魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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ハロウィン雫ちゃん可愛すぎか?…でも、アシストにまたしても深雪ちゃんが来たのは謎。男性陣追加しろって…


来訪者編 その四

冬期休暇が明けて、新学期が始まった。教室に入ったときにいつもの騒がしさが若干、本当に若干恋しくなった達也。そんな彼は今…

 

 

「「「「うおおおおお!司波達也死ぬべし慈悲はないィ!」」」」

 

 

「い、一体何なのよこれは!?これが日本の歓迎のやり方なのかしらミユキ!?」

 

「そんな馬鹿なことあるわけないでしょう真面目に考えなさいこのお馬鹿!…お兄様!」

 

「…総司、帰ったら覚えていろよ…!」

 

 

目が血走った男子生徒達(一部女子生徒)に、深雪とリーナごと追いかけられていた。

 

 

「こ、怖いんだけど!?今までも滅多なことでは恐怖すら抱かなかったこの私が!?」

 

「なら良い機会だな!これが人間の執念と呼ばれるものだ覚えておけ!」

 

「ピンク色のお兄様…?」

 

「マゼンタだ!」

 

 

事の始まりは数時間前…

 

 

新学期が始まり、友人が二人外国に旅立って不在とは言え、彼らの習慣が大きく変わる事などそうそうない。と言う訳で、いつもと変わらず学食にて深雪とほのかを待つ、達也を始めとしたE組の面々。そして約束していた時刻より僅かに遅れてきた二人。その二人の隣には、金髪碧眼の絶世の美少女が歩いていた。それは以前初詣にて目撃した、総司曰くUSNA最強の魔法師、アンジー・シリウスであるという少女だ。

端から見ればまだ若いのにUSNA最強…?とも思うかもしれないが、総司の情報の妙な正確さ、USNAはシリウスが未成年である事を公表している事からおかしいことではなく、寧ろほぼ確実と言っても過言ではない。

 

 

「こんにちは達也さん!久しぶりに一緒にお昼を食べられますね!…あっそうだ!こちらの方が、もう知っていらっしゃるかもですが、交換留学でいらっしゃったアンジェリーナ・クドウ・シールズさんです!」

 

「…こちらの男の子だけじゃなくて、他の皆さんにも紹介していただきたいのだけれど…」

 

「…あっ」

 

「あれれ~?どうしてほのかちゃんは達也君にだけ紹介したのかな?それとも紹介はついでで達也君と話したいだけじゃないの?」

 

「シーッ!シーッ!声大きい!達也さんに聞こえちゃうよ!」

 

「(…もう既に聞こえていることは黙っていたほうがいいだろうな…)」

 

 

ほのかは達也と話が出来る喜びについついはしゃぎすぎて留学生をないがしろにしてしまった結果、エリカ達に当面のイジられポイントを提供することになってしまったのだった。

 

 

「こちらは交換留学でUSNAからいらっしゃったアンジェリーナ・クドウ・シールズさんです」

 

「よろしく。日本は不慣れだけど、仲良くしてくれると嬉しいわ。それと私の事はリーナと呼んでくれるかしら」

 

「分かったよリーナ。俺は司波達也、君のクラスメートになった司波深雪の兄だ。俺の事は達也で構わない」

 

「オーケー、タツヤ」

 

 

留学生…リーナを見て、達也はその一挙手一投足に全くの隙が無いことに感嘆する。それと同時に、やはり総司が言っていた様にUSNAからの刺客である事は間違いないと確信した。先程、自分をリーナと呼んで欲しいという発言、昔からUSNAでは普通、アンジェリーナという名前はアンジーという略し方が一般的だ。だが彼女はリーナと呼ぶように要求してきた。別にこの考えは一般論であるに過ぎず、本当にリーナと呼ばれて過ごしてきたのかもしれないが、仕事の自分と区別する為にリーナと呼ばれたがったのだと推測した。

 

 

「ふ~ん、それにしてもタツヤってあまりミユキとは似ていないわよね?」

 

「まあリーナったら!私とお兄様がお似合いだなんて…!」

 

「リーナそこまで言ってないよ…?」

 

「よく言われるが、俺と深雪は正真正銘の兄妹だよ」

 

 

別に深い疑問でも無く、あまり似ていないから気になっただけのようなリーナはその返答で納得し、他の面々との挨拶を行っていく。その間に達也の隣に深雪が近寄り、小声で問いかける。

 

 

「…お兄様、総司君の情報を正しいと仮定すると彼女が…」

 

「ああ、USNA最強の魔法師、アンジー・シリウスという事になるな」

 

「私には…到底その様には見えないのですが…」

 

「端から見れば戦いと無縁そうに見えるかもしれないが、体運びが素人のそれじゃない。明らかに訓練された動き方だ。それにアンジー・シリウスは未成年であると公表されているはずだ。完璧に訓練された動きをする女子高生がそう何人もいて良いものじゃない、恐らく本当に彼女がシリウスなのだろうな」

 

 

そう深雪に教える達也。いくら兄の言うことでも、少し接しただけで彼女が軍人とは思えない性格であると知っている深雪は、納得いかないと言った表情で黙り込む。そんな深雪を見ていた達也は、急に自分に向けられた()()を感じ取る。

 

 

「(…なんだこの視線は…?)」

 

 

自身に向けられた殺意。それは研ぎ澄まされたものとは到底言えないが、そこそこ明確なものだった。この中で一番殺意を向けてくる可能性のあるリーナに目をやるが、彼女は幹比古と美月が良い感じなのを即座に感じ取って、他の面々とイジり倒している。大分陽キャだな…と考えつつ、達也が周囲に目を向けると、その殺気の正体に気づいた。

 

 

「アイツが…!」

 

「許せねえ…!」

 

「(これは…嫉妬や羨望から来る殺気か?)」

 

 

いつの間にか自分達の周囲で学食をとっていた学生達がこちらを見ているではないか。それに溢れ出る殺気を抑えられず、控えめに話しているつもりでも度々こちらに声が聞こえてくる。何故このような状況になったのか、達也が読唇術で読み取ってみると…

 

 

「(アイツの言う通り、女を大量に侍らせてる…?深雪やエリカ、美月…それに七草先輩や渡辺先輩まで…?更に実は、壬生先輩や千代田委員長の本命は俺で、桐原先輩と五十里先輩は俺に虐げられている…?それに飽き足らず留学生まで早々に手籠めに…?何だこれは、全くの事実無根じゃないか)」

 

 

どうやら達也に対する悪評が出回っているらしく、周囲の生徒はそれで達也に殺気を向けてきたようだ。確かに改めてみると視線を向けてきているのは明らかに男子生徒が多い。一部女生徒もいるが、確か彼女達は深雪の熱烈なファンだったと記憶している。それに彼らは先程「アイツ」と言っていた。恐らくその人物がこの噂の元凶だろう。それは一体…?

 

 

「(カップル同士の熱烈なイチャつきを見せつけられるのはウンザリだが、こんな情報を教えてくれた橘には感謝しないとな)…は?」

 

「お兄様?」

 

「?」

 

「やめろ近づくな、余計に話がこじれる!」

 

「「え?」」

 

 

この噂の元凶が総司だと判明した直後、深雪とリーナがそれぞれ達也の両サイドに移動する。そのあまりにも自然な挙動(深雪は自然だが、リーナは深雪と被らない様に方向変換したが、完璧な足さばきで自然に見えてしまった)に、更に殺気を高めた生徒が立ち上がる。その光景になくしたはずの感情の一つ、「恐怖」が蘇ってきたかのごとく、達也は身震いした。

 

 

「ここは危険だ…!スマン、俺は先に行く!」

 

「ちょっと達也!?」

 

「どこいくんだよ!?」

 

 

この場に留まっていてはマズい。そう判断した達也は幹比古やレオの制止も聞かず、一目散に駆けていく。そしてそれを追うかのごとく生徒達が飛び出して行く。

 

 

「速く逃げなければ…!」

 

「どうしてお兄様が追われるのですか!?」

 

「というかどうしてミユキはアタシを連れてきたのよ!?」

 

「深雪!?リーナ!?何故ついてきた!?」

 

 

全力疾走を試みた達也だが、何故か深雪とリーナがいた為それははばかられた。何故いるのかと言えば、生徒達が追いかけだしたタイミングで異変を感じ取った深雪が思わずリーナを連れて追いかけてしまったのだ。近くにいて他の生徒達よりも近かった為すぐに追いつけたのだ。

そして冒頭に戻る。

 

 

「何でタツヤがピンクになるのよ!?タツヤはタツヤで何でマゼンタに拘るの!?」

 

「マゼンタじゃない、ピンクだ!にどとまちがえるなくそが」

 

「急に口悪っ!?」

 

 

そう言い合いながらも、必死に追手から逃げる達也達。そんな中、達也達の向かう先に見覚えのある姿が映る。

 

 

「あれは…!おーい、森崎!こいつらを風紀委員として連行してくれないか!?今にも殺されそうなんだが!?」

 

 

そこにいたのは森崎駿。最近グングンと腕を伸ばし、実技成績も深雪や雫、ほのかに幹比古に次ぐ五位と高順位をマークした男だ。達也は風紀委員としての森崎に助けを求める。達也も風紀委員ではあるのだが、その本人が追われている以上、自分で連行など出来ないし、そもそも後ろの集団に追いつかれたら達也の命はほぼないだろう(再生で蘇りはするが)。

そして達也の声に反応した駿は達也達の方を見て驚愕の表情を見せ、その後に「ああ…これが」と納得したような顔で呟いて、気まずそうに目を逸らした。

 

 

「「「何でー!?」」」

 

 

この逃走劇は、次の予鈴が鳴るまで続いたのであった…




魔法科世界の秘匿通信


・実はこの噂を総司が流したのは善意から。こうやってトラブルを起こしてリーナに捜査どころの話ではなくするのが狙い。因みに噂のダシにした人達について、真由美や摩利には許可を得ていないが、桐原、壬生、千代田、五十里のイツメンには許可及び犯行理由を伝えており、噂の真偽を確かめに来た友人達に対し、女性陣は達也の事を楽しそうに話し、男性陣はどこか影が入った様な表情で小さく肯定を示すという演技派となっている。


・因みにこの騒動で最も対抗勢力としてあげられているのが範蔵(真由美云々で動いた)である。何やってんだよ会頭!?(オルフェンズ並)

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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