魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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プレイアブルを追加するのはいいが、雫ちゃんの星四を増やせ、男性陣の星四を増やせ、深雪ちゃんはお腹いっぱいだよ


来訪者編 その二

「…グスッ、雫ぅ~!」

 

「はいはい、ほのか。ほんの三ヶ月なんだから泣かないで」

 

 

2096年1月上旬。北山雫、光井ほのかを始めとした面々は空港に来ていた。それはもちろん三ヶ月の留学へと向かう雫とそのボディーガードとして同行する総司の見送りだ。だが、ここで問題が発生していた。

 

 

「…総司の奴、遅くないか?」

 

「もう後数十分で出発なのに!」

 

 

レオとエリカが指摘したように、総司がまだ空港に到着していないのだ。先程から美月や幹比古が総司の端末に連絡を入れているが、一向に反応を返さない。

 

 

「もう!総司さんったら、雫をしっかり守らないといけないって事忘れてるんじゃないの!?」

 

「落ち着いてほのか。多分総司君は急用で来れないんだよ」

 

「ボディーガードとして大丈夫なのかいそれ…」

 

「しかも空港に迷惑掛かるだろ…」

 

 

いつもは必要以上に早く着いているのに、こういうときに間に合わないとは総司は何を考えているのか、親友としばらくの別れを前にしてほのかは珍しく憤慨していた。そんなほのかを見た雫は、これ以上総司に話題が向かないようにと露骨に話題を転換する。

 

 

「そういえば、元旦はゴメンねみんな。折角初詣誘ってくれたのに…」

 

「問題ないよ。家の用事があったんだろう?」

 

 

雫は達也達の初詣に同行していなかった。実家の集まりがあり、そちらに顔を出していたのだ。ついでに総司もその場にいた。

 

 

「そう言えば、やけに目立つ女の子がいたんだって?」

 

「ああ。まるでアニメの中から直接飛び出してきたように可愛らしい女子だったな」

 

「あら、お兄様?随分とあの女の子の容姿が気に入っているようですね?」

 

「許してくれないか深雪」

 

 

達也の発言で一気に怒りを爆発させ、冷気を放つ深雪を相手に達也は即座に両手を挙げて降伏の意を示す。その光景に周囲の仲間は笑っていた。元々こんな子じゃなかったんだけどなぁ…と遠い目をしながら、いつから深雪がこんなに嫉妬深く、より行動に移しやすくなったかを思い返す達也。すると自然に高校に入学してからであると気づき、となれば原因は総司であるとまで思考した達也。彼は総司を消すことを心に誓った。

 

 

「達也君がそこまで言う子がいたんだ~。アタシもそっち行けば良かったかな」

 

「お前の数百倍は整った顔だったぞ」

 

「はいぶち殺し確定~」

 

 

光の速さでエリカの逆鱗に触れたレオ。眼にもとまらぬ速さで動き、レオに華麗なる筋肉バスターをキメる。周囲の人間はギョッとした。そりゃ公衆の面前で使えばそうなるわ。

 

 

「でもホントに現実離れした子でしたよね…」

 

「ええ…もしかするとあの子が雫さんの交換留学の相手なのかもしれませんね」

 

 

同じくその場にいたほのかと美月がその日の光景を思い返すように呟く。達也も同様の予想を立てていたが、となると彼女がアンジー・シリウスなのか…あれで変装したつもりだったのか?だとしたら潜入とか止めたほうが良いと思うなぁ…と、総司から入手した情報と照らし合わせて感想を思い浮かべる。

 

 

「…ってもう出発時刻よ!?」

 

「ホントだ…じゃあ行ってきます」

 

「ちょっと雫!?総司君を待たなくてもいいの!?」

 

「大丈夫だよ、あの人はすぐに追いつくし、なんなら追い抜かれちゃうかも」

 

 

何気ない会話を続けてとうとう出発時刻になったが、総司が到着する気配がしない。そんな時、荷物をもった人物が雫に話しかける。

 

 

「お嬢様、総司様は所用で飛行機に同乗できないとの事です。ですので私が彼の荷物を運ばせていただきます」

 

「うん、ありがとう黒沢さん」

 

 

話しかけてきたのは雫の家の使用人の一人黒沢であった。黒沢曰く、総司は遅れるから先に行っておこうとの事。かくして二人は飛行機に乗って、飛び去ってしまった。

 

 

「…雫ぅ」

 

「もう…ほのかったら。そんなにウジウジしないの。時差はあるけどこまめに連絡を取り合えるのでしょう?」

 

「だけどぉ…」

 

 

飛び去った飛行機を見上げながら、ほのかが僅かに涙をこぼす。やはり短い期間で、通話も可能とは言え、親友と会いたくても会えないというのは、中々に堪えるのだろう。そんな時だ。

 

 

「よっっっと!はい遅刻でーす!」

 

「…総司」

 

 

クイックシルバーもかくやという正確さと速度で空港内の達也達がいるエリアまで走り抜けてきた総司。他の人には一瞬謎の突風が吹いたかのように思えただろう。

 

 

「総司君!ちょっと遅くない!?」

 

「そうですよ!雫のボディーガードとして恥ずかしくないんですか!?」

 

「ホントすいません…」

 

 

総司はほのかに対して土下座を敢行する。深雪や美月は「そこまでしなくても…」と思ったが、ほのかはまだ満足しないようで総司の頭を足で踏みつけた。ええ…という反応をする男性陣。特に達也がほのかの旦那になる男は将来大変だろうな…と他人事のように考えていた。その子貴方を狙ってるんですよ。

 

 

「…それで、なんで遅れたんですか?」

 

「寝坊しました」

 

「この豚っ!」

 

「落ち着けほのかちゃん!何か悪い電波を受信してない?大丈夫?もし帰ってきたらほのかちゃんが女王様とかになってたら雫ちゃんが悲しむぞ!?」

 

「…それもそうですね」

 

 

そう言って総司の頭から足をどけるほのか。因みに言っておくが、総司は一ミリもダメージを受けていない。そんな時、達也から総司に追求の言葉が飛んでくる。

 

 

「…それはおかしくないか?お前と雫は一緒の家に住んでいるんだから、雫が寝坊していないのに、お前を起こしていない理由が分からないんだが?」

 

「…」

 

「それもそうじゃないですか!?総司さん!ホントはどこで何をしてたんですか!?」

 

「そもそもなら、雫と一緒に来てもおかしくはないのでは?」

 

 

全員からの追求の目線が飛び、それに総司は耐える事が出来なかった。総司は慌てて釈明をする。

 

 

「いや、ちょっと行き違いが…」

 

「「「「本当は?」」」」

 

 

だが誤魔化そうとしたのがバレたので再度追求の目線に晒される総司。そして彼は白状した。

 

 

「…いざ空港に向かうかとなってな。雫ちゃんの乗る車に併走しようと考えたんだが…どうも見られている気配がしてな。だから黒沢さんに荷物を預けて先に行ってもらったんだ」

 

「…それで?」

 

「その後、しばらく歩いて公園ぐらいまで行ったらさ、何か()()()()()()()()不審者数名にさ?「お前は我々の天敵だ」って言われて訳も分からず戦闘開始。でも大した事なかったからすぐ終わるかと思ったら、零次の奴が乱入してきやがってな」

 

「…は?」

 

 

達也の呟きに追従するかのようにこの場の全員が驚愕の表情を浮かべてフリーズする。この男、かつて苦しめられた零次と先程まで戦闘していたというではないか。一体何が起こっているのだろうか。

 

 

「そ、それで総司さんに怪我は無いんですか?」

 

「ああ、大丈夫。俺は一対一か一対多が得意だからな。あの時怪我したのは君たちを庇ったからだし」

 

 

地味なイヤミが、回避することもできなかったであろう深雪の心にダイレクトアタックをかました。

 

 

「それで結局、零次を吹き飛ばして、残りの奴は仮装行列(パレード)を利用した擬似的な空蝉の術で撒いた」

 

「相変わらず厄介事を持ってくるな」

 

「お互い様だぜ達也」

 

「嘘だろ…!?」

 

「しっかりするんだ達也!」

 

「まだ傷は浅いぞ!」

 

 

直視したくなかった事実に達也の心に再生でも治せない心の傷が生まれる。達也を介抱する男性陣。いつものおふざけだと無視した女性陣。

 

 

「…それで、総司君はどうやって雫の所に行くの?」

 

「そんなの決まってるじゃないか」

 

 

エリカの言葉に何を言っているんだ?と言わんばかりの表情を浮かべる総司。その表情で察する事が出来たのは達也と幹比古だけだった。

 

 

「決まってるって…」

 

「どういう…」

 

深い夜の闇に~♪飲まれないよう必死になって♪

 

「…なんか曲が聞こえないか?」

 

 

レオの空耳は置いといて、準備体操を始める総司。まるでこれからとてつもない運動をするかのようだ。

 

 

「…まあ、程々にな」

 

「というかその方法捕まらないの?」

 

「大丈夫だって!」

 

輝いた六等星~♪まるで僕らのようだ~♪

 

 

そして総司は少し離れてクラウチングスタートの姿勢を取ると、後ろを振り向いて一時の別れの言葉を告げた。

 

 

繰り返す日常に~♪折れないように~♪

 

「それじゃ、行ってきます!」

 

 

総司は空港を飛び出して…海へと走り出す!

 

 

勝ち取りたい!物もない!無力な馬鹿にはなれない♪それで君は良いんだよ♪

 

 

総司はそのまま海へと突っ込むと、足を水面から下に沈ませることなく、海の上を走り出す!

 

その速度はマッハを超え!悠々と飛ぶ雫の飛行機をあっという間に追い越した!

 

 

キリキリと!生き様を!そのために死ねる何かを♪この時代に叩きつけてやれー!♪

 

 

圧倒的な速度で走り抜いた総司は、出発時刻およそ十分で、バークレーまで到着してしまったのだった…




魔法科世界の秘匿通信


・この後、「いらっしゃい、雫ちゃん」とまるで現地人かのような態度で雫を迎え入れる総司がいたとか何とか

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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