魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

70 / 143
マジで投稿間隔大きくてすいません…


来訪者編 その五

「…くくっw」

 

「また笑ってるの?」

 

「そりゃぁ、レイモンドのあの顔と来たらもう爆笑ものだったからなwそうそう収まりそうにないよw」

 

 

バークレーのとあるマンション。スクールから帰宅してきた雫は数日前の出来事を思い出しては笑っている総司をたしなめる。

総司が初日に既に合流していたという少年、レイモンド・クラークという人物と対面したときに、雫は率直な第一印象としてレイモンドを「胡散臭い」と評した。その言葉を聞いたときのレイモンドの、面食らった表情を横で見ていた総司は、未だに笑いが収まらないとのことだ。

 

 

「それに私の実習の度にお祈りするのやめよ?」

 

「何を言うか、折角なんだからスクールで一番の成績を叩き出すんだよ、あくしろよ!」

 

「三ヶ月でそこまで出せると思う?」

 

「雫ちゃんなら行ける行ける」

 

 

留学生としてUSNAに訪れたのは雫個人であり、総司はあくまでボディガードというので、学内までは入ってこれなかった。が、警備員や職員を嘲笑うかのように総司は『仮装行列(パレード)』で透明化して、毎日が参観日と言わんばかりに雫の受ける授業の先々に回り込んでいた。(現状気づいているのは気配で察した雫と、その謎技術に若干引きながら「総司ならあり得る」と考えるレイモンドだけ)

その所為でUSNA軍部が派遣した監視が毎度のごとく振り切られていててんやわんやと言った状態となっているが、雫には関係ない(総司は気づいている)。

そして帰宅してしばらく二人が談笑していると、総司の端末に連絡が入る。

 

 

「…達也?」

 

「達也さんから?もう向こうは学校だと思うんだけど…」

 

 

表示された名前は司波達也。時差の関係で、今は学校にいるはずの学友だ。そんな彼がこの時間に連絡を寄越してきたとなれば、何か火急の用件があるのかもしれない。そう警戒しながら総司は通話を開く。雫は画面を見られるように総司の左肩に顔を置いて覗き込むような姿勢を取る。

 

 

『もしもし。総司か?雫もいるようだが』

 

「おう。いきなり連絡を寄越すからビックリだぞ」

 

 

総司の言葉に追従するかのように雫が「うんうん」と首を縦に振る。

 

 

『悪いな、夜分遅くに』

 

「問題ないぜ、こっちはまだ八時だ」

 

「それに、最近は夜更かしすることも多くなったし、多少遅くても慣れてるよ」

 

『雫!?そ、それって…!?』

 

「あ、ヘタレ奥手な照れ屋ほのかだ」

 

『んなっ…!?』

 

『こら、雫?ほのかをそんなにいじめたらダメじゃないの』

 

「ごめんなさ~い」

 

 

そう言って雫は舌を出してペロちゃんマーク(無表情)を作る。反省の色ゼロの行動には思わず苦笑してしまう達也。それを横で見ている総司が「可愛い…撫でたい…」と呟いているのを見て、手早く用件を済ませた方がいいと話を進める。

 

 

『校内で蔓延っている俺の悪評についてなんだが』

 

「「何が何だか…」」

 

『雫も一枚噛んでたのか…!?』

 

 

心なしか青筋を立てているかの様な達也からの問いに、心当たりがありまくりな二人は全力で目を逸らす。何を隠そう、噂を広めたのは総司だが、やはり男性と言うこともあり女生徒達に対しての情報発信力が乏しかった…ため、雫にそれとなく噂を流すように頼んだのだ。つまりはこの二人は共犯者、それも主犯と準主犯だった。

 

 

『よし、俺も今からそちらに向かう。どうやって噂を根絶するか悩みながら、明日の命に思いを馳せることだ』

 

「殺されるのか俺達?」

 

「ぷるぷる、わたしたちわるいうさぎじゃないよ」

 

『お兄様!今はそれが用件ではないはずです!』

 

『…!ああ、済まない深雪…ッチ、覚えてろよお前達』

 

「「ヒエ」」

 

 

普段冷静沈着な達也がここまで取り乱すなど大戦果だなガハハ!と脳内で考えながらおびえたフリをする二人。今回のようなギャグでは時空がゆがんで死ぬことがないのを理解しているのだ。

 

 

『それで本題なんだが…雫、ほのかから聞いたんだが、そちらでも吸血鬼が暴れていると聞いたんだが、本当のことなのか?』

 

「吸血鬼?なんぞそれ」

 

『お前には聞いていない』

 

「ひでえや」

 

「…ああ、あのこと。日本じゃホントに出たんだ」

 

「ホントにいるのかよ…!?」

 

『日本では?と言うことは』

 

「うん。まだアメリカでは都市伝説扱い。少なくともメディアは報道してない」

 

『そうなのか。だが単なる噂でも構わない。何か知っていることはないか?』

 

「何かあったのか?」

 

 

達也は一瞬、彼らを心配させるような事をわざわざ伝えるか迷ったが、確実な連携を取る為には教えておいたほうが良いと判断した。

 

 

『レオが吸血鬼らしき存在の被害にあった。幸い、命に別状はないがな』

 

「…!」

 

「そんなっ…!」

 

 

思わず口元を押さえて驚愕を示す雫。総司はというと、先程まで腑抜けた顔だったのをすぐさま引き締めて話を聞いていた。

 

 

『いや、そこまで心配する必要は無い。レオは自力で吸血鬼を撃退したんだが、その際に相手の異能でダメージを受けてしまったんだ。今は大事をとって病院にいる』

 

「そう…よかった」

 

「流石レオだな、だがアイツの硬さをすり抜けてダメージを与えるなんて…」

 

 

若干の安堵を覚えて表情を和らげる雫。対称的に総司は表情が暗くなる。もしかすると自分の家…「安部」が得意としていた妖怪案件なのかもしれないと考えたからだ。総司は大して安部の人間という自覚はないが、妖怪は打倒しなければならないという考えを持っていた。

 

 

『俺はその吸血鬼事件の犯人はアメリカから来たと考えているんだ。だからアメリカでの情報が欲しい。だが雫、くれぐれも危険な橋を渡るなよ、決してそちらの情報が必須という訳では無いからな。そして総司、お前は無理をしてでも情報を集めてこい』

 

「対応の差よ」

 

『『『妥当』』』

 

「妥当だね」

 

「ええ…(困惑)」

 

 

電話口の三人からどころか自分の恋人にすら味方がいない状況に困惑する総司。しかし、彼は今の現状を思い出して達也に断りを入れた。

 

 

「悪いがそれは出来ない。俺は今監視されていてな、下手に動けば俺でなく雫ちゃんに危害が及ぶやもしれん」

 

『何だと…?それは何者からの監視なんだ?』

 

「多分軍部からのだな。恐らく俺を警戒してんだろ。そっちにスターズ最強戦力を投入したのも、奴らにとっては俺に対しての監視という名目もあったのかもしれない。まあ、俺がこっちに来たせいで意味がなくなってしまったからな」

 

『…そのスターズの事だが…もしかすると、お前が主目的ではない可能性が高いんだ』

 

「…!ま、まさか…!俺の自意識過剰だとでも…!?」

 

『そうじゃない。もしかすると…アンジー・シリウスはこの吸血鬼事件の犯人を追ってきたのかもしれない』

 

 

達也の考察を聞いた総司は、その可能性が高いと同調する。そもそも留学生の名前や容姿は学生には判明していなかった。総司がUSNAに行くと決まった瞬間に留学に当てる人員を他の人物に変えることも可能だったはずだ。だがそのままシリウスを送ってきたとなれば、日本には戦略級魔法師よりも優先すべき任務があるのかもしれないからだ。

 

「分かった、すぐに調べよう」

 

『…良いのか?』

 

「友達がやられたんだ、黙ってられねえよ」

 

 

だがそんな事情はどうでもいい。彼にとって問題となったのは、友人が襲われた事に対する怒りと、元凶がアメリカにいる…つまり雫にも危害が及ぶ可能性を不安視する。最早彼の脳内にはアンジー・シリウスなどという単語は消え失せていた。

 

 

『感謝する、総司』

 

「だが、すぐすぐには情報を持って来られなさそうだ。俺の友人にも協力を要請しておく」

 

 

友人、という部分にまだ見ぬ強敵の姿を垣間見た達也。しかし今彼は自分達の仲間、彼を裏切らない限り、彼の友人とやらが敵対することもないと結論づけて、達也は総司に『頼んだぞ』と伝えて、通話を切った。

 

 

「…総司君、友人ってもしかして」

 

「ああ、レイモンドの奴だ」

 

「彼、危険な目に遭わないかな?」

 

「アイツは多分大丈夫だ。それよりも君の安全を確実なものにしておきたいが…」

 

 

そう言って考え込みだした総司に、雫は不満げな表情を浮かべていたが、それに総司は気づくことはなかった。




魔法科世界の秘匿通信


・総司はレイモンドが驚いたときの顔を写真として持っている。


・原作よりもレオの容体は軽い。要するにレオは強くなってる。

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

  • いいともー!
  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。