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2019年.8月10日.1810hrs
扶桑.旧首都東京.芝公園.side/海兵小隊“アルファ1”
「コリンズ! 第1と第2分隊を引き連れてあの戦車の残骸に移動しろ。機関銃分隊はタワーの敵部隊に制圧射撃! 撃てッ!!」
第32海兵コマンド連隊の第1小隊を率いる指揮官であるベルツが命じると、マクファーソン軍曹を分隊長とする機関銃支援分隊が制圧射撃を開始する。
マクファーソンは木々の間に停めてあるハンヴィーのルーフに据え付けられているブラウニーM2重機関銃で、その他の射撃手は携行するベルギカFN社製M240汎用機関銃で弾幕を張る。
狙うは東京のシンボルである扶桑電波塔こと東京タワー。
正確にはその展望台だ。
タワーに籠城したユージア地上部隊が其処に重機関銃や対装甲兵器を運び、要塞のように仕立てていた。
支援分隊による一斉射撃に対し応戦してきた敵部隊。
「第3分隊、位置についたか?」
《こちら第3分隊、位置につきました》
「狙撃開始。優先目標は重機関銃射手および対装甲兵だ」
応答した第3分隊に狙撃指示を出すベルツ。
双眼鏡で展望台を観察していると、数秒後に重機関銃を乱射していたユージア兵が頭を撃ち抜かれ倒れた。
他の分隊が囮となり注意を引きつけている隙に第3分隊のマークスマンたちが正確に確実に一人ずつ仕留めてゆく。
《こちら3-3、右の2人は片付けた》
《3-5、左の
《見えてる......排除》
よく、
マークスマンはライフル小隊などに随伴して狙撃兵のような役割を担ったり、他のライフル兵同様に近接戦闘を行う兵士だ。
扱う武器もアサルトライフルに長・中距離対応のスコープを取り付けた物や、基本的に7.62mm弾を発射するセミオートのバトルライフルを使う。
狙撃兵は
部隊から離れ単独、もしくは2人1組(狙撃手と観測手)で行動し、敵の指揮官を始末したり、敵部隊の進行を遅滞させる歩兵部隊を支援する存在として動く。
役割や行動がまったく違うが、アルファ隊に配属されているマークスマンの中には、部隊に配属される前まで狙撃兵として活躍していた者も数人いた。
《距離400で8発中全弾命中......しかも全部ヘッドショットとはな。相変わらずいい腕だな、3-1》
《このくらいは当然の結果だ》
平然と答えるこの男にベルツが賞賛を送った。
「よくやったオブライエン。礼はスコッチのボトルだな」
《冗談、扶桑酒の1ダースで》
オブライエンと呼ばれたこの男はアルファ隊第3分隊に所属するマークスマンであるが、以前は海兵隊
オブライエンが1発、また1発と撃つ度に銃声が響き、排出された空薬莢が地面に落ちて転がる。
狙われた者は確実に命を奪われ、あとに残ったのはぴくりとも動きはしない死体だけだ。
彼の技量は例え2000m離れていようが当てる事が出来る、と言われている。本人は多くは語らない為、真相は不明だが、あながち間違ってはいないだろうと思う。
ともかく、第3分隊の狙撃により敵の抵抗もまばらになっていた。
先程までハリネズミのように武装され、火を噴いていた機関銃も今では操作する兵士も無く、たとえ、生き残っている兵士がいたとしても絶対に使ったりはしないだろう。床に転がっている仲間のもとへ行くようなものだ。
「射撃中止!第3分隊は現地点で待機、周辺を警戒しろ。第1と第2は戻って来い。支援分隊は消費した弾薬を補充しておけ」
「アルトマン、ブラボー小隊の位置は分かるか」
ベルツが負傷した小隊無線手に代わりマンパック型無線機を背負っているアルトマン伍長に聞く。
第32海兵コマンド連隊第1大隊はリベリオン海軍第7艦隊の強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」からヘリでそれぞれ指示された区域へ散らばってはいたが、最終的な合流地点を此処、芝公園に指定していたのだ。
第1大隊第1中隊の4つの小隊の内、ベルツ率いるアルファ隊が一番乗りとして到着し、残るブラボー、チャーリー、デルタ隊を待つばかりだった。
「数分前にブラボー隊は此処から南に500m地点で味方の第4戦車中隊と合流したそうで、敵部隊と交戦しながら此方へ向かっているようです」
「チャーリーとデルタ隊は?」
「チャーリー隊は西新橋、デルタ隊はオラーシャ連邦大使館まで来ているそうです」
「そうか。あとは......」
ベルツが顔を上へ向くと他の隊員もつられて空を見上げた。
彼らの頭上では国連軍の戦闘機隊が敵機と激しいドッグファイトを繰り広げていた。遥か空での、一見美しくも見える戦い。
ループをおこなう度に白い航跡を描き、相手を追う、それとも追われてミサイルを喰らうかの命を懸けた戦いだ。
あの『死神』も彼処で戦っている。
「頼んだぜ死神。アンタが勝つ事に懸けているよ俺は」
8月10日.1820hrs
扶桑.旧首都東京.東京湾上空.side/新城“リーパー”久幸
一瞬の出来事だった。
こちらに背を向け離脱してゆくスラッシュに向け放たれたレーザーが直撃し派手な爆発を引き起こしたのだ。
それを見ていた者は完全に動きを止めていた。
驚愕し頭の中が真っ白になるというのはこの事だろう。自分が狙われているのを知らせるロックアラートの音で現実に戻らされるのに30秒はかかった気がした。
それほど長く、ゆっくりと感じられたのだ。
《何があった!?》
『蝶使い』を相手取るダリルの声が無線に響く。
それに応答しようとした時、爆発で起きた煙の中から何かが飛び出した。それは下へと落ちてゆく“スラッシュ”の姿だった。
「スラッシュ!!!」
黒煙を引き、力無く落下を続ける彼女にリッジバックス隊の1人がリヒートを点火し急降下を行い、彼女を空中で受け止め抱きかかえる。無線からはスラッシュに必死で呼び掛ける声が響く。
《“スラッシュ”!美紀、しっかりしてッ!!》
《“アックスレディ”!“スラッシュ”を「りょうかみ」へ搬送して! 他は援護をお願い!!》
リッジバックスのウィッチの1人が指示を出すと永瀬と共に負傷した“スラッシュ”を抱えた“アックスレディ”の援護態勢に移りシールドで銃弾を弾いていた。
ダリルから再び、呼び掛けられた。
《何があったんだ!》
それに答えるのはアリシアだった。
彼女も今の光景に衝撃を受けており声が若干震えていた。
《......見たのよ》
《何を見たんだッ?!》
《あのウィッチ、武器を持たないヤツも殺すのッ......!?》
《チッ! “オメガ”しっかりしろ!態勢を立て直すぞ》
ダリルがアリシアに近寄り頬をビンタし気を落ち着かせる。
状況は悪い。リッジバックスの3人が海面の「りょうかみ」へ下がった為、今はオレたちボーンアローと永瀬のみで『蝶使い』を相手にしていた。
しかも、永瀬が突出し過ぎていた。
《ウィッチの誇りは? ......ふざけるなッ!!》
永瀬が叫ぶと『蝶使い』に向かって加速し銃撃を浴びせる。
『蝶使い』はひらり、と体を捻るようにして火箭を避け片手を拳銃のように構えて撃つしぐさをした。
それの意図が分かったらしい永瀬は態勢を変え、ストライカーを履いた足を前に出すようにして減速した瞬間、目の前を赤いレーザーが2本、交差した。クオックスから放たれたレーザーだ。
あのまま直進していたらレーザーの熱にヤられていた。
急接近し、永瀬に狙いを定めていたクオックスの進路を妨害するようにダリルが機関銃の一連射を行い、クオックスは回避した。
《おい! お前も冷静になれッ!!》
《私が“スラッシュ”の仇を......くっ!》
《そっちの部隊員が戻って来るまで、うちのフォーメーションに入れ。いいな?》
《このままじゃ、その敵討ちも出来なくなるぞ》
ダリルの言葉に黙り込む永瀬だったが、やがて観念したかのように頷いた。
《......ウィルコ》
『蝶使い』への銃撃を止め俺の斜め後方の位置につく。
《よーし!先ずはあのUAVから片付けるぞ!!》
「“リーパー”了解!」
《ブレイク!!》
扇状に散開した各々は互いにカバー出来るように飛行しながら『蝶使い』に随伴している2機のクオックスを優先して狙う。
幸いにも『蝶使い』は散開したオレたちを見て、それに対応させるようにクオックスを猟犬のようにして散らばせた。編隊を組んでいるよりは死角の多い単独時を狙う方が効果的だ。
その効果はすぐに現れ、ダリルがわざと低速で回避機動を取り、それに誘われダリルしか見ていないクオックスに対し、キャスがNTW-20対物ライフルを構え、狙撃用の魔導照準器を展開させる。
《遅いのよ、コウモリさん》
トリガーを引き、発射される20mm徹甲焼夷弾。
放たれた弾丸はキャスの固有魔法である再加速で威力を増し、誘導され、クオックスの無防備な背面に着弾した。エンジン部分を貫いた弾丸は運動エネルギーを失わないまま空の彼方へと消えた。
クオックスは、と言えば胴体に1mほどの穴を穿われたことにより徐々に推力を失い、そこを上空から降下してきたアリシアのミサイルを受け完全に木っ端微塵となった。
《よっしゃあーッ!!》
《ナイス》
彼女たちが歓喜の声を上げるなか、オレと永瀬はもう1機のクオックスに追尾していた。激しくジグザグに機動をとるクオックスに離されないように操縦桿と格闘する。
「あと...少し......なんだがっ!」
『さすが高性能は伊達じゃないっ......!“キャッスル”上から蝶野郎が来てる!ブレイク!ブレイクッ!!』
航平からの報告に反射的に上を向くと、獲物に襲い掛かる猛禽類のように急降下して銃口を向ける『蝶使い』が見えた。
「クソッ!」
ペダルを踏み込み機体を横に滑らせると『蝶使い』の放った銃弾が翼を掠めた。
間一髪で回避したのもつかの間『蝶使い』の妨害により追尾を断念させられた久幸の耳元に電子音が鳴り響く。
『後ろにクオックス!うおっ?!』
ヴゥゥゥゥと言う蜂の羽音のようなものが聞こえると、コックピットの上を機銃の曳光弾が一条の赤い線としてばらまかれている光景が見える。
クオックスが搭載している12.7mmガトリングガンを撃ってきているのだ。
『
「20mmに比べれば豆鉄砲だ!心配すんなッ!!」
『当たればザクロになっちまうだろうがッ!?』
機銃の火箭を右へ左へと、機体を振りつつ回避しては時折バレルロールを行うなど、クオックスの追尾を振り切ろうと試みるが、相手はこちらよりも執拗に追い掛けている。
機銃の曳光弾が機体のすぐ傍を通過し、ヒュンヒュンッと音を鳴らし続ける。このままじゃ.........あん?
「......“マーベリック”が敵機に使った回避技覚えてるか」
『はっ?.........お、おい、それってまさか!?』
俺が言ったワードの答えに行き着いた航平の顔は段々と青くなってゆき、妙な汗が流れていた。思わず口元がにやける俺はその行動を行う為に準備を整える。
ウィッチで名俳優のタミー・クルーズとアンソニア・エドワーズがそれぞれ“マーベリック”ことパティ・ミッチェル役と“グース”のニコラ・ブラッドショウ役として出演した映画に出てきた、あのワンシーンを試すのだ。
「3カウントでいくぞッ!!」
『お前を信じてるが、あぁっ!もうどうにでもなれッ!!』
「3......2......1......今だッ!!」
両方のペダルを踏み込み、エンジンスロットルをいっぱいまで後退させ操縦桿を手前に引いた。エンジンカットされ機首上げを行った機体はスピードを失い、その場で静止したかのようになった。備えていたつもりだったが、急な制動で気を失いかけるが一瞬視界がブラックアウトしただけで、なんとか堪えた。後ろを追尾していたクオックスはその動きについて行けず、横に傾けると俺の機体のすぐ脇を通過して前に飛び出してしまう。
「ぐぅ!......喰らえッ!!」
すぐに機首を押し倒すようにして強引に水平に戻す。
ミサイルでは間に合わないと判断すると、瞬時に兵装をM61バルカン砲に切り替え、トリガーを引いた。
砲身をスピンアップさせ唸り声を上げた機関砲から20mm弾が吐き出され、空を切り裂いてクオックスのエンジンノズルを粉々にし片翼を引きちぎった。
クオックスの白く塗装された表面には一目見ても分かる弾痕が列をなし、破孔部からは真っ黒なオイルが血のように噴出しては風に流れ広げてゆく。もう終わりだ。
動きを止めたコウモリは錐揉みしながら無様に落下してゆき、海面に墜落し海中へと没した。
「クオックス撃墜!」
『冗談じゃねえ死ぬかと思ったぜ......』
《UAV全機撃墜!残りはアイツだけよッ!!》
アリシアが新しい弾倉に変えたアサルトライフルを構え上昇してゆく先には、こちらを観察するかのように、ゆっくりと飛行する『蝶使い』。顔の上半分を覆う大型のHMDによりその表情は窺えない。
すると、ダリルとアリシアが先制攻撃を仕掛けようとして並んで上昇していく直前だった。
《なかなか、やるじゃん♪》
透き通るような女の声がノイズ混じりにイヤフォンに響く。
楽しんでいるかのように含み笑いも聞こえた。直感的にこの声の主は、今まさにダリルとアリシア、そして永瀬と、3人相手に互角に戦っている『蝶使い』だと断定した。
時折、唄を口ずさんでいるのも聞こえており、無線が混線しているのか、はたまた彼女が意図的に周波数を合わせたものかは分からない。この声は後席の航平にも聞こえていた。
『これって......』
「あぁ“蝶使い”の声、だな」
『少し雑音が酷いくて聞き取れないが......これは鼻歌か?』
「どこかで聞いた気がするんだがな......」
『戦闘中に鼻歌する余裕があるとは恐れ入る』
離れた場所で位置についたキャスが狙撃支援を始めた。真後ろから放たれたはずの弾丸に『蝶使い』はダンスをするように上方向に一回転して避けた。撃った本人であるキャスもそれを見て小さく呟くように《うそ......》と、驚愕を隠せないようだ。
『アイツ、背中に目でもついてんのか......?』
航平がそう言うと、イヤフォンに一瞬ノイズが走り、グッドフェローから通信が入った。
《グッドフェローよりボーンアローへ。なるべく“蝶使い”は撃墜ではなく、無傷で捕縛したい。彼女から何か情報を聞き出せるやもしれん。リッジバックス隊にも協力を要請したい》
《そいつは無理難題な要求だな》
『第一にオレたちが納得しませんよ』
《そーよ!仲間がヤられているって言うのにさー!》
メンバーからの非難の声で無線が騒がしくなった。
それも当然だ。仲間である“スラッシュ”がヤられている以上『蝶使い』への怒りはおさまる気配が無い。部下の一人である永瀬などは、絶対に手を止めたりはしないはずだ。
だが、グッドフェローの言い分にも一理ある。彼女を拘束出来ればユージア連邦の動向が分かるかもしれないのだ。
「“リーパー”より全機へ。グッドフェローの話にも一理ある。納得しきれないかもしれないが、早期終結への手掛かりが掴めるかもしれない。今は“蝶使い”を拘束することを優先しよう。いいか?」
俺がそう無線で伝えると、しぶしぶだが、各員が了承の意思を露わにした。キャスに無線で呼び掛ける。
「“ブロンコ”。オレたちが“蝶使い”の気を引きつけている間に隙を見て、ユニットを狙ってくれ」
《了解》
オレとダリルとアリシア、永瀬が行動を開始し、囲い込むように『蝶使い』を挟撃する。
ダリルたちとドッグファイト中にキャスの狙撃を避けた事を考えれば、よほどオレたちに気を取られていないと成功はしないだろう。何か手はないかと模索するが、航平からの警告を受ける。
『2時上方からダイブしてくる!避けろッ!!』
「チッ......!」
『蝶使い』が発砲する瞬間に操縦桿を横に倒しロールさせ、銃弾の雨をギリギリ躱す。『蝶使い』が下方へと通り過ぎるのを確認するとスライスターンで180度転換して追撃に移る。
side/“蝶使い”
《2時上方からダイブしてくる!避けろッ!!》
《チッ......!》
イヤフォンに響く声。
クオックスが全機撃墜されちゃうとは正直驚いたけど。
それよりも、あの『死神』のエンブレム......期待以上の動きを見せてくれる。ウィッチでもない、ただの男の戦闘機乗り、と思っていたのだけれど、ね。おもしろい♪
私の銃撃をタイミング良く回避した『死神』の機体。そのまま下へと通過する私を素早くターンして追い掛けてくる。
『可愛がってあげる♪』
身体を捻るようにして180度ロールさせ真っ直ぐ飛行したまま追尾してくる『死神』にアサルトライフルを構えると銃口から逃れるようにあっさりと追尾を中断した。
離れてゆく『死神』機を目で追い掛けるが、直後に私へのロックオン警告がなり始め、それはミサイル発射を知らせる長い電子音に切り替わった。
態勢を戻すと真っ正面から迫る赤外線誘導ミサイルが目に入った。
ライフルのセレクターをセミオートにして構えるとHMDバイザーに表示されたガンレティクルの状態がLOCKとなり、トリガーを引き3、4発撃ち込み、ミサイルの弾頭にあるシーカー部を破壊して無力化した。
『どこ?......み~けっ!』
レーダーには反応が無いので首を左右に振ってると、HMDバイザー越しに翼が前に向いている深い青色をしたストライカーを履いたウィッチを見つけた。
《っ......早い!》
『逃がさないよ』
彼女も優秀なウィッチらしく、機体性能をフルに使って私の背後を取ろうとしているけど遅い。逆に私が背後を取っちゃった。
振り向きざまにアサルトライフルのフルオートで攻撃してくるけど、シールドを張る必要はなさそう。
ロール後に続いてバレルロールで銃弾を避けていると彼女のライフルの銃声が鳴り止んだ。弾切れかな?
リロード中に悪いけど、私は素早く銃で狙いをつけてセミオートで撃ち続ける。彼女の張るシールドの隙間から進入した弾丸が彼女のライフルに命中して、銃身部分を粉々に破壊した。
武器を失った彼女はシールドで私の銃撃を防いでいるけど、いつまで保つかな?
《“エッジ”右に避けろッ!!》
無線で声が聞こえた直後に右へと身体を逸らした彼女は私の後ろを見ていた。反射的に振り返ると、あの『死神』機がいた。
彼の機体の主翼下にあるミサイルが切り離された。
真っ直ぐこちらへと向かって突き進んでくるそれは赤外線誘導ミサイルだけど、ロックオン警告は無し。威嚇?それとも慌てて咄嗟に?
その答えは彼が機体を上昇させた時にわかった。
《......》
『死神』の背後に隠れるようにしてホバリングしていたウィッチがいたのだ。
彼女は感情が読み取れない無の表情のまま、狙撃銃の引き金を引いた。狙いは私......じゃない!
気づいた時には遅かった。
彼女が撃った弾は『死神』が発射したミサイルを捉え破壊、爆発したミサイルの無数の金属製ロッドが私に襲い掛かってくるけど、瞬時にシールドを張って防いだ。
けど、爆発距離が近すぎたから軽く吹き飛ばされた。爆煙が晴れる前に私は煙から飛び出すように上昇させた。
《“ブロンコ”やれっ!》
飛び出した私の視界にはあの狙撃手が入った。
合図とともに彼女の銃が再び火を噴く。迫り来る弾丸に対し私の周りはまるでスローモーションのようにゆっくりと動いて見えるような気がした。
これぐらいなら躱せる。そう思っていた。
だが、そこでHMDバイザーが、ある状態で知らせるブザーを短く鳴らしているのに今気づいたのだ。
このブザーは.........あっ。
《タイムアウト》
無慈悲に告げられた連絡とともに私の視界はぷつりと光を失い真っ暗な闇の中へとブラックアウトした──────。
『蝶使い』が使用するHMDは戦闘機用とかのバイザーに投影するようなタイプではなくゲーム用とかに市販されているあのHMDのような中からは外が見えて、外からは中は見えないタイプのやつです。それを大型化して視野を広く確保、携行火器との照準リンクが可能だったりなど、機能をいろいろ付加させてます。
感想など、ばしばしどうぞ!( ・∀・)つ次回をお楽しみに