原作とは大分離れた展開だから投稿頻度遅いのは許し亭許して…
「…ということで、お前にも協力してもらうぞ、レイモンド」
「拒否権は?」
「あるとでも?」
「僕は人間だから存在するはずでは?」
「ならお前は今から人権を剥奪される」
「自由の国、アメリカで許される行為ではないね」
「ぶん殴るぞ」
「ごめんなさい」
ここはバークレーに存在するスクールの屋上。昼休みにも魔法競技のクラブ活動を行う生徒達が下に見えるこの場所で、このスクールの一人の生徒と、一人の部外者がいた。
部外者である総司はレイモンドに情報を寄越せと要求するが、流石のレイモンドも調べなければならないと返答。その返答にじゃあ今すぐ調べろと要求する総司、それに「ご自分でどうぞ」と返答するレイモンド。昨晩の達也からの連絡を皮切りとしたちょっとした口論は、総司が暴力をちらつかせる事によって終結した。
「それにしても、日本でデーモンが活動している理由が、このアメリカにあるか…流石はタツヤ・シバだね、予測はあっていると思う」
「お前も達也の事知ってるのか?」
「君が以前調べたときのログを拝見してね」
「プライバシーの侵害で訴えるわ」
「同罪で訴え返してやるよ」
総司とレイモンドはついこの間初対面を迎えたが、以前から同じ情報源…『フリズスキャルブ』のオペレーターとしてちょっとした協力をしていた事もあり、関係は既に親しげだ。あまりの親しさに危険性を垣間見た雫がマウントを取ることで総司は自分のだとアピールする必要があるぐらいには。
ところで、今この場に雫の姿はない。それは二人から頼みこまれたからだ。彼らは世界の裏事情をほぼ全て洗い出せる情報源を持つ。だが、それ相応のリスクも背負っている事になる。
興味本位で世界の根幹に関わりかねない情報にアクセスをかける破滅願望持ちと見られても仕方が無いレイモンド。
自分の身の回りの人達の為に集めた情報が毎度のごとく機密に触れてしまうジレンマを抱える総司。
そんな二人の会話は秘匿されて然るべきものであり、それは総司の恋人であり、今やレイモンドの友人でもある雫には到底聞かせられない。総司がついている以上、そうそう危険な目になど遭わないが、そのリスクは少ない事に越したことはないのだ。
「…そうだ、一つ関係がありそうな情報がある」
「ふーん?それは一体?」
「スターズの軍人が数名脱走した」
「…マジで?」
「マジさ」
「…結構な不祥事だな」
「だから公にはならないのさ。ああそう言えば、君の学校にはシリウスが行ったんだったね。スターズ軍人が日本に亡命したとの情報さえなければ、軍部の上は今すぐにでも君の監視にシリウスを付けただろうに」
「おい、亡命は聞いてないぞ」
「言ってないからさ」
レイモンドからもたらされた新たな情報に「早く言えよ」と文句をこぼす総司。レイモンドの言ったことが正しければ、吸血鬼の正体はスターズ軍人の可能性が高くなってきた。
「となれば『分子ディバイダー』を使ってくる可能性が?」
「そこまでの実力者が脱走した訳では無い。特に強力な脱走者だったフォーマルハウト中尉は既にアンジー・シリウスに処断されている」
「なら、ウチの仲間が負けるはずはないな」
「油断は禁物だよ…君に言っても意味がない気がするけどね」
「それはそうだ」
スターズの脱走兵が日本に亡命したのであれば、今アメリカにいる総司が戦う事はないし、戦ったとてスターズ如きにやられる総司ではない。だが、彼の仲間はそう言う訳にも行かない。総司という最強のトラブルメイカーが日本からいなくなったとはいえ、日本にはまだまだ
「それと前々から言われていた君のクローン…安部零次が一体誰からの指示で動いているのかが分かったよ」
「マジ?アイツが従うとかどれくらい強いんだって話なんだが」
「いや、黒幕自体に大した戦闘力は無い。だが零次は話によれば君のクローンらしく君に近い思考回路のようだからね、君だって京都と九島閣下の命を天秤に掛ければすぐに京都を見捨てるだろう?つまり親の情があるという訳だ」
「あ~…零次のヤツも情で協力してるって訳か」
「だろうね…そしてその親玉の名はジード・ヘイグ、またの名を顧傑という」
「聞いたことないな」
「だろうね、このジード・ヘイグという男は大漢時代からいる人物だ、大漢は日本に恨みがあるから早々表には出てこないかな知らないで当たり前だ」
「大漢っていえば…四葉に滅ぼされた国か」
「そうだ。そしてこの男は日本で何かを成す事を狙っていると考えられる。君を模して零次を造ったとすれば、君の力かそれに類似したものが不可欠なのかもしれない」
自分を付け狙って来るものが伝統派以外にいたこと薄々は気づいていたが、こう実在を聞かされるといやな気持ちになる総司。そんな時だ。
「うん?通知だね」
「俺の端末だ、何々…?『寂しいです、待ってます』…雫ちゃんが悲しんでいる、助けに行かなくては…!」
「やっぱり君にとっての最優先事項はティアなんだね…」
「ったりめえだろうがぶっ飛ばすぞ!」
「怖いよ…それじゃ、可憐なお姫様の為にも、謀略は程々にしないとね」
そう言いながら、二人は屋上から出て行った…
そしてスクールも終わり、家路についていた総司と雫。
「…それでね、その時レベッカがこう言ったの、『貴女のボーイフレンド、レイモンド位クレイジーね!』って」
「それは何とも複雑な気持ちにさせられますな…」
あくまで姿を消して侵入しているだけの総司ではスクール内での雫の行動を全て把握できないし、する必要も無い。悪い虫が近づいたならば無残な挽肉になるだけだし、変に全てを把握してしまうと家での会話に花が咲かない。故に総司はそこまで詳細を把握しようとはしないのだ。
「…それで~」
「なるほど?まったく分から…雫ちゃん、下がって」
そんな時、違和感を感じた総司が雫を制止する。
「…?どうしたの?」
「…人払いだ、それも高度な」
「なっ…!?」
総司達の周りに人影がない。いつもならこの時間帯は多くはなくともそれなりの人影があったはずだ。それが全くなくなっていた事に気づいた総司は、人払いが解除できるか軽く詳細を『異能』で探査してみる…が、この人払いの魔法、偶然にも空間内に作用するものでは無く、人に干渉して『近づかない』という無意識を持たせるタイプの魔法であった為、『異能』による強引な解除は出来なかった。
「っ!誰だ!?」
周囲を囲むようにCADを構えたSPらしき者達が現れる。総司は雫を庇うように位置取っているが、彼の見立てでは無傷突破は難しくない状況だ。だが相手の正体を知る為に総司は周囲のSP達に問いかける。
「警戒を解いていただきたい、ミスター・タチバナ。私は貴方と話がしたいだけなのですよ」
「アンタが親玉か?」
「いえ?私は親玉ではありませんね、私はただの補佐なので」
総司達の正面から現れたスーツ姿の男性は、総司と会話したいと言う。その言葉を示すかのように、その男性が腕を上げるとSP達がCADを下ろした。
「アンタ…何者なんだ?いつもの監視の奴らじゃないと思うが」
「ああ、私は…」
男性はそこで区切り…改めて名を名乗った。
「私はジェフリー・ジェームズ。国防長官付きの秘書官です。どうぞお見知りおきを」
「「……マ?」」
男性の自称した職業に、思わず二人は宇宙猫状態でフリーズしてしまったのだった。
そして日本では…
「おにーさんかっこいいね!ボ…私とお茶しない?」
「ちょっと香澄ちゃん何言ってるんですか!?…本当、お気になさらず!」
「ちょっと泉美!邪魔しないでよ!」
「(…何故七草真由美の妹達が此処に…というかなんで逆ナンされているんだ俺…?)」
目をキラキラさせて近くの喫茶店に誘ってくる香澄、そんな香澄を止めようとする泉美を眺めながら、逆ナンを受けた人物…安部零次は今日の出来事を振り返ることにした…
魔法科世界の秘匿通信
・原作と違い、本作のレイモンドは若干の破滅願望がある。
・魔法師は優れた魔法師ほど左右対称になる傾向がある。零次はほぼ完璧に左右対称である。
暴走する七草の双子…予想外の動きに書いた当人も戸惑っております。
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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いいともー!
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~