前回少し時間が飛んだのは、あんまり総司が出張れないからですね。後、早くダブルセブンが書きたいって言うのもある。
「…ブリオネイク…ブリューナクか…ケルト神話の光明神『ルー』が持つ武器の一つ。そんな大層な名称をつけるほどには、その杖に自身があると見た」
「…そんなことが気になるのタツヤ?今からアナタは死ぬって言うのに」
「魔法工学を嗜む者としては実に気になるね、人は名前に意味を持たせたがるものだ。ブリューナクは相手を貫く光の穂先を発生させる槍とも、自在に飛び回る槍あるいは光弾とも伝えられている。この場合『自在に』と言うところが肝なんだろうな。神話の武器を模した、模造神器ブリオネイク。
「…FAEセオリーを、何故貴方が知っているの?」
しばらく達也の発言に耳を傾けていたリーナだったが、FAE理論という単語に反応して目を見開いて、問いかける。
「…別に知っていてもおかしくはないだろう?FAE理論は元々、日米共同研究の中で唱えられた仮説なんだからな」
「あの実験は極秘の研究で、しかも破棄されたものよ!?」
「本当に破棄されたのか?今こうして成功例が存在しているというのに?」
達也の反撃にリーナは口を塞ぐ。
「FAE理論の説明は…要らないな。なんなら俺よりも君の方がよく知っていそうだ」
「タツヤ!」
ゆっくりと立ち上がろうとする達也に、リーナが声を張り上げる。
「これは最後の忠告よ!投降しなさいタツヤ!片腕ではお得意の武術は使えないわ!アナタに勝ち目は無いの!」
「…へえ」
「っっ!?」
リーナの発言を聞いた達也は、非人間的で酷薄な笑みを浮かべる。その迫力には一流の軍人であるはずのリーナすら怖じ気づく。
「俺を捕らえて何がしたいんだ?アイツらのように人体実験でも施すか?ならお断りしたいところだ」
「…だったら、動けなくして連れて行くまでよ!」
そして二人は睨み合い、今にも一手目の攻撃を…
prrrrr…prrrrr…prrrrr…prrrrr…
「「………」」
突如鳴り響く通知音。こう言った仕事の際にはプライベートの端末は持ち込まないか通知を完全に切っているリーナと、至近距離から音が聞こえている達也にとって、どちらの端末に入った連絡なのかが分かる。リーナが凄く微妙な顔で、「早く出なさいよ」と顎で指し示す。「なんかゴメンね?」と言いたげな表情の達也は、右腕が吹き飛ばされた(実は再生で治っている)ので左腕で端末を操作して通話を取った。
「…もしもし」
『あ!達也?あのさぁ!』
「あのさぁはこっちの台詞だ今忙しいんだ後にしてくれ!」
『いやね?俺なんか普通の魔法使えたんだよ!』
「そうかそうかそれは大変だったn…何だと?」
総司の口から出た言葉に反応してしまう達也。
『こう難しい魔法は使えないんだけどさ、基礎単一系魔法なら出来るようになったんだよ!』
「馬鹿な…一体何が原因で…?」
『何かさっき変な夢みた』
「(夢…?何者かによる精神干渉系魔法か?いやだがそれは総司の異能に阻まれるはず…)」
『おーい、達也?』
思考の海に入りかけた達也を、電話口の総司が起こす。達也はそれにハッと気づき、今が戦闘中である事を思い出した。
「総司、その話はまた後日聞く。今はこっちも一刻を争っていてな、そんな世迷い言に付き合っては居られないんだ」
『世迷い言じゃねーよ!起きた雫ちゃんや朝飯の用意しに来た黒沢さんも見たんだぞ!』
「ならそれは質の悪い集団幻覚だったと言うことでじゃ!」
『おいバズ!?』
「バズって誰だよ!?」
通話を切った達也は、目に見えるほどに疲弊しており、肩で息をしている程だ。心配そうに見つめるリーナを見返した達也は…
「俺を捕らえて何がしたいんだ?アイツらのように人体実験でも施すか?ならお断りしたいところだ」
仕切り直しを図った。先程も聞いたその言葉に、リーナも「やり直すのね」と何とも締まらない表情だ。
「…だったら、動けなくして連れて行くまでよ!」
同じ台詞の反芻、この時二人の内心は「劇の練習かな?」で一致していたそうだ。
「死になさい!タツヤ!」
叫びと共に高速で魔法を組み立て、ブリオネイクを達也へと向けるリーナ。しかし、そのブリオネイクの筒先に、再生していた右腕に持っていた銃型CAD、トライデントを突っ込んだ。
「なっ!?アナタその腕!?」
「甘いな」
いくら魔法力が高くても、予想外の出来事にいちいち反応してしまうリーナの甘さを指摘しながら、達也はブリオネイク内部に照準を定めて『
結果的に、ブリオネイクの筒先から常温のガスと化した金属粒子が勢いよく噴き出す。圧に負けて達也の右手からトライデントが飛んだが、受けた影響はリーナの方が大きかった。しっかりと握っていたのが裏目に出たのだろう。
大きく吹き飛んでいくリーナに、即座に『再生』でトライデントと自身の手の相対位置を元に戻した達也は、寸分違わず正確に、六連射の『分解』を放つ。その分解はリーナの魔法防御を容易く無効化し、その意識を刈り取ってしまったのだった。
「…お兄様、もしかして怪我をなされたのではありませんか?」
「落ち着け深雪、ステイだ、ステイクールだ」
「落ち着いてなどいられません!この臭い…お兄様、あの泥棒ねk…リーナと戦われたのでしょう!?」
「深雪今なんて言いかけた?」
「そんなことはどうでもいいです!しかも一対一ではありませんね!?少なくとも十人以上とは刃を交えた臭いです!」
達也は「情報」を視覚的に捉えるが、深雪は「情報」を触覚的に捉える。また深雪は直感的な感覚を嗅覚に例える場合もある。今回は後者であった。
「頼むから落ち着いてくれ。俺がそうさせない限り、俺に傷を残す事など誰にも出来ないと知っているだろう?」
「でもお兄様、総司君に組み付かれながら首の骨を折られたら、流石に助かりませんよね?」
「そんな例外が世界に二人もいてたまるか」
事実、達也は『再生』によって不死身に近い耐久力を有している。以前零次は攻撃し続ければいずれは倒せるとは言っていたが、それは間違いであり時間を掛けても達也は倒せない。強いて言うならば、達也の膨大なサイオン量を空にするまで殴る必要がある。その点総司は触れていれば恐らく『再生』を無効化してくるので、目下最大の死因は総司だ。
「…ともかく早く帰ろう。総司と話がしたい」
「総司君とですか?一体何があったのです?」
「…魔法が使えるようになったとさ」
その事に、深雪が驚愕したのは言うまでも無いことだ。
「それで総司、何があったんだ?」
『世愚倭雁峰』
「よぐわがんねを謎に漢字化するなバカ」
『申し訳凪』
「冨岡さん!?」
『俺は嫌われて凪』
『早く進めよ?』
総司からのボケの供給にとうとうツッコミを放棄しだした達也に代わり、流れを戻したのは雫であった。
『何って言っても、夢から覚めたら魔法が使えてた!終わり!閉廷!』
「じゃあ今からお前を訴えて新たに開廷するぞ」
『やめやめろ』
「…それは本当にただの夢だったのですか?」
『夢にただもなにもないでしょ、元から商品としてはまだ扱えないよ?』
「ただって金額の話じゃねえよカス」
「お兄様?」
『達也さんがキャラ崩壊…』
『達也(ツッコミ)の霊圧が…消えた!?』
あ~あ、もうめちゃくちゃだよ(諦め)。ツッコミエースが達也から深雪にバトンタッチをしそうになっているところで、総司が口を開く。
『あ~でも、やけにリアルな夢だな~とは思ったぞ』
「リアル?」
『エア?』
「リアル」
『ユニコォォォォォォン!!!』
『朝から大きい声出さないで…』
『確かに、まったく話が進まないことを含めて全て俺の責任だ。だが私は謝らない』
「そもそもユニコーンガンダムとエアリアルは作品違うだろ」
「何故知っているのですかお兄様?」
『何か人が言い争ってんだよ、なんか平安貴族っぽい格好の人達が』
「…ふむ」
総司の言葉に、達也は首を傾げて止まってしまった。
『…何か思いついたか、達也?』
『…達也さん?』
しばらく時間をおいて、何か閃いたかを達也に聞く二人…
「あら…?お兄様、椅子でお休みになられていますね」
『『ええ…(困惑)』』
達也がそんな事をするとは予想しなかった二人は、当然のごとく驚愕の表情を浮かべた。
「…生憎お兄様はお疲れですので…一旦通話を停止してもよろしいですか?」
『『抱け!抱け!抱けぇ~!』』
「気ぶりお兄さん&お姉さん!?」
尚この後、総司達の応援むなしく、深雪は達也に手を出すことが出来ませんでしたとさ。
魔法科世界の秘匿通信
・FAE理論:詳しくはご自分で調べていただきたいが、これは総司を殺しうる材料の一つである。
・ネタに走った達也:コレ書いてるときのポプテピピックで、中村優一氏に中村悠一氏が声を当てた記念としてとうとうツッコミエースから解放される。総司とは、究極的なバカ(総司)と理知的なバカ(達也)というくくりになる可能性がビレ存
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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