魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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今回はいきなり時間が飛びます


来訪者編 その十四

『…それでやっとの思いで達也さんにチョコを渡せて…!』

 

「良かったね、ほのか」

 

「ああまったくだな。それより二人とも、今すごく時間が飛ばなかったか?」

 

『?』

 

「何言ってるの総司君、そんなわけないじゃん」

 

「…そうかなぁ?」

 

 

めざとくも作中時間が飛んだことに気づきかけ、小首を傾げる総司。昨日はバレンタイン、前日に上級者たる雫にほのかが助言を求めてきたが、チョコレート以上のものを交換し合っている二人はお手本にするにはあまりにも進みすぎた関係性だったため、ほのかは実質単身で達也に挑みかかった事になる。話しぶりだと登校直後に渡したようだ。確かに午後は達也を求めてやまない妹様がずっと私のターンしてくるので、合理的な判断だっただろう。

 

因みに達也だが、真由美からカカオ95%、糖類0%という驚異の苦みを実現した最早チョコレートと呼んで良いものか疑わしい物品を受け取った時、総司に『対処法を教えてくれないか?』と連絡をして、『しらね』で総司がつっ返したので、激マズチョコで珍しくダウンしてそこまで深雪を構うことが出来なかったらしい。深雪はかの邪知暴虐の前生徒会長への殺意を覚えた。

 

 

『それで、本題なんだけど…』

 

「…本題?」

 

『最初に言ったじゃん!』

 

「達也に渡すまでのくだりで小一時間は話してたから忘れるのも無理はないだろ」

 

『えっ…あっ、もうこんな時間!?』

 

「今気づいたんだ…」

 

 

呆れ気味に放たれた雫の言葉に顔を赤くしながらも、今日の顛末を話し始めるほのか。その顔色は平常に戻ることはなく、寧ろ徐々に赤みが増していた。

 

 

「…パラサイトがロボットに取り憑いた?」

 

「しかもほのかの達也さんへの想いで覚醒した?」

 

『うう…』

 

 

訳が分からないよと言いたげな表情で聞き返す二人。対するほのかは恥ずかしさのあまり下を向いてしまう。

 

 

『その子、私の達也さんに対しての気持ち…あの人に仕えたいとか、あの人のものなりたいだとかの気持ちに反応したって言ってた…これじゃ晒し者だよ私~』

 

「ほのかって随分情熱的なんだね?」

 

「…俺は席を外すよ。雫ちゃん、もう四時半なんだから早めに寝ること、ほのかちゃんももうちょっと自重することだ」

 

 

ここから先は女子特有の長話が改めて始まると感じ取った総司は、聞かないと思いつつも注意喚起を行い席を立ち、部屋から退出する。その後自室に戻ると、端末でどこかに連絡を入れる。

 

 

「…よ、達也」

 

『総司か。何のようだ?』

 

「パラサイトがロボットに取り憑いたんだってほのかちゃんから聞いてさ」

 

『その件か…だが聞いたのなら、わざわざ俺に聞く必要もないだろう?何が知りたい、俺は今取り込み中なんだが』

 

「…何してんの?」

 

『襲撃に遭った』

 

「マジで?」

 

『マジだ。一人でも制圧は出来たが、エリカの兄上殿が助太刀してくれてな、比較的穏便に済ませられた」

 

「なんだ、もう終わってんじゃん…」

 

『その後町中で戦略級魔法をぶっ放された』

 

「マジで?」

 

『マジだ。今その相手…アンジー・シリウスと戦ってくるから、長くは説明できないぞ』

 

「あ~…、じゃあ後でな。こっちはもう夜中だから」

 

『…お前でも眠いと思ったりすることがあるのか?』

 

「ったりめーだろ?…あれ?そういや今は眠くないな…」

 

『正体見たりって感じだな』

 

「人を化け物扱いすんじゃねーよ」

 

 

達也は本当に戦闘前なのかと言いたくなるほど軽い口調だ。総司も別に達也が死ぬようなことがないのが分かっているのでこちらも緊迫感がない。通話を終えた総司は、リビングでまだ雫達が会話しているのを耳で聞き取りながら、ベッドに潜り込んで寝てしまったのだった

 

 


 

 

「戦う前にお喋りなんて、随分と余裕なのねタツヤ」

 

「御生憎様、お喋りな友人が居てな。ふざけているくせに強い、質の悪い男だよ」

 

 

端末をしまい、向かい側にいるリーナと会話する達也。その口から発せられるのは総司に対する罵倒であったが、達也の脳内では彼が先程視た魔法…おそらくは『ヘビィ・メタル・バースト』であろう魔法の正体の解析で忙しかった。本来『へビイ・メタル・バースト』という魔法は高エネルギープラズマを爆心地点から全方位に放射する魔法のはずだ。それなのに千葉修次に放たれた際は指向性を持つビームとなっていた。おそらくはあの杖がその制御をしているのだろうと解析を立てる。

 

 

「友人と仲が良くて結構…でもねタツヤ。貴方は今から自分のその慢心の所為で、その友人との一生の別れとなってしまうのよ、このブリオネイクによってね」

 

「(ブリオネイク…Brionake? 『ブリューナク』か?)へえ…それは実に物騒だな?因みにソイツは先日のパラサイト戦でお前が見た先輩達がああなってしまった元凶だったりするんだが…」

 

「タツヤ、今すぐソイツと友達辞めた方がいいわよ」

 

 

先日のパラサイト戦…一高に侵入してきたミカエラ・ホンゴウ…に取り憑いたパラサイトと戦った際、リーナが困惑で動けないうちに範蔵達があっという間にミカエラを捕らえてしまったのだ。その後自爆で逃げられるが、その際に雷撃を全員がマフティーダンスで回避していたのを見て、リーナは得体の知れない恐怖に苛まれていた。あんな化け物共を生み出した元凶ともなれば、リーナのこの反応は正しい。

 

 

「ふっ…辞められるならもう辞めてー」

 

 

直後、光が瞬く。その光は先程千葉修次に撃ち込まれたものと同じものだった。つまり…

 

 

「(不意打ちかよ…)」

 

 

達也は魔法発動を知覚して、『術式解散(グラム・ディスパージョン)』を発動しようとしたが、間に合わないと悟り中断する。結果として、放たれた光の束が命中した達也の右腕は、掠った程度でその部分から先を炭化させていた…

 


 

 

「…んあ?」

 

 

眠りから覚めた総司は、アホそうな声を出しながら伸びをして、周囲を見渡してこう言った。

 

 

「ここ…どこ?」

 

 

総司が目覚めたのはバークレーでの住まいではなく、どこからどう見ても和風なお屋敷であった。無意識の内に九島の家にでも来たか?と思って顔をはたいてみる。すると…

 

 

「…痛くない」

 

 

総司は結構な威力ではたいた…不意打ちなら並の軍人は即死する威力だ。それでもまったく痛みがしない。つまりここは夢の中である可能性、もしくは精神干渉系魔法を受けている可能性だが、後者は総司の異能が睡眠中はオートで発動することを考えるとあり得ない。よってこれは夢の中であると考えられる。

 

 

「しっかし…なんでこんな夢を…?」

 

 

不思議に思っていると、総司の耳に言い争っているかのような二人の男性の声が聞こえた。気になった総司はそちらへ歩を進めてみた。そして向かいの離れで、二人の人影を見る。しかしその瞬間、総司はその場から動けなくなってしまった。困惑より先に、ここから二人の会話を聞き取れないかと耳を澄ませる総司。彼は聴力もトンデモないはずなのだが、何故か断片的にしか聞こえてこない。

 

 

「だから………だと言っているだろう!この国を!日の本を守るには…………が必要なのだ!何故それが分からんのだ!お前はそうだから…………などと揶揄されるのだぞ……満!」

 

「ええ分かりませんとも!貴方が守りたいのは、国は国でも…………でしょう!?貴方はそんなものの為に…………を利用するのですか……………明殿!私には到底………!」

 

「…喧嘩してんな、何をそんなに言い争ってんだよ」

 

 

二人の会話に耳を澄ませるのに飽きた総司は、その場で横になって目を閉じる。なんとなくではあるが、『自分に関係してんのかな…』考えながらふと目を開けると、そこはここ最近で見慣れてきた天井だった。

 

 

「なんか変な夢見たな…ふわぁ~」

 

 

立ち上がり伸びをしながら、リビングに入る。すると画面を付けっぱなしにして寝落ちしている雫がいた。画面の向こうでは同じく寝落ちしているほのかがいる。まったく…と考えながら、総司は電気を付けながら雫にブランケットをかけ、コーヒーを入れた。

 

 

「ふう…ん?」

 

 

そこで気づく違和感。今総司は三つの行動を起こしたが、それは全て同時に行われていた。総司は脇目も振らずに雫の元に行ってブランケットを掛けた。なのに電気を付けてコーヒーを入れているのだ、手も触れずに。それはつまり…

 

 

「…魔法?」

 

 

総司はこの一瞬で電気のスイッチを押す単一系移動魔法、コーヒーを温める為の振動系魔法、そして実はブランケットを手元に持ってくるための移動魔法をマルチ・キャストしていたのだ。そう、何故か総司は魔法が使えるようになっていたのだ…




魔法科世界の秘匿通信


・実は会話の中で雫は、ほのかの達也への気持ちが『恋』ではなく『忠誠心』なのではないかと疑問を持った。


・総司君が魔法を使えるようになったのは、夢の所為でもあり、成長の証でもある。



時間が飛んだ中で起こった事

・吸血鬼をパラサイトと呼ぶようになった。


・レオ復帰


・範蔵が真由美チョコで死亡


・ピクシーが達也に抱きついた時に五十里と千代田が『エンダアアアア!』と叫びながら抱擁を交わしていた。

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