「痛った…」
「はは、驚いたか?」
「驚かない奴いる?」
突如として現れた知能が高いクローン。その攻撃は他のクローン達よりも遙かに強力で、自分と同等の威力があると総司は直感で理解する。目の前に立たれている今の時点で敵から感じる違和感を無視しながら同一人物ならばと総司はクローンとの対話を試みる。
「で?お前も俺のクローンなんだろうが…明らかに他の奴とレベルが違う出来だよな?どういう訳なのか教えてくれないか?」
「いいぜ、別にそんな深くないしな」
総司からの問いに了承の意を示したクローンは当時を思い返す老人かのように目を閉じて語り出す。とそこでクローンから訂正が入る。
「ところで、お前は俺が他の奴と違うって理解出来てるんだよな?なら俺の事はクローンとかじゃなくて、『安部零次』って呼んでくれ」
「…アベレージ?」
「平均じゃねえよ アベ レイジ な!」
「はいはい」
「たっく…そうだ、俺の事だったな」
そう言って零次は指を立てて総司に自分の経歴の説明をする。
「奴ら…大亜連合の奴らは、当初お前同レベルのクローンを作り出す事が目的だった。だってそうだろ?お前レベルが一体でも強力なのに、それが兵隊並みに数を揃えるとなると大亜連合の天下は確実ってもんだ。だから奴らは俺の制作にかなりのコストを掛けた。他の奴と比べると万倍は高いコストをな」
「ええ…そんなの量産の目処が立ったところで実現しないだろ、大亜連合って馬鹿?」
「魔法技能が劣っている、つまり研究が遅れている、つまり馬鹿だってことだ今更言わせんなよ恥ずかしい」
「おっそうだな」(適当)
自国への自虐ギャグを挟みながらも零次は話を続ける。
「んでもって俺は作られたんだが…俺は奴らの想定を超えた性能だったんだよ、あいつらの手に負えないレベルのな」
「と言うと?」
「俺は生まれた時から今とほぼ変わらない知能を有していた。そして俺は自分が体のいい道具として作られたこともすぐに察した。察したならそのまま従うってのは癪だろ?だから俺は無能のふりをしていたんだ」
「なるほどな…本人しか知らない事はどう調べても意味は無かった訳だ」
「そうだな、お前の情報力は高いとの事だが、流石に口頭でのやり取りを調べることも出来ないはずだ。俺は『伝統派』の奴らと接触した」
「…うん?」
零次の話に疑問を持った総司が声を上げる。
「ちょっと待て。お前多分研究所か何かで生まれたんだよな?じゃあどうやって『伝統派』と?」
「それを話す訳には行かないな。まあ俺が研究所を脱走したでも『伝統派』が研究所内の俺と接触する方法があったとでも思っておけ」
「おかのした…それで?」
「は?」
「もう終わりか?」
「ああ…俺の出自の話ならもう終わりだ。付け加えるとしたら、『伝統派』の手引きで本隊とは別ルートでこの国に上陸したとでも言っておこう」
「そう…なら」
「お国にお帰りになってくれ!」
数メートルほど空いていた距離を一瞬で詰めた総司。そのまま零次に向かって思いっきり拳で殴りかかる。不意をうたれた零次は先程の総司のように吹き飛び、その先にあった建造物に穴を開けた。だがやはり特別なのか、零次は穴が空いた建造物からけろっとした表情で出てくる。
「痛って…やったな?」
「おあいこだろ?」
「それはそうだが…なっ!」
「…!シッ!」
ガァン!とおおよそ人間の拳から出ていい音では無い甲高い音を響かせ接近した二人の拳がぶつかり合う。その衝撃波は周囲で戦闘していたクローン達を一掃するほどのモノだった。
「クッソ、パチモンのくせにやりやがるな!」
「そっちこそ!流石はオリジナル様だっ!」
クローンとしての完成度が高く、総司に最も近い存在であるからのか、二人同時に牽制のキックを放ち、激突することでお互いが距離をとる形となる。
「…長くなりそうだな?」
「…果たしてそうだろうか」
「何だと?」
完全に互角だと判断した総司は面倒くささを感じながら問い掛ける。すると予想外の返答が零次から返ってきた。その零次の口はニヤリと三日月を描いている。
「確かに俺はお前のコピーだ。だからこそ、お前が持ちながら使えない…
「…俺の魔法演算領域だと?」
そんな矮小なモノで何をそんなにドヤるのか…困惑した総司だが、零次が起動した魔法式によってその意味を知る。その魔法式により、どこからとも無く無数の紙が飛んでくる。しばらくするとその紙の量は駅前広場の上空を完全に覆ってしまうほどにまで増えた。
「何だコレ!?…まさかこれ、お前がやってるのか…!?」
「ご明察。本当ならお前もこれぐらいできるはずなんだがな…」
言いながら指を弾いて鳴らす零次。それを合図としたかのごとく、無数の紙が一塊になり、
「…巨人?」
「ここで問題です」
「…?」
「この下には何があるでしょうか?」
「…っ!?クソが!」
零次からのいきなりの出題に一度は首を傾げた総司だが、すぐさまその意味を察して今にも足を振り下ろさんと持ち上げている巨人の方に向かう。
この下…駅前広場の下にはシェルターがある。そしてその中にはコンペの会場から避難してきた生徒達や一般市民、そして何より友人達や雫が居る。こんな巨体の蹴撃を食らえばひとたまりもないどころではない。シェルターの崩壊と中の人々の即死は想像に難くない。総司は跳躍して予備動作中の巨人の足を殴りつける。すると巨人がよろめき、総司の『異能』の影響か足が崩れる。
「ヨシ!これで無効…化?」
「ふっ、残念だがまだだな」
崩れた足が再生する。元より紙の集合体なのだから再生までは総司も想像できていた。なら何故彼が驚いているのか。それは今し方自分の『異能』で無効化したと思ったからだ。そしてどうして止まらないのかを再生する足部の紙のエイドスを見て推測する総司。
「まさか、この紙一枚一枚に術式が掛かってんのか!?」
「その通りだ!」
「なっ!?グボッ!?」
跳躍して攻撃した為空中で停滞していた総司に零次からの鋭い拳が入る。あまりの威力に総司の体は三キロメートル程吹き飛ばされる。そして巨人は再生を終えてしまった。
「マズい…!」
こうなっては総司もなりふり構っていられない。即座に体勢を立て直した総司。被害なんて考えない、建造物もなぎ倒しながら最短距離を突き進む総司。流石の速度かまたしても間に合い巨人の足を破壊する事に成功する。しかし今回は地面に当たってしまうギリギリで割り込む形だった。
「おー、頑張るねー」
「テメエ…!」
零次が感心したような声を出す。それが有利な立場からの見下しの言葉である事に総司は気づいていた。
「じゃあ今度はこうだ!」
「っ!もしかしてオラオラですかァ!?ってな!」
零次の言葉に応じるかのように足では無く両の腕を構える巨人。総司は軽口を叩きながらも即座に腕を破壊し、更に頭部の破壊にも成功する。だが…
「やっぱ再生するか!ヘッドショットなんだから回復も出来ずに一撃死とかないのかよ!」
「現実の殺し合いはFPSゲームのように単純にはいかないって事だな」
零次の言葉通り、再び紙がパーツを再形成する。『異能』が効いていない訳では無い。事実効いたとおぼしき紙は地面に落ちたまま何も反応を示さない。群体制御ではなく一枚一枚を紐付けた式神に近いのだろう、これで零次の気分次第で落ちた紙も回収できて、無限に回復できる状態にされるとほぼ確実に守りきれなくなっていたので嬉しい誤算ではある。だからといって明確な対処も不可能なのだが。
「さあ!このピンチをどう乗り切る!?オリジナル様よお!」
「パクリごときがほざいたな!今に見てろよ見てろよ~!?」
内心絶望しながら総司は巨人と再び相対する…
魔法科世界の秘匿通信
安部零次:自分を『安部』と名乗る豪胆なクローン。しかしその実力は確かであり、身体強化により総司と同等の身体能力を有しながら、魔法力が桁違いとなっていて、総合力では魔法科世界の現最強である。
サイオン量、事象干渉力、構築速度、キャパシティ全てが原作魔法科キャラを上回っており、
特に目立つのはキャパシティ、つまり魔法の規模であり、維持や実戦運用などを一切考慮しなければ現一高生全員の演算領域を一つにまとめて魔法式構築を行っても及ばないレベルの規模で魔法の行使が可能。
キリトみたいな黒コートで参上。
・因みに総司は仮装行列を三キロ程飛ばされるまでずっと維持してた。つまり序盤の台詞はCV三森すずこ
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
-
いいともー!
-
駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~