ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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どうも、フェネックです。
第13話です。それでは、ごゆっくりと。


#13 その喉元に大鎌を-Giant Killing-

2019年.8月10日.1845hrs

扶桑.旧首都東京.東京湾上空.side/新城“リーパー”久幸

 

 

 

『蝶使い』の銃撃を受けていた“エッジ(永瀬)”の窮地を救う為に機体を旋回させる。機体の直ぐ傍で狙撃態勢に入っていたキャスにハンドシグナルで攻撃方法を簡単に説明した。『蝶使い』の声が無線で聞こえる以上此方の会話も筒抜けしている可能性がある為だ。オレの作戦に乗ったキャスが頷いて了解の意思を表すと減速し機体の後方へと流れると位置についた。

 

機首を倒し『蝶使い』の背後から接近する。小銃を失った永瀬がシールドを張り銃弾を弾いているのが見える。ある程度まで近づくと兵装をサイドワインダーに切り替え、無線で永瀬へ警告を発した。

 

 

「“エッジ”右に避けろッ!!」

 

 

此方に気付いた永瀬が指示に従い右下方へとダイブするのを確認した直後に主翼下のサイドワインダーミサイルを発射した。ただしロックオンはしていない。HUD越しに見える『蝶使い』は此方の意図に気づいていない様子だ。オレは操縦桿を引き機体を上昇させた。後方のキャスに任せる為だ。

 

上昇してループの頂点辺りで首を上げ下方を見た時には放たれた無誘導ミサイルをキャスが狙撃して爆発させた直後だった。爆煙が徐々に薄れゆくなか『蝶使い』が外へと飛び出した。

 

 

「“ブロンコ”やれっ!」

 

 

飛び出して状況把握もままならない『蝶使い』に対して滞空して待ち構えていたキャスが次弾を撃った。動きを先読みして放たれた20mm弾は吸い込まれるように『蝶使い』の履くストライカー・ユニットへと突き進む。あの超絶機動を持つ彼女であろうと、あの距離から撃たれては避けようが無い。確実に命中する、そう思っていた。

 

 

だが

 

 

予想外な事に『蝶使い』が突然スピードを急激に落としたのだ

ガクッと、高度を失った事で本来ならユニットへの直撃コースをとっていた弾丸の進む先は.........彼女の胸元。

 

さすがのキャスの固有魔法である弾丸の誘導を行っても変更が出来ない距離だった。弾丸はそのまま『蝶使い』の胸を貫いた。

 

 

「嘘だろ......?」

 

『なんてこった......』

 

 

オレと航平が呟く。後には言葉が続かなかった。

周りのダリル達も愕然として誰1人として言葉を発しようとはしない。視界の先で胸を貫かれた『蝶使い』は反動で身体が仰け反り、そのまま力無く頭から真っ逆さまに墜ちてゆき、落下途中に大爆発を起こした。ユニットが内部から爆発したように見えた、恐らく死亡した場合は回収出来ないように自爆装置でも入っていたかもしれない。爆発により発生した黒煙の塊から大小様々な破片が飛び散り、幾つかは火球のようになって、海面へと落下してゆく。

 

 

『......救えなくて、ごめんな』

 

 

その光景を見た航平が今は亡き彼女に向け謝罪の言葉を口に出す。救えたかもしれない『蝶使い』。だが、それはもはやifの話だ。後悔したって仕方がない事。そう、思い込むしかない。

 

 

《“蝶使い”......敵ながら凄いヤツだったよな》

 

 

アリシアがそう言い、ダリルは胸の前で十字を切った。オレも彼女の冥福を祈り、静かに敬礼をした。安らかに眠ってくれ、と。

 

すると駆逐艦「りょうかみ」に“スラッシュ”を搬送したリッジバックス隊の2人が永瀬の元へと戻ってきた。永瀬は“スラッシュ”の容態を聞いた。

 

 

《“スラッシュ”は?》

 

《油断ならない状態よ。間に合えばいいけど......》

 

《安心しなさい。彼女はあんな事で死んだりしないわ》

 

 

彼女たちの会話を聞く限り、重傷を負った“スラッシュ”は緊急処置中らしい。良くなってくれればいいが。

 

イヤフォンに一瞬ノイズが走ると“スカイアイ”からの無線連絡が入った。

 

 

《“スカイアイ”より全機へ通達します。これより敵重巡航管制機に総攻撃を掛けます》

 

 

そうだ。今は感傷に浸っている場合じゃない。

上を見上げれば東京の遙か上空を我が物顔でゆうゆうと飛行しているバカでかい巨大な機体が視界に入る。対空砲の曳光弾がばら撒かれ、周囲を飛ぶ扶桑国防空軍のF-15Fが2機、その砲火に捉えられ撃墜された。幸いにパイロットは脱出出来たようだ。

 

オレはスロットルを押し込み急上昇させる。

機首をほぼ垂直に上げたストライク・イーグル。

推力が上がったエンジンは甲高い音を響かせていた。まるで鷲の鳴き声ようだ。

身体全体にGが掛かり後ろの航平から「ぐっ」と呻き声が聞こえたが、飛行教導群に鍛えられたオレ達は弱音を吐いたりはしない。

 

 

『このままヤツの正面に出てヘッド・オンだ......!』

 

 

未だ上昇中の機体の後席にてレーダーが表示されているディスプレイを凝視しているであろう航平はしっかりとWSOとしての責務を果たしていた。

HMDやHUDに表示された高度計の数値が急速に上がってゆく。

やがて、目指していた高度に到達するとスロットルを徐々に後退させ機体をひっくり返すようにして水平飛行状態にした。

今まで押し殺していた負荷を吐き出すように一息し、正面に向き直る。

 

HMD越しに見える太陽を背にした巨大な影。

左右に大きく広げた翼の長さは推定でも1000mはある。

こんなデカい航空機に対応可能な滑走路は無いと思うが、胴体下部を見ると飛行艇のような形状になっている。コイツは海上で離発着水をして補給を行う機体のようだ、或いは空中給油か、だ。

 

 

《敵重巡航管制機は対空砲と対空ミサイルを多数装備しています。先ずは敵の機動力を削ぎます。主翼後方のエンジン部分を重点的に攻撃し破壊してください。攻撃開始!》

 

《こちら“ヴァイパー”あの“白鯨”を狩るぞ!》

 

《了解!エイハブ船長殿》

 

《エイハブは白鯨と一緒に沈んだヤツだろーが!》

 

《あれ?知ってたの?》

 

 

気持ちを切り替えいつもの調子で戦いに挑むボーンアローズ。

 

 

《“エッジ”よりリッジバックス各機へ。“スラッシュ”からの指揮譲渡にて、これより私が指揮を執ります。負傷した者は離脱してください》

 

《こちら“フェンサー”“スラッシュ”の為にも此処で退いたら顔向け出来ないから、どんどんやらせてもらうよっ!》

 

《“アックスレディ”了解!》

 

 

永瀬指揮の下に再編成したリッジバックス隊。

 

この両隊が一斉に行動を始めた。

散開した各々が巨鳥に接近するとミサイルを発射。空中に白煙の線を引いたミサイルが主翼前部の対空機銃やミサイル発射口を破壊し沈黙させた。

重巡航管制機の各所に配置されている対空機関砲が火を噴き、空を埋め尽くす勢いの弾幕を張る。

同時にVLSから多数の対空ミサイルを撃ち上げ、オレ達に向かってくるが、ダリルの合図でチャフやフレアを一斉に散布すると同時にヤツの胴体下方へと飛び込んだ。

 

チャフ・フレアに惑わされたミサイルは目標を見失うと同時に次々と自爆した。オレ達が真下へと向かったのはヤツの対空兵器が無い、唯一の死角だからだ。

 

 

「こちら“リーパー”下方を抜けヤツの後方に回り込む」

 

《OK“リーパー”こっちは左翼のエンジンをやる》

 

《“オメガ”了解。“ヴァイパー”に続く》

 

《こちら“ブロンコ”右翼側の機銃を片付けます》

 

 

重巡航管制機の下をコバンザメのように張り付き飛行し、尾部を越えた辺りで上昇、ヤツの後方に食らいつく。火を噴く機銃群が上空から攻撃を仕掛けるリッジバックス隊を狙っている。こちらには気がついていない。

 

 

『“キャッスル”ミサイルをちまちまエンジン部に撃ち込んでちゃ弾が足りねぇ。SDBを叩きつけた方が効果的だ』

 

「了解、ちゃんとぶち当てろよ!」

 

『任せろッ!!』

 

 

航平の指示通りに機体を操り上昇させた。

ヤツからの迎撃は来ない。好都合だ。左翼側を集中的に攻撃しているダリルとアリシアの排除に手間取っているのだろう。

 

機体を水平にし航平が攻撃目標を設定し準備を整えた。

 

 

『LANTIRN(夜間低高度および目標指示赤外線)ポッド、目標の選定完了。目標指示レーザー照射、投下準備完了!』

 

「SDBⅡ投下!投下!」

 

 

胴体下部の兵装ステーションのラックから切り離された滑空爆弾SDBⅡが2発、滑空翼を展開して目標であるエンジン部目掛けてコースを修正しつつ、突っ込んだ。

地上の堅い目標を爆砕する為の航空爆弾だ。

右翼側のエンジン部の少し前に着弾したSDBⅡの弾頭が起爆。その瞬間、内部から風船のように爆発を起こし、重厚に作られたらしい表面の装甲板が外側にめくれあがった。

着弾点から周りのエンジをも巻き込んだ爆発は並んで配置されていたその全てを使用不能にさせた。

 

爆発時の衝撃で右に傾いた重巡航管制機。右翼の内側にあるエンジンステーションは炎に包まれ黒煙を噴いていた。

 

 

《第4エンジンが全て壊滅状態です!》

 

《一体何が起きたんだ!?》

 

《第22区画のハッチは全て閉鎖しろ!消火作業はッ!?》

 

《今の爆発で電気系統が損傷、電力供給が絶たれ消火ポンプが作動しません!》

 

《それでは、向こうの第2エンジンも停止するぞ!》

 

 

被弾した箇所から小規模な爆発が何回か起こり、その度に機体全体が震えていた。右翼側の炎はどんどん勢いを増し、次第に右に広がりつつあった。この速度で行けばあと数分程度で右翼全体が炎に包まれそうだ。

 

それに加えてどうやら電気系統が寸断されたらしく右翼側の機銃群はその射撃を止めていた。VLSのハッチも開く事は無く、電力供給が無くなった事で消火もままならないのだろう。

 

 

『コイツは半分死んだな』

 

「あぁ。敵やコレを作った技術者も、まさか航空爆弾を投下されるとは夢にも思わなかっただろうな」

 

『違いない。......さて、次の準備出来てるぜ?』

 

「了解。早くコイツを激痛から解放させてやるかッ!!」

 

 

右翼側はもはや手を下さずとも直に炎が埋め尽くし被害を加速させた為、無視し、左翼側を狙う。

ダリルとアリシア、それに合流したキャスが巨鳥と速度を合わせエンジンノズルにミサイルを撃ち込んでいた。

より接近すると、アサルトライフルや汎用機関銃で穴だらけにする。こうも接近されては、巨鳥の御自慢の対空兵器も狙えず、下手をすれば自分自身を傷つけてしまうことくらい分かっているのだろう。

 

すると、艦体中央部にある飛行甲板に動きがあるのを目標指示ポッドの画面越しに確認した航平が連絡する。

 

 

『“アイドラー”より各機。デカ物の飛行甲板エレベーターに動きあり。艦載機を出すつもりのようだ。無茶しやがる』

 

 

この期に及んでまだ悪足掻きが足りないのか、飛行甲板両側にあるエレベーターにより上げられたダブル・スロッテド・フラップと機首カナードが特徴のオラーシャの艦上戦闘機Su-33“フランカーD”が数機、飛行甲板へと躍り出たのが見える。

 

 

《“オメガ”“ブロンコ”丁重にお帰りを願ってやれ》

 

《了解♪》《了解》

 

 

ダリルの指示を受けたアリシアとダリルが左翼上面を通過し、巨鳥の巨大な口のようにぽっかりと空いた飛行甲板の進路上にてホバリングすると、発艦準備途中のフランカーDに銃口を向けた。

 

 

《お、おい!進路上にウィッチがッ......ガァッ!!》

 

《だから戦闘中の発艦は無理だと言ったんだクソ艦長めッ》

 

《逃げろ!逃げ──────》

 

 

アリシアとキャスの容赦の無い銃撃が襲いかかり、飛行甲板で待機していた敵戦闘機の搭乗者をただの肉塊に変え、機体は蜂の巣になった。

その銃弾の1発が機外燃料タンクをぶち抜いた事で爆発。1機の爆発が連鎖反応を呼び、腹に抱えたミサイルが次々と誘爆を起こした。

 

2人が離脱した直後には未だ降下途中のエレベーターの隙間から侵入した炎が格納デッキに駐機してあった予備機体にまでおよびこれも爆発。艦内のあちこちを引っ掻き回し、被害を拡大させた。

重量数トンのエレベーターは格納デッキまで落ち、飛行甲板は艦載機の残骸が炎を纏いながら散らばっていた。

 

後方を飛行していたオレの機も誘爆時の炎の渦に巻き込まれそうになったので、軽いピッチアップで巨鳥の胴体の上を飛行していた。合流してきたアリシアが頬を掻きながら言った。

 

 

《まさか、あぁなるとは思ってもいなかったよ。あはは...》

 

《上出来だ“オメガ”“ブロンコ”》

 

 

今の誘爆により巨鳥の状態は更に悪化し、左翼の外側と内側に残っていた無傷のエンジンも供給システムに不具合が生じ、機能を停止していた。最初は弾丸を雨のように撃ち上げていた機銃群も疎らになり、重巡航管制機は死に体となっていた。

 

 

《全エンジンの破壊を確認!》

 

『お、ヤツが右に旋回しつつある。このまま直進させれば海に出る。ヤツの正面コックピットを潰すぞ!』

 

《トドメはお前がやれ“リーパー”!死神らしく、その大鎌で首を斬ってやれッ!!》

 

「了解ッ!!」

 

 

機体の速度を上げ巨鳥の前方へと飛び出す。

十分な距離にて鋭く空中を切り裂くように旋回しヘッド・オン。

東京都心を中心にぐるりと大きく旋回して海上へと出た敵重巡航管制機の前方部分。その艦橋部を捉える。

 

 

『まだ艦橋にいるな奴ら。早く逃げりゃあいいのに』

 

 

航平が操作した照準ポッドのシーカーが未だ艦橋に残り、もはや推力を失い、ただ浮かんでいるだけの巨体を必死に操ろうとしている艦橋要員たちを捉えた。恐らく通路が火の海だから脱出ポッドまで行き着く事も出来ないのだろう。......なら

 

 

「ボーンアロー4、FOX2!」

 

 

ランチャーに残っていた最後のサイドワインダーを発射。

切り離された事で軽くなった機体が少し横に傾くが、それを操縦桿で姿勢を戻し、ミサイルの航跡を目で追い続ける。

 

 

《前方に敵機がっ》

 

《......幻か、死神が見え─────》

 

 

艦橋要員たちが最期に見たものは迫り来るミサイルと、惨めな自分たちを嘲笑うかのように去る『死神』のエンブレムを持った機体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波は穏やかな、黄金色に染まる海。

その海へと徐々に降下してゆく黒い巨大な鉄の鳥。

数千億規模で建造され、国の誇りとして誕生したであろう巨鳥は、今では体全体を切り裂かれ、真っ赤な炎に翼を焼かれている惨めな、ただの鉄くず同然と化していた。

違う世界なら、もっといい運命が待っていたのか、いや......たぶん、無かっただろう。

 

オレ達は落下していくその巨鳥が無事に海面へと突っ込むその時まで見届けるつもりでついて来ていた。

 

 

『蒼い海に帰れ......静かに、眠れよ』

 

 

航平がそう呟くと巨鳥にカメラを向けシャッターを切った。

高度が低くなり、海面まであと少しのところで被害の大きかった右翼の付け根部分が爆発した。

根元から吹き飛んだ右翼を失った事でバランスを崩した巨鳥。

左翼が下へと下がり、やがて海面へとその翼端を突き刺すように着水し、海面に激突した。オキアミを食べるジンベエザメの如き口から大量の海水が入り込み、艦内へと浸水してゆく。沈没しその姿を波間に消すまで30分も掛からなかった.........。




さて、これにて「極東戦線-Far Eastern Front-」は終了です。
次回はいよいよ、再編成話となります。長かったなぁ......。

最近はオンラインのエースコンバット・インフィニティを土日にちょこちょこ、やっています。けど、やっぱり皆、マンネリを感じているんですかね。参加人数が少ないような。当の私もなんですがねぇ......いやはや。早くキャンペーンを進めてくれー!

な、方も相当いますよね。

あ、それとですね、活動報告の方に例のミーナことミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐をヒロインにした作品のプロローグ的なものを出してみました。良かったら見てください。短いですが。感想とかアドバイス的な物が来たら嬉しいです。

では、次回で
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