魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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アベマで魔法科一期全部見返していたら、最初の方のエンディングで涙が出るんですよね…これはリアルタイムで視聴していた時も同じ事してました。なんだかあのエンディング聴くと現実に一気に引き戻されて懐古厨のおじさんには辛い思いでした。


横浜騒乱編 その九

「…総司、お前どうしたんだ?」

 

 

総司の覗き宣言の翌日、久しぶりに生徒会室に現れた総司を見た一同は驚愕する。なぜなら総司の体があちこち黒く変色しているからだ。恐らく打撲によるものだろうと推察されるその痕を見たときに出る反応が心配よりも驚愕なのは総司が信頼されているのかそれとも単純にバカは風邪を引かない理論で大丈夫だと思っているのか。

どちらにせよ自分たちの記憶の中で初めて総司が傷やダメージを負っているところを見た驚愕は計り知れなかった。

 

 

「ああ、これ?昨日行く当てもなくブラブラ歩いていたらいきなり顔見知りの後輩にぶん殴られたから喧嘩になった」

 

「ええ…」(困惑)

 

 

達也が困惑するのも無理はない。そもそもいきなりぶん殴られたは語弊だし、うずくまっていて琢磨の声に反応しなかった総司に対して琢磨が彼なりのショック療法を行ったつもりであったのだ。確かにいきなり殴ったのは悪いが、そもそも顔見知りの前で殴られるような隙を作る方が悪い。達也だってあの場面に遭遇していたら総司を殴っていたに違いない。どうせダメージはないだろうが。

 

 

「総司君を殴って、その後喧嘩に発展しても生きていられるとはなかなかの腕前だな。そいつは学生なのか?」

 

「ええまあ。多分来年ウチに入学してきますよ」

 

「そうなのか?名前は何というんだ?」

 

「七宝琢磨ですね」

 

 

総司の口から飛び出してきた名前のネームバリューに、一同は再び驚愕する。

 

 

「七宝って、あの七宝君!?」

 

「ええ、二十八家の一つの七宝の跡取りですね。お知合いですか?」

 

「い、いえ。特に親しいというわけではないわ。でも以前に一条君を強化魔法だけで完封していたから…」

 

「ああそれ俺の影響で使うようになった戦術ですよ」

 

「そうなの!?」

 

 

達也は総司を見ながら呆れたかのようにため息をつく。魔法が下手なはずなのに何故こうも魔法の大家との繋がりが強いのかと。達也に関しては自分も十師族であることを棚に上げていることはこの際置いておこう。

 

 

「っていうか、どこで知り合ったのよ二人は!?」

 

「えーっと、確か七宝が通り魔に襲われているところをたまたま目撃した俺がその通り魔をぶん殴って止めたからですね。その時に弟子にしてくれって頼まれて…」

 

「通り魔?今時そんなのいるのか?」

 

「まあ二年前ですし居たんじゃないですか?」

 

 

実は総司が倒したのは通り魔ではなく一種の忍者であったのだが…これは全くの余談である為気にする必要はない。

 

 

「そうか…達也君は大変だな」

 

「…?なぜ俺に振るんですか?」

 

 

達也はいきなり何を言っているのか?と頭を傾げる。

 

 

「だって、来年には私たちなしで総司とその後輩の制御を行わなければならないのだからな!」

 

「!!!!!!」

 

 

その時、達也を途轍もない衝撃が襲う。それもそうではないか、総司とタメを張れる怪物が入学してきたならば労力も二倍だ。正直言って摩利という先輩がいたからこそまだ大人しい側面がある総司だ。二年生に続々仲間を増やしている現状、真に総司を止められる上級生は摩利だけなのだ。克人は総司と仲が良くて止めないし、真由美では怖さが足りない。そこに一年が加わる…一人は琢磨で確定しているとして、総司に下手に憧れた一年が他にも厄介者に手を貸す事態にまで発展しかねない。

そこまで考えて達也がはじき出した結論は…

 

 

「渡辺先輩、ちょっと数年ほど留年していただけませんか?」

 

「わけの分からんことを言うんじゃない」

 

 

名案だ!と思って提案してみた案を一刀両断された達也は意外にもしょげた。というかどこをどう考えて名案だと思ったのだろうか?

 

 

「そういえば、雫はどうしたんだ?お前のその顔を見て反応を示さないとは思えないんだが」

 

「ああ、結構泣かれたよ。涙をぽろぽろ落としながらごめんなさいって謝ってきた。説明する前だから多分変な奴に絡まれたんだと思ったんじゃないか?」

 

「そうか?てっきり喧嘩してきたんだねとでも言ってきたのかとばかり」

 

「達也君さすがにそれは察するのは無理が…」

 

「いや、落ち着かせたら「それ、喧嘩の痕?」って聞いてきたぞ。多分寂しさで冷静さを失っていたんじゃないか?」

 

「気づくのか…」

 

 

総司と雫のお互いへの理解度の高さに軽く真由美たちが引いていると、総司の携帯端末に連絡が入る。

 

 

「すまんメッセージ…雫ちゃんから中庭に来れるか聞かれたんで行ってきますわ」

 

「こんどはちゃんと本物のメッセージなんだろうな?」

 

「昨日はほのかちゃんだったから見分けられなかった、雫ちゃんの文面なら何の問題もない」

 

「怖い…」

 

 

委員長ズが怖さに身を縮めているうちに、総司は高速で中庭まで走っていった。ご丁寧にパレードによる透明化も用いてだ。

途中で桐原が吹き飛ばされたが何の問題もなく総司は中庭まで到達したのだった…

 

 

 


 

 

「ということで明日関本先輩の面会に行くことになった。総司も付いてきてくれないか?」

 

「いやどういうことやねん」

 

 

次の月曜、アイネブリーゼにてこう依頼された総司はわけわかめといった表情で達也に聞き返した。

 

 

「昨日、俺がロボ研の部室で論文コンペに使用する機械の調整を行っていたところ、部屋に催眠ガスが入れられていることに気づいてな、直前で気づいてピクシーに換気システムを作動させた後ガスを吸ったふりをしながら待ち伏せてな、そのまま千代田委員長と協力して、侵入してきた関本先輩を逮捕したんだ」

 

「えっとつまり?学校内にいたスパイは一人だけじゃなかったってことか?」

 

「そうだ。そして…」

 

「そしてぇ!?まだあんのか!?」

 

「ああ。丁度関本先輩を捕らえたときにだ、この間の女子生徒…平河の見舞いに渡辺先輩が向かったらしいんだが、その時に呂剛虎という大亜連合の兵士が襲ってきたらしいんだ」

 

「…ひょっとしてこの間のスカした抗菌スプレー野郎の差し金か?」

 

「…まあ、そうだろうな。そしてその呂剛虎は大亜連合でも屈指の魔法師でな。渡辺先輩も彼氏の千葉修次さんが居なければ危なかったらしい」

 

「ぶっちゃけ俺は今摩利さんに彼氏がいたことの方がびっくりしてるよ。つか千葉ってもしかしてエリカちゃんの縁者?」

 

「ああ、お兄さんらしい」

 

「通りでエリカちゃんは摩利さんを敵視しているわけか…」

 

「というわけだ、協力してくれるか?」

 

「おう任せろ!近接相手なら俺が勝てない道理は無いしな!」

 

「……」

 

 

総司が快く引き受けたのを達也は意味ありげに見つめていた。

 

 

「…なんだよそんなに見つめてさ。穴が開いちまうぜ」

 

「総司…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はずだが?」

 

「…!」

 

 

その言葉を聞いた総司はひどく驚いた顔で達也を見返した。

 

 

「なんで分かったんだ?相手が近接魔法師だって…いや、そもそも知っていたんじゃないか?」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「お前がこの間習得してきたパレードのことが気になっていてな。このタイミングで習得する意味が分からない」

 

「…だからそれは雫ちゃんの風呂を覗くためだって!」

 

「お前と雫の仲に覗くという行為は必要なのか?」

 

「…というと?」

 

「俺はお前たちが日常的に二人で風呂に入っていると考えている。それに違ったとしても雫ならお前の頼みなら断らないんじゃないかと思ってな」

 

「…いやいや、いくらなんでもそれは…」

 

「メールの文面で相手が本物かどうか判別できるぐらいなのにか?」

 

「……」

 

「そうなるとお前がパレードを習得した理由が謎に戻る。そして今回の度重なる論文コンペの情報スパイ事件…そして大亜連合の呂剛虎…明らかに関連性があるだろう。総司…お前は何を知っている?」

 

「……」

 

 

問い詰められた総司は、一体どう達也に答えるのだろうか…?




魔法科世界の秘匿通信


・琢磨の実力はこの世界でもトップクラスだが、総司には致命的に相性が悪い。なぜなら総司は強化魔法を正常に戻すことで無効化できるからだ。それでも琢磨が総司とまともに戦えるのは、総司が琢磨との訓練の時に練習のために異能を使うことをしなかった為、喧嘩の際も異能を使っておらず、強化を解除できていなかったから。

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