魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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アンケートを星を見る少女編は書かなくて良い感じですかな?

あ、今回ギャグないです。


来訪者編 その二十

「ふふふ、そんな攻撃止まって見えますよ?」

 

「クソ、嘗めやがって!」

 

「落ち着けレオ、ここで冷静さを欠けば相手に更に有利を取られるだけだ」

 

 

零次の反撃を皮切りに、各地でギャグ時空が崩壊してしまっていた。先程まで公瑾で遊んでいたレオと達也は、一転して劣勢に追い込まれている。公瑾の幻術を破ることが出来ていないのだ。レオの『薄羽蜻蛉』はモチロンのこと、達也の『術式解散』すら命中しない。これは公瑾が視覚的にも情報的にも作用する幻術を用いているため、視覚で捉えきれないレオと『精霊の眼』で捉えられない達也。彼らは公瑾に対して打つ手が無くなってしまっていた。

 

一方公瑾の方は、時たま二人とピクシーに向かって攻撃を行う。この点が厄介であった。二人にだけ攻撃が向かうのならまだしも、ピクシーに攻撃をされると必ずどちらかがカバーに入らねばならない。達也は『再生』、レオには『硬化』があるとは言え、このまま続けていてはいずれ削りきられてしまう。

 

 

「うおおおお!『パンツァ-』!」

 

「…っ!よせ、レオ!」

 

 

痺れを切らしたレオが音声認識によって硬化魔法を起動する。だがそれに待ったを掛けたのは達也、何かに気づいた様だ。しかしそれは時既に遅く…

 

 

「…!?ぐああああああ!」

 

「レオ!」

 

 

突如としてレオのCADから電撃が奔り、レオを襲う。急いでレオの元に駆け寄る達也。見るとレオは気絶こそしていないものの、生身に直接ダメージを受けた影響もあり、立ち上がれないでいるようだ。

 

 

「な、何が…?」

 

「嫌ですねえ、そんな分かりやすすぎる起動式展開など我々にとっては餌でしかありません」

 

「…一瞬の内にレオのCADに『電子金蚕』を紛れ込ませたな」

 

「御明察」

 

 

達也の推測通り、レオのCAD内には『電子金蚕』が仕込まれていた。しかし公瑾はレオのCADには一切触れてはいない。では何故『電子金蚕』を仕込めたのか。それは公瑾の言葉の通り、レオの『パンツァ-』の起動式発動の詠唱に、それに紐付けさせられた呪いという形で一瞬で仕掛けたのだ。これはレオが音声認識で魔法を使うことを知っていたからこそ出来た攻撃であろう。

 

 

「…ピクシー、レオを頼んだ」

 

[承知いたしました]

 

 

ピクシーにレオを預けた達也はおもむろに立ち上がり、公瑾と相まみえる。どうやら一人で戦闘を行うつもりのようだ。

 

 

「おやおや、あまり無理をなさらないほうがよろしいのでは?全力を抑えられた状態での戦いというものは実にストレスの溜まるものでしょうに」

 

「……」

 

 

公瑾の発言に、達也は自分の正体がばれていることを察した。今まで見せてきた攻撃は全て達也なりには本気の攻撃だが、確かに正体を隠すためにセーブをしてきた意識はある。特に『フラッシュ・キャスト』や『マテリアル・バースト』などだ。だが達也の本気を知っているのは四葉に関わる人間と、何処からか情報を入手してきている総司ぐらいのものである。だからこそ、そのことを知っていると言いたげな意味深な発言をしてきた公瑾は、恐らく総司に類する情報収集力を持ち合わせていると考えた。ならば彼をこのまま帰らせるのは、本来の目的を差し置いても達也にはあり得ない行為だ。

 

 

「お一人で挑みに来る度胸を評価して、私も体術で応戦してあげましょうか?」

 

 

そう言って構えを取る公瑾。その構えには隙は見られず、体術の面でも公瑾が一流である事を雄弁に語る。達也は覚悟を決めて構えを取り返す…

 

 


 

 

「『雷童子』!」

 

「『燃えろ』!」

 

 

そして距離の離れた幹比古達と束の戦いも、ようやく本格化してきた。ギャグ補正がなくなり、正直に言って美月とほのかが戦力的に使い物にならなくなったので、幹比古が単身で束の相手をしている状態だ。しかし結果は意外にも拮抗している。その理由として、束の魔法の制約と、単純に幹比古が強すぎるというのが挙げられる。

 

束の魔法は言霊を利用しているため声に『意味』を乗せるだけで発動できるという利点があり、更には声を使って発動している点から現代魔法にも劣らない発動速度を誇る…が、相手に直接的に干渉できるような術は、相手の魔法力と自身の魔法力を比較して、大きく上回っているという条件下で発動できる。魔法師でない相手なら小声で死を呼ぶ言葉を発せば簡単に殺してしまえる。だが幹比古は神童と称えられる程の実力であり、更に精霊に高レベルで干渉できる総司の傍に居た影響で、その魔法力は世界レベルに到達していた。こうなると束は弱い、こちらから相手に物理的な攻撃を行う魔法しか使えなくなる。それに対して幹比古は発動速度こそ劣るものの、威力ではむしろ勝っている為、自分より遙かに実戦を重ねてきたであろう束と高レベルな勝負を演じれていたのだ。

 

 

「っち、『消し飛べ』!」

 

「甘い!」

 

「結界堅すぎ…!?」

 

「そして、そこに行くのは命取りだ!」

 

「っ!きゃっ!?」

 

 

苦し紛れに放った攻撃も、幹比古が展開した結界に呆気なく弾き飛ばされてしまう。そんな中で高い草が多い場所に足を踏み入れてしまった束。その隙を逃すまいと『乱れ髪』の魔法で束の足を拘束して転倒させる。転倒した束は即座に立ち上がろうとするも、両腕も草で絡め取られてしまい、身動きが取れなくなる。そして追撃を加えるために幹比古がこちらに走り込んでくる。

 

 

「…あーあ、まさか総司様以外にこの魔法を使うことになるなんて…」

 

 

その時の束の表情は、好きな人に最初に食べて欲しかった手作りのお菓子を、空気の読めない男子につまみ食いされた時の女の子の様な表情だった。

 

 

「終わりだ!」

 

「そっちがね」

 

「…何だって?」

 

 

勢いよく鉄扇を振り下ろした幹比古だったが、その鉄扇は何故か地面に突き刺さる。先程まで束が居たであろう場所の地面にだ。

 

 

「一体どこに…っが!?」

 

 

瞬間、大きく吹き飛ばされる幹比古。そのあまりの威力は木々を軽く数十本なぎ倒して、更に幹比古の体を痛めつける。

 

 

「今…何が?」

 

「あの人、ものすごい速さで吉田君の後ろに…!」

 

 

いきなりの光景に隠れているにも関わらず、声を上げてしまうほのかと美月。そしてその声を聞き取ったのか、束が二人の方を向く。その表情は獲物を見つけた肉食動物のようだ。その獰猛さに二人は顔を蒼白にさせる。束はその手を二人に向けて…

 

 

 

 

ドォン!!

 

 

という轟音と共に束へ飛翔物が飛んできた。その飛翔物を軽く避ける束。その際に目についたのは紫の長髪。束は飛んで来たのが公瑾であると察する。そして公瑾が飛んで来た方向に目を向けると…()()()()

 

 

「…俺の友達に手を出すな!」

 

「…総司様♡」

 

 

目に明確な殺意を持った総司が、既に腕を振りかぶり拳を放つ用意をしていた。その総司を恍惚とした表情で見る束。総司は何か胸騒ぎを感じながらも、音を置き去りにする速度で拳を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシィ!!!

 

 

「…待ってた♡」

 

「…マジ?」

 

 

そしてその拳を、束は容易く受け止めてしまう。そして返す形で総司の腹に蹴りを入れる。尋常ではない威力によって吹き飛ぶ総司。その際に、総司は聞き慣れては居るが自分の体からのは初めて聞く音を聞いた。それすなわち骨が折れた音であった。

 

総司が蹴りをもらったのは左側の体であり、その部分はかつて無いほどに痛むが、その程度で動きが鈍る総司ではない。吹き飛ばされる中、空中で体勢を整え地面に着地、右腕を地面に突き刺し速度の減衰を図る。そして完全に停止したその時、背後から二つ程物体が飛んで来ているのを感じる。

 

振り返ってそれらを弾き飛ばそうとする総司だが、()()()()()()()()()が目に入り、即座に受け止める方向にシフトする。総司の視覚情報は実に正しく、飛んで来たのはエリカと深雪であった。その二人の息がまだある事だけを即座に確認した総司は、死なない程度に二人を横に投げる。そして正面で腕をクロスさせる。間一髪で飛んで来た零次の拳をガードすることに成功する。攻撃を防御されてしまった零次だが、その表情は余裕そのものだ。その証拠にいつの間にか横に来ていた束の蹴りを右腕でガードする。が、腕一本分空いたガードを貫いて零次が強力なアッパーをかます。モロに喰らった総司は、脳震盪で動きが止まる。その隙を逃す二人では無かった、束と零次は二人同時に攻撃を仕掛け、総司を吹き飛ばす。

 

先程よりも不安定な体勢で吹き飛ばされた総司は受け身を取ることも出来ずに遙か遠くまで飛んでいく。木々にぶつかりようやく止まる。よろよろと立ち上がった総司、そんな総司を眩い程の閃光が襲う。思わず顔を伏せる総司。再び顔を上げたとき、追撃を加えに来た零次を目視する。速度こそ圧倒的だが、零次の強化は総司の身体能力と同等レベルである。本来なら反撃を考慮すべき条件であるはずなのに、零次は実に無防備に突貫してくる。何かの罠かと警戒しながらも全力の拳を放ち、零次の土手っ腹に風穴を開けようとして…零次の硬化魔法に止められた。

 

総司は困惑した。あの速度で突撃しているにも関わらず硬化魔法に固定の異能を使うのかと。そしてそれを即座に否とする。考えられる可能性は一つ、()()()()()()()()()()()()()ということである。何故発動していないのか、その問いに答えは返ってこず、零次からのとびきりの左ストレートを顔面に喰らう。そして追いついた束が小悪魔的な表情を浮かべて告げる。

 

 

「…『吹き飛べ』」

 

 

直後、吹き飛んでいる総司の腹に大きく穴が空いた。そして背後の木々を十本ほど貫いて停止する。

 

 

「…カヒュー、カヒュー」

 

「…いい顔になってるね、総司様♡」

 

 

総司の目は、最早戦意を宿すという領域を超えていた。その目からは光が消えかけている、有り体に言えば死に体だ。零次に恐ろしいものを見るような目で見られている事も気にせず、束はうっとりとした表情で死にかけている総司を眺めて満面の笑みを浮かべていた…




急展開注意(遅刻)

主人公が即オチ二コマで死にかけるのは此処ぐらいでは?


魔法科世界の秘匿通信


・総司:思いっきり罠に引っかかった。腹に空いた穴は、鰤のアヨンにやられた乱菊さんのイメージ。HPが素で10000あったなら、今は5。一応この状態でも原作スターズの正規軍人より強い。


・束:意味の無い強化という訳でも無い。言うなれば、『言霊』は他者では無く、自分に発動することでより高い効力を発揮する。

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

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