「レオ!あんまり前に行きすぎると狩られるわよ!」
「うるせえエリカ!オマエだって似たようなもんだろ!」
クローンの動きが変わり、前衛と後衛の分断を主な目的とした立ち回りをし始めたこの状況、数で圧倒的に不利な一高側は耐える事しか出来なかった。それでも血気盛んなレオとエリカはなんとか活路を開こうと動くが、お互いが数の暴力に晒されそうになり、警戒を促した後に揃って後退。その場にいた者達からは、「こいつらやっぱり仲いいよな…」と少々状況と噛み合わない呑気な思考が広がったが、クローン達の攻撃に遭いそれどころではなくなる。
現状最も苦戦を強いられているのは雫と深雪、真由美の三人だ。雫は高威力の『フォノンメーザー』で数だけならばものともしない威力最強の固定砲台だが、疲労が目に見えて来ていること、最優先対象である点から最も狙われている。時点で深雪と真由美。彼女達は広範囲かつ高威力という、機動力の無い相手であれば一瞬で完封できる脅威度を誇る。しかしクローン達は強化魔法への適性が著しく、魔法無しで数百倍の出力を持つ総司と、魔法ありきとはいえ追随する琢磨、この両名に及ばないといえども、白兵戦の主力にするには十分すぎる戦力であり総司の速度にある程度慣れていた為対処できる一高生達と、生まれたばかりのクローンにはない経験で渡り合う軍人達が、逆におかしいのだ。
そんな身体能力化け物の集団が千を超える数いるとなると、流石の二人でも分が悪い。深雪は達也の為に割いていたリソースが戻っているとはいえど、魔法の連射の影響で十師族レベルの二人も冷や汗が滲む。
そしてこの三人が最もと言うだけであり、他のメンバーの状況も芳しくない。当初は二人で広範囲をカバーしていた桐原と壬生がいつの間にか背中合わせになるまで追い込まれているし、非戦闘員を庇いながら戦う摩利達も苦しい表情だ。
そんな中…
「わ、私も…!頑張らなくちゃ、役に立たなくちゃ…!」
「ほのかさん…?」
「皆さん!合図をしたら目を塞いでください!」
今まで守られている側だったほのかが遂に動きを見せる。一同はほのかの言っている意味が分からなかったが、意味のあることなのだろうと信じてほのかの指示に従うことにした。
「3、2、1…今です!」
ほのかはクローン達の動きをよく見て、ベストと思ったタイミングで合図を出した。その場の全員が目を閉じると、強い光が発生する。これにより、ほのかが何をしたのかが分かった一同は光が収まると共に蹲るクローン達に攻撃を仕掛けていく。
ほのかが行ったのは光による目潰し、フラッシュグレネードのようなものだ。光の『エレメンツ』たるほのかの閃光魔法は強力で、クローン達の多くを無力化する。この魔法は総司にも通用する数少ない魔法だ。オリジナルがダメージを負う程の魔法を、クローン達は防ぐことも出来なかった。その隙を見逃す訳も無く、一高生達は一斉攻撃を仕掛ける。この攻撃でおおよそ百名ほどのクローンが吹き飛ぶ。ほのかの閃光は実に戦術的な攻撃であったと言えるだろう。
「…優先レベル変更、光井ほのかを第二目標に設定」
「えっ?」
故に、狙われる。
目から得られる情報は全体の八十%を占める事は有名であるが、戦闘中に置いてその八十%を失う事は致命的な隙になり得る。加えて、クローンの目的である総司の親しい者の殺害に関しても、雫の親友であるという点から達也と同等の位置に置かれていた。こう言った理由から雫の次点に置かれてしまい、そして偶然にもほのかの周りにはレオとエリカの二人しかいなかった。
「ほのか!ちょ、アンタら邪魔よ!」
「クソッどけよ!」
そして二人のもとにクローン達が群がり、ほのかのカバーをさせまいとする。そしてそれは成功してしまいクローン達にほのかへの接近を許してしまう。
「いやっ…!」
「対象…抹殺!」
そして人を容易く握りつぶせてしまう掌がほのかの頭を掴む…!
「ハアァァッ!」
「キャア!…え?」
…事は無かった。どこからともなく現れた…いや、
「…七宝君!?」
「七草さん…」
現れた人物…七宝琢磨は顔見知りの登場に驚いた真由美の叫びに振り向く。
「七宝…総司君と同等の…!」
「…もしかして、貴女が北山雫さん?先輩から話は聞いてます。先輩の後輩やらせてもらっています、七宝琢磨です」
「…本当に総司みたいな動きだね」
「ホントな。クローン共と違って全く見えやしなかった。敵だったら不意打ちされて負けてるな」
琢磨の登場により場の雰囲気が和らぐ。総司とよく似た戦い方故に琢磨に総司を重ねて安心感が生まれたのだろう。
「七宝さん…でしたよね?総司君はこちらには来ないのですか?」
「多分くると思いますよ?…自分と同じ理由でこの場にクローンが集まっているのに気づくはずだから…」
直後、轟音と共にクローンが宙を舞う。
「総司君来てくれたの…ね…?」
「全く遅い登場…だ…な…?」
真由美と摩利が音の方に振り向くとそこには…
「いくぞ!この国防仮面と同じく護国を志す者達よ!国を脅かさんとする外敵を討ち滅ぼすのだ!」
「「「「うおー!!!国防バンザーイ!!!」」」」
「…え?あの仮面の少女が総司だって事は分かるんだけど…後ろのはクローンだよねあれ?」
そう、国防仮面に扮した総司の背後から、数百のクローン達が目をグルグルさせて追随して来たのだ。明らかに洗脳でもされましたと言わんばかりのその様子には流石の幹比古も驚愕を隠しきれない。そしてそのクローン達は他のクローンに攻撃を加え始め、クローン対クローンという一気にカオスな状況となる。
「何したんですか先輩?」
「いやちょっとね!ちょっとだけ国防の素晴らしさを説いただけであって…」
「本当にちょっとですか?」
「モチロンソノトオリダヨ、コクボウカメン、ウソツカナイ」
国防仮面は正義の味方。嘘など付かないのだ、付かないったら付かないのだ。
「まあ戦力が増えるのは悪いことじゃないので別に構わないんですけどね…」
「流石琢磨話が分かるじゃん」
「となるとさっさとこの増殖したゴミを片付けましょうか」
「仮にも話し相手のクローンなんだから気遣いぐらいして?俺は黒光りしないしラピュタの下に行ったこともないから」
などとクローン達そっちのけで会話を続ける二人。そんな二人の様子を隙と見たのか、二人に大勢からの攻撃が向かう。思わずほのか達が「危ない!」と叫びそうになったが、雫の大丈夫と言わんばかりの視線に制された。
「…甘いなっ!」
「それはそうだろ、だって生まれたてホヤホヤなんだからさっ!」
そして雫の思った通り、二人は迫り来る複数の相手をノールックで蹴り飛ばす。命中したクローンはおよそ二百メートルは吹っ飛び、建物にぶつかって崩れ落ちる。伊達に化け物やっていないのだ、この二人は。
「それにしても本当に甘い…この程度相手になりませんよ」
「それは残念だったな。一高には一科にも二科にも、今の速度の相手に一瞬で対応出来るような魔法師は少ない。なんなら来年度はお前一強でつまらない学生生活になるかもな?」
攻撃されても尚、軽口をたたき合う二人。そんな中、琢磨は一つ違和感について言及する。
「というか先輩…こいつらって正直弱すぎませんか?先輩を元にしてるとは考えられないんですけど」
「確かにな。あいつらの使う強化魔法は俺の使える魔法よりも高難度なものだ。俺の劣化コピーって言うのなら、こいつらの魔法技能は俺のどっから来たんだって話だよ」
「そう反応しますか?…先輩って今使ってる『
「だよなぁ…後オマエ流石に馬鹿にしすぎ。後で拳骨な」
そう、二人の発言通りこのクローン達、総司を元にしているにしては弱すぎるが、魔法力が高すぎでもある。顔だけ同じの別人が本物の戦術を真似しているかのようだ。
そしてここで二人がやっと正面を向き、明確に警戒心を示すクローン達と相対する。
「考えてても仕方ない、さっさと始末するんだろ?」
「ええ、人力バルサンです!」
「だから俺黒光りしねぇって!」
その言葉の直後…二人の姿が掻き消えて、クローン達が宙を舞っていた…
魔法科世界の秘匿通信
・事実琢磨は七草の双子にも、黒羽の姉弟にも余裕勝ちなのでこの年代は琢磨一強か、琢磨VS光宣のツートップになる。
・このクローン達、実はオリジナルの総司の強さの1/100スケールだったりする。…
クローン戦まだまだ続きます
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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いいともー!
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~