魔法?よく分からんわ!殴ろ!   作:集風輝星

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次回で百話目ですね…

百話目の内容は今の所、総司と作者の対談みたいな話にしようと思ってます。


星を呼ぶ少女編 その九

「…Now Loading…」

 

「…起きたなら起きたと言え、総司」

 

 

研究所内部で、総司が目を覚ます。どうやら先程までの異常性は発揮していないようだ。そして本人には自分が何をしたのかの記憶が無いらしい。

 

 

「…何があったんだ?ねえ真由美先「ッひ!」…どうやらよっぽどひどかったみたいだ」

 

「あっ…違うのよ総司君これは…」

 

「大丈夫、分かってますって」

 

 

自分がいきなり声を掛けたことに非常に怯えた様子を見せた真由美。それで自分が何かをしてしまった事を自覚する。その口は大丈夫だと言ってはいるが、内心傷ついているかのように見える。

 

 

「…自分が何をしたか分かったか?総司」

 

「…具体的には分からないけどな」

 

「なら、知ってそうな奴に聞くのが良いか」

 

 

そう言って達也は近くのデスクに寄りかかっている零次に声を掛ける。

 

 

「零次、総司から生まれたお前なら、今総司に起こった出来事も説明できるんじゃ無いのか?」

 

 

その問いに、零次はため息をつき、伏せていた目を達也に向けて…

 

 

「…知ってるけど説明する義理は無いよな?」

 

 

と返した。

 

 

「…お願い零次君、知ってる事を話して」

 

「悪いな真由美、お前の頼みでも無理だ」

 

「…え」

 

 

真由美は驚愕した。零次は基本的に、香澄の頼みを断らない。それに引っ張られてか、泉美や真由美の頼みも断ることは無い。これは七草の三姉妹の中で一番元気でおてんばな香澄の無茶ぶりに比べれば、二人の頼み事など些細なことであることが多いからだ。

そんな考えを持っていると、以前自分に話してくれた零次が、自分の頼みを断った。それはつまり、よほど知られたくない事なのかもしれないと、真由美は事の重大さを更に大きくした。

 

 

「ただまあ…ヒントを出すなら…」

 

「出すなら?」

 

「…そのままにしておけば、オリジナルはいずれ、()()()()()()()()()()()()って事ぐらいかな」

 

「……」

 

「何だと…!?」

 

 

…総司は、零次からの発言を聞いて、違和感を覚えた。本来ならば、自分の死を告げられたも同然だ、そんな事があるはずが無いと、今までであれば反論しただろう。だが何故か、()()()()()()()()()()()。妙に納得してしまったのだ。むしろ、感情が無いはずの達也の方が激昂している。総司にとって、零次の発言が他人事の様に聞こえたのだ。

 

だが様子のおかしい総司に、零次以外は気づかない。激昂している達也は零次の服を掴み上げる。普段の冷静沈着な達也には似ても似つかない。本気で怒っているようだ。

 

 

「…ならば尚更詳細を聞かねばならないぞ零次、答えなければお前の命は無いと思え」

 

「この距離でお前が俺に勝てるとでも思ってんのか達也。魔法による偽物とはいえ、俺はオリジナルと同程度の身体能力を持ってる。今、お前を殴り殺すことも出来る…それともなんだ、俺のスタミナが切れるまで自分を『再生』し続けるつもりか?」

 

「…っく!」

 

 

零次の言葉は正しい。達也が零次を正面から打ち倒すには、少なくとも『誓約(オース)』の解除は必定条件だ。それが成されていないのならば、不意打ちぐらいしか手は無いが…この距離では不可能である。

大人しく零次を解放する達也。その表情は怒りに塗れている。だが零次はそんなこと気にすること無く、真由美に声を掛ける。

 

 

「真由美、お前はそこの調整体達を連れて脱出しろ」

 

「…零次君は、何をするつもりなの?」

 

「決まってるだろ?」

 

 

わたつみシリーズを連れて逃げろと言い放った零次。その口ぶりから、本人はまだ残るつもりらしい。その理由を真由美が問うと、零次は天井を指さした。

 

 

「…!ま、まさか…!?」

 

「ああ、どうやらオリジナルの大暴れの前に、『隕石爆弾(ミーティアライト・フォール)』とやらは完遂されちまったらしい」

 

 

急ぎ『マルチスコープ』を使用して宇宙を観測する真由美。それに追従するように、『精霊の眼』を用いて真由美と同じ世界を観測する達也。二人は、衝撃の光景を目にする。

 

 

「USNAの軌道衛星が、落下してきている…!」

 

「何だと!?落下予測地点は何処だ真由美!?」

 

「…恐らく、この島の近郊かと」

 

「そんな…!」

 

 

真由美と達也によって告げられた事実に驚愕する摩利。その通りだと言いたげな表情で、零次は真由美達に声を掛ける。

 

 

「速度は恐らく本来より遅いとはいえ、あれほどの質量が落下してきた時点で俺達はお陀仏だ。だから俺が止めてくるんだよ」

 

「ど、どうやって!?まさか、自分の身で殴り込もうとか言わないわよね!?」

 

「もちろん。俺をオリジナルと一緒にするな?俺はこれでも古式魔法のエキスパートなんだぜ?たかが衛星一つ、結界で弾き返してやる」

 

「どこぞのニュータイプみたいな事言いやがって…」

 

 

そのツッコミにその場の全員がその声の主を見る。

総司が、よろよろと立ち上がろうとしているのだ。

 

 

「無理をするなよオリジナル。あの力を一部でも使ったんだ、体力的に問題なくても精神的にダメージがでかいはずだぜ」

 

「総司、俺は万能では無い。お前の体を治せても、お前の精神を癒やす事が出来るのは、彼女だけだ」

 

「…雫ちゃん」

 

「ああ、そう言うことだ、ここで無理をして彼女を悲しませたくはないだろう?。…渡辺先輩、七草先輩。彼女達と総司を連れて避難してください」

 

「まさか達也君、君まで残ろうって言うのかい!?」

 

「ええ、日本を侵略してきた相手が、日本を守ると言っているこの状況を、陸軍の人間としては容認しかねます」

 

「ほーん…確かに一理ある。…しゃーねぇな、達也。お前は俺が止めた衛星をぶっ壊せ。手段は問わない」

 

「…分かった」

 

 

そう言って達也は、わたつみシリーズの首輪を『分解』してから走り出す。それに並ぶように、零次が走り去って行く。

そして、残された者達も動き出す。

 

 

「真由美…私達も、自分に出来ることをやろう」

 

「…そうね、そうしましょうか摩利。みんな!私達に付いてきて!出口はこっちよ!」

 

「…総司、立てるか?」

 

「…すんません」

 

「らしくないぞ総司。いつもみたいに馬鹿やって私達を安心させてくれよ…」

 

 

こうして一行は、研究所の外へと脱出を開始した…

 

 


 

 

その頃、地上では。

 

 

 

「っく!こいつら頭狂ってんじゃ無いの!?」

 

「ヒャッハアアアアア!!」

 

「頭だけじゃなくて技術(うで)も狂ってやがるぜ!『パンツァー』!」

 

「音声認識とは、奇遇だな!『ダンシング・ブレイズ』!」

 

「流石に…!数が多いですね…!」

 

「それに実力も伴ってるから、厄介極まりないよ…!『雷童子』!」

 

「その程度では、私達は倒せんぞ…!」

 

 

流石の一高生達ともいえど、世界最強の魔法師部隊と名高い『スターズ』の精鋭数十人を相手にするのはキツいものがあった。多くの隊員は達也が伸しているとはいえ、まだまだ数は残っているし、エリカとレオは今回派遣されてきた隊員達の中でも特に強力な、二等星級の隊員との一騎打ちを強いられており、カノープスは主に幹比古と対峙している。深雪が他の隊員の対処に回っているが、やはり押され気味だ。

 

 

「やああああ!…っ!」

 

 

赤髪の剣士に強力な一撃を打ち込もうとしたエリカだが、何かを感じて移動魔法で後退する。

 

 

「ァァ?…勘が良い女は嫌いだぜ」

 

「その刀と刃を合せるのは…ちょっとマズいって感じたのよね…!」

 

 

エリカは、眼前の剣士が使っている魔法が、『分子ディバイダー』は説明は省くが、要するにあらゆる物を切断できる魔法であり、それはエリカの剣も同じであったのだ。そこに…

 

 

「隙だらけだぞ!女剣士!」

 

「なっ!?いつからそこに!?」

 

 

カノープスが斬り込んできたのだ。急いで剣で受け太刀をしようとするが、その剣にも『分子ディバイダー』が掛けられている事に気が付き、自身の死を予感する…だが、

 

 

「『ジークフリート』ォ!」

 

「…レオ!?」

 

 

そのカノープスの絶死の剣は、レオの体に止められていた。

 

術者の肉体を構成する分子の相対位置について、外部からの変更を受け付けなくする事で、術者の肉体を不壊化させる硬化魔法。これにより、分子に干渉する『分子ディバイダー』による切断を防げた…のだが。

 

 

「…どうやら、その魔法は長くは持たんらしいな!」

 

 

苦悶の表情を浮かべるレオを見て、カノープスは自身の攻撃をやめなかった。『ジークフリート』は術者の体力を著しく奪う術式であるし、そもそも硬化魔法に対する一家言あるレオだからこそここまで持つが、事象干渉力でレオはカノープスに競り負けている。このままではレオはいずれ切られてしまうだろう…

 

死を背に感じ、嫌な汗を流すレオとエリカは…

 

 

直後現れたドーム状の障壁に、助けられることとなったのだ…

 

 

「西城、千葉!ここで何をしている!?」

 

「「…十文字先輩!?」

 

 


 

 

そしてもう一方の戦場では…

 

 

 

「うう…グスッ。そうですよ~だ、私は敗北者です~、ほら笑ってくださ~い…」

 

「おいおい双葉、そんな地獄兄弟みたいな事言ってないで、さっさと立ち直ってくれよ」

 

「つーか双葉さんが悪い訳じゃ無いし、そこまで落ち込むこと無いって昔から…」

 

「それでも十師族が羨ましい~!」

 

「…何コレ」

 

 

現場に到着したリーナが目撃したのは、死屍累々という言葉がとても似合う、黒焦げになった仲間達の姿であった。一応死なないように加減はされていたようだが、双葉の高火力爆撃によってほぼほぼ全滅してしまっているようで、誰一人として立ち上がる気配が無い。

 

 

「だからいい加減その落ち込み方やめろって…アンタ、スターズの総隊長か?」

 

「…っ、ああ、私がアンジー・シリウスだ」

 

「事情は俺達の上…総司さんから聞いてます。別に敵対するつもりはないんですけど、その魔法不愉快なんで解除してもらえません?敵が来ないとも限らないので」

 

「…ああ」

 

 

久豆葉が文句を言ってきた魔法とは、恐らく『仮装行列』のことだろうと推測するリーナ。総司からの情報によれば、この久豆葉という男は隠蔽と索敵に特化した性能をしているそうで、それ故にこちらの魔法を見抜いたのだろう。そう考えたリーナは、魔法だけを解除し、仮面はそのままにしておいた。

すると、時間が惜しいとでも言いたげな市ノ瀬が、リーナに話しかけた。

 

 

「ウチのボスからの連絡です。一緒に来てください」

 

「…何があったのだ?」

 

「戦略級魔法が起動したそうで、今司波達也と安部零次が迎撃に向かっているそうですが、その援護を頼むと」

 

「そうか…了承した」

 

 

そう言って、リーナは久豆葉の先導に追従して、達也達の元へと向かう。市ノ瀬も向かおうとしたが、双葉がまったく動く気配が無いため、しょうがなく双葉の体を操りながら、二人を追いかけるのであった…




魔法科世界の秘匿通信


・実は総司を『再生』した後、達也はオーバーフローで少し気絶していた。総司に声をかけれたのは、単純に総司が起きるより先に起きたから。


・カノープスがエリカ達より強く描写されているが、本作において範蔵はコイツと同じくらい強い為、普通に達也達と渡り合える。


・市ノ瀬が数字落ちしたのは、第一研において禁じられていた人体操作の魔法を研究しており、あろうことか実用まで持っていってしまったから。




クソッ!こんな良いとこで終わっといて次は百話目だって!?

そんな…早く続きをお届けしたい自分と、百話記念を投稿したい自分で揺れ動いてしまう…一体どうすれば…!


次回、「同時投稿すりゃいいじゃん」 デュエルスタンバイ!

別小説でキグナスの乙女たち編初めていいですか?

  • いいともー!
  • 駄目だね~駄目よ、駄目なのよ~

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