気づいたら一週間ぐらい投稿して無くてヤバイ…申し訳ない。
「流石総司君、思ってた通り私より早い到着だったね」
「だけど、君を一人で行かせてしまったのは事実だ。すまない」
とてつもない速度で先にバークレーに到着していた総司からの謝罪を受けた雫。一人でという文言の辺りで黒沢が「私もいたからお嬢様は一人ではなかったですよ?」というツッコミをしたそうにしていたが、ぐっと押さえ込んでいた。彼女はプロの使用人、主人達の機嫌を損ねるような言動は慎むのが当たり前だ。
「さ、早く行こう。今日一日はゆっくりした方がいいだろう」
「…総司君、さっきからワクワクしてない?」
総司は雫に指摘されたように何かを楽しみにしているようだ。それはまるで、今か今かと友人を待つかのように。
「ああ、このバークレーにはな、俺の友達がいるんだ。直接会ったことはなかったが、今回会えるときたものだから、向こうが『いつでも歓迎さ!』と言ってきたんだ。俺だって会いたいからな、雫ちゃんを送り届けたら、すぐに向かおうと思ってるんだ」
「なら私も…!」
「いや、君は長旅でお疲れだろう?今日はもう休んでおいてくれ」
その言葉が不服だったのか顔を可愛らしく膨らませる雫。その表情に一瞬友人に自慢してやりたい気持ちに襲われたが、その衝動を抑えて二人は今後三ヶ月間の間使用することになる部屋に到着する。そして後のことを黒沢に任せて総司は端末に指定された座標へと向かった。
一方その頃…横浜中華街の一角にて
「…どうやらあの者はUSNAへと渡ったようです」
「だろうな、先程の俺達の攻撃はアイツを確実に北山雫の護衛に専念させて、日本から目を逸らせる為の布石。実力は俺と拮抗しているが、守る者を持つオリジナルでは俺と比べて行動範囲が圧倒的に制限される」
その一角の建造物の中に見える二つの人影。内一つの影がもう一つの影…安部零次に報告を上げていた。
そしてその零次に近づいてくる者が一人。
「…何故あの男をあの時始末しなかった?」
「できないからだ。奴は個人で大軍を相手取る戦闘法を得意とする。アイツの個人戦闘は基本的にそのスペック任せだ。だがそのスペックが驚異的、更に複数人で挑んだところで勝ち目などない」
「だがあの男は我々を滅することすら可能な危険な存在だ、早々に始末しておきたい」
「早まるな、デーモン。いや、
「…というと?」
パラサイトと呼ばれた…白仮面を付けた人物。その人物は、過剰に総司を恐れていた。だが零次はその恐怖を当然だろうと結論づける。パラサイトの本質がどうであれ、妖魔の類いである時点で総司相手には勝てないからだ。
「お前達には仲間を増やす方法を探しながら、この国で活動する為の新しい組織を作り出して欲しい」
「何故だ?組織はお前の所属している物で充分なのではないのか?」
「上は日本内の工作拠点をオリジナルに粗方破壊されたことに腹を立てていてな。オリジナルが国外に出る今、新たに拠点を増やすチャンスだと息巻いているんだよ」
どうせ帰ってきたら潰し直されるんだろうが。と心の中で結論づけた零次。そして彼は、指示を受けてそれを実行に移そうと移動し始めた白仮面を見て、ため息をつく。
「はぁ…アンジー・シリウス…どれほどの強者かと思えば、仲間に裏切り者がいることすら気づかないとは…情けないな」
「クシュン!」
「風邪ですかリーナ?」
「いえ、違うとは思いますが…」
更に場所は変わって、とあるマンションの一室。ここは、二学期より北山雫の交換留学の相手として第一高校に通うこととなるアンジー・シリウス…こと、アンジェリーナ・クドウ・シールズ少佐とその補佐官、シルヴィア・マーキュリー・ファースト准尉が、『灼熱のハロウィン』事件の首謀者及び、使用された戦略級魔法の使い手の潜入捜査を行う為の生活拠点として用いられる事となった部屋だ。
そこで作戦内容の確認を行っていたリーナがいきなりくしゃみをする。心配するシルヴィ、何でも無いと言い放つリーナ。ここで二人がすぐに、くしゃみは誰かが自分のことを噂しているときに出るという日本の迷信を思い出せていれば、この事件の顛末は変わっていたかもしれない。
「では、今回の作戦を改めて確認しておきましょう」
「…ぶっちゃけ要らないと思いますが」
「ダメですよリーナ。もし不備等があったとなれば始末に負えませんからね」
内容なんて耳にたこができるほど聞いたと言わんばかりの表情でシルヴィを見るリーナ。それをたしなめつつ、シルヴィは作戦内容をつらつらと述べていく。
「まず今回の最重要項目は、『灼熱のハロウィン』を引き起こした戦略級魔法の使い手を探り出すこと…のはずでしたが、現在は国外へ逃亡した『スターズ』の脱走兵の処断になります」
「……」
「…リーナには辛いでしょうが、これも任務です。脱走したとはいえ仲間を手には掛けたくないのは同じ気持ちですが、割り切らねばなりません」
「…分かってます」
リーナにはスターズの総隊長として、脱走した者達を処刑しなければならない。まだ高校生である彼女には非常に酷な任務であった。
「…続けます。現在『灼熱のハロウィン』で戦略級魔法を使用した疑いが最も高いのは、この人物です」
シルヴィの言葉と共に仮想ディスプレイに映し出されたのは一高の制服を着た人物であった。
「それがこの、『
「…ソウジ・タチバナね」
そのディスプレイには達也を始めとした一高生徒や、一条将輝なども映し出されているが、最もピックアップされているのは総司であったのだ。
「確かこのソウジ・タチバナという男は魔法が使えないと言う話ではなかったのですか?」
「ええ、本人や周囲の人間はそう言ってはばかりませんが、それ自体がブラフである可能性があります。この映像を見てください、これは今年の夏に行われていた『九校戦』と呼ばれる魔法競技会のものです」
「どれどれ…って、はあ!?何よこの動き!?これで魔法使ってないは無理があるでしょう!?」
「上層部も同様の考えです。確かに大会での記録には彼の所持するラケット以外に魔法が使用された形跡はありませんが、この大会の運営には彼のバックに付いている九島が大きく関与しています」
「なるほど…つまり、この規模の魔法を疲れすら見せずに使用する手練れであれば、『灼熱のハロウィン』を起こすことも可能だと…」
全く以て見当違いの作戦を立てるUSNAの軍部。この事を盗み見たレイモンドという少年は画面の前で腹を抱えて大笑いしていた事は余談だ。
「ですが、彼は今日本にいません。リーナの交換留学の相手の北山雫という少女の護衛としてUSNAに同行しています」
「なっ…!?仮にその男が下手人だとして、そんな人材をUSNAに送り込むなんて…!?」
「この事を軍部は重く見ており、彼が入国後すぐさま監視を付けるとの事です」
「…そう言えばシルヴィ。この男の話を私にした理由は?この国にいないなら私の仕事の範囲外ですよ?」
リーナの抱いた疑問。それはリーナが監視する事が出来ない危険な存在の話をしても、それでリーナがどうこう出来るという訳では無い。なのに何故上層部はリーナにこの話を聞かせるよう命じたのか。
「…上層部は、最悪本土での戦闘を想定しています」
「彼一人とですか?だとしても過剰戦力では?」
「戦略級魔法師の疑いがある者に対して、同じく戦略級であるリーナをいつでも帰国出来るように備えさせておきたいようです」
「面倒ですね…」
リーナのため息が、マンションの一室に響いた…
魔法科世界の秘匿通信
・入国後に付くはずだった監視は、飛行機から総司が降りて来ないことに困惑してゲートを通り過ぎた雫の傍へ入り口の方から駆け寄ってきた総司に気づかなかった。
・横浜騒乱編の時は中盤まで国防仮面として活動していたので潜り込んできたスパイは国防仮面と総司を結びつけられていない。変装を止めた零次戦では、零次を総司と勘違いしてスパイ共がこぞって零次を攻撃。もれなく返り討ちになった為、総司と零次の違いが分かっていない。故に大部分が総司は魔法が使えることを隠していたと思われている。
入国した後、雫ちゃんと合流した総司の行動と、襲撃してきた零次達のその後、入国していざ学校へという前に作戦を確認しているリーナ達という話。
謎にUSNAの軍部が無能の回
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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