魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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何の気なしにリロメモのキャラ画面を眺めていたら、レオや幹比古の不遇さがよく分かる



それとまた雫ちゃん星三アシストかよ…


横浜騒乱編 その二十

「シャンクス…!腕が…!」

 

「切り落としといてその台詞はないだろ!」

 

 

イヤミとばかりに有名な台詞を引用して総司を馬鹿にする零次。その表情は最早勝利を確信したかのような笑みで満ちていた。

 

 

「無理だよオリジナル!お互いが万全でも互角なのに、隻腕となったお前じゃもう勝ち目は無い!そして俺を倒せるのはお前だけ!この戦争ウチの勝ちだ!」

 

「いいぜ?そのまま油断しててくれ、そのキモい顔を更にキモくしてやる!」

 

「お前の顔だよ?」

 

 

そうして再び激突する両者。総司は隻腕でありながらも、右だけで鋭い攻撃を放つが、攻撃の方向が減った事で読まれやすくなり、零次にカウンターを腹に叩き込まれる。衝撃で一瞬動きが止まった総司だが、再び右の拳で零次の顔面を狙ったパンチを放つ。しかしそれも対応され、右腕を掴まれてしまい届かない。

 

 

「…お前のその身体能力は魔法のはずだ。でも俺の異能で消えない…一体どういう理屈だ?」

 

「おや?理解していたんじゃないのか?」

 

「何かしらあるとは分かっていたが、詳しいことはわかんねえな」

 

 

話しながら、尚も右腕を動かそうとする総司。そしてその問いは、零次に投げ飛ばされた後に聞くことができた。

 

 

「がっはぁ…!」

 

「分からないなら教えてやっても良いぜ?俺の異能は…ズバリ、『エイドスの正常化』だ」

 

「ハァ…ハァ…はあ?それじゃ俺と一緒じゃねーか」

 

「ざっと言えばお前と同じ能力に聞こえるが、詳細は違うモノだ。お前のはエイドスを正しい在り方に戻す力だが…俺のは、『書き換えたエイドスを正常な状態であると誤認させる』力だ」

 

「…つまり?」

 

「世界は俺が異能を絡めて魔法を発動しても、それが正常な状態であると勘違いするんだ。お前は気づいていないだろうが、お前の異能は世界が魔法という異常を元に戻そうとする力に便乗して効果を増し、魔法の実質的な無効化に繋がっているんだ。だが俺の異能で発動した魔法は世界にとって正常な状態だ。俺が異能を解除するまでこれは続く。お前の異能で正常に戻そうとしても、世界にとって俺の魔法は正常なものだ、正しいのにそこからどうやって戻すというんだ?」

 

「何言ってんだおめえ」

 

「分かんない」

 

「何で分かんねえんだよ」

 

「だって『伝統派』の奴らの受け売りだし…」

 

 

やはり総司のクローン、零次も例に漏れず頭が弱かった。伝統派が造り出した異能の詳細をよく理解していなかったのだ。

 

 

「まあ、兎にも角にもお前に勝ち目は無いんだよオリジナル」

 

「今ので勝ち目ありそうに見えたけど」

 

「気のせいだよ」

 

「気のせいか~」

 

「「ハッハッハッハッハ!オッラァ!」」

 

 

二人して笑い合った後に再び拳を重ねる。総司の右拳と零次の左拳が正面から激突する。その結果として両者ともに吹き飛ばされて距離が離れた。次、先に動いたのは総司であった。零次を掴んで強引に空中に放り出し、そのまま跳躍、そのまま蹴りを放ち零次を大きく駅前広場から引き離す。

 

 

「…がはっ!やる気急に出すじゃねーか!…駅前から離して仲間達を脱出させるつもりか」

 

 

いいダメージをもらった零次だが、魔法によって本物と同等に強化された肉体はこの程度では崩れない。おもむろに立ち上がった零次は総司が距離を置こうとした理由を考察する。そんな零次の目の前に総司が着地してさらに蹴りで追撃を掛けようとするが

 

 

「そんな見え見えの攻撃、黙って受けるとでも!?」

 

「ッチ!…うおっ!?」

 

 

高速の足蹴りを難なく受け止め、そのままマリオの投げのように回転して遠心力をつけて総司を投げ飛ばす。だがその方角は駅前広場に戻る方向では無かった。

 

 

「どういうつもりだお前?…っく、アイツら狙ってただろお前達はさ」

 

「我がオリジナルながら記憶力に難があるようで可哀想だな?言っただろう?俺はお前だけが目的なんだ。弟達がお前のお仲間を狙ってたのは、アイツらじゃお前に勝てない故の代替案だ。俺はお前を直接倒せるからな、わざわざそんな小細工を労す必要が無い」

 

「だからってわざわざ離す必要もないのでは?」

 

「細かい事を気にするなや」

 

「そう…」

 

 

言いながら総司は立ち上がり、追いついてきた零次と相対する。その様子に、零次は首を傾げた。

 

 

「(…おかしい。奴は腕を落とされて、それに巨人の術式をまとめて正常化させた影響で疲労が溜まっているはず…もうバテていても…!)」

 

 

ここまで考えた零次は総司の左腕を見て気づいた。切り落とした直後は切り口から凄惨なほどに流れていた血が止まっている。これは…

 

 

「また硬化魔法かよ…!」

 

「ハッ!馬鹿の一つ覚えで悪かったな!」

 

 

そう、総司が零次の予想に反してあまり疲労していない理由、それはそもそも硬化魔法によりダメージを負っていないからである。零次は総司の異能に対して自分の魔法を無効化される事は無いが、だからといって相手の魔法を無効化できる訳では無い。そのため、気づかない内にダメージレースで零次は敗北していた。

では零次が同じ事をすればと言われればこうはいかない。零次は不利になる為総司には教えていなかったが、実は零次の異能で『正常化』できる魔法は一つの物体にかけられた魔法一種類だけである。通常であれば問題はないが、総司相手では硬化魔法は無効化されてしまう。故に零次はこれ以上防御力を上げられないのだ。

 

 

「(…余裕とばかり思っていたが、こりゃちょっと怪しいか?)」

 

 

勝ち確だと思っていた零次の脳裏に敗北の可能性が浮かぶ。先程総司の魔法に干渉して消し飛ばしてみようとしたが、その干渉そのものを無効化されてしまった。こうなると零次は総司の防御を抜く事が出来なくなってしまった。

勝ち目があるとすれば、総司が硬化魔法をかけ直すタイミングだが…総司は持ち前の莫大な想子で無理矢理重ね掛けしている為、それも難しい。

 

 

「ゴリ押し反対!」

 

「でっかいブーメラン刺さってますよ!」

 

 

再びぶつかり合う両者、しかしそれは先程の衝突とは違った。零次の拳は寸分違わず総司の顔面に叩き込まれているが、総司は不敵な笑みを浮かべてノーダメージであると主張する。対して零次は寸でのところで総司の拳を躱している。ダメージをこれ以上負うと、消耗戦で敗北してしまいかねない。

 

 

「…見逃してはくれませんか?」

 

「腕取っといて生きて帰れると思うなよ?」

 

「ですよね~!」

 

 

総司は自身の顔に伸びている零次の腕を掴んで再び投げる。しかしただでダメージを受ける零次では無い。総司の真似をして、本人が正常化出来ない距離では硬化魔法を発動させてダメージを抑える。

 

 

「…っく!(さっきから投げてくるの何なんだ?駅前からは大分離れてんのに、更に離す必要が…?)」

 

 

そう思案しながら着地をする零次。その直後、零次の脳天めがけて踵落としが放たれる。零次はその踵を拳で相殺するが、総司は体を捻って反対の足で蹴りを決める。零次は満足なガードも出来ずに横合いに弾き飛ばされる。

 

そして二人が距離を置いて向かい合う。そして間髪入れずに総司が突撃を仕掛ける。零次はこの際消耗戦の中に勝機を見いだそうとやる気を出して、総司を待ち構える。

 

 

「…?」

 

 

その時、零次は微かな違和感を抱くが、総司が向かって来ている手前、気にすることをしなかった。

 

ここで零次は気づかなかった。

今、この場所が()()()()であるのか、近くにいる()()が誰であるのか。そして、遙か上空に見える()()()()に。

 

 

「(一撃だけいなして、切断魔法に異能を掛けてからオリジナルの防御を突破する!)…っ!?」

 

 

反撃の糸口を見いだした零次であったが、直後に零次の足下が突如爆発…いや、()()する。その爆煙により視界が塞がれてしまった。

 

 

「(一体何が爆発して!?…水道管か!?)」

 

 

爆発で体勢を崩した零次。更に爆煙で周囲がよく見えない。だが、総司が直線的に向かって来ていたのは分かっていたので、振動系の切断魔法を札に纏わせて正面に投擲する。もし総司が回避しても、その間に体勢を立て直そうと考えたのだ。だが…

 

 

「…残念!」

 

「…!?それは…!?」

 

 

だが煙の中から現れた総司の顔の前には、()()()()()()が存在したのだ。

 

 

「ファランクス…!?」

 

 

多重障壁魔法、『ファランクス』。十師族が一つ、十文字家に伝わる秘術だ。『ファランクス』は4系統8種全て含む系統魔法である。4系統8種、全ての系統種類を不規則な順番で切り替えながら絶え間なく紡ぎ出し、防壁を幾重にも作り出す多重移動防壁魔法。到底総司には扱えない魔法であるし、そもそも魔法式を知らないだろう。となれば…

 

 

「この場所は…!」

 

 

そう、此処は魔法協会関東支部の前であった。総司が先程零次を投げたのは、駅前から離すのが目的では無く、協会の前で戦闘しているであろう克人に援護をもらおうとしての行動であった。つまりこの魔法を発動しているのは、克人であると考えられる。

となれば、先程の水道管の爆発は一条将輝の『爆裂』であろうと零次は推測した。

 

 

「(でも俺がやるべき事は変わらん…!)」

 

 

しかし零次は焦らない。向こうがこちらの攻撃を防いできたからと言って、こちらもいなしてしまえば問題ない。克人は零次に追いつけないし、将輝は零次の速度には及ばない。ならば結局総司の攻撃を回避できれば、零次は逃げ切ることが出来る。

 

総司は隻腕だ、残った右だけ警戒していれば総司の攻撃を防ぐことは容易…

 

 

「…がっ!?」

 

 

…そんな零次の腹部に、全く無警戒の衝撃が走る。総司が今にも振りかぶっている右拳から目を離してはいけないとは分かっているが、零次は自身の腹部に目を向ける。

そこには、腕が突き刺さっていた。煙で体が一部見えていなかった総司だが、この距離まで接近した事によって零次は気づいた。

 

 

「(左腕が…()()している…!?)」

 

 

何故総司の左腕が復活しているのか、その理由を考える間もなく、零次は総司の強烈な右ストレートを顔面にもらって大きく吹き飛んだのだった。




魔法科世界の秘匿通信


・総司と零次の異能の違い:総司は言わば『初期値への初期化』、零次は『初期値の変更』である。変更が加えられたエイドスを初期化することで総司は魔法を無効化出来るが、零次のはその初期化先を変更するため、総司の異能に引っかからないのだ。


・零次の異能は副次的効果として対象物の情報強度を飛躍的に高める事が出来る。だが解除すると元通りになる為、もし解除が早かったならば、零次は『爆裂』していたか『分解』されていただろう。



次回で戦闘終わりかな?

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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