魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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長かった来訪者編もこれで終わりですね…


後書きに次章予告おいておきます


来訪者編 最終話

「…そうか、そいつらは戦力になりそうなのか?」

 

『一応どっかのお偉方に使われてただけあって、腕はたしかっぽいな。なんか雫ちゃんにボコボコにされてたらしいけど』

 

「お前は庇護精神から雫の実力を下に見がちだ。彼女は俺より強い事を、いい加減理解したらどうだ?」

 

『そりゃ普通の魔法の範疇ででしょ?俺は雫ちゃんが戦場に出るなんて、それこそ本気の達也を完封できなきゃ許さないね』

 

「過保護過ぎるな…」

 

『お前だってそうだろうがよ。俺と違うのは、妹の尻に敷かれてる所為でワガママ聞く羽目になって結局連れ出しちまうとこだ。俺と雫ちゃんは対等な関係なんだ、ワガママはそうそう通じないぜ』

 

「雫は深雪と同じでワガママだし、お前だって雫の尻に敷かれてるぞ」

 

『何…だと?』

 

「気づいてなかったのか?」

 

『モチロンさー』

 

 

パラサイトとの全面戦闘からしばらくたった。あの日、パラサイトは総司の手によって跡形もなく粉砕された。だが、九島烈によれば、周公瑾がパラサイトはまだまだ存在している事をほのめかすような発言をして居たとのことで、しばらくは警戒が必要になってくるだろうと結論がでたあの戦い。

だがあの戦いはあの場にいた者達以外の生徒達には、そんなの知ったことではない。

 

今はもう3月。学生の3月と言えばそう、

 

 

「卒業式には来ないのか?」

 

『克人先輩が、俺に直接見送られないってことだけで残念がる訳ないだろ』

 

「確かにそうだが、七草先輩や渡辺先輩は残念がっていたぞ」

 

『うっせやろあんなにいじり倒したったのに?』

 

 

三年生の卒業式の季節である。

いつも誰彼に対しても敬意のけの字すら見せずに嘗め腐った態度をとる総司が、生きてきて尊敬した数少ない人物、それが十文字克人という男だ。彼は真由美と違い、総司の悪ノリにもキチンと合せることが出来た逸材だ。流石は十文字家次期当主と言えよう。

 

総司はパラサイト戦が終結した後、雫が襲撃されていたという報を受け、秒でUSNAにとんぼ返りしてしまっていたため、克人とあまり話せていなかった。だからこそ達也は、総司がちゃんと見送れた方がよいのではないかと考えたのだが、総司はそうは思わなかったらしい。それどころか真由美達が総司が居ないことを寂しがっていた件に逆にビックリしてしまっている。

 

 

「どうせなら卒業式の当日にメッセージでも送ったらどうだ?」

 

『俺、克人先輩のしか連絡先知らないぞ』

 

「ふむ…じゃあ俺が伝言を伝えておくから、何か言いたいことがあるなら言ってくれ」

 

『分かった…じゃあ、真由美先輩には「顔が良くて胸がデカいからって小悪魔ぶってるとオバさんになった時に取り返しの付かないことになるぞオバさん」って言っといてくれ』

 

「総司がいつかの未来に先輩に殺されるのと、俺は一切悪くないのにビンタをかまされる予感がしたから無しだ」

 

『え~…難しいな…』

 

「言う程か?」

 

 

そんな会話の最中、達也のヴィジホンの画面に総司以外の人物が写る。当然ながら雫だ。

 

 

『達也さん、総司君は不器用だから仕方ないんだよ』

 

『なにおう。俺はとてつもなく器用だぞ?』

 

『ないね』

 

「俺のデータも、それは無いだろうと言っている」

 

『お前データとか集めるタイプだっけ』

 

『そう言うタイプでしょ』

 

『そうだったわ』

 

 

しばらく通話だけで会話していたからだろうか、総司はどうやら達也の本質を忘れてしまっていたようだ。尚、達也は総司が居ない間に本質そのものが変質してしまったことを追記しておく。

 

 

『…そういや、アンの奴はどうしてる?』

 

「お前、本人に嫌がらせとしてそう呼ぶのは分かるが、普通にそう呼んでいくつもりなのか?」

 

『リーナって長いじゃん』

 

「お前の頭の容量は1ビットもないのか?」

 

『そう言うのいいから、それでどうなのよ』

 

「…特に問題ない風を装ってはいる。リーナは臨時の生徒会メンバーだから卒業式の準備を行っている」

 

『そうかい。ま、必要になったら向こうから言ってくるだろ』

 

「そうだな…」

 

 

達也は総司がリーナを気に掛ける理由を思い返す。

 

 


 

 

「お前が…アンジュ・カトリーナか」

 

「違うわよ!誰の名前よそれ!微妙に被ってるとこあって腹立つんですけど!?」

 

「落ち着け、お前にちょっと提案があってだな」

 

「提案?何をよ、私は貴方を狙ってこの国来た、敵なのよ?」

 

「問題ない、お前じゃ俺には勝てんよ。いいから黙って聞きなさい静岡に送り返すぞ」

 

「なん…って、送り返すって何!?私別に静岡の出身じゃ無いわよ!USNA!」

 

「安心しろ、静岡は四捨五入すればUSNAだ。大して変わらんよ」

 

「変わるわよ!?四捨五入で一つの県が国になるわけ無いでしょ、貴方は何を言ってるの!?」

 

 

零次達が撤退した後、持ち前の超スピードでパラサイト共を次々と屠っていった総司は、その全部を始末し終わって、リーナの元に寄ってその顔をビンタして叩き起こした。普通に首が飛ぶレベルの威力がしたであろう轟音を出たリーナの頬だが、痛みに驚いて起き上がった時には、漫画によくある紅葉型に赤くなっているだけの被害で済んでいた。総司が居る時点でギャグ時空に入っているという事なのだろう。

 

 

「…お前、俺の部下にならないか?」

 

「…ハァ!?」

 

 

そして総司からの突拍子も無いその提案にリーナはこの日何度目かも分からない驚愕の声を上げる。

 

 

「どうやら俺が今生活している地域に、明らかにUSNAの警備を抜けてきている奴がちらほら居てな」

 

「…どうやらそのようね。さっき貴方の恋人が襲撃されたというし…」

 

「何だと?雫ちゃんが?早く…」

 

「総司、雫なら無事だ。心配なのは分かるが、先にお前の要件を済ませろ」

 

 

雫が襲撃されたという情報を聞いて目の色を変えてUSNAに飛んで帰ろうとする総司だが、リーナに話している内容の続きを聞きたかった達也に冷静になるように言われる。その言葉を聞いたリーナの表情が「余計な事を…」と言いたげな様子であったので、どうやらリーナは総司をこの情報で帰宅させようとしていたらしい。

 

 

「じゃあ話の続きだ。もしかすると奴ら、意図的にパラサイトを呼び出したのかもしれないんだ。なら対処出来るのは俺くらいだからさ、情報を集めて俺に連絡を入れて欲しいんだ」

 

「…私にそこまでする義理は無いわよ」

 

「一応な、この間防衛大臣の側近とやらにUSNAの国防に協力してくれと言われたもんでな」

 

「…なんですって?」

 

 

総司のこの発言には、思わず周囲がザワつく。総司の発言が仮に本当ならば、総司がUSNAに渡ってしまうかもしれないからだ。

 

 

「…分かったわ、協力する。母国の為なら仕方ないわ」

 

「助かるぜ、アン」

 

「…リーナって呼んで」

 

「オーケーだ、アン」

 

「オーケーして無いじゃない!?」

 

「あーうるさいうるさい」

 

 

心底やかましいという表情で両耳を塞いでリーナから距離を取る総司。達也に優しく起こされた深雪がまあまあとなだめている内に、達也が総司に質問を投げかける。内容はモチロン先程の、USNAの国防に協力するという話についてだ。

 

 

「総司お前…USNAに属するのか?」

 

「…さあ、どうだろうな。それは雫ちゃん次第だよ」

 

「雫次第?」

 

「おう。俺は国の下につくつもりは無い。俺がつくのは雫ちゃんだけだ。彼女が日本を優先するなら俺は日本を優先するし、彼女がUSNAに鞍替えするってんなら俺も同行する。ただそれだけだよ」

 

 

と、とりあえずは別にUSNAに属する事は無いと分かって安堵する一同。その最中に総司は、「それじゃ!」と言って跳び去って行ってしまったのだった…

 

 

 


 

 

 

達也との通話を終わらせた総司は、背後にいた雫に声を掛ける。

 

 

「そういや雫ちゃんがぶっ倒した三人、もう日本に着いて聴取受けてるんだっけ?」

 

「うん。持ってる情報が情報だから、警察に預けるとそのまま殺されてしまうって嘆いてた。だからちゃんと情報を吐くならウチで雇うつもり」

 

「なるほどね?」

 

 

雫が総司の隣にやって来て、そのままソファに腰掛ける。

 

 

「…敵は、強大みたいだね」

 

「『元老院』だっけ?そんな気にすることじゃねえよ、どんな奴が来ても俺がぶっ飛ばしてやる」

 

「…うん」

 

「…雫ちゃん」

 

 

コテンと体を預けてきた雫の瞳には、紛れもない恐怖の色が浮かんでいた…

 

 

 

 


 

 

 

卒業式も終わり、3月の下旬のある日…

 

 

 

達也達一行は空港で人を待っていた。それはもちろん、あの二人の事だ。

 

 

「よっ、この間ぶり」

 

「ああ、おかえり総司」

 

「ただいま」

 

「雫ぅ~!」

 

「きゃっ…もう、どうしたの?ほのか」

 

「だって寂しかったんだもん~!」

 

「毎日通話してたじゃん…」

 

「「おかえり二人と…は?被らせんな!」」

 

「エリカ、レオ…こんな時も喧嘩?」

 

「でも…逆に何時も通りで安心しますね」

 

「美月…貴女は私と一緒にツッコミをしてくれるわよね…?」

 

 

三ヶ月間感じていなかった居心地の良さに、総司と雫が破顔する。

 

 

「みんな」

 

「「「「「「?」」」」」」

 

「…これからもよろしく」

 

 

一年が…終わった。




次章予告…


「ええ~!?私今帰ってきたばかりですよ!?それで今からまた任務って…やめてくださいシルヴィ!お家に返して~!」

「レオ、アンタスイカね」

「オイバカ、やめろ!」

「お兄ちゃん達…誰?」

「やはり出力が足りん…あの男を利用するか」

「柴田さん下がって!よくも柴田さんを狙ったな!?」

「あの…吉田君、何も虫相手にそこまで…」

「それでどうやって倒すつもりなの?雫」

「それは…このロールケーキでこう…ガッと」

「へっ、お前達の思い通りにはあばばばばばばば」

「総司君、今助けるわ!」

「こういうときぐらい、先輩面させてくれ!」

「西城、千葉!お前達何をやっている!…本当に何をやっている!?」

「お兄様!お願いします!」



「…分かった、なんとかしよう」



次回、星を呼ぶ少女編開幕…


なんか達也が主人公っぽい感じで草

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

  • いいともー!
  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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