ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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お待たせしました。

ごゆっくり、と、お楽しみください。



※10/4 19時44分訂正しました。


#10 極東戦線-Far Eastern Front-

 

 

 

 

 

 

─────“イージス”─────。

 

それは、ギリシャ神話にてゼウスが女神アテナに与えたとされる最強の盾の名。

 

現代に於いてその名を冠した艦がある。

 

「イージス艦」

 

それは、イージスシステムを搭載し、一度に数百以上の目標を同時捕捉し、追尾、迎撃を行う、

 

現代に蘇りし、最強の盾。

 

そして、そのイージス艦の1隻、扶桑国防海軍の「りょうかみ」型ミサイル駆逐艦1番艦「りょうかみ」は、相模湾に展開していた艦隊から離れ、浦賀水道を北上しつつ東京湾へと航行していた。

 

徐々に水平線へと沈みゆく夕日が全てを黄金色に包み込んでいた。

 

黄金色に輝く海面を切り裂くように白波を立て進む「りょうかみ」。

その特徴的とも言える大型の艦橋は旧皇国海軍時代の高雄型巡洋艦と似ている。

 

新艦隊構想により、その先駆けとして建造・就役した新型イージスシステム搭載駆逐艦「りょうかみ」型。

全長約170m、満載排水量1万tオーバーの艦体をガスタービンエンジン4基で速力30ノット以上(時速約56km)で航行する。

 

従来のイージス艦「こんごう」型や「あたご」型とは違い、対弾道ミサイル型ネウロイ防衛を前提に建造されたイージス艦であり、装備もそれ相応の物を与えられた艦であった。

 

 

 

 

袖ヶ浦(そでがうら)上空の目標群エコー、真っ直ぐ東京に向かっています!』

 

電測員の連絡が戦闘情報センターから艦橋へと艦内通信機越しに伝わった。

 

「......」

 

それを艦橋横のウィングにて黙って聞いていたミサイル駆逐艦「りょうかみ」の艦長 遊橋(ゆはし)正蔵(しょうぞう)一等海佐は、ジッと旧首都東京の方向を見つめていた。遊橋の視線の先では複数の黒煙の柱が上がっている湾岸地帯が広がる。

 

ハッチを開けてウィングへ出た航海長が遊橋に歩み寄る。

 

 

「艦長、駆逐隊司令より“くろひめ”と共に東京湾へ向かい、先行するリベリオン艦隊の援護を行えとのことです」

 

「瀬戸駆逐隊司令は何処にいる」

 

「瀬戸司令は現在、駆逐艦“いこま”に乗艦し、僚艦2隻を率いて洲崎沖にて捕捉したユージア軍の艦隊を迎撃するもようです」

 

「奴らしいな......だが、3隻だけでヤるつもりか?」

 

「いえ、相模湾の空母“ずいかく”より艦載航空隊が向かっています。 厚木からも第11航空隊が出ています」

 

 

入隊以来からの親しい仲である瀬戸司令の身を案じた遊橋だが、それを聞いて一安心する。

 

帽子を被りなおした遊橋が指示を下す。

 

 

「対空見張りを厳となせ。 これより本艦は東京湾に突入する」

 

「了解しました! 対空見張りを厳とします」

 

 

指示を受けた航海長が敬礼すると艦橋内へと戻る。

遊橋はウィングから同じように艦橋内へと入り、副長に此処を任せ、自分は戦闘情報センター、通称CICへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年.8月10日.1700hrs

扶桑.神奈川県.厚木基地.side/新城“リーパー”久幸

 

 

 

その日、扶桑は敵の侵攻をうけた。

 

敵は少し前に独立宣言を行ったサンズ・オブ・トロイア、いや、「ユージア連邦軍」と名を変えた存在だった。

 

扶桑本土全体を覆うような強力なECMによるジャミングは各レーダーサイトを麻痺させ、その隙をついて大陸から飛来した敵機が次々とレーダーサイトを破壊、沈黙させた。

 

敵の電撃的侵攻に扶桑国防軍、リベリオン軍は完全に対応が遅れた事で大量の輸送機から空挺降下した敵部隊により、既に東京は彼らに占拠されたも同然となった。

 

空幕(航空幕僚監部)を通して扶桑政府から防空要請を受けた厚木基地にいる彼ら「ボーンアローズ」は、ブリーフィングルームではなく、エプロンにおり、無線機越しにグッドフェローから状況と作戦内容を聞かされていた。

 

 

《今作戦は陸海空、全ての勢力が激突する大規模作戦だ。作戦目標は東京の解放......ユージア軍の撃退だ》

 

 

F-15Eに乗り込んだ久幸と航平はそれを静かに聞きながら、着々と準備を整えていく。

 

エプロンには久幸たち「ボーンアローズ」以外の国連軍所属飛行隊は扶桑国防軍部隊も出撃に備えており、既に準備を整え出撃要請を受けた戦闘機隊は誘導路から滑走路へ躍り出ると、1機ずつ順次離陸していく。

 

 

《既に敵は東京都内に地上兵力を展開しており、防衛陣地を構築している。UAVによれば移動式の地対空兵器の存在が確認されている》

 

 

HMDに表示される東京の3Dマップ。

都内に展開している敵地上部隊の制圧エリアが赤く塗られ、移動式の地対空車両や建物屋上の手動式対空砲等のデータが表示された。かなりの戦力だ。持っていく弾薬だけでは到底対応出来ないかもしれない。

 

 

《また、敵は空に航空部隊、太平洋側から侵入した海上部隊もいる。まさに大盤振る舞い、だな》

 

「こりゃ、ちとキツいな」

 

 

後席でくつろいでいた航平が呟くように言った。

 

 

「元は大軍需企業だ。モノはたんまりあるんだろ」

 

「にしても多過ぎ。 まぁ、これだけあったらそりゃあれだけの数の国を占領しちまうのも納得だわ」

 

 

俺にそう言い返す航平の嫌そうなツラが目に浮かぶ。

テンションが低めに見えそうな雰囲気出しつつも、いざ戦場に行けばしっかりと任務をこなすその姿勢には賞賛を贈りたいね。

 

 

《激しい戦闘が予測されるが、目立ちやがりには絶好の舞台だ。機体の整備は慎重にしておけ。この戦線を切り崩すのはオレたちだ。戦果を期待する、以上だ》

 

 

グッドフェローのブリーフィングが終了する。

出撃要請が下されたらしい誘導路に近い最前列の部隊の機体が甲高いエンジン音を上げながら進み出す。

 

オレもハーネスを装着し準備を整えていると、管制塔から無線通信で呼び掛けられた。

 

 

《タワーよりボーンアロー隊へ。 ジャベリン隊の滑走路進入完了、誘導路手前で待機せよ。オーバー》

 

《ボーンアローリーダー了解。 誘導路手前で待機する》

 

 

ダリルが応答すると「ボーンアローズ」の各位にハンドシグナルで“続け”の合図を出し前進する。アリシアとキャスが並んで追従していく、すかさずオレもエンジン推力を上げタキシング。

 

誘導路手前まで進出するとダリルが再びハンドシグナルで“止マレ”を出し“最終確認セヨ”と続ける。

 

 

「航平、最終確認頼む」

 

「はいよ」

 

「動翼確認」

 

「フラップ、エルロン、ラダー、スタビレーター動作確認」

 

「エンジンとシステム確認」

 

「兵装システム、防御システム共に正常。 エンジンはトラブルシューティングでチェック済み、問題なし。いける」

 

「外はどうだ? 空曹長」

 

 

機体の外周にて整備小隊や武器小隊の整備員が隅々まで点検しているのをチェックしていた整備小隊班長の空曹長がオレの問い掛けにインカムで「問題ありません」と報告する。

 

礼を言うと班長はインカムの有線を外し、小隊の部下たちと共に次の待機している機体へと走る。

 

正面から轟音が聞こえ、視線を滑走路へ向けるとアフターバーナーを使い1機ずつ離陸を開始していくジャベリン隊。最後の機体が滑走路から離れると、無線が入る。

 

 

《ボーンアローズへ。滑走路への進入を許可する》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑.旧首都東京.東京港連絡橋“レインボーブリッジ”

side/レオナード“アルファ1”ベルツ中尉

 

 

 

 

 

 

「RPG!!!」

 

 

その叫び声が聞こえた瞬間、私はヘルメットを押さえ姿勢をより一層低くとった。

 

直後に頭上をシュッと、何かが高速で通過する音がしたと思えば背後で爆発が起こり、飛び散ってきた破片が辺りに四散する。

 

キーンッという耳鳴りにも構わず部下に大声で指示を命じる。

 

 

「コリンズ! 第1分隊を率いて左から押し上げろッ!!ヤツらを橋の中央からこちらへ絶対に通すな!」

 

「了解です!」

 

 

小隊付き軍曹であるコリンズが第1分隊の兵士を引き連れて左翼へと向かうのを確認すると後ろを振り返り次の指示を下す。

 

 

「マクファーソン!前方に制圧射撃、コリンズたちからヤツらの気を逸らせ! 第2分隊は右翼に展開!第3はこの場で応戦しろ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

軽機関銃を携行していた兵士が、乗り捨てられた自動車のボンネットに二脚(バイポッド)を立て安定させると射撃を開始。毎分700発近い発射速度で7.62mm弾を吐き出していた。

 

それに反応するように前方からも激しい銃撃が返ってきており、カンカンッと横転したハンヴィーの装甲板に当たり火花を散らす。

 

オレもハンヴィーの陰から身を出すと、手にするライフルで連続して撃ちこむ。

 

 

「クソッ! 無駄に数が多い!」

 

 

悪態を吐きながらもトリガーを引くのを止めない。

何発かの銃弾は狙った敵兵に命中した。

弾を食らった敵兵が身を仰け反らせると倒れていき遮蔽物の向こう側へ消えていった。1人減ったが、まだ敵は橋の反対側から続々と集結されつつあった。これでは埒があかない。

傍にいる無線手に指示した。

 

 

「航空部隊に無線を繋げ!支援を要請しろッ!!」

 

 

怒鳴るように言ったが、無線手は首を横に振る。

 

 

「ダメです! 敵ECMの影響で雑音のみです!」

 

 

貸せ!と、無線手から強引にレシーバーを引ったくると送信スイッチを押し大声で呼び掛けを行ってみる。

 

 

「こちら海兵隊コマンド、アルファ1! 至急航空支援を要請する!誰か聞こえるかッ!?」

 

 

銃撃音に掻き消されない程に大声で叫んだつもりだが、無線からザーッという雑音以外に何も聞こえない。

 

 

「クソッ......ダメか...!」

 

 

諦めかけようとしていたその時、一瞬だけ何かが聞こえた。

レシーバーに耳を傾けジッと聴く。

 

 

《.........ッ......とうを...》

 

 

聞こえた! そう声をあげると再び呼び掛ける。

 

 

「こちら海兵隊コマンドのベルツだ! コールサイン アルファ1。聞こえていたら応答を頼む!」

 

《......ファ1?......ちら......れん軍...》

 

《...スカイアイ......ECCMのれべ......げろ...》

 

《...ちら、国連軍所属WAWAC“スカイアイ”アルファ1どうぞ》

 

 

繋がった!

 

 

「こちらアルファ1! バカデカい橋の上で敵部隊の猛攻にあっている! 至急航空支援を......うおっ!?」

 

 

要請途中に襲う爆発に伴う激しい揺れ。

橋の中央部に爆発による火柱が上がっていた。被弾方向の先を向くた東京港の奥まで侵入している巡洋艦の姿が見え、後部主砲で此方に砲撃していた。

 

 

「敵の巡洋艦からの砲撃も受けている! 至急航空支援を要請する!オーバー」

 

《了解しましたアルファ1。そちらにCAS(近接航空支援)を向かわせます。30秒で到着予定です》

 

早期警戒管制ウィッチからの無線に応答しようとしたが、機関銃を連射していたマクファーソンの叫び声が耳に届く。

 

 

「敵戦車!! 中尉!正面にT-80です!」

 

 

顔を上げると橋の向こう側から随伴歩兵を引き連れた1両のオラーシャ製第3世代戦車T-80が路上に放置された自動車を50t近い重量で押しつぶしながら強引に進んでいた。

車体周りに爆発反応装甲をふんだんに取り付けてあり、砲塔はさながらあだ名通り「ホタテ貝」になっている。

 

第1分隊の擲弾手がライフルの下部レールに装着しているM320グレネードランチャーの40mm多目的榴弾を当てるが、砲塔側面部にパッと爆発が起きただけでT-80にとっては蚊に刺された程度しかないようだ。

 

停車し車体を安定させたT-80の砲身が照準を合わせている動きを見せた。

 

 

「来るぞ! 伏せろッ!!」

 

 

伏せたと同時にT-80の125mm滑腔砲が火を噴く。

狙われたのは第1分隊だったが、照準が甘かったらしい。若干上に逸れた砲弾はそのまま直進し、後方に置いていたハンヴィーに命中し、紙に等しい装甲を突き破り吹き飛ばした。

 

ルーフの装甲銃座に固定してあったブラウニーM2重機関銃が爆風によりオレたちのすぐ傍に飛んできた。

 

起き上がり点呼をとる。

 

 

「全員無事か!?」

 

《第1分隊負傷者なし!》

 

《第2分隊もです》

 

《第3分隊、1名敵弾により負傷しましたが、命に別条なし!》

 

「機関銃分隊も無事ですが、野郎がまたぶっ放しそうです!」

 

 

マクファーソンの言葉通り、T-80が主砲同軸機銃を乱射しながら砲身を上げ下げして照準を調整していた。

 

あの戦車をどうにかしないとな、と考えていると頭上をジェット機特有の轟音を響かせながら戦闘機が通過する。

 

無線に短いノイズが入る。

 

 

《アルファ1、こちらボーンアロー4。航空支援に来た。目標情報を頼む。オーバー》

 

 

支援に駆けつけてきたのはどうやら空賊の“死神”のようだ。

ブリッジ直上をローパスした後、巡洋艦から対空砲火を浴びせられていた。恐らく、砲撃の気を逸らせる為の行動だろう。

巧みに機体を操り機関砲のシャワーを回避する姿には圧巻された。あのような動きが出来るパイロットはどんな奴なのか、と。

暫く呆けていたが、ハッと気がつき応答する。

 

 

「WAWAC経由でそちらに空域情報を転送する」

 

 

マンパック型無線機の戦術ネットワークを利用して東京を中心とした味方部隊の位置、IP(攻撃開始イニシャル・ポイント)等のデータを送信する。

 

 

《確認。データを受信した。次を》

 

 

ここからがFAC(前線航空統制官)の腕の見せどころだ。

 

ベストもといプレートキャリアーのフロント部分に携行している小型戦術ラップトップのタッチスクリーン式液晶ディスプレイを触り、GPSと地図情報を照らし合わせる。

 

時折、T-80が主砲を発射してくるが照準が下手くそ。だが、そろそろやばいかもしれん。

 

 

「IPハマー、方位110、距離3海里、目標の標高は海抜60、目標は東京港連絡橋上にT-80 1両と随伴歩兵が多数、座標は225-300、こちらは橋の中間より有明方面へ約100、南東から進入し北西へ離脱せよ。ブレイク」

「付近には敵対空兵器の存在を認む。 こちらは赤外線レーザーで目標をマークする。オーバー」

 

《了解したアルファ1。 攻撃情報を確認、南東から進入後北西へ離脱する。味方のレーザーマーキングにて目標を指標。対地ミサイル(AGM)にて攻撃する。オーバー》

 

「了解!! 赤外線誘導ミサイルが来る! 目標にIR照射!」

 

 

部下の一人に外見が双眼鏡のような形の赤外線レーザー照射器を投げ渡し、T-80に不可視レーザーを照射する。

 

 

「レーザー・オン、確認しろ!」

 

《確認。南東からアプローチ......スタンバイ......、対地ミサイル発射(ライフル)

 

 

後方の空を見やると、死神機からミサイルが離れたのが見えた。

音速で迫るミサイルは姿勢を制御しながら向かってくる。

そのシーカーが捉えるのはマーキングされたT-80。

 

 

「ミサイルが来る! 全員伏せろ────!!!」

 

 

ミサイルに気づいたらしい敵兵の叫び声や戦車の移動音が聞こえるが、もう遅い。

 

頭上を越え、レーザーが指示した目標へと突き進むミサイルは正確に命中し、辺りに紅蓮の炎を撒き散らす。衝撃波によりハンヴィーがギシギシ、と揺れ動く。命中時に起きた弾頭起爆により周囲にいた随伴歩兵は黒こげとなり人間“だった物”へとなり果て、戦車は側面部を抉られた衝撃で内部の砲弾が誘爆、分厚い装甲に覆われた砲塔が吹き飛び宙を舞った。

 

暫くして、辺りに煙が立ち込めている中、恐る恐るミサイルが着弾した位置を見ると、T-80の残骸が燃えていた。周りの兵士たちの姿が見えない。跡形も無く吹き飛ばされたのだろう。

 

すると、無線から敵を葬った“死神”の声が聞こえた。

 

 

《アルファ1、こちらボーンアロー4。状況は? 爆撃効果判定(BDA)を頼む。オーバー》

 

 

足下に転がるレシーバーを手に取り、スイッチを押す。

 

 

「こちらアルファ1。BDAは100パーセント、橋の上にいた敵戦車は大破、随伴歩兵も一掃された。支援に感謝する」

 

《了解アルファ1。他が支援を要請している為ここを離れる。地上はそちらに任せた、支援が必要ならばまた呼んでくれ。アウト》

 

 

橋の頭上を通過する際に機体を左右に振り、都心方面へ飛んでいった。部下たちが歓声を上げる中、歩み寄ってきたコリンズが死神を見つめながら口を開く。

 

 

「死神マーク......ですか。アレには取り憑かれたくないですね」

 

 

それに対しオレはコリンズに言う。

 

 

「いや、違うな。あの死神マークが見えてる......其処は安全地帯だ。忘れるな、お前の上にはいつもあの機体がいることを」

 

「...了解!」

 

 

その後、オレは隊を纏めると撃破した戦車の向こう側へと車を走らせ東京都心へと向かう。

 

より激しい戦いが待ち受けているかもしれんが、オレたちにはあの“死神”がついている。たとえ苦戦していても、ヤツが自慢の鎌で凪払ってくれるだろう。

 

オレたちの上にヤツがいる限り、負ける気はしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧首都東京.上空.1730hrs.side/新城“リーパー”久幸

 

 

 

 

 

東京都内上空を飛行するF-15E。

交通機関の路上やビルの屋上に設置された対空機関砲の火線を躱しつつ、味方地上部隊の障害となっている敵装甲車や戦車等を優先的に叩いていたオレと航平。

 

航平が捕捉した敵戦車を目標指示ポッドでマーキングした後、ビルの合間を駆け抜けるようにアプローチしたオレがスティックのトリガーを引く。

 

ランチャーに搭載されているAGM-65“マベリック”空対地ミサイルが放たれ、狙った敵戦車に命中した。

 

 

『目標に命中っと。車体ごとひっくり返ったぜ?』

 

「よし、次を探してくれ」

 

『はいよ』

 

 

航平がレーダー走査、ポッドによる索敵を行う。

時折、敵兵の携行式地対空ミサイルの発射を知らせる警報音がイヤフォンに響くが、途中で途切れる。たぶん、ビルの合間から発射した為にミサイルが発射後直ぐに建物に激突している。

 

開けた場所から撃てばいいのだが......な。

 

 

『見っけた。東京タワーの近く、301号線に3両の敵戦車』

 

「縦隊か?」

 

『あぁ。ドン亀なみにおそ......っと、芝公園にも6両いやがる』

 

「AGMはもう無い。 SDBⅡで片付けるしかないな」

 

『だな。じゃあ縦隊してるヤツらを第1目標、と』

 

 

新橋駅上空を通過すると日比谷公園上空で旋回する。

北北東から進入しSDBを投下、南南西方向へ離脱する案を航平に伝えると緩やかに上昇し投下態勢に入る。

 

航平から準備完了の知らせを受ける。

 

 

『目標指示。SDBⅡ投下準備OK』

 

「了解。SDBⅡ、1個投下」

 

 

下部兵装ステーションから小直径爆弾、SDBⅡを投下。

機体から離れると直ぐに展張式の滑空翼が広がり、誘導されつつ落下されていく。SDBⅡ自体はこのような近距離だけで使用する爆弾ではない。

高度から投下された場合、最大で60ノーティカルマイル、実に110km以上を飛翔する事が可能であり、半数必中界(CEP)も3m以内、極めて優れた精密誘導兵器だ。

 

弾頭のトライモード・シーカーが起動すると目標に向かって最終アプローチに移り、着弾。900kg級に匹敵する十数kgのトリトナル炸薬により中央の戦車だけではなく、前後も行動不能にした。

 

フライパス後に効果判定を確認する。

 

 

『1両大破炎上、2両は中破。あれじゃ動けないだろう』

 

「ナイス“アイドラー”」

 

『普通だよ普通、キャッ......じゃなくて“リーパー”』

 

「お前なら“キャッスル”のままでもいいぞ?」

 

『そうか?ならいいが......“キャッスル”3o'clock』

 

 

早速昔のTACネームで呼ぶ相棒に言われ、3時方向を向く。

視界に映ったのは、此方に横に滑るように接近してくるアリシアとキャスの2人だ。

東京湾上空で散開したボーンアローズは1、2、3、つまりダリル、アリシア、キャスの3人は城東クレーター上空の敵航空部隊の迎撃に向かっていた。合流してきたとなれば、クレーター上空の敵部隊は壊滅状態だろう。

 

アリシアから無線が入る。

 

 

《やっほー“リーパー”》

 

「そっちはどうだった? “オメガ”」

 

《8機よ!》

 

 

短く答えると、指でVと出しはにかむアリシア。

なるほど8機撃墜か。やるな。

キャスにも同じく聞いてみると《11機》と、なんてことないと言った感じで答える。......すげぇな、おい。

まぁ、アリシアのようにアサルトライフルを使うわけじゃないもんな、と、彼女が抱える“デカ物”を一瞥する。

 

 

ディレル NTW-20

 

 

南アフリカで開発された20mmX82弾を使用するボルトアクション式の対物狙撃銃(アンチ・マテリアル・ライフル)だ。

全長が約1800mm、本体と弾薬を合わせた重量は約30kgにもなり、リベリオンの50口径対物狙撃銃ブレットM107の重量の2倍と言うヘビー級狙撃銃である。

 

これだけのスペックを見れば反動は凄いものになっているだろうが、NTW-20の銃床(ストック)内には油気圧、空気圧を合わせたショック・アブソーバー(所謂衝撃を吸収・緩衝を果たす装置)があり、発射時の反動を半分抑える事が可能と言われている。

並の人間が扱えば、絶対に肩がイカれそう。

 

それを無表情で平然と撃つキャスは......どうなっているんだ?

 

 

「毎度毎度、キャスには色々と脱帽するよ。ホント」

 

『俺も同感だわ』

 

《......だね》

 

 

3人がうんうん、と頷く中かキャスは頭の上に?を浮かべるような仕草をしていた。

 

 

《お前ら何やってんだ?》

 

《あ、“ヴァイパー”》

 

 

オレたちの編隊に下から上昇してきたダリルが割り込むように加わり、合流した。

 

 

『“ヴァイパー”お疲れさんっと!』

 

 

パシャっとシャッター音が鳴った。

航平が機内に持参してきた一眼レフで撮影したんだろう。てか、いつの間に持ち込んだんだ?抜け目のないやつだ。

 

航平に撮られたダリルは何だか不満そうな表情になる。

 

 

《......せめて、基地に帰った後にだなぁ......》

 

《“ヴァイパー”は汗かいた自分を撮られるのが嫌だからね~》

 

『ほほう?』

 

《誰がんな事言えって言った。それと“アイドラー”お前r》

 

 

ダリルが話している途中、“スカイアイ”から無線が入った。

 

 

《こちら“スカイアイ”。ボーンアロー隊へ、応答を》

 

 

“スカイアイ”からのを“ヴァイパー”がインカムに手をやる。

 

 

《こちらボーンアロー1、どうぞ》

 

《敵勢力の一部が撤退を始めたわ。現在、敵地上部隊及び航空部隊は新宿方面へ集結しつつある状況よ》

 

《ボーンアロー隊は先行しているリッジバックス隊と合流し、残存部隊の追撃を行ってください》

 

 

“リッジバックス隊と”の指令が下された瞬間、ダリルやアリシアが表情を変えるが、仕方がない、とダリルが観念する。

 

 

《了解“スカイアイ”。直ぐに向かう。オーバー》

 

 

ダリルがハンドシグナルで“ゴー”の合図を出すと、全員がエンジン推力を上げ新宿上空へと目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新宿.上空.side/永瀬“エッジ”恵

 

 

 

 

「捉えた!“エッジ”、FOX2!!」

 

 

HMDで敵機をロックオンすると、視程内射程(WVR)空対空誘導弾の発射符丁を言う。

 

VCM(音声入力モード)により指令信号を受けたASF-X“震電Ⅱ”多用途戦闘脚(スウィングロール・ストライカーユニット)の前部魔導兵器倉(ウェポンベイ)の扉が開き、姿を現す「必殺の矢」と恐れられる19式空対空誘導弾(AAM-7)

 

兵器倉から飛び出すように発射されたAAM-7の多素子シーカーが、主人(永瀬)が狙った標的の放つ熱をその目に焼き付け、音速の3倍で追いつき“喰らいついた”。

 

誘導弾に“直撃された”敵機は運動エネルギーに耐えきれずに粉砕、撃墜される。

 

 

「こちら“エッジ”1機撃墜」

 

 

私が隊長(スラッシュ)に報告すると相手からも短い応答が返ってきた。

 

 

《“エッジ” 9時下方(ナイン・オクロックロー)2機、任せた》

 

「“エッジ”了解(ウィルコ)

 

 

“スラッシュ”から指示を受けた私は直ぐに行動を起こす。

 

半ロールするとそのまま下方へと降下を開始し、途中で態勢を整える。エレメントで500m程下を飛行していた敵機の1機に対し89式小銃を構えると発砲する。

 

主翼の付け根部を狙った5.56mm弾が命中する。魔力強化された弾丸は機関砲弾が当たったかのような穴を穿ち片翼が引きちぎられたように吹き飛び、敵機は錐揉みしながら墜落してゆく。

 

僚機を落とされた事で私に気づいたもう1機がブレイクするが、回避方向を先読みし射撃すると敵機の胴体中央からエンジン部にかけて被弾し炎を上げる。

 

パイロットは私の火線から逃れようと回避を続けていたが、燃え上がる機体をどうする事も出来ず、爆発四散した。

 

......脱出すれば良かったのに、と呟いた。

 

撃墜したことで、とりあえず“スラッシュ”に報告しようとヘッドセットに手を伸ばした瞬間、埋め込み式の赤外線合成開口システム(IR-SAS)から脅威情報がHMDに投影された。

 

 

「っ!」

 

 

咄嗟に魔導エンジンの出力を絞り、高度がガクッと落ちる。

 

後方から迫っていた敵機が放った機関砲弾が頭上を掠め、機体が高速で駆け抜けていった。敵のパイロットは私が視界から消えたように見えただろう。

 

エンジン推力を上げ、追い越した敵機の背後に難なく食いつくと小銃のバースト射撃を敢行、コックピットを貫いた弾丸が致命的となった。撃ち抜かれたキャノピーは真っ赤に染まっていたからだ。惨状は容易に想像出来る。

 

 

「......ふぅ...」

 

『“スラッシュ”より“エッジ”へ』

 

 

呼吸を整えていると“スラッシュ”から無線が入ってきた。

言葉に妙な苛立ちさを感じた。何があったのだろうか?

 

 

「こちら“エッジ”、“スラッシュ”どうぞ」

 

『空賊の連中が応援に来た。ペースを上げるぞ』

 

 

リンク16経由で得られた情報をHMVでスクロールさせる。

なるほど。彼女の不機嫌の理由は彼女達ね。1名、男だが。

 

視線の先には幾つもの死の花が咲き乱れ、戦闘機同士が雲を引き、互いに勝利を目指し譲り合えない戦いを繰り広げている。その中には件の空賊部隊も乱入していた。

 

「彼」の機体もその中に混じり、洗練された動きで射線を躱しつつ相手の隙を見ては逃さず食らいつき、機銃の短連射で仕留めていた。

 

私も彼に負けないように戦う。

そう思っていると“スラッシュ”から応答を催促する無線が入った為、無線で応えると編隊に合流する向きをとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1800hrs.side/新城“リーパー”久幸

 

 

 

 

 

トリガーを引くと、ストライク・イーグルの固定武装であるM61バルカン砲が火を噴き、前方を飛ぶ敵機を20mm徹甲弾が穴だらけにさせ吹き飛ぶ。

 

最大で毎分6000発(秒間100発)を誇る多銃身機関砲だが、搭載出来る携行弾数は500発ちょいのみ。連射すれば直ぐに弾切れになる為、短連射を繰り返すしかない。

 

 

『3機目! やったな』

 

 

航平が歓喜の声で呼び掛ける。

 

「あぁ、だが、まだアイツらに到底追いつけていねぇが」

 

アイツらとはもちろん他のボーンアローズの面々だ。

周囲で敵機と交戦する彼女達の空戦技能には驚嘆される。

ダリルでは敵機を撃墜した後直ぐに敵機を捕捉、撃墜するに至るまで早ければものの20秒も掛からなかったぐらいだ。

 

『アイツらはウィッチで、通常戦闘機では出来ない動きが出来るとは言え......ありゃ凄いの一言に限るぜ』

 

「だな......ん?」

 

一部ECMの影響を受けていたレーダーがクリアになった。

味方が電子戦機を撃墜したのだろうか、はたまた燃料切れか?

すると“スカイアイ”から無線連絡が届く。

 

 

《こちら“スカイアイ”。敵勢力の一定数排除を確認しました》

 

《ふいーぶっちぎりじゃないの?私たち》

 

 

アリシアがそう言った後だ。

“スカイアイ”からの驚愕の情報が舞い込んできたのは。

 

 

《......え?そんな...ジャミングで気づかなかったとはいえ...》

 

《“スカイアイ”どうした?》

 

 

明らかに動揺している“スカイアイ”に厚木基地の管制ルームにて戦況確認をしているグッドフェローが無線越しに問う。

 

 

《......上空に巨大な機影を確認!敵重巡航管制機と思われます!》

 

「なっ!?」

 

 

“それ”は新宿上空でもはっきりと見えていた。

 

大田クレーター上空を悠々と飛行する巨大な鉄の塊。

横に広げた翼は推定でも数百mはある。その姿はまるで空という海を漂う巨大なエイにも見える。バカデカい......。

 

 

『あんなデカブツが空を飛べるなんて、SFの世界だけだろ...』

 

 

航平が半分圧巻半分呆れたような口調で言ったその台詞は、あの巨鳥を見る誰もが思った事を代弁してくれていた。

 

あんな図体だけが取り柄のような化物が空を飛べる事自体がおかしいのだ。あれを作ったヤツは相当なバカか頭のイカれた軍需関係者だろう。

 

皆がその巨鳥を見つめるなか、敵に動きがあった。

 

巨鳥の後ろから何かが飛び出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────ゲイマー機“カーミラ”の発艦を確認─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を凝らし、それがウィッチだと分かったのは其奴がロールしながら降下してきたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────カウントダウン開始 残り300秒─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時は知らなかった。

 

 

ヤツが......“蝶”と言う使い魔を引き連れた......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────フフッ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────“吸血鬼”だということを......。




皆さん、どうもフェネックです。


キャンペーンでの第5ミッション「極東戦線」です。
字数が1万を超えたのはこの作品で初かもで、まさか超えるとは思いませんでした(苦笑)

カーミラ。
無邪気なように見えてその実は薔薇を狩る女吸血鬼。
彼女は一体?ですね。

それと、こんな駄文な作品をお読みになってくれた読者の皆様へ。

UAが5000を超え、お気に入りは25になりました。

本当にありがとうございます。
これからも皆さんの為に奮励努力して小説を作り上げていきたいと思います。

それでは、次回。

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