ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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『ユリシーズの厄災から20年、難民たちは苦しめられてきた』

『そして、未だユリシーズの破片がNEOとして多く周回......』

『落下の危険性は極めて高い』

『ユリシーズの悲劇は“また繰り返される”』

『今こそ人類の力を結集して対策すべきである』

『そのような事態にありながら、国連は20年もの間、大国のいいなりとなり弱体化した!』

『......その対策として』

『失われた世代と呼ばれる我々難民出身者たちが、脆弱な国連に代わる新たな秩序となり、強力な統治機構で世界の窮状を救うのだ!』




#9 変わる世界で彼等は-Change the World-

 

 

 

2019年.7月27日.1500hrs

扶桑.神奈川県.厚木基地

 

 

 

 

 

「......だと」

 

 

厚木基地内の広く、薄暗いブリーフィングルーム。

モニターに流された映像を見ていた者たちは皆、黙り込んでいた。 それもそうだろう。

 

クラッシャー作戦から19日が経つ。

ストーンヘンジ・ネウロイを破壊した彼らはその後、周辺の残敵掃討を行い任務完了すると、恒例の大移動が始まった。

大移動後にデスクワークの毎日が続いたら気が滅入るのも当たり前だろう。

 

そして、追撃を喰らわされた。

 

 

国連認定の国際テログループ「サンズ・オブ・トロイア」が大規模な行動に出たのだ。

 

 

声明文の発表によりSOTリーダーが判明し、その人物がヴェルナー社を解雇された元軍事部門責任者『キャスパー・コーエン』だ。

 

解雇された腹いせに報復に出たのか、わからないが。

ヨーロッパ東部からアジアにかけてのユーラシア大陸南部をユリシーズ難民による国家「ユージア連邦」として独立することを宣言。既に大陸各地で防衛線をひいていた。

 

「テロ組織の範疇を超えてやがる」

 

部屋の角で聞いていたダリルが顔をしかめていた。

グッドフェローが困ったような表情を浮かべると言った。

 

「あぁ、加担している国家もいると見て間違いないだろう」

 

アリシアがやれやれと、呟くのが聞こえた。

まぁ無理もない。

テログループに加担するとは情けなさ過ぎる。

 

「国連軍の出足の遅さが、仇になったな」

 

グッドフェローが以前から危惧していた事が現実となったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神奈川県.厚木基地.1700hrs

 

 

夏の夕暮れ。

どこからか飛来した蝉がミーンミーンと鳴き続ける。

沈みゆく夕日の光を浴び、リベリオン海軍、扶桑国防海軍、そして俺たち国連独立コマンドのエプロンに駐機してある航空機群が輝いていた。

 

大陸が敵の手に事実上落ちた為、扶桑政府は非常事態宣言。扶桑各地の陸海空軍は臨戦態勢に入っていた。

厚木基地にはリベリオン海軍第5空母航空団(CVW-5)がホームベースとして昨日まで置いていたが、状況が変わった為、現在は横須賀に停泊中の航空母艦「ロナルド・レーガン」へと、その殆どが戻っていた。

此処に残っているのは艦隊後方支援飛行隊のC-2A部隊だけだ。

 

2015年に以前の第7艦隊の空母「ジョージ・ワシントン」からその任務を譲り受けた「ロナルド・レーガン」(以下レーガン)。

元々は2016年に予定されていた炉心交換を行うはずだった「ワシントン」が、世界的な国防予算削減の対象となり、炉心交換は中止、そのまま早期退役となった。

その為、東太平洋を担当する第3艦隊の「レーガン」が第7艦隊所属となり、「レーガン」が空けた席には2016年に就役したばかりの新型空母「ジェラルド・R・フォード」が座った。

 

現在は西太平洋からインド洋をカバーする第7艦隊行動エリアに第3艦隊も入り、扶桑防衛の任務に就いていた。

 

先日入ったニュースによれば北アラビア海上を航行していた空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」の第5艦隊が攻撃を受け、「ブッシュ」が被害を受けたらしい。

 

だから、リベリオン海軍は現在ピリピリとした雰囲気を漂わせていた。

 

ハンガーの前を歩いていた久幸が止めてあった牽引車に座る。

 

 

「これじゃあ、人類同士での戦争になりそうだな......」

 

 

久幸が呟く。

久幸の所属する「ボーンアローズ」も、国連軍から要請を受けたアローズ社の指示で扶桑防衛に駆り出されていた。

いつでも出撃出来るようにフライトスーツを着込んではいるが、この夏日だ。暑いに決まっている。

 

手に持っていたペットボトルのキャップを開け、中に入っているスポーツ飲料水を一口。

若干ぬるくなったが、カラカラの喉を潤した。

再び口をつけようとした時、横からシャッター音が鳴った。

 

 

「航平」

 

「今さっきだが、新田原にスクランブルが掛かったらしい」

 

 

その言葉に眉を顰める久幸。

古巣の事だ。

同じように牽引車の上に腰を下ろした航平に問う。

 

 

「で?」

 

「東シナ海上で交戦したそうだ。安心しろ、被害は無い」

 

 

ホッと胸を撫で下ろす久幸。

航平が話を続ける。

 

 

「それに、彼処には楯山たちと化け物司令がいるしな」

 

「まだ居るのかよ、あの人」

 

 

久幸がうげぇとした表情で言った。

それくらい新田原基地の元ウィッチ司令が苦手なのだ。

 

 

「当たり前だろう? あの人、やるって決めたらどんな手を使っても必ずやり通す性格なのは十分知ってるだろうが。 前に新田原にF-3を配備する計画に関しても、航空幕僚幹部の連中に“お話し”して無理やり承認させたらしいし......恐ろしい女狐さんだ」

 

 

そう言って缶コーヒーを飲んだ航平がにがっ!?と叫ぶ。

ぶっちゃけると、航平が国防空軍辞めた理由がその女司令の命令に耐えられなかったから逃げたらしい。

これを話したら女狐さんはどんな表情をするのやら......。

いかん、絶対に此方にも飛び火してくる。

 

にしても、幕僚幹部を納得させるとわ。

絶対に“脅した”に違いない。間違いない。

久幸の脳裏に高笑いする司令の姿が浮かんだ。

すると航平が「そういや」と呟く。

 

 

「まさか永瀬がいるとは、正直驚いたぞ?」

 

「だろうな」

 

「ま、あいつの事を考えれば当然の居場所だろうが」

 

 

久幸たちが301飛行隊着隊と同時に入ってきた永瀬。

着隊前は元々扶桑国防海軍航空隊として軍に入ったらしいが、その腕を買われてF-3 震電ⅡがまだASF-Xと呼ばれていた時に国防空軍が新設した第19飛行隊、通称「重苦」へと転属、ASF-Xのテストウィッチとして抜擢されたようだ。

久幸たちと出会ったのは、その「重苦」時代の時だ。

 

 

「会った時から他人を寄せ付けないような雰囲気だったが、今でも健在のようだな。もう少し柔らかくならないのかね?」

 

「あれでも十分柔らかくなったほうだぞ?」

 

「俺にはさっぱり。まぁ、冗談を言えるくらいにはなったな」

 

 

あぁと、久幸が答えた。

すると、後ろから怒号が。

反射的に振り返ると、ハンガー内で修理隊の班長がミスをしたらしい整備士に怒鳴り散らしていた。

整備士は完全に縮こまっている。

 

 

「おおぅ、あれを見てると初めて整備の班長に怒鳴られた記憶が蘇ってくるな」

 

 

航平が苦笑いしつつコーヒーを飲み干す。

 

「なにやったんだ?」

 

「機体の調子を見ていたらうっかり射出レバーを引いてイジェクトした」

 

お前はバカか?と久幸が呆れた。

 

 

「レバーを引いたのがエプロンで良かったぜ。 ハンガー内で射出したら危うくぽっくり死してしまいそうだった」

 

 

ケラケラと笑う航平に久幸は頭を抱える。

そういえば、と、以前久幸は滑走路脇をを昼から夕方まで走り続けていた航平を見たことがあった。

 

 

「おう、なんだか楽しそうだなお二人さん」

 

 

怒鳴り終えたらしい班長が話しかけてきた。

 

「どうもっス」

 

「お疲れさんです」

 

班長が帽子を取り、うちわのようにパタパタと扇ぐ。

 

「こんなクソ暑い日に限って次から次へと仕事が舞い込んで来やがる。 とっととあのお荷物も受け取りに来てほしいもんだ」

 

「お荷物?」

 

久幸が首を傾げながら問うと班長があれだよあれと、別なハンガーに機首部分がはみ出ている、ブルーシートが掛けられた機体が見えた。

かなりの大型で重量機らしく前脚はダブルタイヤだ。

 

「ありゃ何なんです?」

 

航平が興味津々な口調で聞いた。

 

「リベリオンの奴らが持ってきた機体だ。 ADTWの連中に引き渡す予定の試作機らしいが、興味深い機体だったな、ありゃ」

 

「試作機?」

 

「リベリオンじゃこれ以上、開発が出来ないからって厄介払いされた可哀想な奴さ。通常機があれ、ハンガー内にストライカー・ユニット型がある」

 

「ははん、扶桑なら完成させられそうだから譲ったわけね」

 

国防予算の削減の波を受けた機体。

世界的な影響下なのを知ってるくせに扶桑に押しつけて、完成させたら返せってパターンになりそうだな、これは。

 

「この状況下で渡されたこっちの身になれってんだよリベ公」

 

「おやっさん、冷静に冷静に」

 

キレ気味の班長を航平が宥める。

久幸はやれやれ...と言って視線を滑走路方面に向けた。

 

夕日に照らされた滑走路やエプロン、駐機してある機体がすべて黄金色のように輝いていた。

 

こうやってのんびり黄昏る事も、いずれ無くなる。

これからどうなるのか、それは誰にも分からない。

 

 

「おーい! 久幸に航平! 食堂にいこー!」

 

 

遠くで二人を呼ぶ声が聞こえる。

声から察するにアリシアだろう。

航平が返事をする。

 

「へいへーい! 久幸、行くか」

 

「はいよ」

 

腰を上げると航平について行くようにアリシアと、その後ろで立つダリルとキャスの下へと向かう。

 

 

 

少なくとも、コイツらといる限り大丈夫だろう、と、久幸は皆の後を追う。

 

 




どうも、フェネックです。
今回話はどうでしたか?

それはそうと、明日7月7日からエースコンバット:インフィニティでは「七夕イベント」が始まります。

ベルカ公国第2航空団第52戦闘飛行隊「ロト」隊
オーシア国防空軍第8航空団第32戦闘飛行隊「ウィザード」隊

のエンブレムと通り名みたいですね。

今月中にチームデスマッチ機能と新機種が追加されるようで嬉しいです。機種はF-15S/MTD,JAS39,Su-47です。ウィザードエンブレムが来るならそこはYF-23だろ、と思いました。

気になるミリタリー情報では、退役修正案が可決されたことでA-10は暫くの間、空を飛び続けられそうです。良かった。

オペレーター1人で複数のUAVを管制制御するシステム......これも気になりますね。

第6世代機が「カウンター・ステルス」ですからね。
震電Ⅱは6世代機に分類されるのでしょうか?
それとも5.5世代機?

それでは、皆さん。また

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