ACE WITCHES:INFINITY   作:フェネック

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#19 狩人殺しの帰還 中編-servant of Hera 2-

2019年.9月28日.1158hrs

扶桑.種子島南東沖海上.補給艦「オルカ」

 

 

 

「これよりシエラ補給船団の護衛任務に着きます」

 

彼女の言葉に、呆気にとられていたアークライト艦長は現実へと戻された。

 

貴女(アンタレス)......何時から前線に...?」

 

そう問い掛けるアークライトにアンタレスは何も答えず、ただその表情に苦笑を浮かべた。

 

民間軍事企業マーティネズ・セキュリティー社の切り札。

「アンタレス」の名が有名になったのは数年前だ。

当時、世界はユリシーズの厄災の影響により極度のデフレに陥っており、その混乱に乗じて世界各地で武装テログループによるテロ活動が活発となったのだ。

 

あまりの件数にその対応を追われた各国政府は対テロ作戦に民間軍事請負企業の参加を積極的に勧誘した。当初は各国から派遣された正規軍主導の作戦も練られていたが、各国軍の意見が一致せず対立が深まるばかりだった。

 

その事態に痺れを切らした一民間軍事企業が名乗りを上げ、各正規軍を支援任務のみに限定し、民間軍事企業の私設部隊が主力を担当とする方針を提案した。

 

 

その企業が、マーティネズ・セキュリティー社だった。

 

 

マーティネズ社は陸、海、空の3つの部隊を保有しており、世界各地への即時戦力投入能力が高かった。その足の早さを活かした作戦と各国軍からドロップアウトした精鋭部隊によりテロ部隊の鎮圧、殲滅に貢献した。

 

中でも、マーティネズ社の航空部隊、フレデリカ・バーフォード中佐率いるM42飛行中隊第1飛行隊、通称アンタレス隊の活躍は他より群を抜いており、各国にその名を轟かせていた。

 

そのテロ鎮圧作戦が終了したと同時に、アンタレス隊は解散。アンタレス本人も退役した、と言われていた。

 

そんな退役したとの噂が流れていた彼女、アンタレス1が戦線に復帰して、今、シエラ補給船団を護衛する為に飛んできている。それだけで、アークライトをはじめとする乗員たちは歓喜した。

 

ワッチ達が口笛を吹いたりして喜びを露わにしている中、アンタレス1がヘッドセットのイヤフォンに手をやる。

 

 

「...了解。 アークライト艦長、救助作業を続けてください。上空の敵機は我々が対処します。我々が来たからには、1発のミサイルも被弾させません。では───」

 

 

そう伝えると戦闘機脚(ストライカーユニット)の魔導ジェットエンジンを噴かして一気に上空へと飛んでいった。

 

ジェットの排気に飛ばされそうになった帽子を押さえて、アークライトは飛んだ彼女(アンタレス)を目で追った。クリーンな蒼空へと上昇し続けるアンタレス。

 

既にゴマ粒ほどに離れた彼女の優美な軌跡を最後まで見届けたかったが、まだアークライトには任務があった。

 

アークライトが手を叩いて周りに指示を出す。

 

「ハイハイ! ボーッとしてないで持ち場に戻りなさい。まだ、救助作業は終わってないのよ。アンタレスがあぁ言ったからには、私達も踏ん張るわよ!」

 

『イエス・マム!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻.同海域上空.side/ “アンタレス1”

 

 

上昇した私は「オルカ」から離れ、魔導針を出現させると、ガジェット式に装着されたAESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダーを併用した索敵を行う。

 

同時にヘッドセットの無線を使い、数百km離れた空域にて滞空している早期警戒管制機(AWACS)を呼び出す。

 

 

「“カノープス”応答を」

 

《こちら“カノープス”感度良好》

 

「ミサイルを撃墜、破片は魔力障壁(シールド)で相殺、『オルカ』に被害無し。弾倉(マグ)を1個使用」

 

《上出来だ、アンタレス。弾倉についてはこちらのモニターでカウントしている。以後、報告の必要無し》

 

 

AWACSに要撃管制を担当する機上管制士官(ACO)が答えると、今度は別の声で誰かが私へ呼び掛けた。

 

 

《───どうだい、久しぶりの戦場(そら)は?》

 

 

誰かと思えば、私を戦場へ連れ戻した張本人のようだ。

 

 

「若干体がなまってはいるが、行けるよ」

 

《ユニットの調子は?異常無いか?》

 

「問題無し。動翼やタービン、ユニットのチューニングもあの時と変わりない。整備班に感謝するよ、ほんと」

 

 

チラリと、両足に履くストライカーユニットを一瞥し、整備班への感謝を言葉にした。

 

全体を3色のグレー系で塗装され、主翼は複数の角度で構成された面取りデルタ翼、外側に向いた2枚の垂直安定板、全遊動式水平尾翼(オールフライングテール)を持つ機体構成。レーダー波の反射を考慮したギザ状の継ぎ目、上下に20度の角度まで偏向可能な推力偏向式排気口(スラスト・ベクタリング・ノズル)

 

私の愛機、F-22A ステルス戦闘脚(ストライカーユニット)。通称ラプター。

 

高いステルス性を誇り、プラント&ホイートストンF119魔導エンジンが生み出す強力な推力、推力偏向式排気口等を駆使した高い機動・運動性。第5世代最強を謳う航空支配戦闘機脚と呼ばれている。

 

このユニットは、元々リベリオン空軍が保有する輸出不可の物だったけど、数年前のある任務に於いて、特別にリベリオン政府から許可が下り、私が受領した唯一のラプター。

 

今では垂直尾翼に部隊名の由来となったサソリ座のエンブレムと、マーティネズ社のマークを描いて使用している。

 

 

《お前が何時か戻って来るかと思って整備班が毎週点検・整備していたんだ。そっとやちょっとでは壊れんさ》

 

「戻って来るって...あのねェ......無理矢理連れ戻したのはどこかの誰かさんじゃなかったかしら? ねぇ?」

 

《......》

 

「フレデリカ、無視しない」

 

 

フレデリカ・バーフォード中佐......、今は大佐か。

 

私が所属していたマーティネズ社M42飛行中隊の中隊長を務める指揮官で、入社前はリベリオン空軍のウィッチとして空を飛んでいた経歴の持ち主。既婚の2人の子持ち。

 

娘2人は魔法力を発現しており、母親のようなウィッチを夢見ているらしい。母親であるフレデリカはあまり勧める気じゃないようで、時々私に相談してくる。

 

......そのフレデリカから、昨日の朝早くから電話で呼び出しが掛かったきたので、私はてっきり娘の相談か、家族パーティーでもやるのかと思って身支度して自宅を出た瞬間、厳ついSPのような男達に連行され、到着したのは近隣の空軍基地だった。

 

嫌な予感はしていたが、滑走路脇にて発進準備万端の輸送機のカーゴドアにて手を振るフレデリカの姿を見た瞬間、悪い予感が的中していた事を悟った。

 

(あぁ......引退したって言うのに......)

 

私に拒否の有無も言わせず、話されたのは“マーティネズ社が現在、世界を巻き込んで行われている対ユージア作戦に参戦した。我が社は国連所属として戦地に向かう。君にも力を貸して欲しい”......との事。

 

正直言って私は降りたかった。だけど、今現在進行中の戦争も気になっていたのは事実だ。私が平穏に暮らしている間に人が次々に死ぬ、それは耐えられなかった。

 

だから、私は復帰の道を選んだ。......半ば強制だけど。

 

《まぁ、そう大佐を責めないでやってくださいよ、アンタレス1。大佐も上層部からとやかく言われたんですよ》

 

そうバーフォードを擁護するのは管制士官の一人、誰に対しても世話好きのブリタニア人、グレアム・ハートリー少尉だ。

 

《私達も同じような感じよ、アンタレス》

 

《そうそう、俺なんか2週間の有給休暇を今回の出撃でパーになってしまったよ。しばらくは、自宅でゆっくり出来ると思ったんだがなァ》

 

続いて話すのはグレアムと同じ管制士官のサラ・アンデション少尉、マイケル・アリーナ少尉の2人。サラはバルトランド出身で優しいお姉さん。マイケルは気さくな性格のリベリオン人だ。

 

......てか、そろそろ任務に戻らないと、

 

《こらぁ!! 今は任務中ですよ! 集中してください!》

 

ほーら、雷が落ちてきた。おっかない。

 

《大佐も大佐です! 部隊を束ねる指揮官として、そこはビシッと『私語は慎め』と言ってくださいっ!......えーっじゃありません!まったく》

 

自分より階級が上の人間であろうと問答無用で取り締まるのは扶桑人の羽沢京香(はざわ・きょうか)少尉だ。彼女はその堅物と呼ばれる性格で部隊内の規律を守る警察官のような女性で、度々こうやって怒鳴っては周りを一喝していた。

 

陰ながら皆から「お母さん」と呼ばれている。本人はまだ未婚なのだが、その性格が災いして婚期を逃している事を揶揄して言っているかもしれない。

 

一息ついて羽沢が私に無線で連絡する。

 

《アンタレス1、こちらカノープス。船団へ接近中の敵機はアンタレス2~4が担当します。貴女は交戦中の味方部隊の応援に向かってください》

 

「アンタレス1、了解。誘導をお願い」

 

《アンタレス1、そちらから方位(ベクター)0-8-0(ゼロ・エイト・ゼロ)距離(レンジ)26海里(マイル)高度(エンジェル)2-2-0(22000ft)復唱せよ(リードバック)

 

「アンタレス1、方位0-8-0、距離26マイル、高度2-2-0」

 

《アンタレス1、復唱に間違い無し(リードバック・イズ・コレクト)JTIDS(統合戦術分配システム)経由で情報を回します。繰り返しますが、味方部隊は交戦中です》

 

カノープスから送信された情報が、装着しているシューティング・グラス型のHUDに表示される。

 

表示された情報には味方部隊の所属、機数、使用機体、搭載弾薬の残弾に至るまでがアップされる。さらには、私やカノープスが完全には捉えられていない微弱な機影、味方部隊の交戦相手も部隊に所属するウィッチが装備するウェアラブルカメラから送られてくる映像で判明した。

 

送信されてくる映像で捉えられた敵機は船団を攻撃したのと同じステルス機、F-35のようだ。機体形状をデータベースと照合すると短距離離陸垂直着陸(STOVL)型と艦上(CV)型の2機種で編成されているみたい。

 

「見たところ、ハープーンを積んでいたのはC型ね。これが対艦チーム。B型はさしずめ飛来する救援機を迎撃する対空チーム、と言った具合ね。よく考えているわ」

 

でも......、

 

「敵機はいったい何処から飛んできたの......? 増槽無しで半島から来たのならC型は分かるけど、B型は行動半径ギリギリ......、そもそも九州を東シナ海経由で迂回したなら到底無理なはず」

 

いくらステルスでも扶桑の最新の防空索敵網に引っ掛かる。だが、敵機はそれをどうにか躱した......。敵の艦隊の物なら尚更索敵に引っ掛からないはずはない。

 

「......まぁ、いいわ。謎解きは後にしよう......今はッ!」

 

そう踏ん切りをつけると、推力を上げ目標に向かう。

 

F-22の強さの一つは超音速巡航(スーパークルーズ)能力。これは推力増強装置(オーグメンター)無しで超音速飛行を可能とする画期的な能力で、燃料及び魔法力消費を抑えた高速飛行による航続距離・搭載ミサイルの射程延伸、敵機の追跡を楽に振り切れる、と言った利点がある。

 

そのスーパークルーズモードで空域に急行していると、備え付けられている通信システムが、味方部隊の無線を傍受し、イヤフォンに流す。

 

《ゼブー、11時下方(イレブン・オクロックロー)から敵機(ボギー)回避(ブレイク)回避(ブレイク)!!》

 

《見えた────敵機撃墜(ボギー・キル)!》

 

《ブロンコ、こちらアイドラー。2時上方(ツー・オクロックハイ)、旋回中の敵機を狙えるかっ!?》

 

《FOX2!FOX2!......外れた!!》

 

《うおぅ!? キャッスル!後方注意(チェックシックス)! 腹にガンポッド抱えた奴が......、ッ...撃ってきやがったッ!!》

 

切迫している無線。

敵機の網の中で奮戦している味方部隊の情報を再度HUDに表示すると、相手のコールサインを確認、無線を繋ぐ。

 

「ボーンアロー隊、こちらTF118所属ウィッチ。コールサイン、アンタレス1です。応答願います」

 

《こちらボーンアロー1!アンタレス1、そちらは...》

 

「そちらから方位2-6-0、15マイル、同高度です。補給船団防衛は私の部下が対応しています。AWACSとのデータリンクでそちらの状況は把握出来ています」

 

相手の求めている情報を素早く伝え、データリンク開始。

 

「こちらは交戦に備えます、JTIDSでそちらとリンク」

 

《了解! 敵機は少なくても10機以上はいる。こちらは戦闘機3、ウィッチ3の編成だ! 頼んだぜ》

 

「了解、ボーンアロー1」

 

無線を一度切った私は戦闘態勢に移る。

 

手にしているブレットM468突撃銃(アサルトライフル)安全装置(セーフティー)を解除する。同時に搭載兵装の状態を確認。グアムからの移動中だった為、今回はユニット側面部の魔導兵器倉(ウエポンベイ)内のAIM-9X視程内射程ミサイルが2発のみ。

 

「復帰初の任務がいきなり格闘戦(ドッグファイト)とはね......、まぁ感覚を思い出すには十分か」

 

自然と頬が緩み、不敵に笑う。

 

準備を整え終わる頃には味方と敵の空戦状況が目視で確認出来る距離にまで迫っていた。幾つか爆発の火花が空中にて開花しているのが見える。

 

無線でカノープスに報告する。

 

「カノープス、こちらアンタレス1。戦闘空域に到達、目標確認(ビジュアル・I.D)、交戦許可を求む」

 

《こちらカノープス、了解。交戦を許可します(クリアード・トゥ・エンゲージ)。》

 

交戦許可が下りた。 なら......、

 

「アンタレス1、了解。交戦を許可(クリアー・トゥ・エンゲージ)

 

視線の先で敵機2機に追われているF-15Eを捕捉すると急接近。互いに激しい旋回を行う中、私は敵機の背後へと回り、察知されずに追尾を開始した。ゆっくりとした動作で銃を構える。

 

 

「聞こえないの?」

 

 

“試合開始のホイッスルは、既に鳴っているよ”

 

 

「アンタレス1、交戦(エンゲージ)

 

 

後方で私が銃を構えて狙っている事を、相手に気づかせないまま無慈悲に告げる交戦開始の符丁の瞬後、

 

私は人差し指を掛ける引き金を絞った。

 

フルオートで発射された6.8mmSPC弾が、照準器内に捉えていた敵機に吸い込まれるように次々と命中。体にゴルフボールサイズの穴を穿われた敵機から、細かい破片と共に真っ黒いオイルが飛び散った。

 

破孔部から火を噴き、エンジンを撃ち抜かれた敵機はそのまま急激に速度を落とし、力無く海面へと墜ちてゆく。

 

「アンタレス1、敵機撃墜(スプラッシュ・ワン)

 

撃墜成果に喜びを感じる暇もなく、次の標的を捉える。

 

目の前の獲物を追うのに必死な敵機は、私が背後にいる事、私に僚機が墜とされた事にすら気づかない。

 

「相棒は大切にしなさいよ」

 

そう呟き、旋回して無防備な背面をこちらへ向けている敵機の淡いグレー色の機体の、そのコックピットへ単射を決め込む。

 

キャノピーを貫いた銃弾は敵パイロットを絶命させ、コックピット内を真っ赤な鮮血が染めた。乗り手を射殺された機体はコントロールを失い、あらぬ方向へと飛んでいく。

 

それを確認した上で、一息つく。

 

「ふぅ......、ん?」

 

敵機に追い掛けられていたF-15Eが速度を落として私の隣へと並んだ。機体の垂直尾翼にはUNFの白い文字と、骨で象った“A”と言う部隊エンブレム。

 

そして、無限大のマークのようにも見える、ピンク色のリボンをした死神のパーソナルマークが、私にその不気味過ぎる笑みを浮かべ、ジッと見つめていた。

 

F-15Eのパイロットが手を振っていた。

 

《こちらボーンアロー1。君がアンタレス1か? 今の援護は感謝する、ありがとう》

 

どうやら先ほど話した隊長機のようだ。

 

「こちらアンタレス1、ボーンアロー1へ。礼を言うのは後にしましょう。今は敵機の撃墜が優先です」

 

《了解、アンタレス1。此方は0-4-0の扶桑国防空軍機の援護に向かう。そちらは4時下方のウィッチ隊を頼む》

 

「了解」

 

互いに会話を短く済ませ、離れる。

私が身体を捻らせて下へとダイブすると、3人のウィッチの姿が目に入る。一人は二人からある程度距離を取って銃身の長い銃でサポートしているようね。恐らく、狙撃兵。

 

 

「ボーンアロー2、3、4......、2が被弾しているわね」

 

 

回りを取り囲む敵機はF-35Bが7機。

本来搭載されていないはずの機関砲の火箭が見えるとなると、胴体下部の兵器ステーションに懸架しているMGSポッドね。

 

多分、これを聞いた人は『バンダナして眼帯付けた伝説の男がダンボール箱を被り潜入任務を行うステルスゲーム』を思い浮かべただろうけど、断じて違うわよ?

 

「MGS」“任務型機関砲システム”と呼ばれる25mm4砲身ガトリング砲ポッドの事。決して、ステルスゲームじゃないわ。

 

それはさて置き、状況を見る限りあのタイフーンを履いたウィッチが危ないわね。

 

被弾しているらしく片方のユニットから煙を吐いている。片肺不調の彼女をMiG-29戦闘機脚(ファルクラム)を履く銀髪のウィッチと、狙撃担当のウィッチがカバーしている。

 

「待ってなさい、今向かうわ!」

 

速度を上げて、スナイパーを背後から狙おうとしている敵機を視認し、頭上から逆落としに迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同空域.side/アリシア“オメガ”アルダートン

 

 

《オメガ、! 2機、接近してる!》

 

「次から次ぎへと......! 了解よ!」

 

オリガからの警告を聞き、回避機動を行う。

 

だが、ミサイルの至近爆発により被弾した右ユニットの出力が上がらず、思い通りの機動がとれない。

 

「ちゃんと飛んで! お願いだから!」

 

そうユニットに語り掛けても返事は返って来ない。当たり前だ。だが、返事代わりの『エンジン損傷、出力ダウン』と言う警告メッセージが、イヤフォンに流れていた。

 

黒煙を空中に引きながら、追尾してくる敵機に2、3度、振り向きざまにL85A3アサルトライフルをフルオートで撃っていたが、敵機を掠めるだけだ。

 

敵機からの反撃はない。手負いの私が完全に息切れになるまで、相手は舌なめずりして待っているに違いない。

 

 

「なめんなコラァー!!」

 

 

そう叫びつつ素早く宙返りを行い、一瞬にして敵機と相対すると、正面から敵機に向け、銃を発砲。

 

追尾していた片方の敵機に命中した弾丸は、敵機の機首付近を蜂の巣にする。半ロールして離れた敵機のすぐ脇を抜うように通過したもう1機が、腹部のガンポッドで攻撃してきた。輝く機関砲弾の軌跡を身体をそらして躱す。

 

互いに接近して交叉する瞬間、敵機の下へと高度を落とす。機体のすぐ下を沿いながら、満遍なく銃撃を叩き込み、敵機は火を噴いて爆発した。

 

「ハァ......ハァ......」

 

戦闘前半にて固有魔法である全方位シールド構築をし過ぎた所為か、魔法力と体力の消耗が激しかった。

 

「もう......ハァ......キツイよコレ......」

 

《ブロンコ! 後方に敵機ッ!!》

 

「キャス!!」

 

狙撃支援を行っていたキャスのいる方向へ顔を向けると、オリガの呼び掛けで敵機に気づいた彼女がAW50対物狙撃銃を構える。だが、

 

《ッ......!》

 

ボルトを引いて次弾を装填しようとした段階で、マガジン内にもう弾が入っていない事に気づき、慌てて腰部のポーチに入るマガジンに手を伸ばす。間に合わない!

 

私が銃を構えて撃とうとした次の瞬間、敵機は頭上から降り注いだ無数の銃弾に捉えられ、火球と化した。

 

「えっ!?」

 

驚きの声を上げて上空を見上げる。

 

その時になって気づいた。HUDに表示されたレーダーに味方を示すIFF(敵味方識別装置)反応の輝点があった事に。

 

視線の先には、銃を構えたまま、獲物を見つけた鷲の如く急降下をするウィッチがいた。

 

《こちらアンタレス1。遅くなったわね》

 

 




フェネックです。
遅くなりましたが、第19話投稿完了出来ました。
数年前に一度、マーティネズ・セキュリティー社を退職していたアンタレスですが、フレデリカのお願い(強制)により再び、戦場の空へと舞い戻ります。

M42飛行中隊第1飛行隊は元々、ライジェル隊でしたが、現時点では会社を離れている設定で、第2飛行隊アンタレス隊が繰り上がりで第1飛行隊になっています。ライジェル隊のその後? ちゃんと考えてますよ。

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