ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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遅くなりましたが、新年おめでとうございます。
昨年に引き続き、今年もよろしくお願いします。


#18 狩人殺しの帰還 前編-servant of Hera 1-

2019年.9月28日.1145hrs

扶桑.種子島南東沖海上.補給艦「オルカ」

 

 

「右舷ウイングより艦橋(ブリッジ)へ。右前方、方位0-2-0、距離400、海面に浮遊物を視認した。どうやら撃墜された戦闘機の残骸のようだ。オーバー」

 

『こちら艦橋。此方のレーダーでも捉えている。他に浮遊物を発見しだい逐一報告せよ。アウト』

 

艦橋の両側部に設けられている監視場所(ウイング)にて周辺の海上を双眼鏡などで見張り要員(ワッチ)が目を光らせている。そんな中、

 

国連海軍 太平洋方面軍、コードネーム「シエラ」補給船団を率いる補給艦「オルカ」はマリンブルー色の海原を順調に航行しつつ、目的地である広島県呉国防海軍基地へと向かっていた。

 

旗艦である「オルカ」を先頭に続く4隻の補給艦とその周りを護衛の役目を負う駆逐艦が5隻の計9隻は国連軍上層部からある命令を受けていた。それは、現在呉海軍基地に停泊している国連軍艦隊へ補給物資を届ける事だ。

 

8月中旬より9月上旬までの間、扶桑本土防衛の為に派遣された国連海軍艦隊は度重なる出撃により燃料はもとより弾薬の備蓄もほぼ底を突いたのだ。

 

扶桑やリベリオンと言った国へ物資補給の要請する事も可能だったが、プライドの高い国連海軍上層部はそれを渋った。

 

代替え手段としてインド洋に展開していたシエラ補給船団を急遽、太平洋方面へ回したのだ。

 

そんな多忙を極める補給船団の旗艦「オルカ」の艦長は、ワッチの中に混ざるようにウイングに出て、静かに海を眺めていた。

 

「順調に行けば、予定より早く港に着きそうね」

 

「そうですね、艦長」

 

艦長の隣に立つ長身の副長が頷き返事をする。

 

そんな副長より頭2個分ほど背が低い艦長は潮風に靡く金髪の長髪を片手で押さえながら、空いているもう片手で帽子の鍔を掴んで整える。帽子には「オルカ」の艦名とシルエットが刺繍されたワッペンが縫い付けてある。

 

リベリオン海軍の海軍作業服(NWU)に似たグレー系ピクセル迷彩服を着る他のクルーとは違い、艦長は白い制服姿にズボンと言った姿だ。右胸に貼るプレートには武語で“アークライト”と記されていた。

 

アンドレア・アークライト大佐。それが艦長の名前だ。

彼女はこの「オルカ」の艦長で乗員約200名のトップに立つ人物だ。

一応ウィッチとしては魔法力を発現しているが、本人は昔から船乗りを目指していた為、今の職に着いている。

 

艦周辺を飛び回るカモメの群から離れた一羽がウイングの縁に着地するのを見た彼女が、ポケットからクッキーの入った袋を取り出し開封するとカモメへと近寄り「はい」と差し出す。

 

注意深くクッキー越しに彼女を見つめていたカモメだったが、微笑む艦長に安心したのか、差し出されたクッキーをくわえ食べ始めた。それを見て笑顔になるアークライト。

 

袋に入っていたクッキーを全て与え終わると、そのカモメは彼女の肩へと飛び移り羽を仕舞う。どうやら彼女が気に入ったらしい。

 

アークライトが肩にとまるカモメの頭を撫でながら副長に向き直る。

 

「......しかし、上も頑固よね。 強情を張らずに補給支援の要請を扶桑やリベリオン政府に言えばいいのに。そういう所が素直じゃないんだから、国連は」

 

嘆息するアークライトに副長が苦笑する。

 

「まぁ、仕方がないんですよ。国連にも救援部隊として艦隊を出したんですからね。面子が大事なんですよ、多分」

 

「知ってる? その面子とやらのおかげで、第3艦隊以外に華夏や高麗の艦隊への物資補給を私たちが請け負うって話」

 

「......マジですか」

 

アークライトの言葉に副長が冷や汗を流す。

実際のところ、彼らシエラ補給船団の他に華夏・高麗艦隊へ補給を行う別の船団を派遣する事が国連軍内で決定されていたのだが、彼らは知らなかった。

 

「まったく、嫌になるわね......、ん......?」

 

悪態を吐いて前甲板へと俯いていたアークライト。だが、視界の隅に「何か」が見えた気がしたのだ。顔を上げ、右舷90度の方角を見つめた。

 

水平線の先まで澄み渡る空と青い海が広がる、それは美しい光景だったが、右舷方向に数百メートル離れた護衛の駆逐艦のその先、海面上にキラリと、何かが光った。

 

目を細めて凝視する彼女を見たワッチの一人が双眼鏡を構え、彼女と同じ方向を見る。

 

海面の直ぐ上を這うように鈍い光を放つ細長い物、それが鳥とは思えない速度で此方へと向かって来ている。

 

何かを察したらしいカモメがアークライトの肩から飛んで離れた直後だった、彼女とワッチははっきりとソレを捉えた。

 

ワッチが慌てた様子でヘッドセットのマイクを掴み叫んだ。

 

「......っ、右舷90度よりミサイル!!」

 

そう報告した瞬間、超低空で飛来した対艦ミサイルが並走していた駆逐艦の土手っ腹に突っ込み、激しい爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1152hrs

扶桑.種子島南東沖上空.side/新城 久幸(リーパー)

 

 

呉海軍基地に向かう途上のシエラ補給船団から緊急連絡を受けた防空指令所(DC)は新田原基地の第5航空団に緊急発進(スクランブル)を命じた。

 

それと同時に丁度、日向灘上空にて警戒飛行の任務についていた俺たち(ボーンアローズ)にも要請が来た。

 

今は防空指令所からの誘導を受けつつ現場海域へと急行していた。

 

「ったく、あの海域は安全じゃなかったのか」

 

防空監視所(SS)の連中、眠りこけてんのか?』

 

かもな、と毒吐いた。

だが今は悠長にしてはいられない。既に船団は何隻か被害を受けているとの連絡を受けた。現時点で判明している敵に関する情報は対艦ミサイルによる攻撃のみ。それ以外は無い。

 

対艦ミサイルを発射している奴が判明していない。敵機からか、或いは潜水艦か、もしくは足の長い巡航ミサイルか、幾つか脳裏に浮かぶが、明確な答えは分からない。

 

《間に合えばいいけど......》

 

アリシアの呟きに誰もが最悪の結末を考えた。

 

すると、激しい雑音(ノイズ)が鳴り響く。次第に弱まるノイズに混じって誰かの怒鳴り散らすような声、爆音が聞こえ始めた。

 

《こち......ルカ...本艦は...在.........機からの攻...!》

 

「『オルカ』こちらタスクフォース118所属ボーンアロー隊、応答を」

 

《......っと来たか! こちらは敵機からの対艦ミサイルによる波状攻撃を受けている。既に護衛の駆逐艦2隻が撃沈、輸送艦1隻が中破している─────》

 

状況は悪い。それだけは言える。

だが、未だに全滅していなかった事に少し安心したが、完全に安心しきるのは船団を襲う敵機を追い払ってからだ。

 

《────至急、航空支援を要請する!》

 

目的海域に到達し飛行していると、視界に高く上る黒煙の柱を確認した。同時に護衛の駆逐艦からの対空砲火の弾幕も見え始めた。周囲に艦載対空機関砲弾のシャワーをばら撒いていた。

 

「了解だ『オルカ』。敵機の情報をデータリンクで......」

 

だが、次の瞬間、危機を察したレーダー警戒受信機(RWR)がイヤフォンを通して警告を発してきた。

 

『レーダー警報!?』

 

「どこからだ!......ッ!?」

 

RWRからの警告音がいきなり途切れたと思えば、次にけたたましく鳴り響いたのは戦術電子戦システム(TEWS)からの“ロックオン”警告だった。

 

「全機、散開(ブレイク)ッ!!」と伝えると機体をロールさせ背面から降下を行った。

一気に高度が落ち続けるが逆に速度が上がる。ハーネスが肩に食い込み、マイナスGが襲うが、気にせずに航平に問い掛ける。未だロックオンは解けていない。俺達を狙っている奴は追尾しているはずだ。

 

航平(アイドラー)、どうだッ!?」

 

『見えないッ!! 一度反転して上昇だ!』

 

「了解だ────ぐっ!」

 

スロットルを後退させ操縦桿(スティック)を手前に引き起こす。

機体は真っ逆様の状態から一転して機首をぐいっとほぼ垂直にまで上げた。スロットルを荒っぽく前進させF-15E(ストライク・イーグル)のエンジンが雄叫びを上げ、ノズルから真っ赤な炎を吐き出した。

 

推力増強装置(オーグメンター)点火。機体はさながらロケットのように真上に凄い勢いで上昇を開始する。

 

「な─────アイツは!?」

 

上昇していくイーグルと相対するように、此方へと降下してきている敵機の姿を見た俺は目を見開いた。

 

ダイバーターレス超音速インレット(DSI)と呼ばれる特徴的な空気取り入れ口。

外側に向いた2枚の垂直尾翼、ギザ状の継ぎ目、機首下部の電子光学目標指示システム(EOTS)......全体的にステルスを意識したF-22(ラプター)を小型化したような機体。

ロッグヒード・マービン、F-35“ライトニングⅡ”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻.補給艦「オルカ」

 

 

敵機(F-35)からの対艦ミサイル攻撃により、シエラ補給船団は随伴する駆逐艦2隻を失い、輸送艦の1隻は中破していた。

 

それでも全滅せずに持ちこたえられていたのは、生き残っていたミサイル駆逐艦3隻の内、2隻「エクスキャリバー」と「ブロードソード」がイージスシステム搭載艦だった事が理由だ。

 

相手がステルス機だと分かると、この2隻は協同交戦能力(CEC)海軍統合射撃指揮対空能力(NIFC-CA)と言った戦術データ共有能力を使い、今まさに(イージス)としての役割を果たしていた。

 

敵の対艦兵装もハープーン対艦ミサイルだと判明するとプログラムを再設定し調整、片っ端から撃墜していた。

 

だが、それも何時まで保つかは分からない。

 

「オルカ」艦長のアークライトは、艦を停止させて撃沈された駆逐艦の負傷者を収容する為、乗員から選抜した救助部隊を編成。搭載されていRHIB(複合艇)を降ろし、海面を漂う駆逐艦の乗員たち救出を指示していた。

 

「収容した者は負傷者を優先して医務室へ運んで! 動ける人で体力に余裕がある者は救助作業を手伝わせて!」

 

「アイアイ、マム!」

 

アークライトは慌ただしい艦橋の中で的確な指示を出して救助作業の指揮を執っていた。

 

彼女の見つめる先には海面の波間にて漂流する駆逐艦の乗員たちの姿が。2隻合わせて400名近い数だ。他の輸送艦や駆逐艦の1隻からも応援部隊が駆けつけてきているが、まだ時間が掛かる。

 

そもそも低速で非武装に近い輸送艦がこの海域に止まる事事態、自殺行為に等しい。

 

「敵対艦ミサイル、駆逐艦のディフェンスエリアを突破してきます! 数3、優先迎撃を進言(リコメンド)します!」

 

艦橋外のウイングからワッチがそう報告すると、艦内にあるCIC(戦闘情報センター)の要員が応答する。

 

『敵対艦ミサイル(ASM)捕捉!』

 

ヴァンパイア(警戒)ヴァンパイア(警戒)! ファランクス、撃ち方始めッ!!』

 

戦術行動士官(TAO)が射撃要員に指示を出し操作を行い反応したのは艦首と艦尾に搭載されている20mmCIWS(近接迎撃火器)、通称バルカン・ファランクスだ。

 

この6砲身のガトリング式対空機関砲は、内蔵するレーダーから得られた情報を元に自艦に最も脅威度の高い目標から追尾、射撃、撃破を行う完全に自動化された防御火器だ。

 

そのファランクスが右舷方向から低空飛翔(シースキミング)で迫る対艦ミサイルに向け指向すると自動迎撃を開始。砲身が高速回転(スピンアップ)を始め、毎分3000発以上(秒間50発)で20mm徹甲弾をばら撒く。

 

ヴアァァァァァッ!!!

 

既にミサイルとの距離は5kmを切っている。時速900km近いスピードで迫るミサイルが着弾するまで20秒足らず。

 

艦橋要員(ブリッジクルー)が固唾を飲んで見守る中、砲身の先が真っ赤になるまで迎撃を続けるCIWSに艦の全乗員たちの命運が懸かっていた。

 

その弾丸のシャワーの中へと突っ込んでくるミサイル3基の内、1基が徹甲弾を喰らい爆発、撃墜。続いて2基目を撃墜した。あと1基。

 

その1基は距離が近づいた事でシースキミング飛翔からホップアップ、蛇のように鎌首を持ち上げ、最終突入態勢(ターミナルフェイズ)に移った。

 

仰角を取ったCIWSがミサイルを追尾する。それと同時に右舷ウイングではワッチに混じって銃架に据え付けられている重火器を扱う男たちがいた。

 

「撃てェェェ!!!」

 

クルーの一人が叫びと、CIWSよりはか細い火箭がウイングからミサイルに向け放たれる。

 

「随分と前時代的な迎撃だな!チクショウッ!!」

 

「まったくだな!海軍に入るんじゃなかったぜ......!」

 

そう言いつつも彼らは据え付けられたM2重機関銃(GAU-16)M134ミニガン(GAU-17)を操作して弾幕を浴びせていた。

アークライトが「何でもいいから使える物は使うのよっ」と言った結果がコレだ。彼らは貧乏くじを引かされたも同然だった。

 

CIWSと小火器による弾幕を嘲笑うように迫るミサイル。

 

「総員衝撃に備えて! 各部(オールステーション)ダメコン用意ッ!!」

 

艦内無線機で告げるアークライトも艦橋の片隅で頭を押さえ姿勢を低くした。誰もが被弾を覚悟した、その直後、

 

ドンっ!という爆発音が響き渡り、艦が震動する。

 

(っ......! ヤられ......ん?)

 

やってきた衝撃は思っていたよりも大した物じゃなかった。

それに気づいた彼女が立ち上がり、艦橋の窓から前甲板を見るが、甲板にはミサイルの残骸らしき小さな破片が炎を纏い転がっているのみだ。それも自動消火装置により鎮火されつつある。

 

他の艦橋要員たちも立ち上がり外の様子を確かめていた。アークライトは要員を押しのけ、ウイングへと通じるハッチを開いた。

 

その瞬間、目を見開く。

 

右舷ウイングのすぐ傍、空中をホバリングする戦闘脚(ストライカーユニット)を履いた一人のウィッチがいた。

 

ダークグレーを基調としたピクセル迷彩服に身を包み、マガジンポーチ付きのプレートキャリアーを着用する後ろ姿の彼女が、此方へと振り向く。

 

アークライト以外に、ウイングの地べたで尻餅ついて見上げるワッチや射撃員たちも呆気にとられていた。

 

ウィッチが声を掛ける。

 

「無事ですか? アークライト艦長」

 

そのウィッチの腕に付けられた部隊章には、民間軍事企業「マーティネズ・セキュリティー社」が誇る最精鋭部隊のシンボルであり、神話にて英雄オリオンをその毒針で死に追いやった────“サソリ座のエンブレム”

 

「あ......貴女は!?」

 

アークライトが驚くように言った。

 

そんな彼女に対しウィッチは空いている片手で敬礼をしながら、名乗った。

 

 

 

タスクフォース118(アローブレイズ)所属、アンタレス1(・・・・・・)

 

「これよりシエラ補給船団の護衛任務に着きます」




さぁ、今回は「エースコンバットX2 ジョイント・アサルト」の主人公「アンタレス」登場です。TS化してウィッチとして出してみました。

新城達とは同じ職業柄同士、どんな展開になるでしょうかね。

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