星を呼ぶ少女編 その一
3月某日…
北山家が所有する何処かの島…
「レオ、アンタスイカね」
「オイバカ、やめろ!」
「ゴメンねレオ」
「お願いします、西城君」
「ちょっとまてよなんで俺がスイカになるの確定してんだよ!?止めろよ幹比古に美月!」
「実に切りがいのありそうなスイカだこと」
「怖えよ!…でも俺をスイカにしたいなら俺を地面に埋める必要があるぜ、そんなことできやしな…」
「そう言うと思ったわ、いきなさい総司君、キミに決めた!」
「此処掘れワンワン!サトシお疲れワン!」
「ゲェ、総司!?」
そこにあるプライベートビーチ(島ごと私有地なのでこう呼ぶのかは分からないが)で、総司達がはしゃいでいる。そして逃走むなしく地面に埋められたレオを、北山家の別荘のベランダから眺める達也達。
下の大騒ぎっぷりを見ながら、思わず深雪が言葉を漏らす。
「…相変わらず元気ですね」
「良い事だよ、深雪」
「そうだな。しかしレオ割りか…どんな味がするんだろうな」
「お兄様?本当に割るわけないですよね?というか食べませんよね!?」
「割ったら食べるのが普通だろう?」
「それはスイカだった場合の話です!」
「まあまあ、深雪。別にどっちでもいいじゃない」
「どっちでもいい!?ほのか貴女、今この瞬間に友達の命が失われようとしてるのよ!?」
「大丈夫、年代的に後の作品にゲスト出演したおかげで、漫画で死にかけても一切読者に心配してもらえなかった福井…照井さんみたいに、新・魔法科高校の劣等生キグナスの乙女たちの第五巻で生存が確認されてるから。今は何をやっても死ぬことは無いよ」
「メタ過ぎるわよ雫!?というかなんなの貴女、KADOKAWAの回し者なの!?」
「何を今更なことを言っているんだ深雪。俺達はKADOKAWAのキャラなんだからステマは当然の行為だ」
「違いますよ!?いえ、KADOKAWAのキャラである事は否定しませんが、だからってステマを当然とは言いません!」
ツッコミを一気に行った深雪は肩で息をしている。可哀想に。
「どうしてそんなに疲れてるの深雪?話聞こか?」
「どうして雫は話を適当に聞いて、ストレス発散という名目で性交渉始めるような男の人みたいな台詞を言っているの?」
「私が深雪をエッチな子にして、達也さんに積極的にアタックするように仕向けて、それを見て慌てるほのかを楽しむ為だよ?」
「「「悪女か?」」」
「失礼な、私は公認された水も滴るいい女だよ。うっふーん」
「公認って誰に認められたんだよ」
「総司君と家族」
「知ってた」
そんなバカな会話をしている中でも状況は動く。下での攻防戦が苛烈になり、いつの間にか総司が埋められており、エリカが何処から取り出したのか『大蛇丸』を振りかぶっている。総司の死は近い。
「…というか雫、貴女の水着ちょっと過激すぎない?男の人の目線が怖くないの?」
確かに深雪の指摘通り、雫が現在着用している水着は、所謂ビキニというものだ。魔法師は血が大事であるという点から、無責任な性交渉は控えるべきという風潮の昨今、現実に存在するビキニのお姉さんも、魔法科世界に来れば立派な露出狂扱いされるような世界だ。
何が言いたいのかというと、雫の水着は魔法科世界基準で出し過ぎでエロいって事。
「ここはプライベートな空間だしね。それに幹比古君は美月のおっぱいに釘付け、レオ君はエリカのお尻追っかけてる、達也さんはダイナマイトボディを両手に花。私のこの格好をまじまじと見るのは総司君だけなんだよ」
「確かにそうだな」
「お兄様、流石に今の発言を認めてしまうと、幹比古君やレオ君に風評被害が及ぶのですが…ほのか、貴女からも何か言ってちょうだい」
「達也さんが…私をダイナマイトボディだって認めた…これはワンチャンあり…!?」
「あっダメだこりゃ」
とうとう深雪の言葉使いが崩れてきた。深窓の令嬢なんておらんかったんや…
とある実験室にて…
「博士、実験体22号が何らかの方法で脱走しました」
「何だと?それは困るな、今日も実験の予定が入っていたというのに」
薄暗いその部屋は、最早明かりは機械の駆動の際に発する光ぐらいとなっていた。そんな部屋の中心にいる男性は、手を顎に添えて今後のプランを練り直そうとしている。
「ふむ…新たに実験体を作るにも時間が掛かる。実験体22号を連れ戻してこい、その間実験は中断する」
「(お願い…逃げ切って、九亜…)」
その命令を部屋で聞いていた職員の一人は、自分の娘の様に想っている彼女の無事を案じた。
場所は変わってとある飛行機の機内。
その客席の数に反して、乗っている乗客は二人。所謂プライベートジェットのようなものか、それに乗っている二人の女性が、トランプでババ抜きをしていた。
「……」ススッ
「……!」パァァ
「……」ススス
「……」ショボーン
そのババ抜きも最終局面、二枚対一枚の熱い戦い。どっちかがババ、どっちかが当たり。そんな緊迫した状況の中で、良く言えば王道な手、悪く言えば使い古された手である、相手の表情からどちらがババかを予想する事にした一方の女性は、相手の表情のわかりやすさに内心勝ちを確信してほくそ笑んでいた。
「(真由美め…顔に全部出ているぞ…!これはもらったな!)」
「(…って、摩利は考えてるんでしょうね)」
だが今にもカードを取りそうな女性…摩利は失念していた。対戦相手の小悪魔っぷりを…
「私の勝ちだ、真由美!………え?」
「じゃあ私の番ね。一枚もらいま~す」
「あ、ちょっ、まだシャッフルしてな」
「やった~!勝った~!」
「…釣られたということか…トホホ」
古典的な手法には古典的な反撃を。摩利の動きから彼女が一体何を行っているか一瞬で悟った真由美は、浮かべる表情を逆にすることで摩利を騙す事に成功したのだった。
「甘いわね、摩利」
「お前の性格の悪さは、この三年間でしっかり身にしみていたはずなんだがな…」
「ちょっとそれどういう意[真由美お嬢様、少々コックピットまで来ていただけませんか]…あら?」
「…何かあったみたいだな」
勝者と敗者が決定づけられた機内に、真由美へコックピットからの呼び出しの放送が流れた。何らかのトラブルが発生したようだ。
「はいは~い。どうしたの?」
「…今到着されました。そちらに代わります」
「?」
「…軍の航空機です。こちらへ着陸要求をしてきています」
「分かったわ…代わりました、私がこのジェットの責任者です。詳細は聞いています」
『…話が早いな。我々は貴女がたのジェットの着陸を要請する』
「お断りします」
通信越しに伝わる、相手の動揺。恐らく最初に通信をしたパイロットよりも、責任者を名乗る人物の声が若かった事に対してだろう。だがそれをチャンスと見た相手は、強気に要求を通そうとしてきたが、真由美バッサリと切られてしまった。
その後もしばらく通信でのやり取りが続いたが、そこでとうとう相手は強硬手段を用いてきた。
バババババ、という大きな音。察するに威嚇射撃と言ったところか。
『…今のは威嚇だ。即刻着陸させなければ命中させる』
「そうですか…では」
だがその威嚇への反撃として、真由美が魔法を用いて敵の機体にドライアイスの弾丸を下から撃ち込む。
「これは警告です。次は貫通させます」
『…』
機内に魔法師が居る事が分かり、自分達では分が悪いと撤退していく軍の航空機。通信が切れ、レーダーからも見えなくなったところで、真由美が客室の方へ戻る。
「…真由美、今のは」
「やっぱり聞こえてたわよね…」
威嚇射撃の音を聞いた摩利が、心配そうに真由美を見るが、真由美は首を振って大丈夫だとアピールする。その意味を正しく読み取った摩利は胸をなで下ろした。
「…何か、良くない気配がするな」
「そうね…何もなければいいんだけど…」
これから何か問題が発生する気配を、二人は明確に感じ取ったのだった。
魔法科世界の秘匿通信
・雫がちょっとエッチな事を言っていても、総司の前でないならその表情は大抵真顔。
・役者は出揃った感がして投稿するが、前回の後書きで描写した気になってリーナのシーンを忘れている。次回にでも付け加えます
別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?
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駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~