ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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昔、欧州には女性の血を吸う吸血鬼がいたそうだ。


其奴の名は「カーミラ」


薔薇(女)殺しの異名を持つ彼女は美女の血を飲み、永遠の時を生き長らえるそうだ。


その甘美な血を飲み続ける限り......永遠に


#11 蝶使い-Butterfly Master-

2019年.8月10日.1800hrs

扶桑.旧首都東京.大田クレーター上空.side/???

 

 

 

 

 

 

 

 

《“カーミラ”及び“クオックス”の発艦準備完了》

 

 

HMDのバイザーに映し出されたのは茜色の空。

いつもの青空とは、また違ったその景色を少しの間だけ堪能していると、航空管制所の管制官から無線連絡がイヤフォンに響く。

 

《“ゲイマー”へ。戦況は我が軍に不利な状況であり撤退戦の最中だ。味方部隊からの支援は無いと思ってくれ》

 

『最初っから要らないよそんなの。楽しくないじゃない?』

 

私がそういう風に言い返すと管制官は何も言わない。

まっ、私がこんな性格だし、あちらさんも上からの指示でやむなくと言った感じで私の乗艦を許可したぐらいだし。こういう反応をされても仕方がない。

 

でも、現状は私の存在が必要不可欠、なんだよねぇ。

 

 

《......例の試験評価も重要だが、同時に味方部隊の撤退を援護してくれればそれでいい。好きにやって構わない。以上だ》

 

 

無愛想だなぁ。

まっ、私の所為なんだけどね! 気にする必要もなし。

 

それで管制官とのやりとりを終了させると、装着しているヘッドセットや両足に履いているストライカーユニットの具合を確認。うん、今日もいい調子。

 

さて、と呟くとだだっ広い飛行甲板をゆるゆると進み、定位置へと来ると発艦に備える。洋上を進む航空母艦とはまったく異なる離発着艦を要求されるこの「空中空母」に乗るベテランは少ない。この飛行甲板だって、私と後ろに控える無人機以外誰もいない。当たり前だけど。風で吹き飛ばされそうな飛行甲板には誰も行きたくはないよね。

 

 

『じゃあ、行ってきまーす!』

 

 

魔導エンジンの推力を一気に上げる。

艦前方、彼女にしてみれば後方から吹き付ける風の影響もあり勢いよく艦尾から飛び出した。

 

瞬時に身体全体で感じる浮遊感、匂い、温度。のどれもが“まるでその場にいる”ような臨場感を引き出していた。

 

 

《ゲイマー機“カーミラ”の発艦を確認》

 

 

発艦して直ぐバイザーに周辺空域の情報がアップされる。

リアルタイムで更新される情報には友軍の撤退状況や敵さんの位置情報等があった。あちゃー完全に負けてるじゃないコレ。

 

頼りないなぁ......ま、邪魔にならないならいいか。

 

下方を見やると敵さんの航空部隊の姿が視界に入る。

精査された脅威情報によれば大半が国連軍所属の飛行部隊っぽいわね。どんな動きを見せてくれるのか、楽しみ。

 

手持ちのライフルのセーフティーを解除すると、前に倒れるように下を向きロールしながら急降下を開始する。視界が湾の海面だけになりそうなくらいまで降下するとハイGで一気にピッチアップを行い海面すれすれを飛行する。

 

システムのリンク完了の文字がバイザーに映し出されたから後方を一瞥、後ろをぴったりとコウモリのような外観の無人機が6機追従している。

 

 

《カウントダウン開始。残り300秒》

 

 

先ほどの管制官とは違う無機質な声がイヤフォンから聞こえると、無人機の2機を頭上の母艦の護衛に回す。

 

 

『さぁ、パーティーを始めましょう』♪

 

 

最大推力状態で突き上げる私。

それに追従する無人機。

前方で私の様子を窺っている国連軍部隊。

 

東京上空という舞台を用意された“蝶”の舞いに彼らがどんな表情をするのか......

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しみで仕方がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻.side/新城“リーパー”久幸

 

 

 

 

あの巨鳥(空中空母)から降りてきたのは1人の航空ウィッチ。

その後を追うように4機のUAVの姿が見えた。そのUAVには見覚えがあった。以前東京で交戦した扶桑とリベリオンが共同開発した多用途UAV、MQ-90“クオックス”だ。

 

《こちら“オメガ”あのUAV前に見たやつだ》ね

 

あの日、オレと一緒に迎撃していたアリシアが言う。

だが、あの時とは違いレーダーでははっきりと映っていた。あのウィッチの方は映っていない。ステルス戦闘脚なのか?

 

だが、“クオックス”もステルスだ。

それなのに何故、と考えていると“クオックス”の胴体上に先端部がレンズのようになっている箱状の物がアダプターのようなもので接続されているのが見える。恐らくアレがステルス性を損なわせているのだろうが、アレは何なんだ?

 

《「蝶」のエンブレム?》

 

隣を飛ぶダリルが正面から迫るウィッチのユニットに描かれている“蝶”のエンブレムに気づき呟く。

 

互いに距離が詰まってくると、オレたちの前方を飛ぶジャベリンとセイバー隊の戦闘機が視程外射程空対空ミサイル(BVR-AAM)による先制攻撃をする。

 

5機の敵機に対し10発近いミサイルだ。

 

だが、“蝶”のエンブレムのウィッチは回避行動すら取らずに直進を続ける。何だ?ただ撃墜されに来ただけかと考えた。

 

すると、後方を飛んでいた“クオックス”が彼女の上下左右を囲むように展開したと同時だった。

 

 

 

眩い紅い閃光が煌めく。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

UAVから放たれたその紅い光線がまるで騎士が剣を振るうかのようにミサイルを撃墜していく。

 

《何だ......? ガッ!》

 

《何が起こった!?》

 

“クオックス”がミサイルを全て撃ち落とすと、“蝶”のエンブレムと共に直進し、こちらへと高速で向かってくる。

 

《ブレイクッ!!!》

 

ジャベリンとセイバーの戦闘機をその紅い光線で凪払いながら迫って来る敵。

ダリルが瞬時に指示を出し、一斉にブレイクするボーンアローズとリッジバックスの面々。

 

《何なんだよあれ!?》

 

《アレは......レーザー兵器?!》

 

各々があのUAVの武装に驚愕する。

 

回避飛行する間様子を窺っていたが、永瀬の言う通り“クオックス”が搭載するあの装置は指向性エネルギー兵器(D E W)の類であるレーザー兵器だと思われる。

 

現代に於いてDEW自体は差ほど珍しくは無いが、実用化されているのは水上艦や陸上車両など比較的安定したプラットフォームであり、約100キロワット級出力の不可視レーザーだ。

 

あのようなネウロイと同じ可視光で戦闘機クラスの飛翔体を一瞬で撃墜出来る領域ではないのだ。

 

《UAVがレーザー兵器を背負ってやがる!》

 

《あのUAVに気をつけろ!》

 

とは言ったものの......!

 

ジャベリン、セイバーの両隊を壊滅させた敵編隊にミサイルを撃ち込むが片っ端から、あのレーザーに撃墜されてゆき、まったく本体には届いていない。

 

《それに、遠隔操作にしてはあまりにも高性能な攻撃だ》

 

付近で観測用UAVから確認しているであろうグッドフェローの言葉には同感だ。

 

とても、あの日の東京上空で見せた動きとはまったく桁の違う高機動で飛行し、ほぼ直角で旋回している。

だが、その運動性能の良さは“クオックス”が元々備えていたものだ。

2年前の支援戦闘機F-2相手に行われた異機種間戦闘訓練(D A C T)で出された撃墜対被撃墜率(キルレシオ)1対7の実績がある。

 

《オレの直感では、あの人喰い蝶々の親玉はあのウィッチだ》

 

《“蝶使い”か》

 

この時グッドフェローが呼んだこの名が以後、彼女のコードネームとして定着した。

 

ミサイルがダメだと判断したボーンアローズおよびリッジバックスは手持ちの銃火器で応戦し、互いに互いの尻尾を追い掛け合うドッグファイトへ持ち込むが“クオックス”だけではなく“蝶使い”の方も未確認のストライカーユニットの運動性能が高く、それを駆使した動きでオレたちを翻弄する。

 

ヘッドオンした時、試しにサイドワインダー1発を発射したが、やはり“クオックス”のレーザーが煌めき、一瞬で撃墜された。

 

 

《ダメだ!“蝶使い”にミサイルを撃っても全部あのUAVに撃墜される!》

 

《まったく......バリアなの!?完全にSFアニメじゃない!!ごほっごほっ......!叫び過ぎて喉枯れそう》

 

 

アリシアの悲痛な叫び声が無線で響く。

直後に状況判断したダリルが指示を出す。

 

《散れ!! 1機ずつUAVを優先的に叩け!》

 

ダリルがハンドシグナルを併用しながら下すとアリシアとキャスが別れ、オレも背面降下から一転して上昇に転じた。

 

相変わらず「リッジバックス」のウィッチたちは編隊を崩さずに共同で攻撃を仕掛けていたが、オレたちの動きに合わせたように“蝶使い”と“クオックス”が散開した。こちらにとっては好都合だ。密集陣形による互いの死角をカバーするレーザー迎撃をされる確率が減った為だ。

 

仕掛けるなら今だ、とばかりに速度を上げ“クオックス”の1機を追尾する。

 

『後方は任せろ“キャッスル”。やってやれ!!』

 

「あぁ!」

 

301時代を思い出されるこの感覚に自然と笑みが浮かぶ。

 

HMDで捉えた旋回途中の“クオックス”。

単体で行動中のコイツにミサイルを撃ち込んでも、恐らくあの超機動で回避されるか、迎撃されるの2択しかない。

 

だが、いくら運動性能が高いとは言え、弱点はある。オレは一つ掴んだ事があった。

“クオックス”は確かに高機動による空戦が凄いが、ミサイルを回避するハイG旋回時に一種だけ速度が落ちる。そこを狙う。

 

直ぐに行動に移ったオレはわざと“クオックス”をロックオンし、こちらがミサイルを撃つかのように仕掛けた。

 

結果はこちらの思惑通り。

背後のオレからロック警報を貰った“クオックス”がハイG旋回による急激な動きを行い、一気に速度が落ちる。

 

「今だッ!!」

 

ガンに切り替えトリガーを引く。

唸るようにバルカン砲が火を噴き20mm弾を浴びせる。

減速し無防備な背中を見せていた“クオックス”の機首から後方エンジンノズルまで機関砲弾が襲い穴を穿つと、機能を停止させる。機体は海面へ向かって墜ちていった。

 

『グッドキルッ!!』

 

「“リーパー”よりボーンアローズ、“クオックス”はハイGターン後の動きが鈍る。ミサイルのロックオンでビビらせろ!」

 

《了解“リーパー”よくやった》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side/永瀬“エッジ”ケイ

 

 

《UAV1機撃墜。ヤったのは空賊の“死神”っぽい》

 

隊の3番機を務める“フェンサー”から報告が入る。

直後にイヤフォンに誰かの舌打ちが鳴った。誰が、とは聞かない、此方に飛び火しそうで恐いからだ。

 

《あ、今度はあのスナイパーが墜としたよ? 美紀》

 

《作戦行動中はコールサインかTACで呼べと言ったはずだぞ“フェンサー” ......“アックスレディ”報告を》

 

“フェンサー”が名前を呼んだ事で咎めながらも気を取り直した“スラッシュ”が戦闘しつつ解析をしていた4番機に問う。

 

《やはりあのウィッチ......以降“蝶使い”と呼称しますが、彼女のストライカーユニットは“ファンダンス”に間違いないかと》

 

《やはりか》

 

「ファンダンス」。

そう呼ばれるユニットを、私は一度だけ見ている。

2年前の羽田沖で......あのユニットを履いたウィッチを。

 

あの日の出来事が一瞬頭をよぎる。

 

《情報によれば「ファンダンス」はダキアで開発されたユニットで運動性能は高く、上部に2箇所ある兵器倉には未確認兵器が搭載されているようですが、現時点では不明なままです》

 

“アックスレディ”が報告を終えると“スラッシュ”が何を思ったのか、私を見る。

 

《“エッジ”腕がうずくか?》

 

「えっ? あ、はい......あ、いいえ!」

 

あの“スラッシュ”から突然そんな事を言われて頷いてしまい、慌てて訂正する。

 

《これより各々自由戦闘に入れ。リッジバックスの腕はこんなもんじゃないはずだ》

 

今彼女は何て言った?

“各々自由戦闘に入れ”って、そんな言葉を聞いた事がない私は思わず“スラッシュ”を凝視した。

 

《偉そうに説教垂れた空賊連中に見せつけてやるぞ!》

 

あの“スラッシュ”が口元に笑みを作りそう宣言した。

第19飛行隊内で国連軍派遣部隊として編成されて知り合って以来、“スラッシュ”が笑うとこを見たことがない私は呆然として見つめていたが、その言葉の意味を理解したことで私自身も笑顔で答えた。

 

「“エッジ”了解!!」

 

《“フェンサー”了解よ!》

 

《“アックスレディ”了解!》

 

 

《リッジバックス隊、ブレイクッ!!》

 

 

その合図を受け、私たちは一斉に散開した。

 

私たちの“猟犬(リッジバックス)”の牙が伊達ではないことを示す為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾.1812hrs.ミサイル駆逐艦「りょうかみ」艦内

 

 

 

久幸たち航空部隊が“蝶使い”を相手に苦戦している中、扶桑国防海軍駆逐艦「りょうかみ」は品川埠頭近辺の海上で停船し、大田クレーター上空から都心へと飛行を続ける敵重巡航管制機に対し艦対空誘導弾による攻撃を実施していたが、

 

「誘導弾全6発、目標“フォックストロット”手前にて撃墜されました! やはり、目標下方のUCAV(ユーキャブ)が誘導弾を迎撃しています」

 

電測員の報告に艦長の遊橋は周りに聞かれないよう小さい声で悪態を吐いた。

 

東京湾突入と同時に対空戦闘を開始した「りょうかみ」は新宿区上空の敵残存航空部隊にESSM(発展型シー・スパローミサイル)で対処していたが、遊橋が目標を接近する敵重巡航管制機に移行し対応した。

 

だが、発射された誘導弾は目標の下をまるで小判鮫のように離れない“クオックス”2機が例のレーザーで撃墜したのだ。

 

たった今発射された第二波も命中ならず。

 

次に遊橋が命じたのは「りょうかみ」に装備された砲熕兵器である主砲による対空戦だ。

 

「主砲射撃用意。上空の目標へ指向」

 

「了解! 主砲スタンバイ。上空の目標へ指向!」

 

遊橋の指令を砲雷長が応じると持ち場の部下に指示を出した。

射撃管制担当が目標情報を入力すると準備完了を知らせた。

 

「主砲、撃ちぃ方始めぇ」

 

「撃ちぃ方始めぇ!」

 

射撃担当員がピストル型の射撃装置のトリガーを引くと、旋回し仰角をとったOTOメルル社製64口径127mm単装速射砲が発砲を開始。改良された砲は自動装填機構により毎分40発近い発射レートで対空用砲弾を打ち上げる。

 

まだかまだか、と舌なめずりしていた主砲が待っていました、とばかりに自慢の速射性能を見せつける。

“クオックス”の迎撃を振り切った砲弾を重巡航管制機に次々と命中させていくが、あっという間に即応弾を撃ち尽くしてしまう。

 

次の砲弾を備え付けたドラムがセットされる前に“クオックス”に先手を取らせてしまった。

 

「......ッ、 トラックナンバー505、降下してきます!」

 

その直後、ズズンッという爆発音が聞こえ軽く震動した。

 

「艦尾上甲板発着スペース及びヘリ格納庫被弾!」

 

1機の“クオックス”が少し高度を下げたと同時にレーザーを照射し「りょうかみ」の艦尾上甲板を直撃したのだ。

レーザーはそのまま設けられていたヘリ発着用飛行甲板から格納庫までゆき、格納されていたSH-90Jを吹き飛ばした。

 

ディスプレイの一つに表示された艦全体の状態図にはヘリ甲板と格納庫、それと格納庫上部に設置されていたCIWSも巻き込まれたらしく、赤い点滅を繰り返していた。

 

「被弾箇所にダメコン対応。対空戦を継続。主砲の対空砲弾給弾急げ!」

 

遊橋が冷静に指示を下すなか、電測員が告げる。

 

「トラックナンバー505、再度接近してきます!!」

 

「前部CIWS、接近中の目標へ指向、射撃を許可!」

 

「CIWS、AAWオートッ!!」

 

再び攻撃態勢に移っていた“クオックス”に対し艦橋前部にあるCIWS(近接迎撃機関砲)こと20mm対空機関砲が火を噴く。

元が航空機搭載用の6砲身ガトリング砲から秒間50発のレートで弾幕を張るが、信じがたい高速機動で追い撃ちになってしまう。

 

それでも“クオックス”を追い払うことに成功する。

 

「あの無人機がいる限り本命に手が出せない......頼むぞ」

 

CIC内のディスプレイに映し出された艦上空の空戦模様を見ている遊橋がそう頼むように呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京上空.side/新城“リーパー”久幸

 

 

 

《おい、空賊ルーキー。“リーパー”だったか?》

 

アリシアが上手く誘導した“クオックス”をキャスがNTW-20を用いた狙撃で撃墜して直ぐのことだった。

 

リッジバックスの“スラッシュ”から無線が入った。

 

 

「こちら“リーパー”どうした?」

 

 

妙に言葉の中に含み笑いを感じる、何だ?

 

《あの“蝶使い”を墜とした方が勝ち、でいいな?》

 

突然持ち掛けられる勝負。

......驚いた。堅物からそんな提案をされるとはな。

 

 

《このあいだ(ストーンヘンジ破壊)の借りを返す》

 

 

彼女たちが対等な勝負をしようと言うのだ。

断る理由は、ない。

 

「いいぜ“スラッシュ”アレを墜とした方が勝ち、か。早い者勝ちだぜ?」

 

《あぁ。それで構わない》

 

リッジバックスのウィッチたちが散開して戦闘に突っ込むと、個々に自由戦闘を開始した。

 

『こりゃあ、負けられないな』

 

後ろで航平が言う。

 

 

「“リーパー”より“ヴァイパー”聞いたか?」

 

《バッチリ聞いた。面白そうじゃないか。っと!》

 

 

“クオックス”に追尾されていたダリルが機銃を巧みに躱すと、エンジン推力をカットして一気に減速して相手を追い越させるオーバーシュートを行った。

 

旧式のMiG-21ストライカーを使用した動きじゃない。

 

対応出来ずにダリルを追い越した“クオックス”に彼女がM240機関銃を構え連射し、多数の命中弾を喰らった“クオックス”が空中に爆発の華を咲かせた。

 

『ヒュー!ヴァイパー”やるねぇ!』

 

“ヴァイパー”が撃墜したと同時にもう一つ爆発が起きた。

見れば“スラッシュ”が爆煙から飛び出していた。4機目を仕留めたのだろう。

 

 

《UAV1機撃墜!次行くぞ》

 

《凄い......》

 

 

勢いつけた“スラッシュ”が少し高い位置で見下ろしていた“蝶使い”へ目掛けて急上昇を開始、89式小銃の銃口を向ける。

 

反応した“蝶使い”は降下する。

“スラッシュ”が89式の単射で狙うが、相手はクルリとロールで躱す。“蝶使い”の方はライフルを構えていない。彼女のライフルは腰部のアダプターに装着されていた。

ひらひら、と回避する彼女からは“スラッシュ”相手に銃など要らないと言っているようにも見える。

 

一瞬だけ“蝶使い”が頭上を見上げる動作をした。

 

俺がその視線を追うと、あの重巡航管制機の下方から2機の“クオックス”が一直線に降下してきていた。

 

「“スラッシュ”! 上空から“クオックス”が2機来る!!」

 

《新手か......本体ごと片付ける!》

 

“クオックス”が2機、“スラッシュ”の後方に張り付く。

 

“蝶使い”の上昇に、後を追う“スラッシュ”。

“スラッシュ”を追尾する“クオックス”はレーザーを撃たない。射線上に主である“蝶使い”が重なるからだろう。

だが、いつまでも安全なわけがない。

それに“スラッシュ”だけが突出し過ぎていた。

 

永瀬も“スラッシュ”に警告していた。

 

 

《“スラッシュ”踏み込み過ぎです!》

 

《なに......ん?》

 

 

“スラッシュ”の隙をついた“蝶使い”が動いた。

“蝶使い”が急上昇から正面に倒れ込むように落下する機動「釣鐘(コロコル)」と呼ばれるものだ。別名「テイルスライド」。

咄嗟の動きに“スラッシュ”はついていけなかった。

 

まんまと“蝶使い”の策に嵌まった“スラッシュ”に対し“クオックス”がレーザーを照射。片足のストライカーユニットの主翼を吹き飛ばした。

 

《クソッ! 主翼が......!》

 

片翼を失いバランスを崩した“スラッシュ”は上昇から転じて水平飛行に移ったが、ふらふらと飛行するしか出来ずに次第に高度を失ってゆく。

 

 

 

《掛かった♪》

 

 

 

突然イヤフォンから聞こえた少女の声。

嬉々とした声色で一瞬出た声に誰だ?と思っていたが、リッジバックスのウィッチたちが“スラッシュ”の援護に向かってるのを見て、接近していた“クオックス”にガンの短連射を放ち、追い払う。

 

永瀬が“スラッシュ”に呼び掛けていた。

 

 

《“スラッシュ”空域から離脱出来ますか?》

 

《いや厚木まで保ちそうにない。下に降りる》

 

 

眼下の東京湾には国防海軍の駆逐艦が1隻、埠頭の近くで停船しているのが見える。あの艦に下りるのだろう。

 

《“エッジ”後を頼む。全員を連れて帰ってくれ》

 

被弾している右ユニットはエンジンにも損害が及んだらしく、黒煙が出ていた。

 

《了解です。早く離脱を》

 

《“リーパー”またな。“スラッシュ”離脱する》

 

そう言って翼を翻し黒煙を引きながら降下していく。

今回の勝負はノーカンにしてやるよ“スラッシュ”。

 

《こちら“エッジ”ウィッチ1名離脱、湾内の味方駆逐艦に降ります。至急、救護は─────え?》

 

何かに気づいた永瀬。

 

“クオックス”の1機がダイブするとレーザーを放った。

 

その紅いレーザーの進む先には“スラッシュ”が......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フフッ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“スラッシュ”!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無慈悲にも放たれたそのレーザーの光は“スラッシュ”を完全に捉え、命中した......。




どうも皆さん。フェネックです。

第11話、如何でしたか?ちょっと分からないもので。

エースコンバット:インフィニティでは今日からミッション8が出ましたね。今後のヒートアップに期待したいです。


ではでは、また今度。

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