今回は達也のキャスト・ジャミング説明会と思わせてからの総司君の能力の説明だったり
バイアスロン部への入部が決まったほのかと雫は、先輩達とともに、デモの為の移動をしていた。
「あれ?狩猟部のみんな、どうしたの?顔色が悪いみたいだけど…」
その際に、裏庭で狩猟部のメンバー達が気分が悪そうにしていた。これは保険医の先生を呼びに行かなければ…と考えたほのかだったが、既に呼んできていたらしい女子生徒が先生を連れて戻ってきていた。
「安宿先生!早く!」
「落ち着いて明智さん。サイオン中毒なんて滅多に起こることじゃないわよ」
「今がその時だったらどうするんですか!?」
見るからに慌てている女子生徒とは対称的に、保険医の先生は非常におっとりとした表情を崩すことなく現れた。ほのかと雫が漠然と眺めているなか、サイオン中毒ではなくサイオン波酔いだということが判明する。
「実技棟二階の第八演習室を取ったから、そこで安静にさせておいて。これ、鍵ね」
「あ、はい!分かりました!」
どうやら倒れている生徒達を運ぶようだ。狩猟部でも元気なメンバーがいることにはいるのだが、それでも人手が足りない。ならばと近くにいたバイアスロン部の先輩が手伝いを申し込むが、先輩達にはデモがあるからと、ほのかと雫がここを手伝うことにしたのだった。
「ありがと~!助かったよ~!」
「全然いいよ!困ったときはお互い様だし!」
「それに、気分の悪そうな人を無視することも出来なかったしね」
狩猟部の彼女はかなりテンションが高く、明るい生徒のようだ。
「私の名前は明智英美。日英のクウォーターで、正式にはアメリア=英美=明智=ゴールディ。エイミィって呼んでね」
長い名前よホント。しかも英美って変換一発で出てこないしさぁ…しかしまあ、ほのか達はどう呼ぼうか思案しているところにエイミィ自ら愛称を教えてくれた。これにはほのかも雫も作者もホッとする。
「私は光井ほのか。よろしくね、その…エイミィ?」
愛称でいいのか迷ったほのかはしばし迷ったが、愛称で呼んでみた。それにエイミィは嬉しそうな顔で返す。
「よろしく~ほのか!」
「私は北山雫。よろしく、エイミィ」
「うん!雫もよろしく!」
「俺は橘総司。よろしくな!」
「うんうん君もよろしー…って、誰ー!?」
「そ、総司さん!?」
「総司君…」
「どもども二人とも。さっきぶりだね」
二人がエイミィと自己紹介をしているところに混ざってきたバカが一人。我らが主人公、橘総司である。
「い、いつからそこに…!?」
「いや、狩猟部の生徒が倒れたって通報が来たから飛んできたんだ。さっきから倒れた人を運んでたぞ俺?」
「ぜ、全然気づかなかった…」
エイミィとほのかが気づかないのも無理はない。総司はここに、通報を受け取った場所から校舎の屋上をマ○オのようにジャンプしながら移動してきていた。華麗な着地により、足音がかなり減少していた事から、とっさに気づいていた雫以外は誰も総司の存在に気が付かなかったのである。
「ま、まあ、驚きはしたけど、仲良くしないって選択肢はないよね!よろしく総司君!」
「ああ、是非ともそうしてくれ」
ほのか達がエイミィと盛り上がっていたとき、達也は闘技場での一件の報告のため、部活連本部に来ていた。ばつが悪そうな顔をしている桐原も一緒だ。聞かれたのは最初から仲裁しなかった事と、壬生も魔法を使っていたという証言から、何故桐原だけを拘束したのかだった。
「仲裁に入らなかったのは、両者と周囲の反応から見るに、日常茶飯事だったようなので。怪我程度で済むのならば自己責任でしょう」
「確かにな、壬生と桐原はかなりの頻度でイザコザを起こす…正確には桐原がつっかかってるだけだがな。だが、今回は壬生も魔法を使用したのだろう?何故拘束しなかった?」
「…壬生が魔法を使ったのは自分が魔法を使ったことに対する、防衛行動です。魔法の不適切使用ではないので、連行されるのは自分だけでいいと判断し、コイツに壬生を拘束しないことを願ったんです」
摩利からの質問に答えたのは、前半こそ達也だったが、後半は桐原が自らの罪を自白する犯人のような顔でうつむきがちに答えていた。
「…魔法で他者に手を上げた以上、どのような罰も覚悟の上です!本当に、申し訳ありませんでした!」
「…顔を上げろ桐原。確かにお前は魔法を使ったが、怪我はさせていない。その点をふまえて、風紀委員としてはこれ以上の追訴をするつもりはない。十文字、お前はどうだ?」
自身の退学も覚悟の上で頭を下げた桐原に掛けられた言葉は、予想と反して温情的だった。
「風紀委員の処置に賛同する。せっかくの温情を無駄にはできんからな」
部活連会頭、十文字克人を前に、寛大な処置を受けた桐原は深く反省している顔で頭を下げ、達也はその存在感に驚愕していた。
その存在感は、別の意味で存在感浮立つ
「(まるで巌のような人だな…)」
「達也君にも怪我はないみたいだし、一件落着ね!」
「そうだな、ではここで解散とする。また、桐原は明日もここに来い。処置の内容を言い渡す」
「承知しました!」
真由美の一言をきっかけに摩利が締めた。呼び出された桐原はと言うと、処罰されるとはいえ、退学は避けられそうで安堵したかのような表情をしていた。
部活連での報告が終わった達也は、その足で生徒会室に向かう。モチロン深雪の為だ。深雪を一人で帰らせるなど達也には到底許可できない事柄であった。
早く行かねば…と思案していた達也の目の前に飛び込んで来たのは、
「お兄様!」
「あっ、お疲れ~」
「お疲れ様です」
「よう!達也!」
「お疲れサマンサー!」
昇降口にて、妹と友人が自分を待ってくれていた光景だった。
「お疲れ様です!本日はご活躍でしたね!」
「そうでもないさ。深雪もご苦労様」
真っ先に達也に駆け寄り、賛辞を送る深雪。その頭を優しくなでる達也。その動作には友人二人がため息をつく。
「兄妹だって分かってるんだけどなぁ…」
「何かねぇ…」
「でも、絵になりますよ?」
「抱け!抱けぇー!」
兄妹の距離感ではないと遠回しに指摘するエリカとレオ、本気の感想を述べる美月、思いっきり最低なことを言い放つ総司に、深雪は赤面するのであった。
「みんなも、こんな時間まですまないな」
「いえ、私はクラブのオリエンテーションがついさっき終わったところですし」
「そうそう、コイツもさっきまで部活だったし、別に気にすることないわよ」
「そうなんだが、オメェが言うな!」
「いっぱい検挙してきたズラ」
「お兄様、此処は謝る場面ではありませんよ?」
深雪がイタズラっぽい笑みを浮かべていて思わず苦笑する達也。ちなみに本日の事件検挙率第一は総司である。
「みんなありがとう。それで、こんな時間だし何か食べて帰らないか?一人千円までなら奢るぞ?」
「おっ!マジか!」
「そこは1550でモリンフェン最強って叫ぶとこだろ…」
「モリンフェンってなんだよ…」
達也の申し出にレオが食いつき、総司が苦言を呈する。まあ、意味はよく分からんのだが。
「それじゃあ行こうか」
「よ~し!食べるわよ~!」
「がめついなお前」
「アンタもでしょ!」
「では…達也さんのご好意にあずからせて頂きますね」
「千円ギリギリを狙って達也に負担かけてやろ」
などと話しながら店に着く一行。食べ物を前にしたレオがふと達也に問う。
「そういえば達也、相手は二人とも殺傷ランクBの魔法を使っていたんだろ?よく無事だったな」
「『高周波ブレード』は有効範囲の狭い魔法だからな。触らなければどうとでもなる。真剣相手と同じだよ」
「…それって、真剣相手なんて簡単だって言ってるようなもんじゃない?」
「危なくないんですか?」
「うまい」
間近で見ていたエリカも、噂だけは聞いた美月も心配そうに達也を見ている。心配していないのは兄を信じ切っていた深雪と、ひたすらに「うまい」を連呼していた総司のみだ。
「お兄様相手に真剣では敵わないわよ」
「随分と余裕じゃない?」
「たいじゅ…お兄様が得意としている訳ではない剣技でも、お兄様に敵う相手は存在しないもの」
本当は「体術はモチロン」と言いたかった深雪だが、いささか同席に達也よりも明らかに体術がヤバそうな
「確かに他の剣術部や剣道部じゃ達也君に勝てそうな人は確かにいなかったけど、壬生先輩と桐原先輩は明らかに別格だったよ?」
深雪の自信満々な物言いに、友人達は肯定しつつも疑問をなげかけていた。ちなみにこのあたりから総司が食事を終えて会話に混ざっていた。
剣技で云々はともかく、一科生相手に魔法技能で劣っている二科生である達也の事が心配にならなかったのかと不思議がっている。総司は「ブラコンは兄のことなら何でも知ってるんやで…」と訳知り顔だ。
「そうじゃないのよ。単にお兄様が優れているだけじゃないの」
「魔法式の無効化はお兄様の十八番なのよ」
「「「魔法式の無効化?」」」
「…へえー」
深雪の発言をオウム返しするエリカ、レオ、美月。三人は魔法式を無効化するような技術を、聞いたことがないからだ。ただ一人、総司だけが、意外そうな顔で驚いている。
「それって結構レアなスキルよね?」
「そうね。少なくとも高校では習わないし、教わったからと言って誰でも使えるようなものではないわ。エリカ、お兄様が先輩方の前に飛び出したとき、乗り物酔いみたいな感覚に襲われなかった?」
「確かに…私はそこまで酷くなかったけど、周りには気持ち悪くて立ってられない人もいたわね」
「そういや狩猟部の生徒がサイオン波酔いになったのも闘技場近くだったな」
「それ、お兄様の仕業よ。お兄様、キャスト・ジャミングをお使いになったでしょ?」
深雪に視線を向けられた達也は、誤魔化すことをせずに素直に認める。
「深雪には隠し事は出来そうにないな」
「深雪はお兄様の事なら何でも分かりますもの」
「どっかのカップルか?」
「まあ!カップルだなんて…その…恥ずかしいと言いますか…」
「あーはいはい、末永く爆発しててくれ」
二人の兄妹らしからぬ雰囲気に総司がツッコミを入れるも、満更でもなさそうな深雪に呆れて適当に流した。
「そ、そういえば深雪!今キャスト・ジャミングって言った?それって確か魔法の妨害電波のことよね?」
「電波じゃねえけどな」
「ものの例えよ!でもそれって特殊な石が必要なのよね?えっと…アンティなんとか」
「アンティナイトよ、エリカちゃん。でもアンティナイトはかなり高価なものだと思うんですが…達也さん、持っていらっしゃるんですか?」
「アンティナイト…?」
キャスト・ジャミングに必要であるアンティナイトを達也が所持しているのかと驚く美月。総司はそもそもアンティナイト自体を知らなかったようだが。
「いや、持ってないよ。あれは価格以前に軍事物資だからね。一般人が持てるものじゃないよ」
「でも、キャスト・ジャミングを使ったんでしょ?アンティナイトなしでどうやって…」
エリカの発言に達也は身を乗り出し、少し小さな声で答えた。
「これはオフレコで頼みたいんだが、俺が使ったのはキャスト・ジャミングの理論を応用した、特定魔法のジャミングなんだ」
この説明には深雪以外の四人がそろって首をかしげる。深雪は心底嬉しそうな顔で達也を見つめている。
「えっと…そんな魔法あったか?」
「無かった…と思いますけど」
「それってつまり、新しい魔法を理論的に編み出したって事じゃない?」
「そんなことよりおうどんたべたい」
驚愕したような反応を見せる四人…いや違うわ、総司だけ頭がパンクしてるわ。
と、言うことで、キャスト・ジャミングもどきの説明を達也が始めるのだが…此処では割愛させていただく。
「…そう言えば、総司も魔法を無効化していたよな?」
不意にコレは以前校門前で総司が行った魔法無効化の方法を聞き出すチャンスだと考えた達也は、「俺は説明したからお前もやれよ」と言う状況で、総司に問いただす。
「えっ!?総司君もキャスト・ジャミング使えるの!?」
「いや使えませんけど…」
間の抜けたような返事に思わずずっこけるエリカとレオ。
「だが、以前校門で一科と争った時に使っていたじゃないか」
「あー、あれかー」
だが、達也の説明に合点がいったのか総司が説明を始める。
「あれは魔法を無効化してるんじゃなくて、
「…なんだと?」
総司から帰ってきた答えに、達也のみならず、この場の全員が凍り付く。
「魔法ってエイドスを改変して発動するけどさ、俺のは魔法じゃなくてエイドスに干渉することで魔法を、そもそも無かったことにするんだ」
「それって、発動してしまった持続時間の長い魔法も無効化できるってこと?」
「そうだな、例えば『一時間燃え続ける炎を出す』魔法があったとしよう。キャスト・ジャミングだと、既に発動してしまった魔法を止めることはできなさそうじゃん?でも俺のは魔法の発動を無かったことに出来るんだ」
「…それは、どういった条件で使用できるんだ?」
「うーんと、俺自身に干渉するものは当然として、俺が起こした物理現象にも同じ効果を付随できるぞ」
この総司に全員が言葉を失った。辛うじてレオだけが、総司のその力の意味をつぶやいた。
「それって、総司お前には…
魔法が効かねえって事じゃねえか!」
魔法科世界の秘匿通信
・雫は 明智を ライバル視 した!
・総司はとある事情により情報のムラが多い
はい、ということでね。
今回はあまりネタに走れませんでしたね。これからもっとふざけるから嵐の前の静けさって事で許し亭許して…
総司君の能力ですが、具体的に説明しますと、某禁書目録のツンツン頭の右手のように、世界を正しい状態に戻す事で魔法の発動を無かったことにします。
また、正常のにする対象は、ツンツン頭と同じ作品から一方さんの反射の設定のごとく、好きなように設定できます。自分の魔法が無効化されないのはコレが理由です。まあ、使わないんですけどね!
ちなみにこれは『異能』、つまりお兄様の『精霊の眼』と同じで先天的な技能です。『精霊の眼』がイデアに干渉するのに対し、総司はエイドスに干渉する能力となっています。
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~