魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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今回はちょっとメタが多い希ガス。


来訪者編 その十三

総司が雫を守り切る事を改めて誓った翌日の事。

 

 

「…?…??…???」

 

「どうしたの総司君、そんな首を傾げて」

 

 

端末に送られたメッセージだろうか、総司が頭に無数の疑問符を浮かべているように見えた雫。心配になって声を掛けてみる。すると

 

 

「…見てよ、コレどう思う?」

 

「凄く…大きいです…」

 

「見る前にその反応するのやめよ?不意打ち過ぎて鼻血出たんだが」

 

 

唐突にもたらされた過剰なH成分を含む雫からの攻撃に耐えられなかった総司が、鼻を抑えながら端末の画面を見せてくる。

 

 

「何々…?…??…???」

 

「そうなるだろ?」

 

 

雫が覗いた端末の画面…そこには一枚の写真と、添付メッセージが添えられていた。

 

 

『吸血鬼討伐レイドパーティーナウ』と添えられた、いつものとち狂ったメンバーが一人の女性を袋だたきにしているのを、死んだ目で見つめる真面目組、もう何が何だか分からないといった表情をしている金髪女性が映った写真だった…

 

 


 

 

時は少し遡り、一高は昼休みの時間であった。その一高の風紀委員室では、数人が集まって会議のような物を開いていたのだ。

 

 

「今日、みんなに集まってもらったのは他でもないわ…」

 

「どうせしょうも無い事だろ」

 

「話は最後まで聞きなさいよ!」

 

 

この部屋の主と言っても過言ではない人物、千代田花音が茶々を入れてきた人物、桐原武明に批難の声を掛ける。

 

 

「そうよ、武明君!花音ちゃんの事だからそう思っちゃうのは分かるけど、内緒にしておかなきゃ!」

 

「そうだぞ桐原。風紀委員長にあるまじき程のバカだから仕方ないが、千代田も千代田なりに頑張ってるんだ」

 

「二人の言う通りだよ。いくら花音が天然ボケの素質が高いからってそうそうおバカな議題を出すはずないよ」

 

「そもそも議題として出すほどの急務だ。千代田からの発議である点に無数の不安を覚えないでもないが、我々総出で対処すべきことなのだろうな」

 

「あたしディスられすぎじゃない?」

 

 

上から壬生、範蔵、五十里、克人の順に、桐原をたしなめていく。尚、たしなめる際の言葉には千代田に対する文句が隠れることすら出来ぬほどににじみ出ているのはご愛敬だ。

 

 

「ウオッホン!改めて、今日の議題を発表するわよ!」

 

「別にいいんだけどよ、十文字かいと…元会頭を上に立たせないのヤバくね?」

 

「どうせいつもの事よ、それにそこの日大タックル先輩に、後輩が成長した所を見せないと大人しく出所…安心して卒業出来ないでしょ?」

 

「学校を刑務所扱いはよくないよ花音」

 

「千代田お前!老け顔先輩に向かって何てこと言うんだ!…どうします先輩?処します?処します?」

 

「とりあえず千代田と服部。お前ら後で腹に一発『ファランクス』な」

 

「というか十文字先輩のあれって戦術として有効だから、あの悪質タックルとは比べられないんじゃないかしら」

 

「悪いけど紗耶香、今そこ論点じゃねーんだわ」

 

 

完全に総司に毒された面々は、総司無しでもギャグを回す。総司が天然物ならば、天然素材を使って育てられた、限りなく天然に近い人工のギャグ要員達だ。

とりあえず議題を発表するため、どこからともなく取り出した眼鏡を光らせる千代田。

 

 

「今回の議題は~ズバリコレ!『最近のあたし達の出番少なすぎもんだ「おいやめろ、そこから先は地獄だぞ」…ちぇ」

 

「あまりにもメタい」

 

「総司と北山がアメリカにいるから。Q.E.D.証明終了」

 

「でもね!?司波君達はちゃんと活躍してるじゃん、描写もされるじゃん!?」

 

「本編だと脇役ぐらいの俺達がこうして出てるだけでも奇跡だよ」

 

「というか吉田君と森崎君はどこなの!?」

 

「吉田ならば柴田という女子生徒と昼食を取っている」

 

「森崎君は今日の自分の区域と花音の担当の区域を兼任して巡回してるよ」

 

「吉田はともかく森崎がいないの千代田のせいじゃないか!」

 

「てへぺろ☆」

 

「花音、もう一度頼めるかな?」

 

「鼻血出しながら端末を構えるな変態が」

 

「でも武明君、私が花音ちゃんと同じ事したら?」

 

「んなもん画像に納めるしかないだろ」

 

「近寄るな変態」

 

「でも七草先輩が同じ事したら?」

 

「モチロン画像に納めさせていただくが?」

 

「我が校の未来は暗いな…」

 

 

会議と銘打っておきながら議題が触れてはいけない部分にルパンダイブを噛ますレベルのものであったため、千代田以外の全員が話題を逸らせようと画策し、見事に成功した。だが数人が自爆してしまう、克人が一高の未来を憂うのはしょうがないことだろう。

 

 


 

 

高学年組がそんなしょうもない会話をしている時、空き教室で美月とランデブーを…する事が出来なかった幹比古は、その原因の人物であるエリカも合わせて三人で昼食を取っていた。その時だ。

 

 

「痛ッ!?」

 

「柴田さん!?どうしたんだい!?」

 

「…こんなオーラ…見た事無い…」

 

「オーラ?とりあえず結界を…これは!?『魔』の気配!?」

 

 

いきなり目を抑えて痛みを訴えた美月。その様子を心配した幹比古が、ナニカの存在を察知した。結界を張り、眼鏡をかけ直した事で体調を持ち直した美月。その様子に安堵しながらも、幹比古とエリカは顔を見合わせた。

 

 

「まさか、吸血鬼が学校に来たって言うのか…!?」

 

「たっく、そうだとしたらナメた真似を…!」

 

「落ち着くんだエリカ。吸血鬼が入ってきたと仮定して、その数もまだ分からないし、以前僕は万全の用意をしていて尚勝ちきれなかった。一旦得物を取りに行こう、十文字先輩に掛け合えば事務室から返却を求める事も難しくない」

 

「ホント、ミキの新しい友達は頼もしい人達ばかりで」

 

「頼りになること以外が手に余るよ…分かってて言ってるんだろ?」

 

「当たり前じゃない」

 

「…ともかく、僕は十文字先輩に連絡を入れる。エリカは一足先に事務室へ!」

 

「待って二人とも!」

 

 

各々がやるべき事を確認した二人は、すぐさま行動に移ろうとしたが、そこを美月に呼び止められる。

 

 

「私も行く」

 

「…本気かい柴田さん。もしかすると今から、とても危険な状況になるかもしれないんだ。君は少しでも安全なところに…」

 

「それでも行く!…なんだか私も、行った方がいい様な気がするの」

 

「…しょうがないわね」

 

「エリカ!?」

 

「美月がこんなに勇気出して言ってんだから認めない訳にはいかないでしょーが。でもアタシ白兵戦以外出来ないから、護衛頼んだわよ?」

 

「…はいはい、分かったよ」

 

 

諦めたように頭をふりながらため息をつく幹比古。そんな彼の手が、美月に伸ばされた。

 

 

「行こう、柴田さん」

 

「!…うん!」

 

 

二人は手を取りあい、戦地へと向かう…

 

 

 


 

 

『と言うことがあって…』

 

「リア充爆散しろ」

 

『ええ…(困惑)』

 

 

…という危機的状況の中で繰り広げられるラブコメの一部始終を聞かされた非リア男服部半蔵。詳細な話を聞くや否や通話をブツ切りにしてしまった。

 

 

「…えー、かくかくしかじかです」

 

「「「「まるまるうまうま」」」」

 

「了解した」

 

 

後輩からのSOSをとりあえず周囲の人間に伝えた範蔵。その絶望したような表情からは、まるで命の危険があるほどの状況であると推察できる…が、頭のおかしくなってしまった奴らはそれに気づかないし、そもそも範蔵の絶望顔は自分だけが独り身(克人は十師族の為、いつか必ず伴侶を作るし、克人自体があまり恋愛に執着してないので除外)であることに絶望しているだけなので、さしあたって気づかなくてもさほどの問題は無い。

 

 

「じゅ、十文字君!」

 

「分かっている、吸血鬼が学校内に侵入したのだろう?」

 

「え?なんで知ってるの?」

 

「それを話すのに時間は使ってはおられんだろう?」

 

「…それもそうね。早く行きましょう、十文字君」

 

「待ってください七草会ちょ…先輩。僕達も戦います」

 

「ダメよ、吸血鬼はとても危険な存在で…」

 

「先輩方が卒業された後、この学校を守るのは我々二年生です。危険だからといって、学校の危機に立ち向かわないと言うわけには行きません!」

 

「はんぞー君…」

 

「…かっこつけてるわね(ボソッ)」

 

「…向こうは眼中に無いってのにな(ボソッ)」

 

「そこの剣士カップル、うるさいぞ」

 

 

突如として学校に訪れた吸血鬼に対して、風紀委員室を不当に利用していた者達が動き出す。道中で司波兄妹と遭遇し、事務室にてエリカ達と合流したのであった…

 

 


 

 

「ミア…?どうしたんですか?」

 

「何でもありません、総隊長」

 

 

全員で固まって移動してきた一行は、リーナが作業服の女性と話しているのを確認した。

 

 

「…あの作業服の人から、オーラが発生しています…!」

 

「まさかリーナの奴、グルだったって訳!?」

 

「あまり信じたくない話ね…」

 

 

美月が吸血鬼と断定した女性と会話をするリーナは、確かに端から見ればグルの様に見える。実際グルではあったのだが、それも昔の話だ。

 

 

「よし幹比古、周囲に認識阻害の結界を…」

 

「「「「ヒャッハー!祭りだ祭りだ!」」」」

 

「手遅れだよ達也」

 

「どうやらそうらしいな…」

 

 

仕掛けるにあたり、他の生徒に気づかれないように結界を張ってから動きたかった達也だが、馬鹿共の脳が溶けてそのまま突撃してしまったので、呆れた目で遠くを見た。だがまだ間に合うため急ぎ幹比古に結界を張らせる。そんな中、呑気に現場を眺めていた五十里が、何を思ったのか端末を取り出す

 

 

「行くぞお前ら、帝京魂を見せつけるんだ!」

 

「帝京魂って何!?」

 

「帝京○成大学の事に決まってるじゃないですか」

 

「なら一高魂じゃないの!?帝○平成大学ってどこよ!?」

 

「侮るな七草。帝京平成大○は健康、医療、スポーツ、経営学など幅広い学問を学べるんだぞ。医学部はないが」

 

「医療学べるのに医学部無いの!?」

 

「魔法学べよ…」

 

 

範蔵や克人のボケにツッコミまくる真由美と達也。その喧騒をバックに、五十里は一枚の写真を撮り、それにメッセージを添えて総司に送った。

 

 

『吸血鬼討伐レイドパーティーナウ』と…




魔法科世界の秘匿通信

・ダブルセブン編からは現三年がおらず、ツッコミが達也達以外に存在しなくなる。可哀想に…


・受かった奴が泣くな!

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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