2019年.9月19日.2130hrs
扶桑.神奈川県.厚木基地.仮設搭乗員待機室
『─────以後、21FSは2300まで待機』
厚木基地内に新しく設置されたプレハブ小屋。
その中では、基地に帰還したボーンアロー隊の主要メンバーが集まり各々、与えられた休息をフルに使っていた。
既に外は真っ暗。それでも基地全体はLEDのライトに照らされ明るい。
エプロンにて飛行前点検を終えた戦闘機が双発エンジンの轟音を辺りに響かせながら、ゆっくりと前進を開始していた。
「へぇ~。じゃあ、オリガは最初陸軍に志願したんだ」
「次は空軍。で、アローズに入社。あ、29波来るわ」
「ジャガノグ飲んでくるから、援護よろ」
「Да(はいはい)」
搭乗員待機室(仮)と化したプレハブ小屋。その中で、2つある液晶テレビを使って今話題のFPSゲームをプレイしているのは、アリシアとオリガの2人だ。アリシアはともかく、オリガの部隊の馴染み様が早過ぎる気がする。
部屋の中には2人以外に航平とキャスが居り、航平は自分のノートパソコンで溜め込んでいたゲームを消化中。キャスはいつものごとく黙々と読書。久幸は部隊長クラスの定例会議に出席しており此処にはいない。
「右の通路から4つ足が3体来てるわよ」
「えっ、ちょっ、近いっ!」
アリシアが操作するキャラに迫るゾンビをオリガの操作するキャラが狙撃銃を使い頭を撃ち抜いて倒した。
「サンキュー、オリガ。2階に上がるよ」
「前からゾンビ4体」
航平が買ってきたFPSゲームはストーリーモード以外にサバイバルと言うゾンビの波状攻撃を凌いで生き残るモードがあり、ラウンドが進むにつれゾンビの耐久値が上がり、数が増え、弾薬等のドロップアイテムを落とす確率が激減したりする。
2人はもうすぐ30ラウンドに入る所まで来ている。
だが、そう簡単に入らせる気は無い、と言わんばかりに続々と出現するゾンビの前に強化した銃は弾切れとなる。後に残ったのは強化をしていない威力不足のハンドガンと数個のグレネード、地雷のみ。
時折地震が起きるマップな為、広かった舞踏会場は真ん中に深い亀裂が走り、トレインと呼ばれるプレイヤーが自身を餌にゾンビの列を作りぐるぐると回る戦術も出来なくなった。
「弾薬が切れた。後は任せたわっ♪」
「え"っ!?」
オリガのキャラがゾンビの群の中へと消えた。
アリシアはステージの隅にある自動機関銃のスイッチをオンにして凪払うように銃を撃ち続ける。が、それも耐久値が上がったゾンビ宜しく、瞬く間に群に埋もれ視界が血に染まる。
『ゲームオーバー』
「も~~~~っ!!!何なのよあの耐久値と数!」
手に持っていたワイヤレスコントローラーをポイッと放り投げウガーッ!!と怪獣のようにうなり声を上げる。
「発売して2日経つけど、これの現時点での最高成績はラウンド86って、出てるわよ。凄いわね」
「いやだー聞きたくなーい」
放り投げられたコントローラーを空中でキャッチしたオリガは操作ボタンを押し一旦ゲームを終了させてメニュー画面に戻ると一番左にあるゲーム機本体の電源オフボタンを指で押し実行した。
「────まだやってんのか?」
脇に書類の束を挟んだ飛行服姿の久幸が部屋に入る。
「ちょうど終わったところですよ、隊長」
「隊長は止めろって隊長は。むず痒い」
部屋に入って缶コーヒーのプルタブを起こしながらオリガにそう言う久幸。彼は今まで「隊長」と呼ばれる事が無かった為、慣れていない。気恥ずかしくもあるのだ。
「ふふっ。分かったわよ、新城」
「それでいい」
納得したように頷くとソファーに腰掛けた久幸は脇に挟んでいた書類の束を机の上に広げ、一枚ずつに分ける。
「何それ?」
カーペットの上をゴロゴロ転がっていたアリシアが興味津々な様子で近付き、1枚手に取る。
「今後のシフト表だ」
「お?俺にも1枚プリーズ」
「はい」
「オリガ、ありがとさん」
「何かウチらの出番が少ないように見えるけど気のせい?」
「あぁ、それな」
シフト表を見ていたアリシアの問いに久幸が反応した。
「独立強襲部隊として各国、各企業の精鋭を1つの部隊に纏めちまったからな。大規模な作戦以外でも全機出撃!......なんてやってたら、いくら報酬は出るから、と言っても国連にも限界がある」
久幸は、そこで一旦話を止め、缶コーヒーを飲み干すと一息吐き、空になった缶を机の上に置く。
「だから、こうして1度の出撃部隊数を減らしたりして調整しているんだ。もっと言えば、報酬が減ったりして不満を持った傭兵や俺たちのようなプライベーティア部隊が敵側へ寝返る事を防ぐ対策でもあるんだ」
現状を快く思わない者もいる。
それはユージアが今は優勢であり、こちらが下手に攻勢に出ることも出来ない。防戦一方の状況に変わりないという事にだ。正規軍の軍人すら怪しいのに、それが傭兵やプライベーティア関連となると余計に、だ。
相手がこういう輩に交渉を持ち掛ける事態、すなわち、戦場でのユージア側からのヘッドハンティングを、国連や各国軍は危惧している。
「実際に、そう言う報告が出ているらしい」
「よくもまぁ、あんな連中について行こうとするな」
「欲深い奴の最期は昔から酷いって決まってるのよ」
航平がある意味で感心したかのように呟き、机の上に置いてある皿のお菓子の中から適当に選んだチョコを口に放り込む。自分より金に貪欲な同業者の行動に呆れたアリシアは煎餅を咥え、カーペットに寝っ転がる。
「アリシアも、そうなりそうね」
読書中のキャスが彼女に向け言う。
「私はならないわよキャス~!そこまで欲深くはないの」
「まぁ、仕事が無くならないのなら俺はOKだよ」
「私も同じよ」
航平に続いてオリガは紅茶(オラーシャではチャイと言うらしい)に一口つけた後にそう言った。
その後、会話を終えた久幸は空になった缶を掴むと、再び同じ物を買う為にプレハブの外へと出た。外の駐機場では相変わらず出撃要請を受けた部隊の戦闘機が滑走路から夜の空へと飛び立っていた。
同時刻.群馬県北東部山中.side/コリンズ軍曹
それは完全なる奇襲だった。
背後から断続的にパパパッという渇いた銃声がこだまし、両脇を銃弾が掠めるのが分かる。
最初はヘルメットのマウント部に装着していた
今ではこの月の明かりさえ無い暗闇の中を......山の斜面をひたすら走って下るしか無かった。
「走れ!後ろを振り返るなッ!!」
自分の前を走る部下たちに向け怒鳴るように叫ぶ。
すると、頭上がパッと音が鳴る。敵が撃ち上げた照明弾の眩いマグネシウムの光が辺りを照らした。それによって激しさを増す銃撃。
「クソッ......!バカみたいに撃ちやがってっ」
森の中を走っている為、木々の枝や葉っぱで頬を切ったり、蜘蛛の巣が顔に引っ掛かるなどストレスが溜まる一方だが、戦死するよりかはマシだ。
あの東京での「オーバーライド」作戦で第1小隊指揮官のベルツ中尉は負傷した。
後方で療養中の中尉に代わって来る予定の上官はあと2週間は席を空ける。
それまでは私が指揮を執る事になった。
「オーバーライド」後の第32海兵コマンド連隊の仕事は、扶桑内陸部に後退したユージア軍残党の掃討任務になり、俺たち第1小隊を含む第1中隊は現在、群馬県北東部山林地帯に潜む敵部隊の偵察任務についていたのだが、このざまだ。
走っているうちに開けた場所へと飛び出した。
約200mほど広がっているそこは民間の木材集積場らしく山のように積み重ねた丸太が幾つも置いてある。
「マクファーソンの機関銃分隊は左右に展開しろ!正面の森の切れ目から来る敵に対し十字砲火。オブライエンの分隊は後方支援、第1と第2は前面にて対応!」
「第3小隊が来るまで持ちこたえるんだ!」
指示に応じた各々の分隊が持ち場につき、準備を整えるなか私も、第1分隊の隊員がいる丸太の後ろへと位置につく。
「合図があるまでは発砲待て」と言い暫く待ち構えていると、森の奥から東欧系の言葉が聞こえ始め、次第に近づいてくる。
光を得られた
「射撃開始!奴らを地獄に送ってやれッ!!」
瞬後、俺からの合図を皮切りに銃撃が開始された。
先ず、左右の機関銃分隊のM240汎用機関銃が火を噴き、続いて前衛の第1、第2分隊のSCARが発砲し始める。
SCARはFNエルスタル社が開発した特殊部隊用戦闘アサルトライフル(Special operations forces Combat Assault Rifle=SCAR)で新素材が使われている人間工学的に優れた銃だ。
掃討作戦発令時に伴い、第32海兵コマンド連隊では装備更新が行われた。今までM16やM4カービンなど、各々がバラバラに使っていたが、結果として汎用性の高いSCARで統一された。
大半の隊員が6.8x43mmSPC弾対応のSCAR-Mだ。
第3分隊は長射程型バレルに交換した7.62x51mm仕様を使い、前衛が取りこぼした敵兵を精密射撃の1発で仕留める。
《アルファ1-1、こちらチャーリー2-1。此方も敵の哨戒部隊と接敵、現在交戦中。到着に時間が掛かりそうだ》
無線から伝えられる第3小隊の状況に俺の表情は厳しくなった。撃ち尽くした空の弾倉を新しいのに交換し終えると、無線で応答する。
「なら、回収ヘリはどうなっている?!」
《フォートレスの連絡によれば、10分前に
「遅い!到着する前に全滅するぞッ!!」
「軍曹、左から敵の新手が来ました!」
「第2分隊と左翼の機関銃分隊は新手に対応しろ!」
胸元の戦術ラップトップを開くと周囲の状況を確認する。
前線航空管制班から回されたMQ-9“リーパー”無人攻撃機が上空にて監視している。
その赤外線カメラで捉えている映像が映し出されると、光が点滅する点の180度周りを無数の熱源が取り囲みつつあった。
点滅するのは赤外線ストロボを装備する俺たちだ。周りの白い熱源は全て敵歩兵を示していた。
これはマズい。無人攻撃機によるミサイル攻撃を要請したが、搭載してないので無理だと言われた。
空賊連中の『死神』と同名だが、肝心な時に役に立たない無人機だな、と毒吐いた。
自身が楯としている丸太に銃撃が集中し、削られた木材の破片が上から降ってくる。
敵はユージア兵だけでは無い。銃弾が着弾して削られる木片が飛び散る事で目を殺傷する危険性がある。
これはフラグメンテーション効果と呼ばれ、弾頭部が脆い銃弾によっては着弾時に粉々になり、木片とともに熱を帯びた破片を撒き散らす。
敵の銃撃が止む様子は無い。それどころか、駆けつけた増援によって、もっと激しくなる。反撃の機会すら与えないほどに撃ち込まれる為、身を屈めるしかない。
「各員へ!擲弾手はEGLM(Ergonomic Grenade Launching Module)用意!弾種はエアバースト。他は手榴弾を、機関銃分隊は左右に制圧射撃だ! スタンバイッ!!」
各々の隊員が行動を開始し準備する。
俺も背中のバックパックからアドオン式Mk13 EGLMを単体で使用出来るタイプを取り出すとストックを伸ばす。バレルを前へスライドさせると、40mm空中炸裂弾を装填する。
周りの隊員たちを一瞥し用意が整っている事を確認する。
敵の銃撃がある程度まで落ち着くのをジッと待っていると、敵が何事か叫び、辺りに響いていた銃声がぴたり、と止んだ。どうやら、反撃してこない俺たちが死んだと思っているのだろう。
残念だったなと、ほくそ笑むとマイクを掴み言った。
「今だ─────撃てッ!!!」
丸太の陰から身を出した擲弾手たちが銃を構えると、アンダーバレルに装着してあるEGLMから40mm空中炸裂弾を発射、俺も撃ち込んだ。
発射された弾は森の中へと飛び込むと地面の上1.5mで炸裂した。
約300以上の小さな破片が10m範囲に渡って飛び散る。
膝撃ちや腹這いになっていたユージア兵達は頭上から降り注いだ熱が籠もった破片を体中に喰らい、悲鳴をあげた。中には目の前で炸裂した者もおり、両目の視界が失われ激痛が襲い、地面で呻き声を出しながら転がっていた。
40mm空中炸裂弾は弾頭部に起爆タイミングを調整するリング状のダイヤルがあり、それを回してどの距離(約40から300mまで)で炸裂する事が可能だ。
EGLMのアタッチメントにレーザー測距器があれば、レーザー測距で計った距離を擲弾へ信号として送り空中炸裂することも出来る。
そんな彼らにトドメとばかりに投擲される手榴弾。
通称“アップル”と呼ばれるM67破片手榴弾が森の中へと消え、数秒後に爆発。大量の破片を撒き散らし、更に多数の敵兵を殺傷した。
手榴弾の爆発後に再び身を出した俺は部下たちに指示を出した。
「奴らは混乱状態だ。全隊一斉射撃開始!」
混乱の隙を突いて再開された銃撃。
視力を失いヨロヨロと森から這い出てきた敵兵や一部逃げ出した兵士たちへ火箭が襲い掛かり、次々と倒れてゆく。
正面の両翼に位置する敵兵たちも反撃するが指揮官を失ったのか、統率がなっておらず銃撃は疎らだった。
だが、予期せぬ事態が発生した。
バタタタッと、ヘリ特有のローター音が辺りに響き始めた。味方かと隊員たちが表情を明るくするが、俺は不審に思った。
(ミナカミから飛んで来るには早すぎる。それに、このローターの重低音......)
次第に近付いてくる轟音。
やがて姿を見せたそれは期待外れな結果だった。
「嘘だろ!?」
隣でヘリを見たアルトマンが言った。
上空でホバリングしているその機体は見慣れたMV-22やMH-47のようなヘリではなく、世界最大級の貨物積載量を誇るオラーシャが開発した大型輸送ヘリMi-26だった。
全部で3機いるMi-26のうち2機が、左翼側100m離れた木材集積場の空き地に着陸し歩兵を降ろした。合わせて150名近い敵兵が周囲に展開すると、遮蔽物に身を隠しながら攻撃してきた。
「何処から飛んで来やがったんだあいつらッ!?」
「余程の大規模な部隊だと勘違いしたんだろ!」
2機が歩兵を降ろし終えると離陸し上空へと退避する。森の上で待機していた1機が低空で進入すると、ロープで吊り上げている装甲車を空き地へ投下した。
「マズいな......」
投下されたのはWAV-3装輪装甲車だ。
コイツはヴェルナー社の製品で、ローコストで生産可能、安定した機動性、爆発反応装甲をつけても13t未満という装甲車でオラーシャも一部使っている。
そのWAV-3が車体上部の旋回砲塔をこちらに向けると機関砲を撃ち始めた。
「第2分隊後退しろ!他は援護射撃!!」
右翼に展開していた分隊が移動を開始。改めて位置についた機関銃分隊と第3分隊の援護射撃を受ける。
WAV-3は搭載する30mm機関砲を撃ちまくり、遮蔽物となっている丸太の山を榴弾で吹き飛ばしては、どんどん此方へと迫ってくる。
対装甲兵器が無い我々では対処出来ない。偵察目的の装備だった為に火器の弾薬も底を尽きそうだ。
絶対絶命の状況。ベルツ中尉から預かった部隊を此処で失うのか。歯噛みする。
WAV-3との距離が50mを切ろうとしていた、その時だ。
上空でホバリングして此方に機関銃による掃射をしていたMi-26の1機が、頭上から降り注いだ無数の曳光弾に貫かれ、ヘリはまるでショットガンに撃たれたかのように穴だらけとなり爆発し墜落、炎上した。
「何だッ!?」
ヘリの墜落に混乱する敵部隊であったが暗闇の空から、今度は木枯らしのような音が立ったと思うと幾つもの閃光が走り爆発。
敵歩兵部隊の集団中央で爆発を起こすと、土砂と共に敵歩兵が宙を舞った。
「砲撃......?」
耳に響く爆発音に隠れて砲声が聞こえた。
頭上を見上げる。暗視装置越しに見えるのは漆黒の空と雲。その雲の切れ間からは月が顔を覗かせている。その雲の間に一瞬だったが、点滅する光が見え隠れしていた。アレは......?
呆然と見上げていると、ヘッドセットのイヤフォンにノイズが短く走った。
《─────待たせたわね。アルファ1》
聞こえてきた声の主は、含み笑いをした若い女性だった。
上空2500m(8000ft).side/コールサイン“フリスト”
『標的への命中を確認。......ホントにいいんですか?』
機体を操縦しつつ眼下の地上を監視していた私に、機内無線機を通じて、そう質問するTVO(TVオペレーター)。
「CAGの護衛も大事だけど、危機的状況の仲間を見捨てられないでしょ? それに、CCTも協力してくれたし」
ね?と言い、隣の副操縦士に同意を誘うよう、ウィンクをして促すのは、このAC-130
私の隣の席に座る副操縦士オーブリー・オルブライト少佐が溜め息を吐きながらも魔導インカムに手を掛けた。
「そう言う事だTVO。任務も重要だが、機長の言うとおり仲間を見捨てることは出来ない。以上だ」
『了解です』
その返事を聞くと再び操縦席の窓に視線を向けた。
私たち第1特殊作戦航空団第4特殊飛行隊、通称「ガンシップ・ウィッチーズ」に与えられていた任務は敵地の奥深くへと向かうを特殊部隊CAG(戦闘適応グループ)への火力支援任務で、CAGが敵と交戦した場合、要請に応じてこの機体に搭載された火砲を使い制圧する。
その護衛任務の途中で司令部から連絡があり、海兵コマンドの部隊が危機に陥っている事を知った。
幸いにも作戦エリアの近くにいた為CAGにこの部隊を支援すると伝えたら、彼らに随伴する
高台に移動したCCTが戦闘エリアを観察し全体を把握。攻撃目標を指示され、私たちが行動を開始し、今に至る。
視力に特化した固有魔法を使い、状況分析を行う。
既に元魔女の私だけど、現役時代からこの仕事についていた為、ストライカーを使う魔女ほど魔法力を激しく使わなかったから20歳を過ぎても固有魔法が使えた。
「さて、と......
「焼き払って」
コールサイン“フリスト”/side/攻撃担当クルー
「FCO了解。TVO、聞こえたわね?」
アメリアから指示を受けたのは攻撃担当要員を統括するタニア・マッカートニー曹長だ。彼女が火器照準、すなわち射撃手担当の要員に呼び掛ける。
「TVO了解。第1目標をヘリにします」
呼び掛けに応じたカール・アイブリンガー1等軍曹が火器管制システムを調整する。彼はカールスラント連邦空軍から派遣されている唯一の男性乗組員で射撃手を担当する。
「森の中にも多数の熱反応を感知。敵増援と思われます」
カールの隣では赤外線検出担当官フィオナ・エインズワース技術軍曹が、コンソールを操作し新たな脅威情報を伝える。
「イコライザー、レディ。......発射」
照準ディスプレイに映し出されたMi-26の1機に、射撃用スティック上部のカーソルを操作し砲の角度を調整するとロックオンと文字が表示され自動追尾を始める。
スティックのトリガーを軽く引くと、ケーブルによって信号を受け取ったスプーキーⅡの左舷部に装備されてるGAU-12/A
龍が吐く火炎のように轟然と25mm弾を連射するイコライザー。
その弾幕に捉えられたMi-26が胴体やメインローター、エンジン部を全て粉砕され墜落した。
残った3機目は悲惨な結末を目の当たりにして離脱しようとした。だが、自動追尾態勢に入ったイコライザーから逃れる事は出来なかった。直ぐに鉄の雨が降り注いで、呆気なく撃墜された。
「敵装甲車、味方部隊との距離近づきます」
「車種特定、WAV-3装輪装甲車」
「確認。105mm用意よし」
「カール、味方との距離が近い。奴の前方に30mmを数発撃ち込んでバックさせろ。そこを狙え」
「TVO、了解」
使用兵器をGAU-23/Aに切り替えて撃つ。
部品調達に難を示していたボヨールド40mm機関砲に代わり、スプーキーⅡに搭載された30mmチェーンガン。
毎分200発で速射可能なブッシュマスターⅡから放たれた30mm弾が、装甲車と味方部隊との間に着弾する。
それに驚いた装甲車が可能な限りの速度で後退し始めた。だが途中で丸太の山へと後ろから突っ込み、その影響か、丸太が車輪部分に挟まって行動不能になった。
「敵車両、スタックしました」
「TVOより機長。敵装甲車に105mmを撃ち込みます。地上部隊へ警告をお願いします」
『了解よ。フリストよりアルファへ。頭を下げて』
アメリアがコリンズたちに警告を通達する。それを確認したタニアがカールに振り向いて指示を出す。
「カール、目標への攻撃を許可」
「了解。目標を破壊します」
ガンカメラの照準システムが変わる。
スティックの射角修正カーソルに反応するのは、このAC-130ガンシップに搭載してある砲熕兵器の中でも最大級の火力を持つ105mm榴弾砲だ。
目標をロックした砲は敵装甲車に向けて対地榴弾を発射。未だに動けない敵装甲車の頭上から音速で飛来した砲弾は、目標に着弾すると同時に炸裂した。
敵装甲車の薄い上部装甲を弾頭内に込められた高性能炸薬が破壊。乗員をこの世から跡形も無く消し去る。炎上する鉄屑と化した装甲車の周囲には、爆発に巻き込まれた敵兵たちの死体が転がっていた。
「敵装甲車撃破。フィオナ、他の敵は?」
カールの問いにフィオナは首を横に振る。
「周囲の敵はだいたい片付いたわ。......残った敵兵は部隊を纏めて撤退したみたい」
「了解。......曹長、クリアです」
「分かった」
火器管制システムをセーフティーモードにしたカールの連絡に、タニアがアメリアに報告する。
「機長、こちらFCO。標的は殆ど無力化しました。残存は撤退したもようです。指示を」
『こちら機長。良くやったわ、ガンズ』
『此方はCAGの護衛任務に戻るわ。警戒を続けて』
「了解、機長」
side/コリンズ軍曹
目の前には燃え盛る敵装甲車やヘリの残骸、力無く横たわる無数の敵兵が広がっていた。
第1小隊の隊員達は一部が周辺警戒に、残りは敵の生存者がいないか、辺りを捜索している。負傷して生き残っている敵兵を見つけた隊員が衛生兵を呼び、手当てをしていた。
《“フリスト”よりアルファ1へ。此方は元の任務に戻ります。また支援が必要になれば要請してね。オーバー》
上空を旋回しては支援攻撃をしていたガンシップが離脱していく。
空を見上げると、ガンシップは雲の中へ入り、その姿を消した。彼女らがいなければ我々は全滅していた。
幸運に恵まれている事を噛み締めつつ、無線を開く。
「支援に感謝する“フリスト”また世話になる時は、また今日のように敵を蹴散らしてくれ。ありがとう。アウト」
礼を言い、暫く夜空を見上げ彼女らを見送る。ガンシップを保有する航空団は精鋭部隊の証だ。
表に公表出来ないような裏の任務も担当していると聞いた事がある。
彼女らは我々以上に重い十字架を背負って従事しているに違いない。
彼女らに敬意を払うと共に、この先、待ち続けるであろう任務でも無事に帰還する事を祈る。
ヘッドセットのマイクから手を離すと後ろを振り向き、ヘリの着陸スペースを確保する為に動く部下たちの下へ、駆け足で、丸太が散乱する広場に向かう。
どうもフェネックです。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ガンシップ・ウィッチーズは「その翼は何処へ」から引っ張って来ました。その翼は何処へとACE WITCHES INFINITYの世界観は違いますのでご注意を。
今回登場した戦闘適応グループ「CAG」とは、要はJSOC(統合特殊作戦コマンド)に所属するデル......おっと誰か来たよう(ry
CCT(戦闘航空管制員)とはリベリオンのAFSOC(空軍特殊作戦コマンド)に属する特殊部隊員の事です。ベルツ中尉のようなFAC(前線航空統制官)と同種の人です。ただ、特殊部隊員ですから、その任務も多様です。航空管制や火力支援誘導、拠点確保など。他の特殊部隊支援の為に1人か2人随伴します。
皆さん、知っていますか?
実はこのCCTが現実の日本で活躍したことを。嘉手納にいるアメリカ軍第353特殊作戦群が、あの3月11日の出来事により被害を被った仙台空港に向かい空港回復に力を注いだんです。実際、3月16日には離着陸に必要な滑走路をたった1時間足らずで確保しています。彼らの事はあまり発表されませんでしたが、その働きは凄いの一言だと思います。