を考慮していた。何故なら…

 

 

「(総司達は将来結婚すら誓った仲だ。日常的に一緒に風呂に入っていてもおかしくはない。だと言うのに覗く必要などあるのか?)」

 

 

そう、そもそも総司が覗くまでもなく、総司は雫のお風呂シーンを堪能できる可能性が高いからである。もし仮に連れ立って風呂に入っていなかったとしても、総司が頼めば雫は二つ返事で快諾するはずだ。なのにそれをせずに魔法を習得するという遠回りを行う理由が分からない。

 

そもそもだ、風呂を覗くのにパレードなどという秘匿すべき魔法であり、おそらくはかなりの難度を誇るパレードを使う必要も無い。それこそ隠しカメラでも仕掛ければいいだけだ。そもそもと言えば二人が同居しているのは元々総司の家だ、仕掛けるのは簡単なはずである。

となればパレードを習得したのには別の理由が、それこそ本来の用途通りの『他人の姿を取る』という使用方法をあてにしてのものではないか?達也にはそう思えて仕方が無かった。

 

 

そして達也の考えは正解であった。そもそも総司と雫は日常的に一緒に風呂に入っている。そうで無いときはほのかが泊まりに来たときだ。故にほのかはその事を知らない。そして雫も総司の言った習得理由が嘘である事を見抜いていた。これは曖昧で科学的な根拠ではないのだが、総司と雫はお互いが気配レベルで居場所を把握できる。流石に雫の方は家の中までの範囲しか分からないが、それだけでも透明になったところで見つかってしまうことには変わりない。よって覗く為に透明化出来るように習得したというのは嘘だと言うこと。

 

そして総司が嘘を付くと言うことは、何か大きな事件が起ころうとしていて、それに一人で対処している時だ。

 

 

「総司君…」

 

 

不安になった雫は思わず名前を呟いてしまう。万が一にもあり得ないだろうが、総司を失うなどもう雫には想像もしたくない事態だ。その事を憂うなと言って雫が守れるはずは無かった。

 

 

余談だがこの時の雫の反応を見て、流石に意地悪が過ぎたかと思ってほのかは総司を許してあげることを決断した。

 

 

 


 

 

 

「あああああああああ…」

 

 

所変わってとある地区の路地裏。そこで総司は三角座りで俯いていた。彼はどうせ帰れないのなら大亜連合の今の拠点でも調べて強襲しようかとも考えたのだが、よくよく考えればいつもの情報源は自室のパソコンからでないとアクセス出来ないことを思い出して、結局的に手持ち部沙汰になったのだ。

そうなってくると考えることが雫の事ばかりになってしまい、何故自分はあの時にあのような誤魔化し方をしたのかと後悔してくる。まさか自分のクローン達が自分に反応して逃げていくことを突き止めたからって、それを防ぐ為に別人になりすまします等という理由を正直に話す訳にはいかないのだ。

 

 

「あああああああ…」

 

「…ぱい?」

 

 

そんなこんなで総司は深いため息をついて雫の顔を思い浮かべる。笑った顔、怒った顔、悲しんでいる顔、喜んでいる顔…悲しんでいる顔は可哀想だが、その他はとても可愛らしい自慢の将来の嫁としばらく離れることを強制された現在、総司にはやる気が微塵も湧かなかった。

 

 

「あああああ…」

 

「…先輩?」

 

 

総司の頭の中には深い深い後悔が根付いている。誰かが話しかけているような気もするが、そんなことは今の総司にはどうでも良かったのだ。

 

 

「…せーんーぱーい!」

 

 

故に気づくのが遅れた。自身に話しかけていた、眼前の人物。学生服を纏った青年が鍛えられては居るものの、ボディビルダーには程遠い太さの腕からの拳で自分の頬を殴っって来たことに。その瞬間…

 

 

「…ボグフォオ!?」

 

 

バギャ!という轟音と共に総司が吹っ飛ぶ。青年の見た目からは想像も出来ないような威力の拳は総司を大きく吹き飛ばし、数百メートル先にある大きな公園の中央あたりまででやっと総司は止まった。

 

 

「痛ってぇ…!一体誰だ!?」

 

「誰って俺ですよ先輩」

 

「あ!?…って()()ァ!?」

 

「お久しぶりです先輩。そんな気の抜けた顔してどうしたんですか?」

 

 

先程の場所から総司が吹っ飛んできた場所まで一瞬で移動してきたであろうその青年…七宝琢磨は、総司を心配そうに見ていた。




魔法科世界の秘匿通信


・七宝琢磨:本作で最も強化された人物。過去に総司と出会った後、身体強化の魔法で異常な才能を発揮し、総司と同等のパワーとスピードを手に入れた。因みにモノリスで将輝が総司を相手取れていたのは、以前に総司に師事して強くなった琢磨にボコボコにされて対策としてある程度の身体強化を会得していたから。最大火力は総司と同レベルのルーキー。別に魔法が使えない訳じゃ無いし何なら得意なので、異能が無かったら総司の上位互換である。

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